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『ミス・ヴァリエールに口づけを』(前編)

 最近のブログの迷走ぶりを見ていただければおおよそ予測がつくでしょぅが……スランプです。新規のアイデアはおろか、続きを書かないといけないSS(もの)まで筆(この場合、キーボードと言うべきか)が止まってしまう始末。
 PIXIVにアップした『籠球少女(偽)』もエラく不調で、PV数1000はおろか500にも届かなさそうなレベル(普段の平均は3000~4000前後です)。それなりに気合い入れて書いたんだけどなぁ……ぐぬぬ(まぁ、18禁ではないコトも影響してるのかもしれませんが)。
 幸か不幸か、仕事もこの週末から来週末にかけてベラボーに忙しいので、諦めて、しばらく待機モードに入ります。とは言え、何も更新しないのもシャクなので……あぁ、コレ、まだ此処にアップしてなかったっけと、昔のSS『ミス・ヴァリエールに口づけを』を引っ張り出してきました。
 たしか「もしゼロの使い魔の○○が××だったら」スレに初めて投下した中編作品ですね。『ルイズは悪友を呼ぶ』の前の前の前の作品、かな。その分、勝手がわからず適当に誤魔化している部分も。
 また、私らしくなく(いや、ある意味、私らしい……のか?)、だだ甘です。糖度的には、以前こちらにもアップした『桃色の髪の乙女』に匹敵しそう。もっとも、コメディー成分でやや中和をはかっているあたり、この頃はまだ照れが見えますな(その後、開き直って『桃髪乙女』を書きました)。



ミス・ヴァリエールに口づけを』(前編)

【前説】
 某映画のごとくルイズとカトレアが頭をぶつけて中身が入れ替わったら……などと考えてみる。それも、ルイズが学院に入学する前夜、しばらく家を離れることになるため、ちぃねえさまに挨拶に来た時のハプニングで。
 混乱したものの、とりあえずこの事はふたりの秘密にする姉妹。そして……というお話。

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1.輝かしき日々

 つい先日20歳の誕生日を迎えたばかりのサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガこと
平賀才人は、現在幸福の真っただ中にあった。

 思い起こせば3年前、ヲタクの聖地アキバから見知らぬ異境の地へと強制的に拉
致られた(まぁ、半分は好奇心に負けた才人にも責任はあるのだが)と知った時は、
正直「もうダメポ」とか思ったりもしたものだが……。
 住めば都というかこのファンタジーRPGもかくやという異世界ハルケギニアにも、
いつしかサイトは順応していた。
 それどころか今では、「トリステインの救世主のひとり」、「イーヴァルディの勇者の
再来」などと呼ばれ、国から爵位と領地までもらい立派な貴族の仲間入りだ。
 さらには愛しい妻と愛人2名(!)に囲まれ、半月ほど前には妻が長男を産んだばかり(ちなみに愛人の片方も懐妊中)という、「男子の本懐ここに極まれり!」な才人の境遇を見れば、少なからぬ男性が羨望と嫉妬、いや殺意にさえ駆られるだろう。

 それでも、妻と愛人達が不仲で3人の衝突にサイトが日々心をすり減らしている"niceboat"寸前な毎日──とか言うなら、ちょっといい気味……もとい、多少は同情の余地もあるのだが、妻と愛人1号は、サイトと出会う前からの友人であり、サイトに恋するようになってからもその友誼は変わらなかった。むしろ同じ男を愛することによって絆がより深まったようにさえ見受けられる始末(実際、3Pはもとより、サイトが"任務"で家をしばらく空けている時など、ふたりで"慰めあって"いるようなフシすらあるのだ)。
 また、愛人その2に関しては、色々複雑な政治的状況もあって、サイトが自分の庇護下に置かざるを得なかったという経緯がある。世間知らずで純真な彼女は、サイトも含めた夫婦たちの"妹分"的な位置づけで可愛がられており、立場的には"愛人"というよりむしろ"義妹"と呼ぶほうがしっくりくるかもしれない(むろん、しっかりとヤることはヤってるわけだが)。

 それだけでも許し難いが、この男、トリステイン、ガリア両国の女王から想いを寄せられている。無論、おおやけにはなっていないが、知る人ぞ知る程度の機密性であり、むしろ公然の秘密と言ってもよいだろう。
 さすがに一国の王(しかも片方は自分の仕えている国の君主)に手を出すほど、サイトは考えなしではなかったものの、ことあるごとにふたりの女王からの秋波を投げかけられるのは、嬉しくもあり恐ろしくもあり、といったところか。寛容な妻達も、さすがに姫様達に手を出したら怒るだろうし……というのが本音だろう。

 他方、一介の異国人の平民から、(幾分私情が混じっているとはいえ)女王陛下の信任の厚い騎士にして貴族にまで成り上がったサイトの人気は高い。
 無論、新参者の台頭に眉をひそめる保守的な大貴族がいないわけではない。
 しかし、平民はもとより、比較的リベラルな若手貴族の大半も、サイトの献策によってトリステインにもたらされた発展の数々を享受しており、彼への評価は決して低くないのだ。
 もっとも、サイトにしてみれば、ごく平均的な現代日本の高校生が日本史で知る限りでの、明治維新期の近代的制度・文化の導入を、多少アレンジして進言しただけなのだが。

 これで、サイトがその成功を鼻にかける高慢な性格であれば話は違っただろうが、謙虚で質素(より正確には小心で庶民派)なサイトは格別偉ぶることもなく、しごく無難に宮廷での交際をすり抜けていた。
 また、妻の実家が公爵家ということもあって、大貴族達も露骨に排斥する動きを見せるわけにいかなかったということもある。

 くだんのヴァリエール公爵自身については、さすがに当初は娘についた悪い虫にいい顔はしなかった。
 とはいえ、彼が娘婿(予定)に初めて会った時には、すでにサイトは救国の英雄として名を馳せていたし、実際に顔を合せてみれば、少年らしい稚気も見られるものの、娘を守るに足る"男"としての気概と実力も伺えたため、消極的ながらふたりの仲を認めた、というのが真相だ。
 烈風カリンことヴァリエール公爵夫人の目も夫に劣らず厳しかったが、こちらも似たような経緯で義理の息子を認めることとなった。本音を言えば、身分の差異もさることながら、上の姉ふたりより末妹を先に嫁がせることが気にはなったのだが、とりあえず彼女のシゴキに耐えたことで一応は合格となった。
 逆説的に言うと、20代半ばから後半という、この国の風潮からすれば嫁き遅れと称されてもおかしくない年頃の娘を上にふたり抱えていたということも影響しているのだろう。「せめて末娘くらいは人並みに女の幸せをつかんでほしい」という願いから、多少身分が低くても望む相手と結婚させてやろう……という配慮があったものと思われる。

 そして、待望の子供が生まれた(正確には妻の懐妊が明らかになった)時、公爵夫妻のサイトに対する感情および態度は一転、好意的なものへと変化した。
 世の祖父祖母の例に洩れず、夫妻も初孫には激甘だったし、その父親であるサイトも「婿殿、でかした!」という扱いになったのも、まあ頷けるだろう。
 もっとも、実際には、サイトの献策によるトリステイン国内の向上などによる、彼への評価の上方修正なども関係してるワケだが。

 「ところで……サイトとルイズさんのはじめての出会いの時って、どんな感じだったの?」

 とある平和な昼下がり。
 今日は虚無の日で水霊騎士隊長としての公務も休みとあって、王都トリスタニアの郊外にあるヒラガ邸で、家族5人でお茶しながらまったりしていたところ、話の流れでハーフエルフの義妹(もしくは3号さん)の口からそんな言葉が漏れた。

 「あ、そう言えば、私も詳しくは聞いたことがありませんでしたね」
 公式にはこの家のメイド長という肩書になっている2号さんもそれに追随する。

 「あらあら、ウフフ……」
 この家で"奥様"と呼ばれる女性が、ふと遠くを見つめて幸せそうな微笑みを浮かべた。
 その表情を見て、残る女性陣ふたりがぜひともその時の話を聞き出そうと色めきたつ。やはり女性は幾つになってもこういう話が好きなようだ(といっても、彼女たちとて下手すれば"娘さん"と呼ばれてもおかしくない年頃なのだが)。

 「おいおい勘弁してくれよ~」
 若き騎士隊長として部下をまとめる身となっても、サイトのこうういう方面でのヘタレっぷりは変わらないようだ。もっとも、そのヘタレが、タッグを組んだふたりの妻の追及を逃れられようはずもない。正妻の助けがあれば別だろうが、いまだ奥様はトリップ中の様子。

 仕方なく、抱いていた息子を義妹に渡し、メイド長の淹れてくれたお茶で喉を潤しながら、サイトは昔話──といってもほんの3年ばかり前の出来事を語るハメになったのだった。


2.ラブストーリーは突然に

 ──それは、疾風怒涛・意気衝天・究極無敵の一目惚れであった!
  ババーーーーーンッッッ!!! (←効果音)

 「……大丈夫ですか?」
 道端で見かけた奇妙な銀色の鏡に足を踏み入れて気が遠くなったかと思った次の瞬間、俺が目を開けると、そこには桜色の長い髪をなびかせた可憐な"天使"が、心配そうに覗き込んでいたのだ。
 嗚呼成程と、突然「言葉でなく心で」理解したね。

 「あのぅ……もしもし」
 マンガやゲームで「会って間もないヒロインを守るために命を賭ける主人公」とか見て「テラアリエネェ」とか笑ってたけど、今なら彼らの気持ちがよっく理解できる。

 「どうしましょう……頭とか強く打ったのかしら」
 自分の目の前にいるマイスイートエンジェルと、万が一でも恋人になれるんだったら、まさに「きみのためなら死ねる 」状態。ちょっと古いけど「僕は君に会うために生まれてきたのかもしれない」なんてクサいセリフでも躊躇いなく、口に出せそうだ。

 「あ、異国の方みたいだし、もしかしたら言葉が通じていないのかも……」
 「一億と二千年前から愛してましたッ!」 ガシッ!

 あ、ヤベッ、つい口に出して言っちゃったよ。おまけに飛び起きて手まで握っちゃってるし。こりゃ、引かれるだろーなぁ。ああ、でも、この娘の手、やわらけぇなぁ。

 「あらあら……」 ポッ♪

 おろ? もしかして、案外悪くない反応!?
 くっ、しかし悲しいかな、3次元の女の子とつきあった経験のない俺には、ここで畳みかけるべきか、いったん引くべきなのかがわかんねー!!

 「あの、お気持ちはうれしいのですけれど、こういうことはお互いをよく知ってからにするべきだと思うのですが……」
 流石は我が女神様(←なにげに格上げ)、最近のビッチどもと違って奥ゆかしいぜ!

 「そ、そーっスね! 何事もキチンとステップを踏んでからでないといけませんよね!」
 しかし、こんな如何にも「深窓のご令嬢」を絵に描いたようなマイハニー(予定)と、キチンと手順を踏んで交際するとなると、やはり最初は下駄箱にラブレターでの告白から始めて、ひょっとしてまずは交換日記でもやらないといけないのか!? さすがにそれは勘弁してほしいのだが……。
 いや、今まで見たこともないような清楚で可愛くて優しそうな娘とおつきあいできるなら、それくらいの試練には耐えるんだ!

 「まぁ……褒めすぎですわ」 ポポッ
 ──あれ? ひょっとして、俺、口に出してました?
 「はい、しっかりと」

 「…………」

 ──神は死んだ!
 と固まっているところに、背後から声をかけられる。

 「あーー、いい雰囲気のところに水をさすようで恐縮なんですが、ミス・ヴァリエール、そろそろコントラクトサーヴァントの儀式を進めてもらえませんか?」

 と、髪の毛の残量を気にしてそうなオッさんに呼びかけられて(正確には俺がいままで話してた女の子にかけた言葉なのだろう)、初めて俺は自分が見知らぬ土地にいることに気づいたのだった。

 「──え~と……ココ、どこ?」

  *  *  *

 「な、なんなんですか、その"ドラマチック"から300メイルばかり向かう方向を間違えた出会いの場面はーーっ!?」
 ヒラガ邸のテラスに、メイド長兼愛人の少女の怒号めいた悲鳴が響きわたる。

 「さ、サイト……さすがにそれは、私でもどうかと思うよ?」
 世事に疎いはずの妹分さえも、控えめに異議を申し立ててくる。
 世に流布する(ふたりも愛読している)女性向け恋愛小説のようなロマンティックな展開を期待していたのに、一人芝居の三文喜劇(コメディ)だと聞かされたら、それは確かにガッカリするだろう。

 「し、仕方ないだろう! 突然見知らぬ場所に来て、そこでいきなりルイズみたいな美少女に優しく声をかけられたら、男なら誰だって舞い上がるって」
 一応サイトは弁解したものの、実は声をかけられる前から妄想が始まっていたことは内緒だ。
 「……まぁ、確かに今にして思えば、あの言動はかなりイタイ人だと言われても反論できねーけどさ」
 と、ちょっと声に自信がなくなったサイトの手に、そっと白い繊手が添えられる。
 「でも、わたくしは、あのときの貴方の言葉がうれしかったですよ」

 サイトを見つめるのは、初めて出会った時から変わらぬ、思慮深く、それでいて無垢なる美しさをたたえた穏やかな鳶色の瞳。
 魔法学院のころから、その少女らしい小柄な体躯に似合わず、どこか母性的な年上の女性めいたものを感じさせた妻だが、実際に子供を生んだことでその慈母神を思わせる佇まいはより一層深みを増したかのように思われる。
 その癖、それと相反するかのように、つい先日出産を経たとは思えぬくらい若く瑞々しい肢体。
 子を宿してからは唯一の欠点とも言える胸の小ささもそれなりに改善され(実のところ、それ以前に主にサイトの"手"によって少なからず"増量"されていたという説もある)、平均レベルに近い大きさを獲得していた。
 今の妻が純白のローブでも着ていたら、あのときの自分同様、初対面の人間は天使か女神と見間違えるに違いないとサイトは半ば本気で確信しているくらいだ。

 「もっとも、期待に添えなくて申し訳ないのですけれど……。最初見たときの貴方は、慕わしい殿方と言うよりは、どちらかと言うとちょっと気になる弟みたいな男の子、という印象ではありましたけど」

 ──と、持ち上げたところで、ニッコリ笑ってこちらの思惑をアッサリ外すのも、あの頃のままだ。

 「る、るいず~」
 恨めしそうに呼びかけてもニコニコとまるで悪びれた様子がない妻に、一生適わないんだろーなー、と諸手をあげて降参するサイト。
 そして、そんなふたりの様子をいつの間にか、ちょっと離れて見ている愛人その1とその2。

 「……サイトさん達、気がついてるんですかねぇ。ああいう時のおふたりって、何者も近寄れない無敵の「ラブラブ新婚さん空間」を展開していることを」
 「ちょっと羨ましいかも」

 * * * 

 今となっては笑い話だが、当時の使い魔召喚の儀式の際には、多少の悶着があった。
 少年と契約を結ばせようとしたコルベールに、ほかならぬ"ルイズ"自身が異議を唱えて反論したのだ。人間を使い魔にするわけにはいかない、と。
 それはどこかの時空で彼女と同じ顔同じ声を持つ少女が発した言葉と、字面の上では似通っていたが、意味は正反対だった。
 彼女は、サイトが「平民なんか」だから使い魔にしたくなかったのではない。自由意志も感情も事情もある「人間だから」こそ、自らの勝手な都合で縛りつけることを是としなかったのだ。

 そのためには落第することも辞さない覚悟を示す"ルイズ"に、コルベールは大いに弱った。
 彼女がヴァリエール家の三女という家柄であることもさることながら、この心優しい、そして勤勉で礼儀正しい真の淑女と呼ぶにふさわしい少女を、落第や退学などといった窮地に追い込むことは、いささか気が進まなかったからだ。
 しばしの問答の挙句、「とりあえず少年(サイトのことだ)に事情を説明して、使い魔になってよいかその意志を確認する」ということで、何とか折り合いがついた。

 幸いほかの生徒達の召喚の儀式はすでに終わっていたため("ルイズ"自身が、魔法の下手な自分の儀式は最後に回してほしいと願い出ていたのだ)、コルベールは生徒達に解散を命じた。
 残った"ルイズ"達を伴い、彼自身もフライを使うことなく歩きながら、少年へ事情をかいつまんで説明する。
 見たところまったく事情を飲み込めていないようだった(服装からして異国の平民のようだし、無理もあるまい)少年は、当初は半信半疑のようだったが、自らを召喚した"ルイズ"がコルベールの言葉を肯定すると、アッサリ彼女を信じた。

 「……つまり、今回の儀式は魔法学院の課程において非常に重要なもので、ここで俺が契約に同意しないと、ルイズさんが落第しちゃうんですね?」
 何とか落ち着いて状況を整理したらしい少年がポツリと呟く。
 「そう、そうなんですよ、キミ!」
 その言葉に、得たりと頷くコルベール。

 「コルベール先生!」
 「い、いや、しかしですね、ミス・ヴァリエール……」
 「そんな泣き落としするようなやり方はフェアじゃありませんわ。ごめんなさいね。お父様にもお願いして、何とかあなたが元いた場所に帰れるように尽力しますから」
 パッと見、同年代くらいのはずなのに、どこかお姉さんのような気遣いを見せる"ルイズ"の笑顔に、内心ますます惹かれていく少年。

 「いえ、このサモンサーヴァントって、呼び出す対象を指定できるわけじゃないんですよね。だったら、ルイズさんの責任じゃないですよ」
 「ですけど……」
 まだどこか申し訳なさそうな"ルイズ"の様子に、少年ことサイトは覚悟を決める。
 「俺、使い魔ってやつになりますよ。ドラゴンとかグリフォンとか、そんなすごい連中に比べたら、俺なんてただの高校生だし大したことはできないと思いますけど」
 「え!?」
 「おお、よくぞ決心してくれました! ささ、ミス・ヴァリエール、コントラクトサーヴァントの儀式を。見られていてはやりづらいと言うのなら、私は少し離れていますから」

  *  *  *

 (ちょーっと早まったかなぁ。いや、でも、ここで「契約しない」を選ぶのって、バッドエンドかゲームオーバーのフラグっぽいし)

 勿論、俺にもこれがゲームの世界じゃないことくらい、もうわかっていた。
 しかも、あのコルベールとかいう先生の話を信用するなら、現代とはかけはなれた、多分中世とか、よくて近代一歩手前くらいの文明レベルでしかないファンタジーの世界だろう。
 ここに残る選択をすることで思わぬ危険に見舞われることだって当然予測される。それでも……。

 (この娘のそばにいられるってんなら、ま、いーか)
 そして某借金執事のごとく、お嬢様の好感度と恋愛フラグをゲットしていけば、いつの日にかッ!

 「あのぅ、本当によろしいんですか?」
 俺は桃色の妄想を中断して、心配そうに覗き込むルイズさんに答えた。
 「ええ、もちろんですっ」
 と、ここでちょっとくらいはカッコいいこと言ってみようかと、無い知恵絞ってみる。

 「俺の国には"一期一会"って言葉があります。人と人の出会いには必ず何かの意味がある。だから出会いを大切にしなさい……という意味です」
 細かいところは違うかもしれんけど、大体そんなニュアンスだったよな?

 「まあ、素晴らしい格言ですわね」
 「つまり、俺とルイズさんの出会いにも何らかの意味があると思うんです。だから……そのぅ」
 えーと……たしか、マンガとかだとこんな感じだっけか。
 「だから、俺をルイズさんのそばにいさせて、ルイズさんを護らせてください!」
 俺は、ルイズさんの前に膝まづいて右手をとると、その"掌"にキスをした。

  *  *  *  

 読者諸氏はすでに御存知であろうが、この"ルイズ"(中身はカトレア)は、本物のルイズに輪をかけた箱入り娘だ。
 無論、2年前にルイズと入れ代わり、この学院に入ってからは、それなりに人付き合いもできたが、それでも男性とくに(見かけ上)同年代の少年達との、異性としての交際経験というものは皆無に等しい。

 これは、公爵家という家柄や、彼女が魔法の扱いに関してゼロではないが無能に近いこと、彼女の天然でその癖妙に年上めいた雰囲気などの要因もあいまって、彼女にアプローチする男の子がいなかったことが原因だろう。
 同性の友人、とくに寮のお隣さんで比較的仲の良いキュルケなどから多少話は聞いてはいたものの、男女交際に関する知識は、ぶっちゃけ耳年増というのもおこがましいレベルだろう。

 さて、そんな所へもって、目の前に好奇心を刺激する好ましい印象の少年が現れて(しかも彼女自身は微妙に彼に負い目を感じている)、その少年が優しくしてくれたら……あまつさえ、姫君に忠誠を誓う騎士のごとき態度をとったなら。
 心拍数と血圧と体温が上昇し、心理的にも興奮した状態──いわゆる「ドキドキ」して、彼にコロッといってしまっても、あながち無理はないだろう。

 サイトに(手に)キスされて、しばし呆然としていた"ルイズ"だが、徐々に顔が赤くなり、モジモジし始めた。
 その姿は、先ほどまでの年上のお姉さんのような余裕をもった態度とはまた異なる、外見年齢相応の愛らしさを醸し出しており、サイトは今日何度目かの心理的クリティカルヒットを食らう。

 「あの……それでは始めてもよろしいでしょうか?」
 「はいっ、スパーーっとやっちゃってください」
 上目遣いに彼を見上げてくる美少女の破壊力は絶大。鼻の粘膜が弱い体質だったら、とっくに鼻血による出血多量で貧血になっているだろう。
 
 (くぅーーーー真の萌えというのはこういうことか~!)
 サイトが脳内で萌え転がっているあいだに、"ルイズ"は呪文を唱え……ようとして、再び顔を赤らめる。

 「イヤですわ。わたくし、まだ貴方のお名前も伺っていませんでしたわね」
 「才人です。平賀才人……いや、こちら式だとサイト・ヒラガになるのかな」
 「サイトさん……不思議な響きですわね。どういう意味があるんですか?」
 「"才能豊かな人間"という意味です。ハハ、名前負けしてるっスね」
 「いいえ、そんなことありません! 素敵な名前だと思いますわ」
 強い口調で断言したのち、"ルイズ"はコントラクトサーヴァントの呪文を紡ぐ。

 「我が名は………ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
 その名を口にする時だけ、一瞬の躊躇いがあったが、そのあとはスムーズに続ける。
 「五つの力を司るペンタゴン。この者、サイト・ヒラガに祝福を与え、我の……」
 そこでまた一瞬詰まる。
 「……友そして我が騎士となせ」

 そして、彼女は、ゆっくりと目の前に立つサイトの顔を引き寄せ、驚いて目を見開く彼と唇を重ねた。


-つづく-
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以下、チラ裏的前日談妄想。

○偽ルイズ(中身カトレア)
体型が貧弱になり、魔法が使えなくなったものの、念願の健康な体を手にいれ、さらに学院で勉強できるとあって大満足。系統魔法はルイズ同様爆発するが、コモンマジックは一応成功するので、学院では「コモンのルイズ」と呼ばれることに。

●偽カトレア(中身ルイズ)
病弱になったものの、系統魔法がそれなりの腕で使えるようになり、また憧れの淑女であるちぃねえさまの姿になれたことで(おもに胸的に)満足。唯一の悩みはカトレアの拾ってきた動物達の多さだが、なんだかんだいって彼女も情に篤いため、じきに慣れる。

・ヴァリエール家の人々
大多数の人はふたりの入れ替わりに気付かない。一部の侍女たちが「最近、カトレア様が気難しくなられた」と噂するくらい。一方、家族(とくにカリン)はさすがに変だとは思っているが真相は予想の範囲外。公爵あたりは末娘がコモンといえど魔法が使えるようになったことを逆に喜ぶかも。

・学院の同級生達
真ルイズと異なり人あたりが柔らかいので、それなりに学友はいる(無論、魔法が下手ということで馬鹿にする子も少なからずいるが)。
とくにキュルケなどは、仇敵ヴァリエールの末娘というからどんな子かと思って身構えていたところで、偽ルイズのほんわかした対応に毒気を抜かれ、なし崩しに友達に。タバサも偽ルイズに母性を感じて懐く。

・学院で働く人々
真ルイズと異なり人あたりが柔らかく、平民にも優しく接するので人気。
とくにシエスタとはひょんなことから(家畜の扱いとか田舎の風物とかの話題か?)話が合い、身分を越えた「お友達」になる。
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Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
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