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『それ行け、桜小娘!』01

 ついに表題の作品の冒頭部が完成。
 「女子小学生のゆるゆるライフを妄想する」という、自分的には未知なるテーマの実験作ですので、
色々至らない点もあるかと思いますが、ご容赦ください。

桜小娘
●イラスト:皐月紫龍
それ行け、桜小娘!

その1.紅白戦

 7月上旬、そろそろ初夏という言葉から「初」の字が取れてもおかしくないこの時季に、ここ、私立桜庭小学校の体育館では、クラブ活動の一環として女子バレー部の紅白戦が行われていた。

 「ダンッ!」と体育館の床が軋むほどの強い踏み込みとともにネットの直前でジャンプした少女の身体は、その背丈に比して驚くほど高く宙に舞い上がる。
 「これで……ラストぉ!」
 振り上げられた右手は、絶妙なるタイミングをもって彼女の前へと打ち上げられた白球へと鞭のように鋭く振り抜かれ、ボールをネット越しに敵陣へと叩き返す。

 ──バスンッ!

 断じて女子小学生のものとは思えないスピードと重さで打ち込まれたボールは、その威力を遺憾なく発揮して床に異音とともに衝突した。

 ──ピピーーッ

 審判をしていた顧問教師の笛が体育館に鳴り響き、電光掲示板の得点表示が「21-2」へと変わり……ゲームは終わりを告げた。

 「おッしゃァーー!!」
 最後のスパイクを決めた少女が、大声でガッツポーズをとる。
 「やったね、さおりん!」
 「ナイススパイクであります、沙織」
 チームメイトからふたりの少女が駆け寄り、3人は景気よく「イェーィ!」とハイタッチを交わす。
 色々な意味で対照的な女の子達だった。

 「さおりん」と呼ばれた少女の本名は「藍原沙織(あいはら・さおり)」、同校の6年C組に所属する最上級生だ。日本人には珍しいほどの赤い髪を腰近くまで伸ばしているが、「ロングヘア」と言う言葉の響きが持つ淑やかな印象は皆無で、「ボサボサ」と言う形容の一歩手前の乱れ具合は年頃の女の子としては如何なものか。
 運動時に邪魔にならないようにとの配慮か、額にヘアバンドをしてまとめているのだが、オシャレと言うよりアパッチの戦士のようなワイルドさを感じさせるあたり、彼女の性格をよく物語っている。
 背丈は150センチ代半ばと同世代の平均をやや上回る程度だが、運動神経は非常に高く、とくに全身のバネを活かした瞬発力には目を見張るものがある。また、自他共に認めるバレー好きで、バレーボールに関する熱意とセンスが人並み外れているのも確かだ。
 性格は、天真爛漫……と言うよりは、単純馬鹿と言う方が正確かもしれない。あるいは、体育以外の成績が低空飛行している点から見れば、運動馬鹿と言う評価もアリだろう。
 とは言え、そのカラッと陽性で楽天的な性格から、彼女を嫌う者は少なく、クラスでもクラブでムードメーカーとして重宝されている。

 沙織と会話している背の高い方の少女が、「武内(たけうち)ちはや」。こちらは、6年B組に所属している。身長160センチとクラスで一番の長身で、それに比して顔つきも大人びており、やや小豆色がかった黒髪を首筋で切り揃えた髪型と相まって、「可愛い」と言うより「美形」という形容が似合う子だ。私服だと中学生によく間違われており、アパレルメーカーを営む親友の母親からは、度々モデルとして勧誘されているほどだ。
 バレー部員としては、ウイングスパイカーを務める沙織と対になるスーパーエースだ。背の高さもさることながら、沙織以上に高い運動能力を持つアスリートで、おそらく男子も含めて校内でちはやに敵う者はいないだろう。
 また、沙織に比べると勉強面も中の上から上の下クラスを維持しており、性格も温和で快活、しかも面倒見が良いため、男女問わず人気が高い……と、これと言った欠点は見当たらない。強いて挙げると、やや優柔不断で決断に時間がかかるということくらいか。
 もっとも本人は、身長の割に胸の発育がいささか芳しくないことを気にしているのだが……これはまぁ、今後の成長と努力に期待と言ったところか。

 そして、3人組の残り、ツインテールに大きめのリボンを結んだ、やや小柄な娘の名が、「門倉紗弥(かどくら・さや)」。こちらは6年A組の生徒だ。
 パッと見は、その145センチ弱の身長と華奢な体格があいまって、とてもスポーツが得意そうには見えないのだが、ちょこまかと動き回り、先程の試合で相手側コートから飛んで来たボールの6割あまりをレシーブしていたのはこの子だ。沙織とちはやが攻撃の両輪だとすれば、紗弥は守りの要と言えるだろう。
 サーブの球筋も巧みで、サービスエースを2本奪う殊勲も挙げている。筋力・体力は高くないものの、技巧派プレイヤーとも言うベきタイプらしい。もっとも、どこか眠そうな半眼とボーッとした表情からは、そんな気配はまったく感じられないのだが……。
 また、その全身に漂う緊張感のなさがマイナス要素になってはいるものの、顔の造形だけを見れば、彼女はまさに「美少女」と呼ぶにふさわしい可憐な容貌をしていた。
 緩くウェーブした艶やかな黒髪、ミルクのような白い肌、最高級の人形師があつらえたような整った目鼻立ちなどは、どちらかと言うと、体育館より図書室の方が似合いそうだ。
 実際、読書家で学年TOP10に入る成績優秀者でもあるのだが、彼女なりにこの部活の時間を楽しみにしていたし、またチームに於いても少なからず貢献しているのだ。

 残る3人のチームメイトたちも、沙織達ほど目覚ましい活躍はしなかったものの、十分基本に忠実で堅実なプレイをしていたと言ってよいだろう。

 「はい、それじゃあ、紅白戦第一試合は、2セット先取で6年生チームの勝ち。両チームとも、整列して礼!」
 審判台から降りてきたバレー部顧問教諭の蒼井三葉がパンパンと手を叩いて、生徒達を集める。
 「「ありがとうございましたー!」」
 その指示に素直に従い、紅白両チームは一礼してからコートを出た。

 それにしても……と蒼井は心の中で微苦笑する。
 「ようやく基礎を覚えた5年生チームが6年生チームに胸を借りる」というような意図で、紅白戦をやらせてみたのだが、まさかここまで点差がつくとは思わなかった。

 桜庭小では、課外クラブ活動は週一で実施、5・6年生の生徒が自由参加するというシステムになっている。
 確かに、4月半ばに入部した5年生達は2ヵ月半ほど──つまり、実質11、2回しか練習していないのだから、練習量が圧倒的に足りていないのは事実だ。しかし、それを言えば6年生の子達も同じで、1年のアドバンテージがあると言っても、蓄積量はたかがしれているのだ。
 蒼井自身は中学高校で5年間バレー部に入っていたものの、インターハイに出場できるほど優れた選手だったわけでもなく、その指導もごくごく一般的な域は出ない。
 実際、昨年度の同じ時期の紅白戦では、当時の5年生(つまり今の6年生)チームが6年生チームと、かなりの接戦を繰り広げたのだが……。

 と、ここで「ああ」と蒼井は気づいた。何のことはない。現行の6年生、とくに先程の3人組の実力が標準を大きく上回っているということなのだろう。
 その証拠に、メンバーを入れ変えて行われた第二試合では、5年生チームもなかなかいい勝負をしている。さすがにポイントリードするまでには至らないが、第一セットは21対12という、年齢・経験差を考えれば妥当と言える範囲に収まっていた。

 * * * 

 「へ~、こっちの5年生チーム、わりかしやるじゃん」
 コートを取り巻く形で、やや広めのキャットウォーク状になっている体育館の2階で、スポーツドリンクのボトルのストローをチュウチュウ吸いながら、沙織がおもしろそうに試合を眺めている。
 「そうだね、少なくともボクらが相手した子達よりかはサマになってるのは確かかな」
 首に巻いたタオルで額の汗を拭きつつ、ちはやも沙織の言葉を肯定した。
 「う~ん、ただ、わたしの見る限り、バレーの技術に関しては、先程の子達と大差はないのですよ~」
 ふたりとは対照的に、汗ひとつかいていない紗弥が異議をさし挟む。
 「でも、シャミー、実際点差はそれほど開いてないじゃん」
 沙織がきょとんと首を傾げた。ちなみに、友達に勝手にあだ名を付けて呼ぶのが沙織のクセで、紗弥のことは「シャミー」と呼んでいるのだ。
 「──なるほど、「バレーの技術に関しては」、か」
 ちはやの方は彼女の言葉の真意に気づいたようだ。
 「ちはやの言う通りであります。あの子たちが6年生チームに食らいついてるのは、ひとえに運動能力の高さを活かしているからこそ、なのですよ~」
 「あ、そういうことかー」
 紗弥の説明で、沙織も納得がいったようだ。
 「とは言え、ショートカットの娘の反射神経は純粋に凄いと思うよ。あの子が本格的にバレーの技術を学んだら、ボクでもあのブロックを抜くのは苦労しそうだし」
 先程から、果敢にネット際でピョンピョンと跳び上がり、相手チームのスパイクを何発か阻止している少女を、ちはやは指差す。
 「アタシは、あのちっこいコが気になるかな。アイツ、なにげに絶好の位置にトス上げてくれてるぜ」
 沙織の言うとおり、背が低く、いかにも気弱げな印象の少女が「ひぅッ」と「ふぇえ」とか悲鳴じみた台詞を漏らしながらも、低い姿勢から巧みにボールを拾い、アタッカーへとトスしているのだ。
 「沙織の言う通り、あの子は基本に忠実なぶん、まだまだ伸びると思うのですよ~。それなら、わたしはアチラの眼鏡っ子に期待であります。技術面はイマイチですが、コート全体をキチンと見てますから、司令塔役にピッタリなのです!」
 紗弥の言う少女は、確かに動きはややぎこちないものの、懸命に司令塔的な役割を果たそうとしているのが見てとれた。

 「ま、去年とおんなじで、これからは5、6年の合同練習が増えるんだろうし、見込みのあるヤツはビシバシ鍛えてやるとすっか。よーし、今年こそは、地区大会で優勝するぞーー!」
 「「おーー!」」
 6年生チーム全体のキャプテンを務める沙織の誓いの言葉に、ちはやと紗弥も一も二もなく賛同するのだった。

 一方、最終セットのコートチェンジのため移動していた5年生の一部──河原真樹(かわはら・まき)、武藤千種(むとう・ちぐさ)、呉羽(くれは)しずるの3人は、得体の知れない悪寒を背筋に感じるのだった。
 言うまでもなく、6年生たちに目を付けられた「有力株」だからだ。
 バレーのこととなると暴走しがちなセンパイ約1名に、彼女達はこれから色々振り回されることになるのだが……。
 まぁ、その様子はおいおいお伝えするとしよう。

-つづく-

#説明クサイのはプロローグということでご勘弁。
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No title

待っていましたO(≧▽≦)OO(≧▽≦)O
いよいよ始まりましたねチェリーガールズ(〃⌒∇⌒〃)♪
これから楽しみです(@^▽^@)

Re: No title

> 待っていましたO(≧▽≦)OO(≧▽≦)O
> いよいよ始まりましたねチェリーガールズ(〃⌒∇⌒〃)♪
> これから楽しみです(@^▽^@)

いつもどうもです。
ボチボチですが、進めていこうと思います。
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