2012年03月30日

第三章 世界放浪編 その3     裏

〜side 狩人〜







オレの斜め前にはマントを羽織った悪がいた。
確かに彼女達は上手く誤魔化していたと言えるだろう。

その幼い身体、そして上手く自分を隠す謎の技術。

そう、確かにそれは素晴らしい物であった。

だが、いかんせん匂いまでは誤魔化せていない。

悪が悪である故に感じる事の出来る、匂い。

そして、第六感が告げる。

彼女は、人を喰らう吸血鬼(バケモノ)だと。

隣にいる男が次の獲物だろうか?
それとも、バケモノへと魂を売った愚か者だろうか?

前者だとしたら哀れであるが、どちらにしろもう殺すしか道はない。

彼が哀れな子羊だとしても、吸血鬼が生きたまま連れているのだ。
既に、死徒になっているとしか思えないからである。

ただ、2人して日光の下を歩いている様子や、男の方から感じる違和感がない様子から、その可能性は限りなく0であると考えられる。
そこから導き出される答えは1つだけ。

彼は、世界中の人を裏切った罪人であるという事だ。

彼女の幼い顔のせいで鈍る決心を鼓舞し続ける。

吸血鬼は、殺さなくてはならない存在なのだ。
生まれた時から悪とされる存在。

と。

そこに自分の思考を挟む余地はない。
いや、あってはいけない。

そもそも、吸血鬼という存在は死途だろうが、真祖だろうが、自分から進んでなるという事象は殆どない。

勿論、不老不死を求めて自ら進んで吸血鬼になる者もいるだろうが、あまり可能性は高いとは思えない。

とはいえども、吸血鬼は滅ぼさなくてはいけない悪であるのだ。
例え、無理やり吸血鬼にされたとしても。
人の生き血を吐きそうになりながらも、己が生きるためと涙を流しながら飲んでいたとしても。

オレは滅ぼさなくてはならないのだ。

吸血鬼を滅ぼさなくてはいけない理由は、不老不死だからでも、その強大な力でもない。

答えは、その繁殖能力にある。

その繁殖方法が、吸血鬼同士による性的接触によるものであれば、まだ救いはあったのかもしれない。

それであれば、共存も出来たであろう。
吸血鬼は、人間から血を貰う代わりに、吸血鬼は人間には出来ない力仕事をする。

確かに、吸血鬼の方が人間より力はあるが、人間の血がなければ生きていけないので、人間を傷つける様な事はしないであろう。

ただ、そうではないのだ。

性的接触などではなく、彼等は人間に噛みつく事によって相手を吸血鬼へとしてしまうのだ。

たった1人しか吸血鬼がいないとしても、その食事だけで吸血鬼が増えてしまうのだ。
吸血鬼が毎日1人づつ、血をすすっていけば

1人が2人に。
2人が4人に。
4人が8人に。

と増えて行き、10日も経てば、オレが住んでいた村の全員が吸血鬼になってしまう。

そうやって増えて続けて行くとすれば、1年も経たないうちに人間は全て吸血鬼へとなってしまうであろう。

故にオレは滅ぼさなくてはならないのだ。

それは勿論、人類のためでもあるが、吸血鬼のためでもある。

思い出すのは、吸血鬼の少女。

オレは泣きながら彼女の胸に杭を打った。
彼女もまた、泣きながら笑みを浮かべていた。

そして




頭を振り、全てを追い出した。

納得するための自己弁護など、後で幾らでも出来るのだ。
いま必要とされるのは、効率良く彼女達を殺す冷めた思考である。

現在の2人は休息をとっている。

そろそろ日が落ちる。

今日はまだ満月からは程遠いから、彼女の力も全開というわけではないであろう。
ただ、夜は彼女の時間故、攻め込むわけにもいかない。

出来る事なら日が昇っている時に、大人数で不意打ちをすれば、何とかなるであろう。

男は、俯き手で石を弄びながら地面を見続けており、吸血鬼は少しつまらなそうに、男の様子を眺めていた。

そして、男は顔に小さな笑みを浮かべ。

「流石に、ふざけ過ぎだな。」

小さく呟くのであった。

体中の血が一気に冷める。
オレが見張っている間、彼はずっと地面を見続けていただけだったにも関わらず、オレを見つけたというのだ。

すぐに逃げ、仲間の元へ駆けようとした瞬間。


ドスッ


オレのすぐ傍の木に石が投げられたのだ。
当たったとしたら、死んでもおかしくない様な威力の物が。

もう、なりふり構っている余裕などなく、少しでも彼から離れられる様、這いつくばる様に逃げる。

そして、唐突に味会う浮遊感。

何が何だか分からないまま、オレは逆さ釣りにされたのであった。


posted by まどろみ at 00:40| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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