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『究極超人るいず』(上巻)

 タイトルを見れば一目瞭然ですが、『ゼロの使い魔』と『究極超人あ~る』とのコラボパロSS。元は一発ネタとして書いたのですが、存外ウケたので、調子に乗って続けてしまった作品。
 数年前、「あのルイズ~」スレに投下した未完の作品で、自分でもすっかり存在を忘れていましたが、先日HDD整理してて見付けたので、誤字脱字などを軽くチェックしたうえで、こちらにも3回に分けて掲載してみます。

 最初に言っておきますが……とんでもなくカオスです。「キャラ崩壊ってレベルじゃねーぞ」って感じ。カル~く肩の力を抜いて「ワハハ」と笑い飛ばしてやってください。



究極超人るいず』(第一期・上巻)


第0話.使い魔登場の巻】

 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは当惑していた。
 日ごろからロクに魔法が使えず、ゼロだ、無能だと言われている自分だが、この春の使い魔召喚の儀において、ようやくサモンサーヴァントを成功させることができた。
 それ自体はいい。
 だが、自分はいったい何を召喚してしまったのだろう?
 もうもうと煙が立ちこめる中――もちろん、ルイズの魔法につきものの"爆発"が起こったのだ――爆心地のあたりに黒い人影が揺らめく。
 まだシルエットしかわからないが明らかに二足歩行するヒューマノイド。それも、オーガのような巨体というわけでもなく、エルフのように尖った耳も見受けられない。ぶっちゃけ、ただの人間っぽく見える。

 (もしかして……わたし、平民を呼び出しちゃった?)
 ガックリうなだれるルイズ。
 そりゃあ、ドラゴンやグリフォンのような特上級の使い魔が呼び出せると本気で思っていたわけではないが、さすがに平民はないだろう。これなら、むしろ犬とか猫とか……百歩譲って小鳥やネズミのほうが、いくらかマシだ。

 煙が晴れるにつれ、その人影の姿が明らかになっていく。
 そこに立っていたのは、ルイズたちとおおよそ同年代くらいの少年に見えた。
 黒い髪は前髪の一部以外は短めにまとめられ、清潔そうな印象を与える。
 顔だちは比較的整ってはいるが、どことなく目がトロンと眠そうなので、美形と印象にはどうにもほど遠い。
 ハイカラーの黒い上着と、同じく黒いズボンを着用しているが、足元はなぜか裸足に木製のサンダルのようなものを履いている。
 そして、傍らに奇妙な二つの輪が付いた金属製の何かを携えていた。

 おもむろに"彼"が片手をあげる。

 「──やぁ。」


第1話.類は使い魔になるの巻】

 メガネをかけた小柄で物静かな少女――タバサは思う。
 最近の学院はどうも妙だ。

 思い返せば、春の使い魔召喚の儀……いや、その儀式で"ゼロ"とあだ名される女生徒・ルイズが、奇妙な使い魔を呼び出したときから、異変は始まっているように思う。

 そう、確かにあの召喚の儀は奇妙なことだらけだった。
 儀式に立ち合うはずのコルベール師がなぜか席を外していたり、代りに魔法学院の先輩―卒業生だというワルド子爵が立ち合っていたり。
 ワルド子爵は親が決めたルイズの婚約者らしいが、何かにつけて学院に顔を出している。一応、トリステイン王宮務めのグリフォン隊隊長のはずなのだが……もしかして暇なのだろうか?

 そして、極めつけは、あの少年だ。

 あのとき、しばしの葛藤の後、結局ルイズは、召喚した平民らしき少年と契約しようとした。
 したのだが……。

「平民だ! ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」
「さすがはゼロだ!」
 お約束のこのセリフを叫びながら、同級生たちが盛り上がる中、召喚された当の本人が、それを否定する。

 「――平民じゃないよ」

 その言葉に息を呑む一同。
 まさか、どこかの貴族? いや、一見人間に見えるけど、もしかしたら亜人……!?

 周囲の大多数は緊張に、召喚したルイズは期待に固唾を呑む。

 「”へいみん”じゃないよ、アンドロイドだよ」

 「何なのよ、それは!!」

 ──スパーーーン!!

 期待を斜め上に裏切られたルイズが、手に持った白いモノを使って黒衣の少年(?)をはり倒す。
 丈夫な紙でできた扇のようなものだが……いったいいつの間に手にしたのだろう?
 (あとでその少年に聞いたところ、それは彼の世界で"ハリセン"と呼ばれている道具らしい。「ボケた人に突っ込むのが主要な用途」だそうだが、ルイズは少年にツッコミを入れたときの感触が気に入ったようで、以後愛用しているようだ)

 「お、怒ると胃に悪いんだな」
 「余計なお世話よ!」
 「胃が悪くなるとごはんが食べられないじゃないか。
 ごはんが食べられないとお腹がすくじゃないか。
 お腹がすくと怒りっぽくなるじゃないか。
 怒ると胃が悪くなるじゃないか……」

 怒髪天をつくルイズを尻目に、マイペースな論理を循環させる少年。

 「何が言いたいのよ、アンタ!?」
 そのまま無限ループに入りそうな少年に、怒りを中断させて問いかけるルイズ。

 「お……」
 「お?」
 「お腹が空いたよぅ……(メソメソ)」

 (な、なんなんだこいつは……!?)
 その場に居合わせた人間の心はひとつになった。

 (おもしろいヤツだ……!) 

 ――訂正。約1名、違うことを考えていた人間がいる模様。
 その1名がワルドだと言う時点で、トリステイン魔法衛士隊は「もうダメぽ」かもしれない。

 * * * 

 あのあと、あまりに少年の姿が哀れだったため、彼が懐から取り出した食物(白い穀物を焚いて固めたもの?)を食べるのを待って、ルイズは改めて尋問しようとしたのだが……。

 「僕はもう行かなくてはなりません!」
 弁当を食べ終わると、少年は本人比5パーセント増しでキリリとした目つきになり、スックと立ち上がる。

 「ちょっ、ちょっと待った! アンタ、私の使い魔として召喚されたのよ! 勝手にいなくなるって……」
 慌ててルイズが止めようとするものの、時すでに遅し。
 少年は奇妙な二輪の道具に乗って風のように去ったあとだった。

 「──追って、シルフィード」
 別にルイズと特別親しいわけではないが、さすがに少々気の毒に思ったタバサは、自らが召喚した風竜に乗って少年のあとを追跡しようとしたのだが……。

 「……見失った」
 驚くべきことに、風竜の速度をもってしても追いつけぬ速さで、少年は裏山の中へと消えていったのだ。

 結局ルイズは、サモンサーヴァントには成功したものの、コントラクトサーヴァントにはまだ未成功ということで、とりあえず仮進級という扱いになった。
 「仮」を取るためには、2年生のあいだにあの少年を見つけだして契約しなければならないとあって、ルイズはあれ以来裏山に捜索に行くことが多いのだが、帰ってくるたびに体中にすり傷や打ち身、痣などをこさえて来る。

 心配した(無論、表立って口には出さないが)キュルケが冗談混じりに聞いてみたところ、どうやらあの裏山には、"山の主"とでも言うべき狂暴な獣の類いが住み着いているらしい。
 そいつに行く手を阻まれ、よせばいいのにキレやすいルイズが殴りかかったことから、取っ組み合いになったようだ。
 ちなみに現在のところルイズの勝率は全戦全敗。
 彼女の証言によれば、「片目が潰れ、全身至る所に傷がある精悍な野兎」だと言うが……これはさすがに眉唾物だろう。
 たしかにルイズは(タバサほどではないとは言え)小柄で華奢な少女だが、曲がりなりにも人間が兎ごときに遅れをとるとは思えない。

 そんなとりとめもないことを考えながら、教室に入り、キュルケの隣に着席したところで、コルベール師が入って来た。

 「え~、今日はみなさんに転校生を紹介します」

 ──ガヤガヤガヤ……。

 基本的に貴族の師弟が通うこの学院に学期の途中から転入生がいるということは、皆無ではないにせよ、非常に稀だ。
 ざわめく生徒たちを尻目に、コルベール師は教室の外に呼びかけた。
 「さ、入って来てください」

 扉を開けて入って来たのは……。

 「やあ。R・田中一郎くんだよ」



第2話.使い魔の正体の巻】

 読書好きな青い髪の少女――タバサは思う。
 最近の学院はやっぱりヘンだ。

 *  *  *

 衝撃の再会ののち、いかなる事態が起こったのかは、誰もが想像に難くはないだろう。
 「ちょっと! 私と契約しなさいッ!!」
 コントラクトサーヴァントの呪文を詠唱し、ハリセン(どうやら、儀式を施して魔法の杖にしたらしい)を振りかざしつつ、あ~るに迫るルイズ。

 「ああ~、いけません。婦女子がそんな風に簡単に唇を許しては」
 ボケボケした外見に似合わず、儀式の完成──ルイズの接吻をひょいひょいと身軽に避け続けるあ~る。

 「はっはっはっ、元気があって大いにけっこう」
 「……ワルド先輩」
 「あら、いつの間にいたんですの?」
 「さっきからだよ。こんなおもしろいことを見逃せないからね」
 というか、その"おもしろいこと"の存在はどうやって知ったのだろう?

 「グリフォン隊のお仕事は大丈夫なんですか?」
 「だーいじょうぶ! 夜勤明け!」
 どうやら夜間の見回りでもしていたらしい。ハイなのはそのせいか。

 「夜のお仕事ですから、昼間は学院の面倒をみてられます」
 ──いったい、いつ寝てるんだろう、このオッさんは。

 「よっ、はっ、ほっ、さっ……」
 「くっ、この、畜生、止まれっての!」

 一向に捕まらない自らの使い魔(予定)に業を煮やしたルイズは、別の呪文―たぶん聞いた限りではウィンドブレイク―を唱えて、あ~るの足止めをしようとする。

 さてここで問題。
 ゼロのルイズがウィンドブレイクのような真っ当な魔法を成功することがあり得るだろうか。
 答え。たぶん、いや、絶対無理。

 ──ちゅどーーーーん!!!

 この世界の真理に従い、ルイズの魔法は暴発して、爆発へと変化する。
 無論、対象となったあ~るを巻き込んで盛大に。

 「あちゃあ、派手にやったわね」
 「教室がボロボロ」
 「し、仕方ないでしょ。事故よ、事故!」
 キュルケとタバサの呆れたような視線を、ルイズは無駄にエラそうなポーズで跳ね返す。

 「おーい、大丈夫かね?」
 さすがに見かねたのか、ワルドが机や壁に埋もれたガレキの山に声をかける。

 「大丈夫大丈夫。僕はとても頑丈だから」
 ガレキの山から、にゅるっとあ~るが顔を出す。

 が。

 「そ、そうかい。大丈夫ってことはないと思うんだが……」
 なぜかそれを見て一同は引きつる。

 「ちょっと、アンタ! 首が完全に後ろを向いてるじゃない!!」
 「器用」
 珍しくタバサが感心したような声を漏らす。

 「器用じゃない、異常よ!!」
 ルイズの怒声を尻目に、グリンと首を回すあ~る。

 「な、直った」
 「「「「!!!」」」」

 ──シーーーン

 あまりにもあんまりな光景に声も出ない一同。

 「……で、では諸君達者でな!!」
 カランコロン、カランコロンと木製サンダル(下駄と言うらしい)の靴音を響かせつつ、あ~るはいずこともなく去って行った。

  * * *  

 あの少年が現れて以来、どうにも学院の雰囲気が変わったように思えてならない。
 具体的に言うと、お祭り好きと言うかやたらと騒動事が多くなった気がする。
 もっとも、それがイヤか、と問われれば即答には窮するのだが。
 ……昔の自分なら、「うるさい」で切って捨てていただろうから、自分もちょっとは影響を受けているのかもしれない。

 そんなことを考えながら、タバサは使い魔とともにゼロ部――「ゼロのルイズの使い魔(予定)を捕獲して、無事にルイズと契約させるための対策本部(命名・ワルド)」――の部室へと足を運んだ。

 もっとも、このゼロ部、ご大層な名前がついているわりに、ふだんはあまりすることがない。
 せいぜい、あ~ると追っかけっこしたり、あ~るを折檻したり(主にルイズ)、あ~るのヨタ話を聞いたりするくらいだ。
 あ~るがいない時(授業中も含めてよくいなくなる)には、特訓と称してみんなで(ストレス解消も兼ねて)、いろんな魔法をぶちまかしたり、ダベったり、ワルドからのさしいれをがっついたりしている。
 正規部員3名全員がうら若き少女なのにこれでいーのか、と言う意見もあるだろうが、この年ごろの少年少女なんて、異性の目がなければこんなモンだ(ワルドは異性のうちには入らないらしい)。

 *  *  *

「「「ぶわっちっちっちっち!」」」「きゅいきゅい!」
 ゼロ部の部室(いつの間にかワルドが学院から使用権をぶんどって来た元物置小屋。いったいどんなコスい手を使ったのだろう)から飛び出してくる3人の少女と、突っ込んだ頭を慌てて引っ込める一匹の風竜。

 「か、かなり暑いだろうとは予想してたけど……」
 「地獄」
 ようやく初夏に差しかかったばかりだと言うのに、ここ数日は異様に天気がよく、まるで真夏のような陽気だ。
 元が物置だけあって、ゼロ部の部室には窓も小さめのものがひとつあるだけだ。
 さすがに火トカゲはヤバいと言うことで、フレイムは外に出しておいたのだが、それがなくても蒸風呂のような暑さだった。

 「おやおや、何してるんだい、そんなところで?」
 おりよくワルドが顔を見せる。
 しかし、本当によく学院に来るが、ちゃんと仕事してるのだろうか、この男は。

 「ワルド先輩、部室が暑くて使いものにならないんですの」
 「何? 換気用のマジックアイテムは作動させたのかね?」
 「あーーーそういうものもありましたわね」
 埃が溜まったときのために、窓の近くに風を起こすマジックアイテムが設置されていたはずだ。
 コルベール師の発明品のひとつだが、役に立たないことで有名な彼の発明品の中では、かりマシなほうだろう。

 「迂闊」
 装置を作動させようとするタバサをルイズが止める。
 「いえ、ワルド様、あのマジックアイテムはダメです。
 あれはすぐサボるので魔法でせっかんしたら動かなくなりました」
 「あたりまえだ!」
 ルイズの失敗魔法は破壊力だけはラインクラス以上なのだ。

 「な、なんてことするのよ、ルイズ!」
 キレたキュルケがルイズをポカポカ殴る。何気にタバサも参加しているあたり、じつはけっこう恨んでいるのかもしれない。


 「しかし、暑いと言っても、我慢できないくらい暑いものかね?」
 じゃれ合う3人を尻目に、どーれ、と部室に入っていくワルド。

 「うわっちっちっ……」
 一瞬悲鳴があがったが、すぐに無音になる。

 「あら」
 「とても静か」
 「ま、まさかワルド様、中でノビてるんじゃあ……」

 3人は顔を見合わせると、意を決して扉を開け、中に足を踏み入れる。

 「「「ワルド先輩!」」」

 部室の中には……
 「あ~、なかなかいい按配だな、こりゃ」
 タオル片手に半裸でサウナ気分を堪能するバカ1名。

 「あ、アホか~~~!!」
 ──スパーーーーン!

 今日もルイズのハリセンさばきは絶好調のようだ。

 *  *  *

 「よし、わかった。今日は部室での活動は無理だな」
 キリッとした表情でワルドが宣言するが、頭にでっかいコブをこさえているので、あまり様にはならない。
 「こんな悪条件で部活などやってられん。今日は泳ごう」

 「ええっ!?」
 「聞いてない」
 「フッ、わかってないわね、あなたたち」
 キュルケとタバサが驚く中、余裕の笑みを浮かべるルイズ。
 「”いきあたりばったり”! これがワルド様の人生方針よ!!」
 さすが幼なじみにして婚約者、ワルドのことをよくわかっている。

 「……ルイズ、言ってて、頭痛くならない?」
 「……少し」

 *  *  *

 「もしかして女子の着替えシーンが!?」などという読者の期待を華麗にスルーし、水浴着に着替えた一同は、学院裏の水練所前に集まっていた。

 「にしても、今日はあ~るのヤツ、見ないわね」

 ──ガサッ!

 噂をすれば影と言うか、いかにも怪しい音が……。
 ふり向けば、茂みから突き出た車輪ふたつ。

 「あれって、あ~る君の”轟天号”とか言う乗り物じゃないかい?」
 「そのやうですね」

 「「…………」」
 しばし顔を見合わせるルイズとワルド。

 「こらっ、R・田中一郎!」
 ぐわさっと茂みが揺れて、自転車を掲げたあ~るが姿を現わす。

 「どーしてわかったんだ?」
 「バカめ! 君がいると電波がピーンと飛んでくるのだ」
 得意げな顔で大ボラを吹くワルド──本当にこの人、エリート騎士なのだろうか?

 「なるほど……奥が深い」
 「「「深くない、深くない!」」」
 首を傾げつつ、感心するあ~るにツッコむ三人娘。

 ともあれ、こんな暑い日に追っかけっこするのもおっくうなので、水練所にあ~るも誘うことになったのだが……。

 「だめだと言ったらダメだ! 今はウチのサークルが特訓中なんだ!」
 水練所――水系統魔法訓練所には、先客が陣取っていた。
 どうやら水系統を得意とする生徒のサークルが自主的に自習(と言う名の水遊び)をしていたらしい。

 「この学院の生徒が、学院の施設を使って何が悪いんだね!?」
 リーダーらしき少年に、ワルドが抗議したものの……。

 「あなたは誰です?」
 「学院のOBだ!」
 「じゃあ、生徒じゃないですね」

 『──ざんねん! ワルドのこうぎはむこう! 』

 ……まったく頼りにならなかった。

 「ねえ、あなた、ちょっと浸かるだけでもダメかしら?」
 このままではラチがあかないと見たキュルケが、お色気でリーダーを懐柔する手に出る。
 ただでさえプロポーションのいいキュルケだが、露出の多い水浴着を着ているため、その豊満な胸元や悩ましいヒップが露骨に男性の目を引きつける。

 「ふむ……」
 生真面目そうなリーダーの鼻の下がにゅるんと伸びる。
 「そ、そうだな、ちょっと浸かるくらいなら……」

 やったーー!と小躍りしてプールに急ぐ三人娘。

 「ん?」
 リーダーの視線がタバサとルイズに向けられる。
 「彼女の妹さんかい? アブないから初等学校のお子様は入っちゃいけないよ」

 ──ズルッ……。

 あんまりな言いようにズッコケるルイズたち。それは、まぁ、確かにふたりともかなりの幼児体型ではあるが……。

 「い、言ったわね! この、もっこりパンツ!!」
 「も……」
 「レディがそんな下品なこと、口走ってはダメだーー!」
 リーダーがルイズの言葉に打ちひしがれるより先に、ワルドの怒声が響く。

 「ワルド先輩、いったいどっちの味方なんですか!?」
 呆れたようなキュルケの問いをよそに、タオル片手にそそくさとプールに入ろうとするあ~る。
 「では、失礼しまして……」
 もちろん、お約束どおり、詰め襟その他の服は脱いでいない。

 「こ、こら、格好でプールに入るヤツがいるか!」
 「バッカモーーーン!」
 リーダーに続いてワルドも叱責の声を上げる。

 「プールに浸かるのにタオルを持って入るのはマナー違反だぞ!!」
 「それは銭湯」
 すかさず切り替えすタバサ。と言うか、ハルケギニアに銭湯ってあるのだらうか?

 (あー、ハイハイ。そんなことだと思ったわよ)
 どことなく徒労感を感じつつ、仕方なくルイズがツッコミを入れる。

 「このスカタ~ン! プールには上着を脱いでから入りなさーい!!」

 ──スパーーーン!!!

 あの召喚の日から妙に手になじんでいるハリセンが、勢いよくあ~るのドタマを張り倒す……が、今回はちょっと勢いが強過ぎたようだ。

 「や、いたいじゃないか」
 クルンと、すでにお馴染みになったあ~るの首の180度回転が、180度で留まらず、360度、あるいはそれ以上の角度で回りきり……ポロッと首がモゲた!

 「ヒッ……って、何よ、これ?」
 一瞬、殺人を犯してしまったのかと肝を冷やしたルイズだが、すぐにあ~るの首の断面から何やら歯車やらワイヤーやらがのぞいているのに気がつく。

 「……ゴーレム?」
 「もしくは自動人形の類いと推察」
 キュルケとタバサも恐る恐る覗き込む。

 「アンタ、平民じゃなくてゴーレムだったの?」
 「"ごーれむ"じゃないよ、アンドロイドだよ」
 あ~るは自律機械がどうの良心回路がどうのと言っているが、ルイズは無視して、彼の身体にに関節技――コブラツイストをかけている。どこで覚えたのだろう。

 「うるさい、アンタなんかゴーレムで十分よ」
 「トホホホホホ……」

 仲良く(?)じゃれているふたり尻目に、珍しく真剣な表情で話し合うワルド、キュルケ、タバサの3人。

 「しかし、あ~る君がゴーレムだったとはなぁ。ゴーレムだったら、あの異常な頑丈さや怪力も……」
 「首が回ったり常識がなかったりすることも納得できますわね」
 「意外とつまらないオチ」

 うーーーーーーーーーーーーーむ。

 「ちょっ、ちょっと、それでいいんですか? 納得するんですか!?」
 訳知り顔でうんうん頷いている3人にも、水メイジたちのリーダーが食って掛かる。

 「何か問題でも?」
 「問題だらけじゃないですか! そもそもこの由緒あるトリステイン魔法学院に、貴族でもメイジでもない、100歩譲って平民ですらない、ゴーレムが入学して来てるんですよ!?」

 「なんだと! そんなこと我々に責任はないぞ!」
 (こ、これだからこの悪奴先輩と会話するのはイヤなんだ……)
 リーダーは、今さらながら学院OBワルドにまつわる噂話、というか悪評の数々を思い出す。

 いわく、彼の起こした騒動を収めるのに学院の年間予算の4分の1近くが必要だった。
 いわく現在の学院に伝わる生徒用のこまごました規則は、学生時代の彼が「校則の抜け道」を色々試したせい。
 いわく、彼の在学中、生徒からの退学者は皆無だったが、教師の自主退職が例年の両手で足りないくらい頻出した。

 ともあれ、そんな事を思い出してガックリうなだれるリーダーたちを尻目に、ゼロ部の3人娘+アルファは、存分に水練所のプールで水遊びを堪能できたのだった。 

 *  *  *

追記.
 あ~るの首はいとも簡単に元に戻った。歯車や部品が2、3飛んでいたが、本人が気にしてないので平気だろう。


追記その2.
 ルイズはあ~るの首がモゲているあいだに隙をついてキスをし、使い魔の契約を済ませていた。
 その直後、左手に使い魔の刻印が刻まれ、あ~るは「イタイ、イタイ」と騒いでいた。
 ゴーレムにも痛覚があるのか、と興味をもったタバサが聞いてみたところ、「うむ、手にケガをしたら痛いに決っているじゃないか」と答える。どうやら、知識で知ってるだけらしい。


~「第3話.トリステイン一の無責任旅行の巻 」につづく~
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No title

おや、これは懐かしい元ネタ。
久しく読み返していませんが、好きな作品でした。

元ネタの「中の人」のうち、
あ~る、成原博士、鰯水の3人が
もう故人なのですね…

No title

あ、何かこんなことやってますし。
ttp://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20120427/CK2012042702000025.html

Re: No title

お久しぶりです。コメントどうも~。
さすがに今時「あ~る」ネタは引っ掛かる人が限られてるようで、
反応が少ないので嬉しいです(笑)。
確かに


> 元ネタの「中の人」のうち、
> あ~る、成原博士、鰯水の3人が
> もう故人なのですね…

言われてみれば確かに。意外なことに青野さんが一番亡くなったの遅いんでしたっけ?
自分の中のあーると博士にこのふたりは欠かせないから残念無念。
鰯水くんは、まだ他の人でもやれそうなんですけど。
それと、タイムリーな自転車ネタにも笑わせてもらいました。
スゴいこと考えるなぁ。


プロフィール

KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
mail:kcrcm@tkm.att.ne.jp

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