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『歳神様の暇潰しッ!』

 いつもの支援所に投下した短編。私がよく書く「主人公でなくその相方がTSして、主人公とらぶらぶで結ばれる」タイプの話ですね。


『歳神様の暇潰しッ!』

 「う~、便所便所」
 今、初詣先の神社でトイレを求めてウロウロしている俺は、公立高校に通うごく一般的な高校2年生の男子、天野蔵人(あまの・くらんど)。
 強いて人と違うところをあげるとすれば、TS系のマンガや小説が大好物ってことかな。
 ──そんなわけで参道の脇にあるトイレにやって来たのだ!
 元旦とあって神社内はそれなりに混雑してるんだけど、幸い女子と違って男子の方は割合空いていて、すぐに個室に入ることができた(そうだよ、大きい方だよ、別に神社で糞したっていいだろ!)。

 古い神社の割には比較的大きくて新しめなトイレの扉を開けると……。
 「あけおめっス、クラっち!」
 中には、短パンとアロハ着たオレと同い年くらいの、いかにもチャラい系な日焼け男が入っていて、いい笑顔でサムズアップしてきたのだ。

 ──はァ? ワケわからないんだけど。
 (まさか、正月からク●ミソな展開? ココはハ●テンバだったのか!?)
 混乱して後ずさりしたところで、ふと自分が、トイレとは思えない和風なお屋敷の板貼りの廊下らしきところに立ってることに気付く。
 「な、なんだコレ!?」
 「あ、ソコんとこはオレっちから説明するっス!」

 今年の干支の歳神クビラだと自称するチャラ男の説明によれば、俺は「新春特別イベント・初夢ドリームジャンボお年玉企画!!」と題する神様による悪ふざけの対象に、全日本人からの抽選で選ばれたらしい。
 信じ難いというかあまり信じたくないけど、あの一瞬で神社のトイレからこんなお屋敷に連れて来られた(というかワープした?)んだから、少なくとも超常的な力の持ち主であることは確かだろう。

 仕方なくクビラとやらのあとについて座敷に行くと、そこにはコスプレまがいな恰好をした神様(?)達が11柱(神の場合は確かこう数えるはず)待ち受けていた。
 話の流れからして、たぶんクビラの同僚の干支神様ってとこか。

 「ふむ。存外、落ち着いておられますな、蔵人殿」
 ここまで来たら焦っても仕方ないって開き直りだけどねー。ちなみに、お姉さんのお名前はうかがっても?
 「む、これは失礼。拙者、戌の歳神バサラと申す者。お見知りおき願いたい」
 バサラさんは、なんていうか……侍娘? 長い黒髪をいわゆるサムライポニテに結い、某大正桜ゲーのヒロインかスマホゲーの女体化沖田総司みたいな桃色の振袖&袴を着て、腰に大小2本の刀を下げてる。
 「あ、えっと、ご存じのようですが、天野蔵人です。よろしくお願いします」
 慌てて俺もペコリと頭を下げる。

 「ふむふむ。なかなかに礼儀正しい少年のようじゃな」
 こちらは某ヨ●ダか天秤座の老師をリアル化したみたいな、好々爺といった雰囲気のちんまいご老人。
 「儂は辰の歳神ハジラじゃ。短いつきあいじゃろうが、ま、よろしく頼むわい」

 このふたりを皮切りに他の9柱もワラワラやって来て、挨拶を交わすことになった。
 いかにも体育会系な感じの青年とか中学生くらいの眼鏡っ子、やたらテンションの高いアキバ系、おミズな感じの美女などなど、外見も性格もバラバラだけど、不思議と風格めいたモノがあって、神様ってのも納得がいく。

 「ちょっとー、今年の司会はオレっちなんスから、めいめい勝手にクラっちに話しかけるのは止めてほしいっス!」
 こんな大勢の人(神?)に囲まれて口々に話しかけられるなんて経験は皆無だからあわあわしてたら、クビラが助け舟を出してくれた。
 「ふぅ、助かったよ。それじゃあ、この企画とやらの詳細を教えてもらえないかな?」
 「了解っス!」

 クビラいわく、彼を中心に他の歳神の面々も協力して考えた色んな「TSシチュエーション」のうちのどれかひとつを、なんと俺に体験させてくれるらしい。

 「──もしかして、俺の性癖(シュミ)のこと、知ってる?」
 「神様っスから!」
 ニカッといい笑顔でサムズアップするんぢゃない! 
 野郎(おとこ)だけならまだしも、この場には女神(じょせい)陣もいるのに、そんなモン暴露すんなよ~。

 「大丈夫やで、クラっちゃん。ウチらこう見えても神様やさかい、人間の欲望なんて、よっぽど邪悪なモンでもない限り慣れっこや」
 30代半ばの「大阪のオバちゃん」的アトモスフィアを漂わせている子の歳神ビカラさんがそう言ってくれるが、それはそれで、隠してたエロ本が母親に見つかって机の上に置かれているみたいでツラい。

 「まぁまぁ、天野氏(うじ)、ここは些細なコトに拘泥せず、もっと前向きに己れの欲望を短弓すべき場面では?」
 80年代のステレオタイプなオタクを具現化したような雰囲気の酉の歳神メキラさんの言ってることは、確かに正しいが、コレきっと「自分(ぼく)の考えた最強のTSシチュ」を実際に観たいだけだよなぁ。

 「あ、ちなみに、残念ながらビカラとシンダラとインダラ、それにサンチラの提案したシチュエーションは外させてもらったっス」
 ちょっと色々問題があったんで……と断りを入れるクビラ。

 「ありゃ、残念」
 「なん、だと。ワシの提案したネコミミ娘ならぬ虎娘化のどこが悪いと言うのだ!?」
 ビカラさんはあっさり引き下がったけど、筋肉質な巨漢の寅の祭神シンダラさんが鼻息荒く抗議している。

 「いや、あくまでこの地球というか現代日本が舞台なんで、ケモミミ娘とかの人外は無理っスよ。同じ理由で、インダラのラミア化もサンチラのケンタウロス化も却下っス」
 「あらあら、最近はアニメとかでモン娘系が流行ってるんじゃないの~?」
 「僕もそういう話を聞いたから考えてみたんだけど」
 巳の歳神インダラさんは、けだるげな雰囲気の20代半ばの美女、午の歳神サンチラさんは明るく真面目な好青年といった趣きなのに、提案はすごくニッチだ。恐るべしクールジャパンのオタクカルチャー汚染!

 「──ところで、ビカラさんの提案したのってどんなシチュなの?」
 好奇心に負けて、こっそりクビラに聞いてみたところ……。
 「いきなり妊婦、それも三つ子を妊娠している状態っス。さすがに女性化初心者にはハードル高過ぎるって意見が他の女神陣からも出たんで」
 納得。たしかにソレは俺的にもハードル高いよ。

 ともあれ、11の提案のうち、前述の4つを除いて用意されたのは以下の7つみたいだ。

(1)北海道の牧場で暮らすカントリーガールの一日
 提案者は丑神ショウトラ。想定年齢は19歳で「高校卒業後、大学には行かずに実家の牧場を手伝っている女の子」という設定らしい。
 「ちょっと芋っぽい……もとい素朴で明朗快活な女性が時折見せる健康的なお色気がポイント。無自覚に揺れる大きな胸に注がれる、男性からの視線にも要注意」とのこと。

(2)高級バニーガールの馴染み客とのひと時
 提案者は卯神マコラ。想定年齢は24歳で「短大卒業後、一時はOLしていたもののすぐに辞め、夜の世界に飛び込んだ」という設定だ。
 「美貌や手管に自信があり、店でも1、2を争う人気者だが、反面いつまでもこの仕事を続けられないことは理解していて、ちょっと弱気になったところを馴染みの客に優しくされてクラッときてる」んだそうな。

(3)チャイナドレス姿の格闘家の敗北
 提案者は辰神ハジラ。想定年齢は18歳で「武門の生まれで自らも功夫に自信を持っていた少女が、その鼻柱を折られ、ついでに純潔も失う」といういわゆる“くっころ”的展開みたいだな。
 老師いわく「腕は立つが女好きな敵に無理やり散らされるもよし、「強い殿方に操を捧げます」と恥じらいつつ自ら身体を開くのもよし、お好みのストーリーに持っていくがよかろう」だってさ。

(4)おっとりふわふわお姉様、妹分とベッドイン
 提案者は未神マジラ。想定年齢は21歳の女子大生で「小学校から大学までずっと女子校育ちで百合っ気のある女性が、お気に入りの後輩と一線を越える」という設定のようだ。
 「今まで軽いスキンシップ(胸揉みや頬にキス)くらいはしてたものの、本格的には手を出してなかった1学下の可愛い後輩ちゃんとの、女同士の初めての熱い夜に乞うご期待!」って、マジラさんノリノリですね。

(5)貴方と私と図書館の秘め事
 提案者は申神アンチラ。想定年齢は17歳の女子高生で「目立たない文学少女が同じ図書委員の先輩と交流を深めてていくなか、少しずつ彼のことを意識し始める正統派ラブストーリー」なんだとか。
 「他のシチュエーションに比べて特異さ・派手さはないが、そのぶん“ごく普通の(ちょっと可愛い)女の子”としての日常生活を、ひと月ほどにわたって長く楽しめるのが利点」か。それはそれで有りかも。

(6)魔法少女スカーレット、危機一髪!
 提案者は酉神メキラ。想定年齢は13歳(変身時は15歳)のJCで「聖なる鳥神ラキーメ様から授かった不思議な手鏡の力で変身し、魔物と戦う巫女風魔法少女の物語」って、ある意味“王道”だな。
 「連戦連勝だったスカーレットだが、蛸型魔人テンタクルンとの戦いで苦戦。その触手に拘束されてしまう。魔人の淫靡な責めに無垢なる少女は果たしてどこまで耐えられるのか?」……って、モロにエロゲだよ、これ!

(7)夜の作法の伝授もメイドの務め
 提案者は戌神バサラ。想定年齢は18歳のメイドさんで「大富豪である乾家に仕える主人公が、思春期になったばかりの坊ちゃんに秘密のレッスン」か。いわゆる“おねショタ”的流れみたいだな。
 「幼い頃から「ねぇや」と慕ってくれ、自分も憎からず思っていた少年に、自らの身体を使って性の手解きをすることになり、羞恥と欲望の狭間で葛藤するメイド娘の愛情に満ちた“ご奉仕”」うむ、これも捨て難いな。

 「さぁ、クラっち、どれを選ぶっスか? 心配しなくても、今回のは体験版だから、シチュエーションをひと通り堪能したら、ちゃんとここに戻って来れるっスよ」
 クビラに促されて、俺はその中のひとつを選ぼうとした。
 「あ、ちなみに、体験中に「もうずっとこのままでいいや」と思ったら、そのまま“状況”が固定されるから注意っス!」
 なにそれこわい。
 いや、でも、一時的にTSを経験できるなんて、こんな機会はそうそうないだろうしなぁ。

 そして俺は……。

【(8)どれも選ばない】
 ※本来1~7の結末をすべて見た後にのみ現れる隠し選択肢

 「……いや、せっかく考えてくれたのに申し訳ないんだけど、どれも選ぶつもりはないよ」
 「あちゃ~、気に入らなかったっスか、クラっち? 結構いいセンいってるって思ったんスけど」
 頭をかくクビラに対して、俺は肩をすくめた。
 「確かに、結構萌えるシチュエーションが揃ってて、甲乙つけ難いとは思うけど、ひとつ……いやふたつ問題があるんだな、これが」
 「ほほぅ、教えてもらえるかな、少年?」
 ハジラ老がニヤリと笑うが、たぶん、この神様(ひと)は気付いてそうだなぁ。

 「ひとつは、TSする“過程”がトバされてたこと。いや、意図はわかるんだけどね」
 そもそも男の俺が、用意された7つのシチュの中では女主人公になってるワケだから、それは即ちTSしたってことなんだろうけど……。
 生粋のTSファンとしては、男から女へと変わる経緯自体も重要(あるいは人によってはソレこそが一番の目的)だったりするからなぁ。

 「もっとも、その点については脳内補完することもできるだろうけど、もうひとつ個人的なこだわりがあってさぁ」
 「ふむふむ、確かにこだわりは大事ですぞい。教えてもらっても?」
 ヲタっぽいメキラ氏の賛同を得られたのは、良いのか悪いのか。

 「ま、簡単に言うと──俺、自分がTSするんじゃなくて、TSした子を恋人にしたいタイプなんだ」
 TS物の漫画にせよ小説にせよエロゲーにせよ、主人公(じぶん)がTSするパターンが圧倒的に多いのは確かだ。
 でも、俺としては「TSした元男の親友or幼馴染ポジにいて、徐々にその子と親しくなり、ゴールインする」タイプの話が大好物なんだよなぁ。

 「あらら~、それはそれで業が深いわね、坊や♪」
 インダラさんがクスクス笑っているが、言葉と裏腹に嫌悪感等は持ってない
様子だ。
 見れば、他の干支神様陣も「なるほどなー」という顔つきで、ドン引きしてないのは正直助かる。
 「なので、残念ですが、今回はご縁がなかったとゆーことで」 
 そういうわけで、そろそろ現実(もと)に戻してもらえると有難いんだけどなー……とか思ってたんだが。

 「そやったら、クーちゃん、今回の企画の首謀者はアンタなんやさかい、アンタがセキニンとらんといかんのちゃう?」
 ビカラさんが世話焼きおばちゃんモード全開で、そんなコトを言い出した。
 「うむ」「おぉ」「確かに」「一理ある」
 見れば、クビラ以外の全員がその言葉に賛成してる。

 「え、マジっスか!? いや、オレっち、今年の歳神なんスけど」
 「分霊を作ればよろしかろう。なに、いささかイレギュラーな事態ゆえ拙者達も力を貸すのはやぶさかではありせぬ故」
 頼みの綱ともいえる委員長気質なバサラさんにまでそう言われてしまっては、クビラとしては反論する術はないらしい。

 「はぁ~、仕方ないっスね。ニーズの事前調査を怠ったオレっちのポカっスから」
 軽くため息をつくと、この(チャラそうな見かけに反してお人好しな)猪神様は、覚悟決めたのか俺の方に向き直った。
 「そーゆーわけっすから、ご希望に沿うシチュはオレっちが責任をもってお届けするんで、安心してほしいっス!」

 え? 何? どーいうこと?
 いや、多分、話の流れからして、「俺とTS娘がラブコメする」みたいなシチュエーションを体験させてくれるんだろうけど。

 「それでは……光になれぇーーー!!」
 「へげっ!?」
 どこからかともなくクビラが取り出した、某新宿スイーパーの相方が愛用してそうな100トンハンマーまがいの木槌(?)で、俺はそれこそギャグマンガみたく空高く打ち出される。
 痛みはないものの、すさまじい衝撃とGに脳をシェイクされ、気が遠くなった俺は、ついに意識を手放したのだった。

 ……
 …………
 ………………

 「──ヘンな初夢だなぁ、おい」
 元旦の夜、自宅のこたつでそのまま眠っちまった俺は、1月2日の朝、とくに変わったこともなく(まぁ、突っ伏した姿勢だったんで、ちょっと背中が痛いけど)目を覚ました。

 『蔵人へ 朝ごはんは適当におせちの残りとかを食べときなさい 母より』
 『兄へ いくら起こしても起きないから、年始回りには置いていきまーす。おにーちゃんの分までお年玉、ゲットだぜ! 可愛い美悠ちゃんより』
 こたつの上には2枚、母さんと妹の美悠のメモが残してあった。

 「な!? クソッ、まずった」
 朝飯はどうでもいいが、貴重なお年玉を回収できる機会を逃すとは、蔵人一生の不覚!
 まぁ、仕方ない。ちょいと腹も減ったし、電子レンジで餅でも焼くか……と思って立ち上がったところで、玄関のチャイムが鳴った。

 『クラっちー、遊びに来たっスよー』
 玄関の方からは、「聞き覚えのない/でも聞き慣れた気がする」女の子の大きな声が聞こえてくる。
 「??」
 こんな正月早々にウチを尋ねて来るような女の子に心当たりないんだけど。

 恐る恐るドアを開けて外を見ると、玄関の前には、この寒い季節に見事な小麦色に日焼けした肌の、俺と同い年くらいの少女がニコニコ笑いながら立っていた。
 ツインテールにした銀灰色の髪と大きな翠色の瞳、そして何より片方だけでも小さなメロンほどもある胸(オッパイ)が印象的な子で、顔立ちも結構かわいい。
 ウチの学校の女子制服を着て、こっちに向かって小さくピースなんてしてるけど……。
 (え、こんな知り合いいたっけ?)

 「えーと…………どちらさん?」
 恐る恐る聞き返すと、相手は呆れたような溜息をつく。
 「え、なに、それ。記憶喪失の真似? クラっちセンスないっスよ」
 やれやれと肩をすくめるその子の顔を見ていると、唐突に俺の中に“彼女”記憶が「蘇って」きた。
 ──そうだ、この子の名前は猪熊羅美(いのくま・らみ)。ウチの斜め向かいにある猪熊さんちのひとり娘で、俺とは幼稚園に入る前からの幼馴染。今は小学校以来通算5回目のクラスメイトでもある。

 「あ、あぁ、すまん。起きたばっかりで、ちょっと寝ぼけてた。良かったら上がれよ」
 俺は彼女を自宅に招き入れる。
 「あざーっス。それじゃお邪魔するっス!」
 なにせ物心ついたときからのいわゆる“竹馬の友”だ。互いの家を行き来したことは数えきれないほどあるし、勝手知ったる他人の家という感じで平然と入って来る。

 いや、幼馴染(それ)だけじゃなくて……。
 「それにしても、クラっちも薄情っスよ。元旦に、こーんな可愛い彼女を置いて、ひとりで初詣に行くなんて」
 そう、長年の腐れ縁、友達以上ガール/ボーイフレンド未満な関係だった俺達だが、昨年12月の半ばくらいについにソレを脱して、正式に恋人同士になったんだ。

 そうなるに至った経過は──あんまりカッコいいもんでもない。
 俺が「今年のクリスマスも独り身かぁ。ハハッ!」と黄昏ていたのを見かねて、ラビ(羅美の愛称だ)の方から「もしよかったらアタシと付き合うっスよ!」申し出てくれたのだ。
 正直、男としては情けないかもしんない。

 けどまぁ、その経緯はともかく、中学に入った頃からお互い多少なりとも意識はしてたんで、正直コイツと恋人になれて嬉しいのは確かだ。
 見ての通りギャルっぽい見かけだけど、髪や眼の色は外国人だった祖母譲りで、褐色肌は陸上部の部活に熱心に出てるせいだ。意外に根は真面目で優しいし、成績なんか俺より良かったりする。
 え? 「しゃべり方がチャラい」? うん、まぁ、ソレは地だけどさ。


 「いや、でも、お前んち、昨日は年始回りで出かけてたじゃん」
 「なら、今日まで待ってくれても良かったっしょ」
 ああ、うん、それは確かに。どうせなら晴れ着姿の可愛い彼女とイチャイチャしながら神社に行く方が、ひとりわびしくお参りするより1000倍いいはずなのに。
 (俺、なんでわざわざひとりで出かけたんだろ?)

 内心、首を傾げつつ、コタツに入──ろうとしたところで、ラビが背中から抱きついてきた。
 「今日はオジさんオバさんやミユちゃんは出かけてるんスよね?」
 「お、おぅ。そうだな。親戚んちへの年始回りだから、夕方くらいまでは帰って来ないと思うぞ」
 ポヨンと背中に当たる柔らか嬉しい感触に内心ニヤケつつ、努めて冷静を装う俺。
 「だったら……ほらぁ」
 「──いいのか? いや、俺としてはメチャ嬉しいけど」
 去年のクリスマスに初めて“結ばれ”て以来、「そういうコト」をする機会がなかったんで、実はちょっと溜まってるのも事実だ(ちなみにラビは処女だった。彼女が処女ビッチとか最高かよ!)。

 「アタシだって──女の子だって、好きなヒトとはシたくなるんスよ?」
 切ない響きの声に振り返ると、そこには瞳を潤ませ、頬を上気させたラビの姿が……。
 「ふぉーーーーーッ!!!」「きゃあ♪」

 ………………
 …………
 ……

 その後、“姫はじめ”で腹ペコ状態からさらエネルギーを消耗し、終わったあとヘロヘロになったり、見かねて彼女が作ってくれた手料理を感激しつつ平らげたりはしたものの、おおよそは平和な新春二日目となった。

 「なぁ、明日はふたりで近くの金毘羅神社にお参りに行こうぜ」
 こたつに差し向かいで入り、正月テレビを観ながらまったりしつつ、俺はラビに話しかけた。
 「あ~、いいっスね~……(“みんな”にも報告しときたいし)」
 「ん? なんか言ったか?」
 「いーえ、なんにも♪ あ、やっぱ晴れ着は着たほうがいいっスか?」
 「ぜひ頼む!」
 そして、その後、家に帰って来たら……でへへ。
 「……言っとくけど、アタシはひとりで着付けはできないから、脱がせたらウチのママンにバレバレっスよ?」
 「なななな、何の事かね、羅美クン?」

-CONGRATULATION,TrueEnd CLEAR!-


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 一見、選択肢制と見せかけて、最初から隠しトゥルールートをメインに考えてました。このあと1年間、蔵人くんは可愛い彼女に恵まれた幸せな日々を過ごすことでしょう。で、その間に「ぼかぁ、幸せだなぁ……この幸せがずっと続けばいいのに」なんて1回でも考えたら、そこで「“状況”が固定され」、以後はずっとこんなラブイチャライフが続くという罠。いや、罠じゃなくて楽園という説もありますが。
 なお、支援所の方でもツッこまれてますが、これだと蔵人くんはラビちゃんがTSキャラだということに気付いてないんですよね。
 本当は↓のような文章をどこかに入れようかとも思ったんですが。

「もっとも、それもある意味、仕方はない。今はどっからどう見ても女子高生してるコイツも、小学6年の夏までは普通に男子だったんだ。
 そう、男から女に変わる、いわゆるTS病ってヤツ。名前だけは有名だけど、実際の発病率は100万人にひとりぐらいで、そうそうお目にかかるわけではない希少な病気に、何の因果かかかっちまったんだ。
 不幸中の幸いは、ギリギリ小学生だったんで、男子から女子へのライフスタイルの切り替えが、比較的うまくいったことかね。
 本人の能天気な気性もあって、それほど深刻な事態にはならなかったけど、それでもやっぱり一時は少々ふさぎこんだりはしてたし、俺も幼馴染な親友としてできるだけ気遣いはしたつもりだ……たぶん。
 とは言え、それからすでに5年が過ぎ、多少はあけっぴろげでボーイッシュなところはあれど、今のコイツは外見も中身もまるっきり女の子だし、その事が話題に出ることはほぼない。」

 ↑うまくハマるところがなくてお蔵入りにしました。
 ちなみに、各歳神様たちの考えたTSシチュも、それなりに心惹かれるものではあるのですが、ちょっと書く気力が足りてません。(3)か(7)あたりは、大筋の構想はないでもないんですけどね。
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Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
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