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『らぶ☆みら ~Lovely Mirror~』

 数年前、某所に投稿した『らき☆すた』、それもPS2ゲーム版のSSです。
 HDD漁ってたら見つけたので、懐かしくて誤字脱字修正の上こちらにも掲載。
 これの続編を書こうかと思いつつ、書き出し3KBくらいで止まってはや数年。まぁ、いまさら需要なさそうですしね。


【注意】
※『らき☆すた ~陵桜学園 桜藤祭~』のネタバレが盛大に含まれています。ゲームの真相を知りたくない方はご注意ください───まぁ、PSP移植版が出てからも結構立つので、今更いないとは思いますが。

※むしろ、逆にゲームの概要を知らないと理解しづらいかも。簡単に言えば、『らき☆すた』の舞台である陵桜学園に転校してきたオリジナル主人公が、こなたやかがみ達と仲良くなりつつ、文化祭の準備をしているうちに色々な事件に巻き込まれるものの、なぜかいつも文化祭開始直前で時間が播き戻り、また転校初日に戻される──という、某Fateのファンディスクめいたお話です。無論、最終的にはこのループを抜けるのが目的。

※当然、そのループの途中で色々なヒロインとフラグ立てちゃうことも可能。ただ、ループすると主人公も記憶を失う(なにかボンヤリとした印象は残る様子)ので、責めるのは気の毒かも。

※デフォルト名のないゲームですので、主人公の名前は「加賀見いづみ」としてあります。また、ゲームの仕様上、本来1周目から"かがみルート"に入ることはできませんが、そこは寛大なお心で読み飛ばして下さい。

※最後に──私のSSの中でも、わりかし「極 甘」な方の作品です。砂糖吐く覚悟でお読みください。

らぶ☆みら ~Lovely Mirror~


 桜藤祭初日、あの大騒ぎ……という一言では片づけられない激動の一日を何とか無事(でもないが)に乗り切った俺は、帰宅したあと自分の部屋で懸命にノートをつけていた。

 「時間の最後の抵抗、か……」
 永森さん──正確には永森さんの中の人(廣田詩夢のことじゃないぞ、念の為)が言っていた言葉を思い出す。
 確かに、あのループした世界での記憶は、どんどんあやふやになっている。それが悔しくて、せめて思い出せるうちにできるだけ書き残しておこうと思ったんだけど……何せ、同じ時間軸で、微妙に違った体験をしているわけだ。正直、この"世界の修正力"とやらが働かなくても、キチンと整理して書き連ねるのは困難だったろう。
 だけど気がついたこともある。こうやって、"今"改めて思い出して書き記していることについては、これ以上記憶が風化することをある程度防げるみたいなのだ。
 だから、俺は、できる限り詳細に、当時の出来事を、心情を思い出しながら、シャーペンを動かし続けている。忘れられない、忘れたくない思い出をノートの上に書き留めるために。
 けれど、連日のハードスケジュール(当然だろう。俺の記憶が確かなら、少なくとも7回は学園祭の準備を経験しているのだ)のせいか、徐々に俺の目蓋も重くなり……ついに、7ページ目を書きかけているところで、夢の中へと陥落してしまった。

 *  *  *

 ──それは泡沫の夢。騒がしく忙しい……けれど、とてもとても幸せな日々の記憶。

 「ありがとう、じゃないわよ。なにいきなり絆創膏貼ってるの?」

 ──出会いは通学路。転校した陵桜学園に初めて通うことになった日、ネットで調べて道順もバッチリ! なのはいいが、少々時間がギリギリで焦っていた朝の出来事。

 「とにかく礼は言うわ。妹を助けてくれてありがと」

 ──ショートボブカットの少女(後でクラスメイトだと判明するつかささん)が転んで、口では怒りながらも心配そうに駆け寄る、ツインテールをなびかせた意志の強そうな目をした女の子、柊かがみさん。
 「ひとめ惚れか?」と言われれば、「違う」と即答できる。その時は、単に妹思いのいいお姉さんだなぁ、くらいにしか思わなかった。遅刻寸前でそんな余裕もなかったし。

 「私は柊かがみ。今朝は迷惑かけたわね」

 ──けれど、その日の昼休み、教室でこなたたさんたちのグループとともに改めて紹介されたとき、ちょっとだけ"運命"っぽいものを感じたのも事実。まぁ、偶然だろうけどさ。

 「へぇ、"加賀見いづみ"って言うんだ? なんか、私とこなたを足したみたいな名前ね」

 ──そうして、始まった桜藤祭までの忙しい毎日。俺は最初、クラスの演劇を手伝うことになった。その過程で、メインキャストのひとりを演じる予定のかがみさんとも、徐々に親しくなっていき……。

 「さっきの演技……いづみくんはどう思う?」
 「すごく良かった。この舞台、絶対に成功すると思うよ」
 「あ……ありがとう。けど、その……大したことないよ。別に、えと、特には、ねぇ?」

 ──突然の事故。あんなに頑張っていたかがみさんが、足のケガで舞台に立てないなんて、そんなのないよ! だから、代役を引き受けた。彼女の代わりというわけじゃないけど、少しでも彼女の心の自責の念が減るように。そして……。

 「し、失礼ね! なんで叫ぶのよっ!?」
 「仕方ないだろ!? いきなり抱きつくなよ」
 「私のせいじゃないもんっ! こなたのせいだもんっ!」

 ──いつも通りなこなたたさんの暴走(迷走?)と、それを止めようとするかがみさん。あの日の朝、かがみさんに起こされた時、照れ臭さとおなじくらい嬉しさも感じていた。あの時、自覚はなかったけど、きっとその頃からかがみさんに惹かれていたんだと思う。

 「だったらかがみさんが、お弁当作ってよ?」
 「え? わ、私っ!? いや、あの、困るっ! それは大変困るっ!!」
 「じょ、冗談だよっ! そんなに驚かないで……っていうか、顔、すごく赤いよ?」
 「変なこと言うからよ。けど……作ったげよっか?」

 ──自分で自分の心がわからない苛立ち、そこから来る友人達との衝突。

 「……ごめん。また迷惑かけちゃったね」
 「お互い様だよ。こなたさんのことで助けてもらったしさ……ね?」
 「うん……ありがと。だったら、あのさ……もう一つ、だめ?」
 「なに?」
 「……座らない? 足、ちょっと辛いからさ」

 ──でも、結局俺の新しい友人たちは、底抜けのお人好し揃いだったみたいだ。

 「ねえ……正直に答えて。こなたと、キス……したい?」
 「こなたさんじゃないよ。俺……かがみさんと、したい」
 「ば、ばかっ! 何言ってんのよっ!? からかわないでっ!」
 「冗談じゃなかったら、どうする?」

 ──学園祭直前のかがみさんとの会話。この時には、少なくとも俺は自分の気持ちをしっかり自覚していた。そして、それは多分、かがみさん同じで……。

 「そ、それじゃ……お幸せに」
 「ちょ、ちょっと待ってよ! どこ行くんだよ!」
 「う、うるさいわねぇっ! 気にしないでよっ! さっさと……その子の所に行きなさいよ」
 「行けないって! ていうか……好きな子とはもう一緒にいるよ!」
 「……え? それって……」
 「だから……好きな子は目の前にいるっていうんだよ!」

 ──学園祭でのクラス演劇は大成功に終わった。そして、中庭の星桜の樹の下での告白。……それにしても、どんだけニブいんだよ、かがみさん(笑)。

 「ごめんね……本当にごめんね。気づかなくて……ごめんね」
 「いいよ。ていうか……近すぎない?」
 「ご、ごめん。……離れるね」
 「いや、離れなくていいよ。嫌なわけあると思う?」
 「いいの? 私で……いいの?」
 「そっちこそ。かがみさん……俺じゃだめかな?」
 「ううん……そんなことない。いづみくんがいい……!」

 ──それが"1回目"の記憶。これこそが、"俺のかがみさんへの想い"の原点なのだろう。

 「かがみさん、大丈夫? ……って、なんだこの衣装!?」

 ──記憶が確かなら、"3回目"の話。こなたさんの従妹の小早川さんたちの頼みで、模擬店で使うコンピューターをチェックしている時、その事件は起こった。なんと、その場にいたメンバー全員が、ネットゲームの世界に吸い込まれたのだ!!

 「かがみん、かがみーん!」
 「調子に乗り過ぎだっつーの!」
 「うわっ!?
 「どーゆー起こし方してんのよ!?」

 ──ゲームの世界で目を覚ました時、そばにかがみさんの姿があるのを発見した時、すごくホッとしたのを覚えている。その時は気づいてなかったけど、たぶん以前、かがみさんに告白した時の気持ちが、どこかに残っていたからだろう。

 「校内を調べよう。かがみさんを見つけないとね」

 ──つぎの"4回目"では、SFかホラーかとも見紛う非常(識)事態に遭遇。ここで、かがみさんのホラー嫌いを知ったんだよなぁ。

 「諦めるなバカ!」
 「かがみ……さん?」

 ──しかも、絶体絶命の危機で、かがみさんに助けられるという展開。で、助けてもらった直後に、かがみさんが涙ぐんで……。

 「一人にしてごめん……けど、もう大丈夫だから。
  誰も欠けてない。皆いるから……皆一緒だから」
 「……わかってる……だから……ありがと」

 ──い、いま思うと、なんて恥ずかしい台詞を吐いてるんだ、俺は! でも、そのおかげで、ちょっとかがみさんといい雰囲気になれたのはラッキーかも。……直後に、こなたさんやつかささんにからかわれちゃったけどさ。

 「……あーなるほど。3人とも、太ったんだ?」
 「「「はうっ……!!」」」

 ──そして"5回目"。ミスコンイベントのちょっとした手伝いをしていた俺は、いろいろあって、かがみさん、みゆきさん、黒井先生のダイエットまで手伝うことになってしまった。
 ……いや、不満なんて全然ないですヨ? そもそも事故とはいえかがみさんの、その…セミヌードを後ろ姿とはいえ拝見しちゃったわけですから。

 「ちょっとみゆき、"私たち"って何よ。いづみくん、勘違いしないでよねっ!!
  私は別に、いづみくんの事なんかアテにしてないんだから」

 ──短い期間で、3人ともよく頑張った。俺も(主にかがみさんの失敗フラグを消すために)一生懸命努力したし、結果、ミスコンでは見事にかがみさんが優勝することになった。

 「……そうね……挫折しないで頑張れたのは……」
 「頑張れたのは?」
 「……その、あんたの応援も、まあ……少しは関係してる……かも」

 ──それだけに、イベント後に聞けたかがみさんの言葉は、嬉しかったなぁ。あまり素直じゃないかがみさんから聞ける感謝の言葉としては、あれは最上級に近かったし。
 ……今にして思えば、もしかしてこの時も、俺、こなたさん言うところの"攻略フラグ"をかがみさんに立てて成功してた? くっ、何てもったいないことを……。

 「あ、あれ? なんでテンション低いの?」
 「あったりまえじゃん。絶対におかしいでしょ!?」

 「見たけりゃ見ろっ! こなた、そこどいてっ!」
 「ああもう、わかったよ! 俺がやる!
  パンチラなんかされたら、絶対に目が行っちゃうから!!」

 ──そして、迎える6回目、7回目のループ。この時は、事件を収束させることに意識がいってたから、特にかがみさんと親しくなるような事件はなかったけど、それでも彼女達のそばにいて、ともに行動することが自然だと、心地よいと感じていたのは事実だろう。

 「……それで、落ちたのか? それが原因で"アレ"がこの街に墜落したのか──」
 「繰り返させるもんですかっ!」

 ──こうやって振り返ってみると、いかに自分がかがみさんを意識し、目で追い、大事にしていたかがよくわかる。俺にとって、柊かがみと言う女の子は、本当に大切な愛しい存在だったんだ。

 たぶん、その気持ちは今でも変わっていない。でも、それを口に出すことは許されない。
 その記憶を、思い出を覚えているのは、今では俺だけだろうから。

 ……心が痛い。

 大丈夫。今でも俺とかがみさん達は、少なくとも仲がいい友人だ。
 だから、改めてより親しくなって、もう一度(ってのは変か。最初の時だって、両想いだとわかった瞬間にループしちゃったわけだし)恋人になることだって、十分見込みはある……はず、たぶん、きっと、おそらくは。

 「ちょっと、いつまで寝てるのよ!? いくら学園祭の2日目だからって、朝の出欠確認は普通にあるのよ!!」

 うん。だから、もしそうなったら、かがみさんがこんな風に起こしてくれる、こなたさんの言う"幼なじみ必須のイベント"が発生することも……。

 「いい加減に、起きろーーーーーっ!!」
 突然布団が引っ剥がされたうえ、耳元で聞き覚えのある声に怒鳴りつけられた。

 「わわっ、な、なにごと!?」
 眠い目をこすりながら、顔を上げると、そこには両手を腰に当てて仁王立ちしているかがみさんの姿があった。何気に顔が赤いのは、怒っているからだろうか?

 「……あれ?」
 「あれ、じゃないわよ。さ、目が覚めたんなら、さっさと起きて学校行きましょ。私は、下で待たせてもらうから」
 「えーっと、その……はい」
 なんで、俺の部屋にかがみさんが!? とか聞きたいことは色々あったけど、時計を見ると結構時間的にヤバいのも事実。なので、とりあえずここは素直に頷くことにした。
 かがみさんが出て行ったのを確認してから、もぞもぞと制服に着替え始める。階下からは、母さんとかがみさんが会話している声が漏れ聞こえてきた。

 (ごめんなさいね、かがみちゃん。あの子ったらいつもお寝坊さんで)
 (いいえ、おば様。大した手間ではないですから)
 (まったく、こんな可愛らしい彼女が朝から訪ねて来てくれてるってのに……)
 (か、彼女だなんて……ち、違うんです、おば様。あたしといづみくんは、まだただの友達で……)
 (そう、まだ、なのね? 自分から告白する勇気もないなんて、あの子ったら本当に甲斐性なしだねぇ。こうなったら、かがみちゃんの方から、思い切って押してみたらどう?)
 (いえ、その……あぅ……)

 す、すっごくコッ恥ずかしいんですけど!

 うぅ、自分のガールフレンド(候補)と母親の仲がいいことは、本来喜ぶべきことなんだろうけど、これはさすがに恥ずかし過ぎる。かがみさんも意外に照れ屋だから、きっと真っ赤になって固まってるに違いない。
 とりあえず、超特急で着替えて、下に降りよう。

 「母さん、余計なこと言わないでよ! ごめんね、かがみさん」
 案の定、頭のてっぺんまで赤くなったままワタワタしているかがみさんに謝ってから、テーブルの上のトーストを口に押し込み、コーヒーで流し込む。
 「ごちそう様。お待たせ、じゃ、行こうか、かがみさん」
 呆気に取られたように俺の食事風景(所用時間約30秒)を見ていた彼女は、慌ててうなずいて俺とともに玄関を出た。

 「それにしても、一体またどうして、かがみさんが俺の家に? しかも、朝から起こしてくれるなんて……」
 予鈴が鳴るまで、あと15分ちょっとなので、早足で学校への道を急ぎながら、俺はようやく朝から気になっている事を、かがみさんに聞いてみた。

 「き、気まぐれよ。気まぐれ!」
 いつものように、プイッとそっぽ向いて早口に言い捨てるかがみさん……だが、一瞬あとには一転して弱気な口調で問いかけてくる。
 「……もしかして、迷惑だった?」
 「え!? いや、そんなことないよ、全然!」

 かがみさん、その上目づかいは反則。好意を抱いてる女の子にそんな目で見られたら、たとえ東京タワーの上から強制バンジージャンプさせられたって「迷惑だ」なんて言える男はいないに違いない。
 「ただ、あんまり、唐突だったからね。正直驚いた」
 これがこなたさんだったら、まさに「気まぐれでゲームに影響されたんだなぁ」で十分納得できるんだけどね。まぁ、あの人の場合は、自分からそれをやるより、誰か(たとえばかがみさん)にやって欲しい側だろうけど。

 「えーっと……」
 しかし、予想に反してかがみさんは何だか口ごもっている。やがて、溜め息をひとつついた後、あきらめたように小声で話し始める。
 「だって、前のときはこなたが無茶するのを止めて偶然そういう形になっただけだし。でも、加賀見くんうれしそうだったから、どうせなら自分の意志で、ちゃんと起こして上げようと思ったのよ」

 え!?
 「あのぅーーもしかして、かがみさん、覚えてる?」

 *  *  *

 あのあと、学校への行く道すがら確認したところ、かがみさんの事情も俺と大体同じだとわかった。
 薄れていく記憶を少しでも留めたくて、必死に日記に覚えていることを全部書き連ねていったのだと言う。そうすると、不思議なことに書いた分──正確には、きちんと思い出した分の記憶については、これ以上忘れる気配がなかったらしい。
 「じゃあ、最初の……俺が劇で代役をやったときのことも……?」
 かがみさんが僅かに頬を赤くしながら頷く。

 (そうか……かがみさん、覚えててくれたんだ)
 結局あの時、最後までちゃんとキスできたのかはわからない。でも、その時の気持ちと思い出は、ちゃんとふたりの心の中に残ってたんだと知って、無性にうれしくなる。

 と同時に、俺は決意していた。今、改めてこの気持ちを宣言しておかないと、きっと日常に流されて、ふたりは元の「ちょっと仲の良い友達同士」に戻ってしまうだろう。"あの時"と違って、今の状況では、みんなのそれとないフォローとかは期待できないだろうし。
 ……いや、言い訳だな。俺は、目の前の女の子を、キチンと自分の恋人として、本人と周囲に認めて欲しくてしょうがないんだ。

 「かがみさん。あの時、言った気持ちは、今でも変わってないよ。俺は、柊かがみという女の子が、大好きだ」
 「ちょ、ちょっ……あんた、何そんな重大なことをこんな所で……」
 「はは、ごめんね。ムードやロマチックさの欠け片もなくてさ。でも、本当なら、"あの時"、例の星桜の樹で1回告白してるわけだし……ね」

 でも確かに、女の子に愛を囁く場所としては、朝の通学路と言うのは、ちょっとばかり不適切だったかもしれない。
 「もし、これで俺に愛想を尽かされたんなら、それも仕方……」
 「…ないわよ」
 「え?」
 「そんなことくらいで、あんたに嫌いになったりしないって、言ったのよ! 一方的に言われっぱなしってのもシャクだから、いい、よく聞きなさい」

 足を止め、息を大きく吸ったかがみさんは、ずいっと俺の方に近づくと、左手の人差し指を俺の顔につきつけてきた。
 「私、柊かがみも、加賀見いづみのことが好き。大好き! この気持ちに嘘偽りはないし、誰にも負けない自信があるっ!!」

 一瞬、呆気にとられたものの、その言葉の意味が脳に染み込むとともに、徐々に喜びの感情が胸の内に湧き上がってくる。

 「は…ハハハ……やった! やったぞーーーー!!」
 「きゃっ!」
 その歓喜に任せて目の前のかがみさんを思い切り抱きしめる。かがみさんも、一瞬驚いた表情はしていたが、俺の抱擁を拒もうとはしなかった。

 「約束する。ずっとずっと、かがみさんのこと大事にするから」
 「当たり前だ、バカ」
 俺は今後、これほど甘い声音で「バカ」という罵声を聞くことはないだろうなぁ。


 ……と、ここでゲームやアニメなら、エンディングテーマが流れてめでたしめでたしとなるのだろうが、残念ながら現実はひと味違った。

 「おおっ、転校生くんが、柊にコクったぞー、やるなぁ。ヒューヒュー」
 「ちょっとみさちゃん、やめなよ。可哀想だよ~」
 何て言ったって、ここは天下の往来。しかも陵桜学園まであと少しという地点だ。当然、そこにはチラホラ学生さんの姿もあるわけで……。
 しかも、さっきの台詞から察するに、どうやらC組の日下部さんや峰岸さんも観衆(いつの間にか10数人の学生に、遠巻きに見守られていた)に混じっていた様子だ。

 「……このバカ」
 嗚呼、なぜ先程と同じ「バカ」と言う台詞なのに、そこには甘さの欠片も含まれていないのでしょうか。……いや、俺が全面的に悪いんだけどね、うん。

 「こ、こうなったら……」
 「……なったら?」
 「三十六計逃げるに如かず!」
 俺は、かがみさんの手を引いて、全速力で学校に向かって走り出した。

 「あ、逃げた」
 「……なんか、ムダな抵抗って感じもするわね」
 日下部さんたちの呟きはもっともだが、場の勢いと言うヤツもある。それに、少なくとも、俺が手を引いている恋人は、あれ以上(生)暖かい視線を注がれるあの場に留まることには耐え切れなかっただろうし。

 「バカ、バカ、大バカ! みんなに知られちゃったじゃない!!」
 「別にいいよ。かがみさんが俺の恋人だって、周囲にちゃんと知ってもらった方が、横恋慕する変な虫も減るだろうし」
 だって、かがみさん、可愛いから不安だし……と続けると、かがみさんが俺を罵しる声も勢いを無くす。
 「あのねぇ、私、そんな軽い女の子に見える?」
 「ん、大丈夫だとは思うんだけど、ね」

 「ハイハイ、そこ、生ギャルゲーな恋愛イベントの再現はよそでやってね~! つーか、いづみくん、いつかがみんのフラグ立てたのさ!?」
 「お姉ちゃん、よかったね」
 「おめでとうございます、かがみさん、いづみさん」
 と、いつものメンバーのツッコミが入って、そこからはグダグダ。教室までダベりながらワイワイ歩いていくことになる。

 でも、これでいいさ。少なくとも、かがみさんは俺の恋人になることを──過程はあれだけど──喜んで受け入れてくれたんだ。
 高校生活もあと残り半年。受験なんかもあるから、いろいろ大変だとは思うけど、でもこの娘と一緒なら、きっと上手くやっていけるに違いない。

 こっそり、まだ離してなかったかがみさんの左手を軽くギュッと握ると、ちょっとだけ驚いた顔をした彼女も、薄く頬を染めながら握り返してくれる。

 「こら、そこ! 気軽に萌えイベントを発生させない!!」

 ……はいはい。

 ~FIN


当時PS2版を全クリした勢いに任せて書きました。
原作やアニメではみゆきさん贔屓な私ですが、ゲーム版ではかがみんのツンデレっぷりに萌え転がりました。と言うか、かがみとみゆき、優遇され過ぎかも。いや、個人的には全然OKなのですが。
にしても、原作、いまだ続いてるんですっけ。KCA(にぃ)さん、ビックリだ~。

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Author:KCA(嵐山之鬼子)
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