2012年03月29日

第二章 革命編    その18     裏

〜side エヴァンジェリン〜







村は急速に安定し始めた。

汚物の処理や風呂に入らせる。
そういった環境改善政策?とかなんとかを徹は力をいれ進めてきたおかげで、病にかかる人達の数はぐっと減った。
まぁ、実際に徹の言うように風呂に入ったり汚物の処理のおかげで本当に減ったのかどうかはやはりまだ疑ってしまう所なのだが
事実として病人は減り、そして風呂に入ったからと言って急に死んだような人も出なかったため、確信はないけどなんとなく言う通りにしているといった感じである。

さらに、村の面積を広げるために伐採を行い、畑の面積も増やした。

生活に必要な物資は殆ど村の中で作る事が出来るようになったおかげで、外から買わなくてはいけないものはエールぐらいの物だった。

流石に買い続けているだけでは、その内限界が来てしまう事も分かっていたので、こちらも余った食物を売る事によって、その辺りのバランスはとっている。

数か月という日数でコレだけ出来れば十分であった。
村人達もこの結果に満足し、そして多くの事を教え、精力的に働き続けてくれた徹やマギに対して大いに感謝をしていた。

徹を手伝い、マギにメアと共に魔法を教えてもらい、そして風呂に入り、寝る。

単調だが、充実した毎日であった。
他の者から見ればつまらない毎日だったのかも知れん。

だが、私達にとってはその一日一日が大切で、そして幸せな日々であった。

まだまだ、やらねばならない事も多々あり、決めなくてはいけない事も多くあったのだが、とりあえずの所は落ち着きを見せ始めたそんなある日の事。

いつものように他の奴らと共に朝食を食べていると。

「あっ、そういえば、オレってなんか不老っぽいや。」

唐突に、本当に唐突に徹が呟くのだった。

「…へ?」

「だからオレが不老っぽい。」

特になんともなく、本当の自然体で笑いながら話す徹。

その様子と話している内容とのギャップが激しすぎて、どうやら思考が追いついて来ていないようだ。

皆も私と同じ様な状況らしく、あれ程騒がしかったのだが、今では沈黙に包まれていた。

そんな異様な雰囲気に気付いていないのか、それともあえて無視しているのかは分からんが奴は話を続ける。

「いやね、もうココに来て何カ月も経っているのにさ、髪の毛も爪も一切伸びて来ないんだよ。

もともと、不老不死疑惑があったんだけど、その内の不老の可能性が高くなっちゃったみたい。」

不老不死。

死なず、老いず、生き続ける事。

そして、それは人間が叡智の先に追い求める最終目標である。
もっと大切な物があるはずなのに、何故か人間が憧れてやまない呪い。

いま流行っている学問である錬金術もまた、その不老不死(くだらぬモノ)を求め発展している。

どうやら不変である金を不老不死に見立て、云々といった話だった気がするが、私には関係がない。
それよりも、問題は別の所だ。

馬鹿共が"たかが"不老不死のためにナニかを捨てるというのは全然構わない。
そんな事私の知った事ではないし、それを覚悟の上でやっているのだろう。

ただ、奴は違う。
徹が、そんなくだらない事を自分のためにするとは思えないのだ。

奴がその様な決断をするのは、他の者のためか、それとも私のように強制的にやらされたのかのどちらかしか思い浮かばないのだ。

そして、最も気になる部分が不老不死"疑惑"というところである。

その言葉からは、彼がまだ不老不死になっている実感がないという事が楽に推測出来る。
これは私もそうだったのだが、不老不死などという物を実感するというのは非常に長い時間と多くの経験が必要となる。
つまり、彼はまだ不老不死になってから時間があまり経っていないという事だろうか?

色々と考えながら誤魔化しているが、私の内は歓喜で渦巻いていた。

あまりにもこの村の居心地が良すぎて忘れがちだが、私の目的は徹を私のモノにする事だ。

もっと単純に言うのなら、奴を吸血鬼にし、私と共に永遠を生きてもらうつもりでいた。
なに、私の"モノ"なのだから全然構わぬだろ?

だというのに、奴はすでに不老だという。
完璧にそうだと決まったワケではないが、可能性としてはかなり高いであろう。

それだったらだ、それだったら、すでに勝負はついたに近いと言える。

永遠という月日は人間が一人で生きていくには寂しすぎるのだ。
たった数十年しか一人で生きていない私ですら狂いたくなるほど、いや実際は狂う一歩前というところまで追い詰められていたのだ。

その寂しさは徹だって、耐える事は出来まい…。
という事は、奴は私と共に生きていくしかないのだ。

もう1人で生きなくても済む。
全てに拒絶されたとしても、1人だけは私と共にいてくれる。

そう思うと、喜んではいけないと分かりながらも、どうしても嬉しくなってしまうのだ。


そんな醜い感情を必死に色々と考えながら誤魔化そうとしていた。

何せ私は自分の事しか考えていないのだ。
徹が自ら望んで不老不死などになるはずがないと分かっていながらも、奴の心配をするでもなく同族が出来た事を喜ぶ己がいるのだ。

そもそも徹を私のモノにするつもりだった所で、私はあまりにも酷(ひど)い事を行っているのだ。

普通、自分を受け入れてくれた大切な人を吸血鬼にするだろうか?

吸血鬼というのは、世界から拒絶される存在だ。

大切な人をそんな存在にしてしまっていいのだろうか?

本当に大切な人であるのだったら、そんな血塗られた世界に呼び込むのではなく、逆に光の世界に行かせるべきではないのだろうか?

何度も行った自問。

徹をメアに任せ、何度去ろうとしたか。
マギに徹を支えて欲しいと頼み、何度去ろうとしたか。

だが、どうしても出来なかった。


世界という奴は、とことん私が嫌いらしい。

全てに拒絶される地獄から、やっと救いの手が差し伸べられたのだ。
だが、次はその手を離せと強要する。


それでも、私は思わずにはいられないのだ。
叫ばずにはいられないのだ。

私が人と共にいたいというのは、そんなにいけない事なのか?
私には、1人の人と共にいたいというそんな小さな希望すらも持ってはいけないのか?


何度も何度も、問い続けた。
けれど、答えは見つからなかった…。


全く、あまりに自分が愚かでイヤになる。


頭を振り、無理やり意識を切り替える。


そもそも、私がどんな風に思っていても意味などないのだ。
感情などというものは勝手にわき出てくるモノなのだから、知った事ではない。

だから、今大切なのは2つだ。

私にとって、奴は大切な者である事。
そして、不老不死の先輩として、奴を助けられるのなら助けてやる事。

コレだけだ。
私としては、徹が共に生きてくれるというのならそれほど嬉しい事はない。

その気持ちぐらいは伝えてやらんくてはな。

たく、本当に奴には困ったもんだ…。

ほんの少ししか喋っていないというのに、ココまで私を葛藤させ、あまつさえ一生共に生きて欲しいと再確認させるんだからな。

というよりも、自分の5分の1程度しか生きていない子供に、ココまで引っ掻きまわされるとは…。

もしかしたら、将来、奴はとんでもない女泣かせになるのかもしれんな…。



posted by まどろみ at 07:08| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。