2012年03月29日

第二章 革命編    その14     裏

〜side 男〜







「起きている時はあんなにも大人びているっていうのに
寝顔は可愛いんだな。」

布団から出てしまった手をしまった。

12,3才くらいかな?

こんなにも、身体が小さいこの子がオレ達のために毎日のように奔走した。

オレ達を助けるために奔走し、この村で暮らせる様に必死になり、そして家を作るために駆け回った。

こんな小さな身体で、オレ達の無責任な期待を背負って頑張ってくれたんだ。

本当に、凄い子だと思う。

でも、それ以上に子供に全てを押しつけてしまった自分が情けなかった。

「オレも、頑張らなくちゃいけないな…。」

さて、そろそろオレも寝ようとするかな。

毛布に手を伸ばすと

「うっ、うぅ…。」

小さなうめき声が聞こえてきたのだった。

暗くなっている中、ゆっくりと響くうめき声。
ビクビクしながらその音源を捜すと、それは徹から漏れているようで…。

慌てて顔を覗き込むと、先ほどの穏やかな寝顔とは違う、苦しげな表情で彼はうめいていたのだ。

悪夢でも見ているのだろうか?
彼の額からは汗が流れ出ている。

そんな彼の様子を見て頭をよぎる2人の女性。



『おい、もし徹に何かあってみろ。
私が直々に貴様をくびり殺してやるぞ。』

『徹様に関して、何かあればすぐに教えてください。
もし、怠れば…クスッ。』



2人の言葉を思い出し、オレの額からもイヤな汗が大量に流れ出す。

「たたたたた、大変だ!!!」

少しでも早く2人に教えないと、とんでもない事になる!!

慌てて、部屋の扉を開け放ち
女性用の部屋へと乗り込んだ。

まず視界に入ったのは白い肌…。

男として、喜ぶべき状況なのかもしれないが
いかんせん、背筋から大量の冷や汗が出てくるだけで、とてもじゃないがそんな余裕はなかった。

「くっくくくく。

とりあえず、死んでおくか?」

「ダメですよ。エヴァちゃん。

殺しては苦痛が半減してしまいます。」

笑顔を浮かべながらジワリジワリと迫ってくる、恐怖…。
しかも、彼女ら2人だけではなく
女部屋にいる全員がオレへと迫ってくるのだから、本当に怖い。

「イヤだぁ!!!」

慌てて逃げようとするが、メア様に捕まってしまう。

「ふふふ。

逃げようとするなんて、本当に悪い子ですね。」

微笑んでくるメア様に何とか言い訳をしようとするが、金魚のように口をパクパクするだけで、上手く発音が出来ない。

気付けば、囲まれていた。

男であるならば、夢見た光景。

大勢の女の人に囲まれるハーレム…。

それが、ココには広がっていた。

だが、現実はハーレムなどとは遠く離れている。
むしろ、近いのは戦場で敵勢力に単身で特攻した状況の方が近い。


「くっくくくく。

何か、言い残す事はあるか?」

ありがたい事に、エヴァンジェリン様はオレの話を聞いてくれるようであった。
あの邪悪な笑みも今では天使の様な微笑みに、見えない事もないような気がした。

とりあえず、深呼吸をして、再び金魚のマネ事をしないように精神を落ち着かせる。

そして、ゆっくりと口を開いた。

「服は着ないの?」

だぁ〜、違う、違うぞ!!
そんな事を言っちゃ、火に油じゃん。

言い訳をしないと、絶対に殺される。

「いや、別に皆の裸が見たくないってワケじゃないんだ。」

あぁ、コレは死んだな…。

せめて、この様子を目に焼け付けておくとしよう。
大勢の女性が肌を見せている、この光景を…。


あれ?

女の人の身体をみても、恐怖しか感じない…。
やべ、男として色々と失っちゃったかも。



〜side エヴァンジェリン〜




私の眼下には、苦悶の表情をしながらうめく徹がいた。

変態をボコボコにしている中、途切れ途切れに変態が今の徹の状態を喋り、慌ててココへと来たのだ。
こう言ってしまっては何だが、ただの悪夢なのだから放っておいても別に構わない。

もし、何とかしたいのならば起こしてしまえば良いのだ。

だが、そういうワケにもいかなくなった。
少々、それでは都合が悪いのだ。

何故ならば

「─あ─こ──ちゃ─。」

こうやって、女の名前と思わしきものが出てくるからだ。

分かってはいた。
こやつにだって、過去はあるだろうし、親しかった者がいても何もおかしくはない。

分かってはいるのだ。
だが、コイツが私の知らない女の名を呼ぶ。
それだけで、胸に針が刺さったかのような痛みが走るのだ。

愚かな小娘のような感情。
分かってはいるのだ。
自分のこの感情が愚かだという事は。

分かってはいるのだが、この痛みは収まらなかった。

とりあえず、今はマギの到着を待つしかなかった。
メアが呼びに行ったので、すぐに着くだろう。

未知なる力、魔法であれば徹の夢がどのような物なのか分かるかもしれない。
勝手に夢を覗かれるのは良い気分ではないだろうが、いつかは私のモノへとなるのだから全然構わないだろう。

というよりも、私のモノなのだから、その管理はしっかりとやらないとな。

少しすると、2人がやってきた。

どうやら、夢を見る魔法という物はあるらしく、それを使うように命令するとマギは案外簡単に魔法を唱えた。

まぁ考えてみれば、村長としては莫大な力を持つ徹の過去を見ておきたいとでも思っているのだろう。

奴の思惑はともかく、私達3人は徹の夢の中に入る事に成功した。



「で、何なのだ!?
この格好は!?」

徹の夢の中に入ってきたのは周りの風景からすぐに分かったのだが、問題は私達の格好だ。

皆、裸なのだ。

「精神体だから仕方ないだろ?」

まだ、魔法についてはあまり詳しくはないので、そう言われてしまっては何も言えない。

「エヴァちゃん、マギさん…。

ココは、なんですか?」

「何を言っているんだ?

徹の夢の中に決まっているではないか。」

「いえ、そういう事を言っているのではなくて…。

とにかく周りを見てください。」

言われた通り、周りを見渡す。

なんなんだ?ココは?

おそらく、室内だろう。
異常なほどに磨かれた、壁、柱。
机などは金属で出来ている。

その上には、大量な紙があった。

汚物も、なく、炉も存在しない。

窓からは、外の景色が見れ、ガラスが大量に使われていた。


全てが異常。

あまりにも、高価な物が所狭しと並べられており、中には見たこともないような物も多くあった。

「亜子ちゃん、大丈夫だからね。」

かすかに徹の声が聞こえた。

とりあえず、この周りのモノが何かは置いておくとしよう。
今、重要なのは徹の事だ。

私達は顔を見合わせ、頷くと声の聞こえた方へと向かって行った。

すこし進むと、15程の人間が、部屋の角に集まっていた。

その一番先頭。

隣にいる、幼い女の頭を撫でながら彼はソコに座っていた。

恐らく、今は何かが起きているのだろう。
徹以外の者達が顔を恐怖で歪ませている様子からそれは簡単に推測できた。

そして、もう1人変な奴がいた。

銃に良く似た物を徹達に見せながら、立っている全身黒ずくめの男。

「エヴァちゃん、これをどうみますか?」

隣にいるメアが私にささやいて来る。

「あの黒男が他の人間を脅しているって所だろうか?

とりあえず、あの男に他の者達が恐怖しているって事には間違いはないだろう。」

メアも私と同じ様に考えていたのか、小さく頷いた。

「ぐすっ、テツ兄ぃ

ウチ、死んじゃうん?」

「大丈夫、大丈夫。」

徹と、少女の間で行われているやりとり。

ココで、聞き逃せない言葉があった。

"死"の可能性があるということだ。

徹は、一体ココで何があったんだ?


「おい、コッチは終わったぞ。」

声が聞こえたかと思うと、似たような黒男が5人が奥からやって来ていた。

「OK、じゃこちらも終わらせるな。」

そういうと、徹の傍にいた男は、その手に持っている銃(?)を徹の隣にいた女へと向けた。

そして




パン

「きゃぁあああああ。」



絶叫と乾いた音が響いた。


黒男の腕は変な方向を向いており、筒は壁を抉った。
そして、その腕は徹が脇に挟みこんでいた。

つまり、奴があの一瞬で黒男に近付き
そして、腕を折ったのだ。

「マギ、お前にコレが出来るか?」

恐らく、戦闘が得意と思われるマギに聞いてみると

「魔法を使えば、ぎりぎり出来るかもしれない程度だ。」

予想通りの答えが返ってきた。

「そうだな。

あの、最小限の動き。あの一瞬で腕を折る力、その技術。

そして、もっとも怖ろしいのが」

「あいつ等の意識がなくなった瞬間に、死角から入っていく技術

だろ?」

続けたマギの言葉に私は頷く。

あの、黒男が少女しか見ていない状態。
周りの警戒を解き、少女のみに意識の焦点を当てた瞬間に徹は黒男の死角から入ったのだ。

全てが完璧であった。

もし、あの瞬間よりも早ければ、黒男は徹の動きに気付き、引き金を引くのが早くなっただろう。
もし、あの瞬間よりも遅ければ、間に合わず少女は助からなかっただろう。

傍から見ていたからこそ分かる、徹の異常なほどの勝負所の嗅覚。
まさに、あれは芸術だった。

そして、芸術のような可憐さの次は、猛獣の様な野蛮な暴力。

折れた腕をさらに捻り、銃を落とさせると徹はそれを拾い黒男の頭へと無情に打ち込む。

ある意味必然な事に、少女とメアは同じ様に顔をそむけた。

異常なほど、銃の威力が高かったので、黒男の頭は破裂したのだ。
そこから飛び散った、肉片は彼女達の様な普通の人間には見れたものではないだろう。

だが、徹は違った。

黒男の惨状など、まるで意に介さず
そのまま、奥にいる男へと向かって行ったのだ。

その後は、圧倒的な暴力で終わった。

近付きながら、銃を撃つ。
そして、殴り、蹴り、投げ、とどめをさして…。

何発かどうしても避けれなかった物を腹にくらいながらも、彼は暴れ続けた。
獣の様な咆哮をあげ、体中が血でまみれながら暴れ続けた。

そして、最後の1人になった。
彼も流れ弾にあたったのだろう、耳が片方千切れてなくなっていた。

恐怖から歯を震わせ、身体を震わせながら徹へと銃を構えていた。

そんな男に、徹はただただ正面から近付く。
普通だったら、ただ撃たれる様な自殺行為。

だが、徹は撃たれなかった。
ゆっくりと近づいて来る徹を、男は撃つ事が出来なかったのだ。

そして、男の目の前まで徹が行くと、簡単に男から銃を奪い

そして


パン、パン、パン


無言で男の足に3発撃った。

痛みと恐怖からだろう。
男は倒れてしまった。

そして、それを見送った徹もまた


倒れるのだった…。



そして、真っ暗になった。


ピッピッピッピ

甲高い音が定期的に聞こえ、押し殺した泣き声。
嗚咽、謝罪、お礼、などなどが聞こえた。

そして

ピッピッピッピ


ピ─────────────

何の音かは分からなかった。

ただ、その音が儚く




そして、悲しかった。

ただ、漠然と分かった。
この音で、"何か"が終わったのだと…。


この後、徹はどうなったのかは分からない。
何があったのかも分からない。

ココで、徹の夢は終わりだった。





魔法が解け、私達は目を覚ました。
結局分かった事は殆どなかった。

アレが何だったのかも、分からない。

そもそも、ココとは全く違う様子から
徹は何処か遠くから来たのだろう。

その来た理由も全く分からなかった。

「アレは本当に徹様の過去だったの事なのでしょうか?」

重い空気の中、メアが静かに言葉を放つ。

「証明は出来ない。

所詮、夢だからな。

過去とは全く関係ないただの夢なのかもしれない…。」

マギもまた、ゆっくりと言葉を放った。

「…傷だ。」

「はぁ?」

私の要領を得ない言葉にマギは疑問の声をあげた。

「明かりを持ってこい。
徹が付けられた傷、その有無で現実かどうか分かる。」

あの夢が現実であって欲しいのか
それとも、ただの夢であって欲しいのか

それすらも、私には分からなかった。

ただただ、知りたかったのだ。
現実なのか、夢なのかを…。

炉の火を大きくし、僅かながらも明るくなった。

そして、私はゆっくりと彼の服をはだけさせると


彼の腹には、幾つもの丸い跡がくっきりと残っていた…。



posted by まどろみ at 07:03| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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