2012年03月30日

第三章 世界放浪編 その10    裏

〜side 犬(8才 ♂)〜







吾輩は犬である。名前はまだない。

街のそばで、勝手にご主人と決めた者を待っている。

太陽の温かさが、心地よく、ウトウトしていると、尻尾を踏まれた。

この、踏んだのがドラゴンとかだったら、痛かったかもしれないが、実際は吾輩の半分程度の人間。
痛みなどは、ほとんどない。

いつもであったら、軽く噛みついてやるのだが、その踏んだ人間というのが『あの御方』だったのだ。
ドジなご主人である。

格好が少し違っている様な気がしたが、いつもの落ち着く様な匂いは変わっていなかった。

尻尾を振り、吠えながら近付いていくと、いつもの様にご主人は金色を抱えて走り出す。

いつもの追い駆けっこですね。ご主人。
今日こそ捕まえてみせますぞ。


〜side 盗賊〜



「兄貴らしき奴が、やって来やした…。」

「ワシ等はな、恩に報いるためにも、兄貴を追わなくちゃいけねぇんだ。てめぇも分かってるだろ!?
それを、『らしき』だと!?」

「そうは言いやしても…。
とにかく、見て下さい。」

ジャネから渡された双眼鏡を覗く。

いつも通り、『あの人』は、姉御を抱えて走っているのだが…。

「なんじゃ、こりゃ??」

兄貴が、姉御になっていやがった。

「そうなんです。
確かに、兄貴なんすけど、姉御になってるんす。」

考えられるのは2つ。

兄貴が女装している。
実は、今まで男装していた。

である。

答えは、すぐに分かる。

女の2人旅っちゅうのは、あぶねぇ。
まぁ、当然だわな。ぶっちゃけ野郎より、アマの方が良い値が付く。

さらに、アマだけなんて、こっちからしてみれば襲いやすい。

少しでも、リスクを減らすために、あの人は男装していたってワケだ。

そうやって考えてみると、あの人を何時までも兄貴呼ばわりするっちゅうのは失礼だよな?

「おい、野郎共!!
これから、兄貴の事は大姉御と呼べ。分かったか!?」


応!!


40人強の部下が一斉に返事を返す。


「野郎共、大姉御に追いつけねぇっと、話すら聞いて貰えんぞ!!
恩に報いるためにも、行くぜぇ、野郎共ぉ。」


〜side ドラゴン〜



叫び声、鳴き声、地を揺らす音、巻きあがる砂埃、精霊達の歌い声。

眠りから目覚めれば、その全てが我を襲った。

『汝達よ。
何故、あ奴等を追いかける?』

我は問う。
たった2人を、追いかける者達へと。

「んなの決まってるだろ!?
必要だからだ!!」

「いい。近くに居る?居たい?楽しい。好きぃ。」

グゥウ、ワンワンワン


人は駆けながら叫び、精霊は舞いながら歌い、犬は吠える。

我の飛ぶ速度と同じ速度で、人と犬は駆け、精霊は舞う。

彼等をそこまで、掻き立てる者が、この先に居る。
千年以上生き、失ったはずの好奇心が疼きだした。

この者達がどの様に駆けて行くか、見たい。
あの者が捕まったら、どうなるか、知りたい。
あの者達がどんな者なのか、感じたい。

様々な欲望が渦巻き、好奇心を刺激する。

『くはっはっはっはっは。
楽しい。楽しいぞ。

こんな愉快なのは、何百年ぶりだ。
どれ、我も加勢しよう。』

火袋から取り出した、炎の基を肺に溜め、そして


「バカ野郎ぉ!!!」

「だめ。ばつ。やぁ!!」

下の者から剣を投げられ、精霊達からは突風を受けたせいで、炎はあらぬ方向へと飛んでしまった。

『何をするのだ?
我は、あ奴等を止めようと…』

足に刺さった剣を振り落としながら問う。

「姉御と大姉御を怪我させるワケには、いかねぇだろぉが!!」

「あの人。好き。痛い。ダメ。苦しい。やぁ」

それが、この戯れの規則か…。

『分かった。
では、こうしよう。』

これ程楽しい戯れだ。
もっと大勢でやろうではないか。

規則を守った上でな。



我は吠える。
大勢の仲間が集まる。



いつの間にか、別の幻獣達も集まりだした。

亜人も、精霊も、獣も、人間も。
全てが協力していた。

精霊は風を使い、皆を押す。
人間は叫び、皆を誘導する。
獣は人間を乗せ、亜人は獣の誘導を。


各々が、己の力の限り尽くし、隣を支え、そして駆けて行く。


我はもう一度、雄叫びを上げた。


さぁ、皆の者。
我等が姫に、早く追いつこうではないか。


〜side ラカン〜



むっ、また鳥頭がアンチョコを見だした。

「百重千重と重なりて走れよ稲妻」

この詠唱は

「また、大呪文か!!」

さっきは時間がなかった為、気合い防御を使ったが、今だったら溜めれる。

「いくぜ。」

「コッチもだ。」

チラッと、黒い影が見えたが、よそ見している暇なんざねぇ。

手に気を溜め、一気に

「ラカンインパクトォォオオオオ!!!」

爆ぜさせる!!!

「千の雷!!!」

お互いが持ちうる、最強の技。

雷と、気で視界は白に染まる。

世界は、白のみになるはずだったが、視界の端にある影。コレだけは色を持ったままだった。
その影は、ボールみてぇに、地面に何度かバウンドした後、止まった。

この頃になると、既に目は回復したが、いかんせん砂埃が邪魔で影がなんなのか分からない。

目を細めようとした時。


ブワッ


不自然な突風が吹き、砂埃がはれる。

揺れる黒い髪、なびく所々破れた服、そして俺を見つめる漆黒の瞳に、魅入ってしまった。

「って、何だ、こりゃ!?」

ナギが声を上げると同時に

「ナギさん。ありがと!!」

彼女は、俺から目を外し、ナギの元へと向かって行った。

それと同時に、固まっていた俺は、ようやく動ける様になる。

彼女のいた所には、金髪の少女もいた事に、今さら気付いた。
ただ、その姿は、少し綺麗過ぎた。

「何言ってんの??」

首を傾けている少女を見ると、やはり金髪の少女とは違い、服は所々破れており、肩には痣が出来ていた。

そして、俺とナギの間には、おびただしい数のモノ達が横たわっていた。

礼を言う少女と、横たわるモノ達を見るに、あの少女は追いかけられていたんじゃないか?

その様子が、鮮明と思い浮かべれた。
金髪の少女を身体を張って、守りながら、駆けてくる黒髪の少女。

「いい女だ…。」

気付けば、俺は彼女の目の前で

「俺はジャック・ラカンだ。
名前を教えてくれ。」


名を訪ねていた。


というか、アレだ。
まじぃぞ。発言して思ったんだが、そっけなさすぎた。

しかも、この子の身長って俺の胸よりも小さいんだぜ!?

こんなデカイ人間が、あんな威圧的に名前を聞いたら、絶対ビビって

「オ…僕?
僕は村重徹。」

普通に返ってきた。
しかも、笑み付きでだ…。


度胸も据わっていやがる。
これは、ちっと本格的にヤバいな…。


posted by まどろみ at 00:44| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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