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『ルイズは悪友(とも)を呼ぶ! After』その9

2010年末最後の更新は、「るいとも」2本立て、まずはアフター9話からです。


『るいとも *Aの9』

 さて、"原作"に比べて本作のヒロインたるルイズからは、「貴族の誇り」だとか「公爵家令嬢としてのプライド」だとか「トリステインへの忠誠心」だとかいったものが大幅にこそげ落とされていることは、読者諸氏は重々ご承知であろう。
 もっとも、日本でのサイト達との付き合いでそういった部分が激減したとは言え、ルイズという少女は本質的には友達思いで優しい娘である。
 いや、むしろ変な階級意識が希薄になった分、周囲の人間に対し、"友"と"身内"と"それ以外"という、いささかシンプルな区分しかしなくなったと言えばよいだろうか。
 このうち、"身内"については「自分自身の身命と同等に大切」、"友"についても「その危機には命を賭けてでも助ける」という「覚悟」を持っているのだ。
 まぁ、普段のヲタ少女からは、そういう気迫は微塵も感じられないかもしれないが。
 しかしながら、さすがに前回アルビオンに行かされた一件は、「友の危機」と言うにはいくら何でも自業自得過ぎると思うのだ。
 「え、えーと、つまり、どういうことなのでしょう?」
 原因不明(?)の貧血で丸2日寝込んだのち、ようやく回復したアンリエッタは、改めて口頭で報告を聞こうとルイズ&サイトを王宮の私室へと招いていたのだが、一段落したところで冒頭のような回りくどい例えを聞かされることになった。。
 「もぅ、姫様、お察しが悪いですね~。つまりですね、もうちょっとエレガントな言い回しをしますと……」
 「しますと?」
 「お使いのお駄賃ちょーだい」
 ブバッ!
 ちょうどティーカップに口をつけていたサイトが盛大にフいた。
 「いや、ルイズ。それ、単刀直入すぎ。エレガントさのカケラもないから。
 ま、報酬をもらうこと自体については賛成だけどな」
 紅茶で濡れた口の周りを拭きながら、サイトが苦笑する。
 たとえば、アンリエッタ王女の幼き日の無垢なる恋心が原因で、トリステイン存亡の危機が迫っている……とか言う事態であれば、ルイズとて多少の苦労は厭わないだろうし、あとで金を要求するような阿漕な真似もすまい。
 しかしながら、今回のようにほぼ100%アンリエッタ個人の趣味による過失で、かつ先方に対していたたまれない気分で平謝りせざるを得ない状況を引き起こしたとあっては、「必要経費&出張費くらいよこせコンニャロウ」と言いたくなっても無理はない。
 ルイズのすさんだ気分を察したのか、アンリエッタは慌てて、自分のポケットマネーから100エキューを報償として、ふたりに渡したのだった。

 「で、だ。どーして急に金が要りようになったんだ?」
 アンリエッタの私室から、そのまま平賀家のサイトの部屋まで来たところで、彼はルイズに尋ねた。
 「……ホラ、もうすぐ……でしょ」
 「ん? ああ、そう言えば来月の半ばだっけ」
 耳打ちされて、ようやくソレに気付いた才人だったが、まだ事の次第を飲み込めてないらしい。
 「もぅ! のんきねぇ。サイトにだって関係あることじゃない」
 「うーん、確かにそりゃそうなんだが……で?」
 「呆れた。まだ気付かないの? プレゼントよ、ぷ・れ・ぜ・ん・と。こないだトリスタニアに行った時、ちょうどいいものを見つけたんだけど、意外と高くて」
 「それで、姫さんからいきなりむしりとったのか。で、100エキューで足りるのか?」
 「うーん、120だから手持ちを合わせれば何とか……ギリギリってところかしら」
 「モノがモノだけに多少なりとも融通してやりたいが、俺もこちらの金はほとんど持ち合わせがないしなぁ」
 ふたりして考え込む。
 と、そこでルイズの目に才人のベッドの上に置いてある雑誌が目にとまった。
 ──正確には、その表紙の見出しの一文が、であるが。
 「! これよ!!」

 * * * 

 「おーい、ねーちゃん、こっちにビールと枝豆追加してくれ」
 「はーい、よろこんでー」
 客の注文に愛想よく答え、ルイズはいそいそと調理場へオーダーを通す。
 ここは、トリスタニアのチクトンネ街にある小洒落た大衆酒場「あじ妖精」。
 シエスタのツテを辿って、彼女の叔父が経営するこの店で、ルイズはしばらくウェイトレスのバイトをさせてもらっているのだ。ちなみに、学院からはサイトのバイクで通っている。
 このお店、元は「魅惑の妖精亭」と称する大人向け酒場兼宿屋だったのだが、たまに手伝いに来るシエスタが"東方風料理"のレパートリーを多数もたらしたため、昨年末、店主のスカロン氏が、トリステイン唯一の"東方風酒場"へと改装する決断を下したのだ。
 もちろん、シエスタにその"東方料理"のレシピを伝えたのはルイズである。と言っても、
彼女は手持ちの料理マンガを何冊かシエスタに貸しただけなのだが。
 ……しかし、料理好きの課長やグータラ新聞記者の作品はともかく、特級厨師や勝負にこだわる吊り目男のマンガは本当に参考になったのだろうか?
 それはさておき。この改装は大いに当たり、「そこそこの値段で珍しくて美味しい料理を食べられる店」として、ここ「あじ妖精」は王都の新名所になりつつある。じつは、2号店を出す計画もあるらしく、シエスタにそちらの店長をやらないかと打診が来てるくらいだ。
 一応平民向けなのだが、3つある個室に予約を入れてお忍びで食べに来る貴族も少なくない。
 最近では要望に応えて、昼に貴族や富裕な商家向けの「出前」サービスも始めるほどの繁盛ぶりだ。

 そして、料理の味とエキゾチックな店の構えに加えて、この店のもうひとつのウリが、美少女ウェイトレスたちだったりする。
 ありていに言えば、日本の大衆酒場でよく見られる袖がやや短めの着物にタスキ&前掛けという格好なのだが、着物の裾の短さがハンパじゃない。さながら「アイマス」か「らぶドル」に出てきそうな「和服ナメんな」と言いたくなるほどの見事なマイクロミニ丈だ。
 ちなみに、シエスタの相談を受けてこの衣装をプロデュースしたのは他ならぬルイズであり、日本での友人・ハルナのコスプレにヒントを得たらしいが……「まさか、自分が着るハメになるとは思わなかった。少し後悔している」とサイトたちに語っている。
 もっとも、ルイズも2日だけとは言え文化祭でコスプレ喫茶のウェイトレスをした経験があり、さほど戸惑うことなく、初日からほぼ失敗なく働くことができたのだが。

 「つーか、むしろ水を得た魚のように活き活きしてネ?」
 調理場で皿洗い兼下拵え担当として働くサイトは、ルイズの働きぶりを見てつぶやく。
 「ホント、ルイズちゃん大人気ねぇん。新人なのに気が利くし、今、ウチのジェシカが休んでるから、助かっちゃったわ~」
 ねじり鉢巻に板前服という男前な格好のクセにオカマ言葉でしゃべるのが、この店の板長兼店長のスカロンである。
 マッチョで怪異な容貌ながら、そのゴツい指先から生み出される料理の数々は、あの魔法学院のマルトー親方をしてうならせたほどの代物だ。
 親方も、噂を聞いた当初はバカにしてたのだが、シェスタほかから評判を聞き、実際に食べに来て、彼の腕前を認めたらしい。今ではたまに互いの職場の新メニュー開発などで相談しているとか。
 ルイズとしても、あの「ヘビィなおフランス料理一直線」だった学院のメニューが改良されるのは大いに歓迎するところだ。
 「いやぁ、すみません、一月間だけ働かせてくれなんて、無理言っちゃって」
 「いいのよぉ、最近営業時間を長くしたから、人手が不足気味だったしぃ」
 シエスタからは「学院に通う貧乏貴族の娘さんが、どうしてもお金が必要になって内緒で働き口を探している」というフレコミで、スカロンに話をつけてもらったのだが、細かいことは詮索しない彼の気遣いはありがたかった。
 「じゃ、来週までだけど、サイトちゃんもよろしくねン」 chu!
 そう言い残して、調理に戻るスカロン。
 「いい人なんだけど、あのウィンクと投げキッスだけは何とかしてほしーなー」と、気力とSAN値を大幅に削られながら、ボヤくサイトであった。

 ちなみに、ルイズが欲しかったプレゼント。それは……。
 「新郎タダシ・ゾーリンゲ・フォン・イノー、並びに新婦エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールは、ここに誓いのキスを」
 彼女の長姉の結婚式に際しての贈り物として、どうしても欲しいものがあったのだ。

 以前と異なり、一方的に恐れるばかりでなく姉妹らしい会話が増えた今なら、この厳しい姉が、いかに自分に愛情をもって接してくれていたのかがよくわかる。
 だからこそ、今日、ようやく女としての幸せをつかんだ姉に、背伸びと言われようと、彼女自身の手で稼いだお金でプレゼントしたかったのだ。
 ──まぁ、そのため一国の王女にタカるという少々無茶な手段もとったりしたが、アレも一応は"正当な報酬"の範囲だろう。

 「結婚おめでとうございます、エレオノール姉様、タダシ義兄様。これは、私とサイトからのプレゼントです」
 店先でひと目見たときから、「コレしかない!」と決めていたアクセサリーをジュエルケースに入れて差し出す。
 「これ、を……ルイズが?」
 「はい、エレオノール姉様。開けてみてくださいますか?」
 贈り主に促され、エレオノールが箱を開くと、そこには大粒の虹色の宝玉を中央に、見事な銀細工で飾られたブローチが鎮座していた。
 「エレオノールさん、俺達の故郷では宝石ごとに花言葉ならぬ宝石言葉ってヤツが決められてんです。そのレインボークリスタルの宝石言葉は……」
 サイトの言葉をタダシが引き取る。
 「──愛、希望、そして感謝、やな」
 「タダシ……もぅ、ルイズ、アンタって子は……」
 つぶやく"夫"の顔を一瞬見上げたのち、エレオノールは、小さくて生意気で……でも誰より可愛くいとおしい妹の頭を胸に抱いて、喜びの涙を流し続けるのだった。
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