2012年03月29日

第一章 魔女狩り編 その17     裏

〜side エヴァンジェリン〜







「さっさと魔女達のもとへ案内してもらおうか。」

口調や雰囲気が一気に変わると、聖職者達は顔を青く染めながら先行していった。

あの、プライドだけは高い聖職者が、文句も言ういことなく、怯えて従っていたのだ。

「本当に、貴様は何者なんだ?」

「まぁ〜、詳しくは後でね。

置いて行かれちゃ困るから、一緒に行こうか。」

そう言うと、奴は私の手を握りそのまま付いて行くのであった。

というより、手など繋ぐな!
子供じゃあるまいし。
しかも、これでは悪の吸血鬼としてかっこつかんではないか!

そんな事を考えながらも、文句も言わず付いて行ってしまった。

コイツの方が、よっぽど人心を惑わす魔女らしいではないか。





とりあえず、コイツの目的は魔女達の開放らしくと言う事が分かった。
何があったのかは分からぬが、聖職者達の異常までの怯えのため、そのあたりはすぐに達成できた。

だが

「お前達が奪って来た財産を全て寄こせ」

この要求はうまくはいかなかった。

いや、とりあえず聖職者は怯えていたため、それなりの金品は持ってはきた。
だが、本当に"それなり"なのだ。

相手に、"とりあえず納得しておこう"っと思わせるぐらいの、非常にイヤらしいぐらいしか持ってこないのだ。
聖職者などよりも商人の方が向いているのではないか?

だが未だに手を離さない、この男の方がよっぽど上であった。

「ところで、右の扉には何があるんだ?」

と聞けば、膨大な紙幣が見つかり。

「こちら側には、地下はないのか?」

と尋ねれば、高級なワインの保存庫を探し当て。
さらには

「随分と広い庭だな。
何のために、こんな広さが必要なんだ?」

言うと、その真下からとんでもな量の金品が出てきたりと

この男には誰も敵(かな)わないと、見せつけられた。

優しく、狡猾で圧倒的な存在…。

知れば知るほど分からなくなる。
そんな不思議な魅力の持ち主。

とりあえず、分かった事は
こやつには人たらしの才があるという事だ。
未だに繋がっている手が、それを証明していた。



〜side 民衆A〜




「全部は持っていけないからな
コレぐらいは渡しておこう。」

あの方は、言うと大金をオレに渡した。

「コレを使って
まぁ〜、飢えている人でも助けてやれ。」

あぁ〜、なんと言う事だろう。
アガペー、無償の愛を受けるのは親以来の事かもしれない。

しかも、この方はこの街にいる全員にその愛を与えたのだ。

「後はそうだな。
街に汚物をそのまま捨てるのはやめさせろ。

畑にでも埋めておけば、作物も育てやすくなるからそのようにしろ。
そうすれば、病気も減るしな。

あとは、ジャガイモだ。
ありゃ、見た目は不格好だけど飢餓には苦しむ事がなくなるからな。
育てていて損はないぞ。

ただ、芽には毒があるから気を付けるようにな。」

初めは、ただただ怖ろしく感じた彼だが
今は、そうではなかった。

確かに巨大な力はあるに違いなかったが、怖ろしい対象とはなり得なかった。

1人でも刃向かえば、黒死病を流行らせるなどと言ったわりに
散々神父が刃向かったにも関わらず、オレ達の心配をするだけで、天罰を下そうとはしなかった。

だが、初めの恐怖を忘れたワケではなかった。
オレ達を戒めるための、あの恐怖。

あの方は伝えたかったのではないだろうか?
周りに流されるだけではなく、自分をしっかりと持てと。

「魔女狩りはもうするなよ。」

それだけ言うと、あの方は去ってしまった。

オレは、その大きすぎる愛に包まれ、涙をこらえるのに必死で
頷き、礼をするしかなかったのだ。

他の者たちもそうだった様で、中には泣いている者すらいた。

ジャガイモ。
どのような物かは分からなかったが、あの方が言ったのだから、それさえあれば飢餓で苦しむ事もなくなるのだろう。
だが、その前にやらなければならない事が多くあった。

もう、オレは学んだのだ。
領主や聖職者など関係がなかった。

無駄な争いが起きない様に、ある程度は機嫌をとるが、それ以上の必要はあるまい。

それよりも、オレ達がオレ達でこの街を良くしなくてはいけないんだと。

ココに住む者、全員がココにはいた。
つまり、あの方の巨大な愛は全員へと伝わったのだ。

それは、我々の結束を強くしたに違いなかった。

ココにいる全員
さらに後ろにはあの方もいるのだ。
怖いものは何もなかった。


皆が期待する中、オレは口を開いた。









「とりあえず、汚物について考えようか。」


posted by まどろみ at 06:34| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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