2012年03月29日

第二章 革命編    その16     裏

〜side エヴァンジェリン〜







風呂作り?なる物を徹と二人で行った。
私が生まれた頃に、風呂は黒死病の原因として忌避されはじめたと聞いた。

それは、急速に広まっていったのだろう。
物心が付いた頃には風呂はなくなっていた。

だが、それが何かは知っていた。

裸になり、お湯に浸かるのだ。

そう、は、裸になるのだ…。

相手は12、3の若造なのだから、恥ずかしがる必要もあるまい。

そもそも、奴と初めて出会った時も、裸だったではないか。


そんな変な言い訳をしながら、徹が完成した風呂に水を流し込んでいる姿を眺めていた。

その下に、火を入れて、水を温める。

大きな鍋が熱せられている。
その様子は、傍目からは何かの料理をしている様にしか思えなかった。

これに私達が入るのか…。
なかなか、シュールな光景だろうな。


ようやく、湯が沸いたらしい。

「お風呂だぁ!」

言いながら、徹は服を脱ぎ始めた。

私に背中を向け、上着を脱ぐ徹…。

その背中には、右上から左下にかけて、大きな傷が走っていた。
その傷を見ている私に、気付かないふりをしながら、徹は腰に布を巻きつける。

そして、もう1枚の布を湯に浸けて身体を拭き始めた。


私も脱がなくてはいかんな…。

ん?考えてみればコレはチャンスという奴ではないか?

ココで上手く奴を魅了すれば、奴が私のモノへとなる日が確実に近付くはずだ。

私も、同じ様に裸へとなり

「ふむ…。

とりあえず、私も拭け。」

告げた。

くはははは、どうだ!?
幼いお前には、刺激が強すぎたか?

赤くなり、慌てふためく徹の姿を想像しながら、様子を見ると。

「分かった分かった。」

と言い、普通に背中を拭かれた…。

な、なぜだ!?
すべすべのモチ肌だぞ。

どうして、反応がまったくない?

…ま、まさか

男に興味があるという、特殊な性癖を持っているのか、コイツは!?

いかん、それはいかんぞ。

「ほら、残りは自分でやってね。」

私の焦りなどまったく気付いていない様子で、徹から布を渡された。
そして、そのまま風呂へと入っていく徹。

こうなったら、仕方ない。

肌と肌を触れさせる事によって、徹が誤ってしまった道を修正してやろうではないか。

ぱっと見で分かるが、あの風呂は小さい。
だから、一緒に入れば自然と肌を寄せ合う事になるのだ。

まさに、完璧な策略。

「おい徹。

私も入るのだが…。」

安心しろ徹。
私がしっかりと貴様の道を修正してやるからな。

「ちょっと待っていてね。」

言いながら、徹は立ち上がった。
腰に巻いていたはずの布は、何故か頭の上にある。

ふむ、なかなかの…。

って、私はなに冷静に評価を下そうとしているんだ!?

くっ、まさか私が先制攻撃を受けるとは…。
だが、奴に悟られてはいけない。

そもそも、"アレ"を見てなんか変な考えをしているとばれたら、奴から痴女の烙印を押されてしまう。
いかん、それは色々といかん。

「はい、後ろを向いて。」

なんでもないような表情をしながら、奴の言う通りに後ろを向いた。

すると、私の腹に手をまわし持ち上げてくるではないか。

私は酷い思い違いをしていたのかもしれない。
奴は間違いなく私に欲情していたのだ。

だが、それを鉄壁の理性で何とか押しとどめていたのだ。

そんなギリギリな奴を、わざわざ魅惑しようとしたのだから、こうなっても仕方はないのだろう。


ふふふ、だったら予定は変更だ。

こうなったら、さらに奴を魅惑してやろうではないか。
抗う事が出来ないぐらい、きっちりと。

ただ、しっかりと責任は取らせるがな。

「なっ、何をする!?」

くっくくく、完璧だ。

こうやって、微妙な拒絶を入れる事によって、男を焦らすテクニック。

正直言ってしまえば、私は男との経験がない。
だから、わざわざ恥を忍んでメア達に教えてもらったのだ!!

なんとも怖ろしいテクニックだ。

この後はもう決まりきっている。

『オレはもう我慢が!!
エヴァちゃん!!』

『あ〜れ〜〜。』

となるらしい。

その後は、自分のオリジナルティーのある行動をとるのだが、ココまでいったら勝ちは決定である。

「暴れないでね〜。」

そういいながら、奴は自分の膝の上へと私を座らせた…。

まったく発情などしていない様子で…。

ちょっと待て、よく考えてみろ。
お互い布一枚まっとっていない裸同士。

さらに、この体勢は色々とギリギリ過ぎる状態なんだぞ!!
そんな状態なのに、まったく反応がないとは…。

女としてのプライドやら、悪の吸血鬼としてのプライドもズタズタだ…。

「悪の吸血鬼が…。」

私のプライドをズタズタにした奴は、何でもない様子で

「エヴァちゃん、オレ等は木の椅子に座っているから熱くないけどさ

金属の部分には触っちゃダメだよ。
火傷しちゃうかもしれないからね。」

などという注意をしてきた…。

とりあえず適当に頷いたら頭を撫でられてしまった。

あいかわらず、コイツは私を子供扱いしてくるのだ。

いつもであれば文句の一つでも言うのだが、今回は別の事に気を取られていてそれどころではなかった。

こんな危険な体勢にも関わらず徹はこれほどの余裕を持っているのだ。
まったく、ここまでドキドキしている私がバカみたいではないか。

まぁ、私の状態は置いておくとして、今重要なのは奴が余裕であるといった点である。

つまり、奴が男色である可能性がさらに上がったということだ。


何とかしなくてはならんな。
とりあえず、皆と相談しなくてはならぬな…。




〜side メア〜




いつもは帰ってくるはずの時間なのにまだ徹様は帰ってきていなかった。

普通であれば多少の心配ぐらいはするだろうが、私ほど不安でまみれる様な事はないだろう。
他の人達も少し大げさだと、呆れていた。

だが、私にはそれだけ不安になる理由があった。

徹様が自殺をするかもしれないのだ。


そんな私の心配を知らぬかのように、エヴァちゃんと仲良く帰ってきた徹様。
なんともなかった事にホッと安心した後に、ぐつぐつと怒りが沸いてきた。

散々心配したのだ。
だというのに、エヴァちゃんとイチャイチャして帰ってくるのだ。
少しくらい、イライラしても仕方ない。

「徹様、どこへ行っていたんですか?」

ちょっと、言葉の端に刺をつけながら尋ねると

「お風呂に入ってきたんだよ。」

思いもよらない答えが返ってきてしまった。

「徹様、一体何を考えているんですか!?
エヴァちゃんも止めて下さいよ!!」

徹様の自殺を防止するために、もしその兆候を見せたら力尽くにでも止めるとエヴァちゃんと約束をしたのだ。
それを破る筈はなかった。

なにせ、私もエヴァちゃんも徹様に依存しているのだから。

「メアさん、ちょっと落ち着いて。」

「落ち着くなんて無理ですよ!!

あなたが死んでしまったらどうするんですか!?」

今の私はかなりの興奮状態なのだろう。
こうやって、頭の中では冷静なのだが、身体が勝手に興奮状態に陥ってしまい困惑してしまっている。

普段では出す事のないような怒鳴り声を徹様に浴びせてしまい、そして瞳からは涙が溢れ出ようとしている。

さらに、言葉を浴びせようと口を開きかけた時

「メアさん、よく聞いて。」

徹様の両手が私の肩を掴んだ。

そして、目に入ってきたのは真剣な彼の顔と、漆黒の瞳であった。

まだ、落ち着いたワケではない。
落ち着いたワケではないのだが、不思議とその瞳を見ていると、出かかった言葉が何処かへ行ってしまったのだ。

そして、ゆっくりと説明された。
私達のお風呂の考えが間違っている事、お風呂によって病気が減る事などなど

不安そうにしていた私を見たからか、徹様は優しく微笑みながら言ってくださった。

「大丈夫だよ。メアさん。

メアさんにも同じ事をやれっていうワケじゃないから。」

違う。私が不安になった理由はそうではないのだ。

本当に怖いのは、貴方様がいなくなる事なのだ。
酷い拷問にあい、神父達からは金づるや性の対象として気持ち悪い目で見られ、そして仲の良かった友からは裏切られた。

誰も信じられなかった。
何も信じられない、信じてはいけない。

そんな、暗い世界を徹様は明るく照らしてくれた。
下を向き、蹲っている私に手を差し伸べ立ち上がらせてくれたのだ。

まだ、私は不安定なのだ。
自分の事だ、自分が良く分かっている。

そんな私が、もし徹様を失ったら?

考えるだけでも怖ろしい。

また、暗い世界に入ってしまうのではないか?
また、下を向いてしまうのではないか?

それが怖いのだ。

一度太陽を見つけてしまった人間にとって、もっとも怖ろしい事は、再びその太陽がなくなってしまう事なのだ。

再び言おう。

私達は徹様に依存してしまっているのだ。
もう、どうしようもない程に。

ふふふ、酷い女だ。

徹様の事を心配している様で、実際は自分のためなのだから。

まったく、酷くて傲慢で哀れな女だ。

けど、それでも私は…。

「いえ、そういう事が言いたいワケじゃないんです。

なんで、徹様はそんな怖ろしい事が出来るんですか?
確かに、徹様が言う事が正しければ問題はありません。
ですけど、間違っていたら死んでしまうかもしれないんですよ!?」

貴方に死んで欲しくない。
私のために生きていて欲しい。
そんな危険な事はやめて、普通に生きて欲しい。
どこにも行かないで、私の隣にいて欲しい。



様々な"欲しい"という傲慢。
徹様を縛りつけたいという独占欲などの感情が醜く私の中で混ざりあう。

そんな言葉、私が醜いと分かってしまう欲望の塊が先ほどの言葉に、にじんでいた。

「文化の違いかな?

オレにとっては、そんなに怖い事じゃないんだ。
むしろ、オレの暮らしていた所だったら健康のためだったんだよ。
しかも気持ちいいんだよ、お風呂ってさ。」

そんな、私の醜い欲望に気付かないまま、徹様は困ったような笑みを浮かべながら頬を人差し指で掻いていた。

「メア、諦めろ。
私も何度も考えを改めさせようとしたが、徹には無意味だったよ。

たしかに、徹のいうように風呂とは気持ちいいもだったしな。」

…まるでエヴァちゃんも一緒に入ったように聞こえるんですけど?

「徹様、エヴァちゃんも入れたんですか!?
こんな子供に、そんな危ない事をやらせてはいけません!!」

お風呂っていうのは、お互い裸になるんですよね!?
という事は、エヴァちゃんと徹さんが…。

「とりあえず、エヴァちゃんは吸血鬼だから見た目の年齢とは違うからね。
エヴァちゃんの意見を尊重しただけだよ。」

「それはそうですけど。」

いや、そうじゃないって。
そこが問題なんじゃなくって、間違いがあったらどうするの!?

別に間違いが合っては良いとは思うけど、それは主に私のような身体が成熟した女性にするべきであって、エヴァちゃんのような未発達の女性には倫理的にというか、とりあえず色々と危なすぎるので、やめておくべき事であって、そもそもいくら早熟な貴族様であってもある一定以上の年齢にならなくてはそういう事はやってはいけない事になっているから、エヴァちゃんには早すぎるというか、いやもう何十年も生きている人には間違いないんだけど、それ以前の問題で身体は幼いままなのだから無理をさせてはいけなくて、はっそう言えば以前彼女が皆に性について聞いてきた事がありましたけど、それってまさか今回の事を見越して聞いてきたというワケなの!?な、なんていう策略。そういえば私なんてノリノリで必勝ほ

「それ以前に、吸血鬼は不老不死だからな。
風呂ごときで死ぬような事はないさ。

というワケで徹、また一緒に入るぞ。」

「うん、別にいいよ。」

あの『あ〜れ〜〜』を使ってしまわれたとすると、もしかすると徹様はすでに

…って、やっぱり

「徹様、エヴァちゃんと一緒にお風呂に入ったんですか!?」

「えっ、うん。

気持ちよかったよな〜、エヴァちゃん。」

「あぁ、そうだな。」

あぁ、すでにエヴァちゃんに遅れをとっている!!
そもそも、裸の付き合いというのは男の人を虜にするもっとも原始的かつ効果的な方法と祖母が言っていたし。

「徹様、私もお風呂に入る事にします!!」

気付けば、私は叫ぶように言っていた。


posted by まどろみ at 07:07| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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