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『ルイズは悪友(とも)を呼ぶ!』12

「もしゼロの~」で投下してる「ゼロの魔法少女」の方でちょっと詰まってます。
一応、ルイズルートで進めてるはずなのに、イマイチ進展させづらいというか。
いっそ、当初頭をかすめたヴェルダンデ&シルフィルートでいってみようかなどと思ったり。
(あるいは番外編の女性化ギーシュのほうが、まだ話を続けやすそうです)

TSF支援所の図書館にて「悪魔は狡猾」とその番外「メイドロボは見た」を投下。そこそこのご好評をいただいております。

……と、いう前振りとは何ら関係なく、るいとも12話です。


『るいとも *その12 ワンダープロジェクトT(タバサのドキドキ大作戦)』

 いろんな意味で忙しくも楽しかった夏季休暇が終わり。
 ルイズは、これまでどおり、普段は仮面優等生、裏では年頃の良家の子女としてそれはどうかと思うようなディープなヲタ娘ライフを満喫していた。
 才人の部屋への"扉"は固定してあるので、日が暮れれば好きな時に平賀家に赴いて、ピコピコ、パクパク、ぺラぺラ、ズルズル、ニャンニャンできるわけだし (どれが何の擬音かは、ご想像にお任せする)。

 ところが、新学期が始まって数日経った虚無の日の前夜。そろそろ、あっちに行こうかと考えていたルイズの部屋のドアを、何者かがノックした。
 「んー、だーれー?」
 タンスに鍵を掛け直し、ドアの向こうに呼びかけるルイズ。
 「──わたし。話がある」
 一拍置いて返ってきた答えが青髪の友人のものだったため、ルイズはドアを開けて自室に招き入れた。
 「それで、何かしら。ひょっとして深刻な話?」
 タバサは無言で頷く。友達のマジな相談事とあっては、かなりゆるめなこのルイズも多少は真剣になる。
 ふたつあるイスのひとつを勧め、いつものようにベッドではなく、自身もあえてイスに座ることにした。
 「───この前、もらった本を3作とも読み終えた」
 しばしの沈黙ののち、一見とりとめもないようなことを話し出すタバサ。
 「へぇ! さすがタバサ、読むのが速いわね」
 「この3日ほど徹夜に近い」
 「な、なるほど。授業中、妙に眠そうだから、睡眠時間を削ってるんだろうとは思ったけど……」
 まあ、ゲームに熱中してそれに近い状態になった事が何度かあるルイズも、人のことは言えないだろう。
 「素晴らしい物語だった……」
 普段無表情に近いタバサが、心底感動していることがその声音や頬の赤みからよくわかった。
 「大きなことを為すのに力は必要だが、個人の力だけでは限界があること。
 友や仲間との信頼と絆こそが、ひとりでは到達できない領域へ導いてくれること。
 勇者とは、"悪と戦う正義の味方"なんかじゃなく、自分なりの信念と誇りをもち、大切なものを守るために戦う人が、結果的に勇者(そう)呼ばれるのだということ。
 ──頭では理解していたのかもしれないけど、改めて教えられた気がする」
 やはりタバサの胸にあの3作は響いたようだ。
 「そう。喜んでもらえて幸いだわ。でも、まだ続きがあるのでしょう?」
 「……ある。貴女を友と見込んでお願いしたい」
 「それは、もしかして東方の医療についてかしら? あなたの大切な人が何らかの病にかかっているのね?」
 コックリと頷くタバサ。
 「それに近い。これから話すことは他言無用に願いたい」
 普段はどこか無気力なタバサの、これまで見たことのない真剣な様子に、さすがのルイズもしばし考え込む。
 (あーゆー前フリをしたってことは、やっぱ、こないだあげた本を読んだ結果、決心を固めたってことよねぇ。
 うーーむ、あまりシビアな話に私なんかで応えられるかわかんないけど、その気にさせた責任はとるべきかしら)
 「りょーかい。依頼人の秘密は守るわ。それが、この稼業の掟だから」
 軽口を叩きながらもルイズの目がまっすぐ自分を見ていることを知って、タバサもおもむろに口を開いた。
 「まず、最初に謝っておく。この学院で名乗っている"タバサ"と言うのは偽名。わたしの本当の名前は、シャルロット・エレーヌ・オルレアン……」
 それから彼女は、自分と両親、そして叔父であるガリア国王にまつわる因縁について話し終えた。
 「ん、大体の事情はわかったわ。で、私に頼みたいのは、お母さんに関する治療の手配ね?」
 普通の貴族の子女なら、タバサの身分や他国の王宮の暗部におののき、しばらくは声も出なかったかもしれない。
 だが。このルイズも一応驚きはしたものの、生憎(ゲームの中ではあるが)もっと悲惨な境遇や救われない話の数々を目にしたことがある。
 「ドラッグオンドラグーン」に「バハムートラグーン」、「ライブ ア ライブ」や「FFT」……何気に某社の作品ばかりな気がするのは偶然ということで。
 無論、物語と現実の差異くらいは理解しているが、同時にルイズは王政社会に生きる貴族の娘でもある。
 数多のフィクションで目にした醜い事や汚い事が、このハルケギニアとは無縁の絵空事だとは、毛頭思っていない。
 さらに言えば、日本、いや"地球"という別世界の現状を知ったことで、ルイズの価値観にとって、現在のハルケギニアを席巻するブリミル教とそれに基づく王権は、それほど重いものではなくなっているのだ。
 (そーいう意味では、私もずいぶん汚れたもんよねぇ……)
 幼き日の「純粋無垢な箱入り娘」っぷりを思い返して苦笑する。
 「……頼める?」
 「任せて! と言いたいところだけど、実際に治療するのは私じゃないから絶対とは言えないわね。
 私にできるのは、信頼できる東方のお医者様に、あなたのお母さんを診てくれるよう頼むことくらいかな」
 「それで十分。いつごろ連絡がとれそう?」
 「うーん、運がよければすぐにでも。
 そーだ! 私だけタバサの秘密を知ってるってのはフェアじゃないわね、ウン。
 今から、私の秘密を教えてあげる。でも、あなたのセリフじゃないけど、他言無用でお願いするわ」
 そう言ってルイズは杖を取り出し、すでに何百回と唱えた彼女だけの魔法を発動する。
 「こ、これは……」
 「さ、一緒に来て、タバサ。詳しいことは向こうで説明するから」
 目を見開き固まり気味のタバサの手を引くと、ルイズはいつもの如く"扉"をくぐるのだった。

 扉の出口は、普段と異なり平賀家の自分の部屋に開いておいた。
 「パーちゃくぅ~」
 「ここは?」
 「東方にある私の別宅、ってところかしら。具体的には恋人の才人の家なんだけどね」
 ふだんはほとんど意識していないが、初めてハルケギニアからこちらに訪れた人間には、この室内を見ただけで、異郷の地に来たことが本能的に理解できるのだろう。
 「ポチッとな」
 近くの街灯や平賀家の庭園の灯篭の明かりが窓から差し込んでいるため、真っ暗と言うわけではないが、とりあえずルイズは壁のスイッチを探って蛍光灯をつける。
 魔法学院でもマジックアイテムで夜の光源は確保されているものの、ここまで明るいとは言えない。さすがのタバサも驚いたようだ。
 「お、ルイズ、来てたのか? 今日は遅かったな……って誰?」
 人の気配を感じ取ったのか、隣室の才人がドアから顔を出す。
 「──誰?」
 油断なく身構えながら、タバサもルイズに同じ問いを投げかける。
 「ああ、前に話したことあるでしょ。この人がサイト・ヒラガー。私の恋人よ」
 「恋人兼幼馴染かつ親友ってところかな。で、そっちの子の名前は聞かせてもらえるのか?」
 「ええ。この子は私の魔法学院での友人で……」
 「シャルロット・エレーヌ・オルレアン。よろしく」
 「おぉ、ルイズの友達だけあって貴族っぽい名前だ。俺は平賀才人。ヨロシクな」
 間がいいのか悪いのか。とりあえず、ルイズは才人も引っ張りこんで、まずはタバサに事情を説明することにした。
 彼女がコモンスペル以外に唯一真っ当に使える魔法、"どこでもドア"のこと。
 初めてそれを使った時、偶然この家に来たこと。
 ここが、実は東方、ロバ・アル・カイリエなどではなく、どうやら完全にハルケギニアから見て異世界らしいこと。
 この世界、とくにこの国・日本では、"科学"と呼ばれる魔法とはまったく異なる技術体系が発達していること。
 彼女の姉のカトレアも、その科学から派生した医療技術で救われ、それどころかこちらで才人の兄に嫁いで幸せに暮らしていること……などなど。
 話だけなら信じがたいが、実際にこの部屋にある様々な電化製品などを見せられては、信じないわけにはいかなかった。
 しかし……とタバサは考える。
 逆に考えれば、魔法とは異なる技術であれば、母の心も取り戻せる可能性があるのではないか、と。
 「んー、そうだな。確かに、ウチの病院は精神科もあるし、心身喪失状態の人の治療も、できなくはないだろうけど……」
 腕を組んで難しい表情になる才人。
 「正直、精神の分野については個人差が大きいから、"必ず治せます"とは断言できないと思うぞ。仮に直せてもかなり時間がかかるだろうし」
 魔法みたいに、呪文を唱えてチンカラホイとはいかないと思う、と才人は告げた。
 優秀な医者の兄がすでにいるため、自分は医者になるつもりはない才人だが、門前の小僧なんとやらと言うべきか、それでも最小限の医療関連知識は持っているつもりだ。
 それに照らし合わせてみれば、某セカンドチルドレンの母親のごとく、認識障害を起こしている人の心の治療は、もっとも難しい部類に入るはずだった。
 「時間がかかっても構わない。むしろ、こちらの世界で面倒を見てもらえるだけで、わたしの最大の懸念が消える」
 つまり、ガリア王による母親の殺害という事態は防げるということだろう。
 「ま、ウチの親父に話を通せば、今時「医は仁術」って言葉を本気でモットーにしてる人だから、入院はさせてくれると思うけどな」
 「費用のことなら、何とかする」
 王族資格は剥奪されたものの、屋敷中を探れば多少の金目のものくらい出てくるだろう……と考えるタバサ。
 もっとも、この国において保険の効かない医療費がいかに高価なものになるか、わかる人にはわかるはずだ。
 タバサは後日請求書を見て目の玉が飛び出るような驚きに襲われるハメになるが、それでも平賀院長としては"義娘"の友人ということで随分勉強した金額だったりする。
 「さすがに親父も寝てると思うし、詳しい相談は明日しに行くか」
 「そうね。ちいねえさまの時と言い、おじ様にはご面倒ばかりかけて申し訳ないけど……」
 「あの人はルイズのことも娘同然に思ってるからな。その友達のことでおねだりされても、たいして気にしないと思うぞ。それより問題は、シャルロットちゃんの母さんを連れ出す方法だな」
 3人でいろいろ意見を出し合ったのだが、なかなかいい案が浮かばない。
 ポイントは、「いかにしてルイズがタバサの生家にまで行くか?」なのだ。

 ルイズの「世界扉」は「彼女自身が知っている場所」であればどこにでも開ける。
 だから、ルイズが一度タバサの家に行き、何食わぬ顔で学院に戻ってから、日を改めて平賀家に来て、「世界扉」をタバサの家に対して開けばよいのだ。
 タバサの母をこちらの世界に連れてきさえすれば、ジョゼフ王の魔手はほぼ絶対に届かない。
 しかも、現行犯で目撃されたりしない限り、ルイズが誘拐の片棒を担いだと疑われることも、まずないだろう。
 しかし、その大前提として、ルイズが一度はタバサの家に行く必要がある。これがなかなか厄介だった。
 才人の提案する「日本から持ち込んだゴムボートでこっそりラグドリアン湖をガリア側まで渡る」案も不可能ではないが、わざわざそこまでしてルイズがタバサの家まで行く「必然性」がない。
 ハルケギニアに存在しないゴムボートも、あからさまに目立つだろう。
 魔法学院ではガリア王宮の監視の目はほぼないようだが、逆にいえばタバサの家周辺などは厳重に監視されていると考えて間違いない。
 「うーーん、難しいわねぇ。乗って空を飛べる使い魔とかがいれば別なんだけど」
 魔法学院の使い魔召喚は2年生の進級時に行うことになっている。
 タバサほどの腕前の風系統メイジなら、ワイバーンやグリフォン、マンティコアなど空を飛べる魔獣を使い魔に呼ぶ可能性は高かったが、絶対とも言えない。
 「じゃあ、この際、正攻法だな」
 腕組みして首をひねっていた才人が、何かをあきらめたように言う。
 「一応、念のために確認しとくけど、シャルロットちゃんはルイズのことを友達だと思ってるんだよな?」
 タバサは、間髪入れずにうなずく。
 「もちろん。わたしには勿体ないくらいの友人」
 そこまで言われて、ちょっと照れてるルイズを見ながら、さらに才人は確認する。
 「で、話に聞いてたけど、もうひとりキュルケって子とも仲がいいんだろ。あっちの方も、そう思ってる?」
 「たぶん」「きっと」
 ふたりの答えを聞いて、才人はうなずいた。
 「じゃあ、今度のまとまった休暇の時にでも、シャルロットちゃんが素直にふたりを自宅に招待すればいい。
 ハルケギニアの貴族だって、"新しくできた親しいお友達"を家に招いて親に紹介することって、別段おかしくないよな?」
 あっ、と目を見開くタバサとルイズ。
 「……でも、わたしの家は不名誉印を受けている」
 そんなところに表だって招くのは迷惑ではないか、とタバサは言いたげだが、ルイズはひらひらと手を振った。
 「あ~、別段気に病むことはないわよ。少なくとも私は気にしないし、キュルケだって多分そのはずだろーし」
 「ガリア王宮から聞かれたら、「初めての友達に、秘密にしていた自分の素性を明かし、母に紹介したかった」とでも言えば、ちょっとしたお涙頂戴物語ができるんじゃねぇか?」
 別段、嘘は言ってないわけだし……と続ける才人。
 「まぁ、ダシにされるキュルケさんには少々悪いが、話を聞く限り、その子も事情を知れば納得してくれそうだしな」
 ともあれ、こうしてタバサの母親奪還作戦は着々と細部が詰められていくのだった。

 そして翌朝、ルイズとともに(この家における)彼女の部屋に泊まったタバサは、才人とルイズに連れられ、朝食の席で平賀家の面々に紹介されることとなる。
 いきなりのことで多少は驚いたものの、ルイズのことを娘同然に思っている平賀夫妻は、もちろん「娘が連れてきた初めての学校の友達」に喜んだ。
 (以前にアンリエッタは、素性を隠し「遠縁の親戚」として紹介したことはあったのだが)
 もっとも、そのあと書斎でくつろぐ父・明人に、才人達がタバサの母のことを相談したときは、流石にひと悶着あった。
 ……と言っても、明人がタバサの母の受け入れに難色を示したわけではない。 若いころは国連のボランティア活動で海外派遣に志願した経験もある平賀院長は、「医者として救える人は、極力救う」信念の持ち主だ。
 幸か不幸かカトレアの入院時で経験?を積んでいたこともあり、特別室に女性ひとりくらい匿うことは訳はない。
 ただ、才人と同様明人も、精神の疾患に関しては現代医学の力をもってしても治療の可能性は必ずしも高くないことを、タバサに釘を刺す。
 「無論、母君を患者としてお預かりした以上、我々の全力を尽くそう。ただ、悔しいことだが、絶対治す……と言えない私の不明を許してもらえるだろうか」
 タバサはむしろ感動していた。
 "娘"の友人とはいえ、初対面の実質赤の他人に対して、ここまで真摯に対応してくれるとは。
 久しく流したことがない熱いものが瞳の奥を潤すのを感じながら、彼女はただコクコクと頷くのだった。

 さて、それからの日々だが……じつのところ、しばらくはルイズと才人の生活に大した変化はなかった。
 ルイズは相変わらず教師の前では優等生を演じつつ、暇を見ては平賀家(正確には才人の部屋)に入り浸って、ノンビリダラダラしたり、ゲームやアニメに夢中になったり、ごくまれに恋人とイチャイチャしたり。
 才人のほうは、武術の達人である母方の祖父にしごかれたり、冬コミに向けてマンガを描いたり、友人の誘いでデパートのヒーローショーの怪人のバイトをしたり、そのバイト代で念願のバイクを買ったり。
 さらには、平賀家に来るとプチニートになるルイズに飯を作ったり、ルイズとゲームで対戦したり、たまにルイズを誘って出かけても、彼女の希望でゲーセンと書店のハシゴさせられたりと、なかなか難儀してたりする。
 タバサについても、表面上大きな変化はない。
 ただ、心なしか表情に余裕ができた(気づいたのはルイズとキュルケくらいだが)のと、余暇の時間の大半を日本から持ってきた本を読んで過ごすようになったくらいか。
 その本も、以前ルイズが渡したような漫画や小説ではなく、日本の小学生の教科書に始まり、中学の理科、さらには高校の生物・化学の参考書へと、少しずつランクアップしている。
 どうやら、将来的には日本の医学を学びたいらしい。
 「タバサは真面目ねー」
 熱心にそれらのテキストを読みふける彼女に感心するルイズ。
 「あなたは……」
 「ん?」
 「ルイズは、将来、どうするつもり?」
 漠然とした問いだが、ルイズにはタバサの聞きたいことが理解できた。
 「うーん、そうねぇ……たとえば、私のこの力を利用して、ハルケギニアに一気に産業革命を起こすことも不可能ではないかもしれないけど、とりあえずそーいうのはパス」
 あくまで個人レベルでの文物のやりとりくらいならいいが、社会の構造に根本的に干渉するような真似はしたくないのだ、と告げる。
 「なぜ?」
 「ブッチャけて言えば、それってカンニングだから」
 日本……いや地球には地球なりの文化と歴史があり、それらを踏まえたうえで、現在の姿がある。
 それなのに、ハルケギニアがそこに至る苦労もわからずに成果だけ横取りするのは、やっぱりズルだと思うのだ。
 「まあ、それでも、これが異世界なんかじゃなくて、たとえば本当に聖地の向こうの東方での出来事だったなら、改革を促すのもやぶさかじゃないけどね」
 しかし、地球とハルケギニアは、実際にはルイズというイレギュラーで奇跡的に繋がっただけの歪な関係だ。
 「それとなく啓蒙の種を撒くくらいはしてもいいけど、少なくとも私が急進的な改革の音頭をとろうとは思わないかな」
 「しかし……」
 絶対王政と魔法偏重主義による不条理の犠牲者とも言えるタバサは、納得がいかないようだ。
 「ふむ。でもね、こう見えて私もこれまで色々考えたのよ?」
 公爵家に生まれながら、いまだ系統魔法をまともに使えぬルイズもまた、ハルケギニアの魔法偏重社会には、言いたいことのふたつやみっつはある。
 貴族制度を放棄して久しい日本の繁栄を見るにつけ、トリステインをそういう社会構造にできればと夢見たことがないわけではない。だが……。
 「難解な実用書をいっぱい読んでるタバサほどじゃないけど、私もこれで結構向こうの歴史書とか紐解いてみたのよ?」
 とくに300年近く鎖国を続けた後、いきなり開国。そして明治になって急速に西洋文化の洗礼にさらされた日本と言う国の近代史は、非常に参考になったと言う。
 「で、私が得た結論としては、"外"や"上"から無理に押し付けられた改革は、結局社会に大きな歪みをもたらす、ってことカナ」
 明治維新期とか、第二次大戦の前後とか、70年代の学生運動とか、物騒極まりないしねー、と結ぶ。
 「てなワケで。私はこちらじゃ一貴族の三女、あちらじゃヲタク文化かぶれの外人娘として、可能な限り日々是安穏と暮らしていく所存なわけです」
 いや、ルイズさん、そこの熟語違う! 正しくは「日々是好日」、「毎日を一生懸命に生きていきましょう」くらいの意味ですから。
 しかしながら、禅語の解釈なんぞ知らないタバサは、ふぅんと感心したように聞いている。
 「では、もっと端的なことを聞く。ルイズは卒業したら、どっちで暮らす?」
 数多の物語を知り、また母の身柄をあちらに移すことを計画している現在のタバサは、状況が許せば日本に移住してもよいと考えている。
 無論、ガリア王に対する復讐心が消えたわけではない。
 それでも、世界で一番大事な母の身と天秤にかければ、母の方がずっと重い。
 首尾よく母の心が正常に戻れば、とりあえず復讐のことは忘れて、あちらで母と暮らしてもいいかもしれない。
 よって、参考までにルイズの意見も聞いておきたかったのだ。
 「うん、そこなのよね、問題は」
 珍しく憂鬱そうな顔で、溜息をつくルイズ。
 「私が無事な限りは、こちらとあちらの行き来はほぼ自由なわけだし、その意味ではどちらに住んでも問題ないわ。
 実際、ちぃねえさまはあちらで礼人義兄さんと暮らしているし、エレオノール姉さまはこちらで結婚して旦那さんが公爵家を継ぐわけだしね。
 姉様ふたりと同様、私の恋人も向こうの人間だから、どちらも選択肢には入ってるのよねぇ。
 才人のことは子供のころからよく知ってるし、大好きだし、将来一緒になることに異存はないけど、彼に甲斐性があるかって言うと、イマイチ疑問かしら」
 一部ノロケが混じっているとははいえ、何気にヒドい言い草である。日本にいるときは、部屋の掃除からお茶菓子の給仕、さらには夜食の用意まで、彼に頼ってるクセに。
 「そうねぇ、魔法学院に在籍してるあいだに系統魔法がモノにならなければ、こっちでの栄達はスッパリ諦めて、日本に行くわ。逆に、それなりに魔法の腕が上がったら、サイトにこちらに来てくれるよう説得してみる」
 トリステインはガリアと並ぶ魔法偏重国家だから、確かに魔法が下手だと、貴族社会では肩身が狭かろう。ある意味、現実的な妥協点とも言えた。
 「そう……わかった」
 とりあえずはタバサも納得したようだ
 「あら、何の話?」
 席を外していたキュルケが戻ってきたようだ。
 「えーと……」
 「彼氏の甲斐性と新居を建てる場所の関係」
 いや、タバサさん、間違ってはいないけど、はしょり過ぎです。
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以上。次回は、とりあえずの「第一部・完」を迎えます。
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テーマ : 二次創作
ジャンル : 小説・文学

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KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
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