2012年03月30日

第三章 世界放浪編 その16    裏

〜side ナギ〜







「ついに、この時が来たんだな。」

ようやく見つけた、完全なる世界の本拠地。
空中王宮を眺めながら、自然とさっきの言葉が、口から洩れる。

「どうしたんだ?いきなり?」

「いや、徹達と別れてから、なんか随分と遠くに来たなぁって。」

徹達と分かれて、およそ3カ月。
さらわれた、アリカとテオドラを救出したり、敵を倒したり、帝国と連合に同盟を設けさせたりと、騒がしく、忙しい日々を思い出す。

「なんでぇい、おめぇ。らしくねぇぞ。」

「うっせぇ。最終決戦なんだぜ?
ちっとぐらい黄昏たっていいじゃねぇか。」

「ダメだな。つ〜か似合わねぇよ。」

「うっせぇ。」

既に、帝国と連合の部隊の準備は終わっている。
ただ、どうにも万全とは言い難いものではあったが……。

「連合・帝国共に本隊到着まで、どうしても時間がかかってしまう。
どうにかして決戦を遅らせる事は出来ないか?」

連合側の様子を見てくれているガトウが、遠距離念波を使いながら尋ねてくる。
出来れば、私としても完全な状態にしたいんだけど

「……無理ですね。
彼等は既に世界を無に帰す儀式を始めてしまっております。
黄昏の姫御子もまた、彼等の手の内。

もう、限界です。」

3カ月前の事件により、完全なる世界は追い詰められ、なりふり構っていられなくなった。
奴等がやろうとしている『世界を無に帰す儀式』。

この、奴等にとっては存在意義にも等しい、儀式の準備すらも中途半端なまま、不完全な状態でやろうとしているのだ。
何が起こるか分からないという点で、この儀式の脅威は相当な物である。

周りを見渡す。
全員戦闘準備は終わっており、心構えも十分である事も目を見れば分かった。
周りの奴等は皆、私を見詰め、私の言葉を待っている。

全く……。
適当にブラブラしてたら、いつの間にか私も偉くなっちまったな……。

「よぉおし。野郎共!!
行くぜ!!!」





千以上の声が轟き、最後の戦いが幕を開けた。


〜side ラカン〜



「やぁ、『サウザンド・マスター』また会ったね。
貴方の様な強い女性と何度も会うというのは、けして嫌では無いんだがね。」

「なんだぁ?ナンパは間に合ってんぞ?」

くだらない事を言い合いながらも、互いが互いを見極めようと観察している。

「そう言うワケじゃないさ。
ただ、この辺りでケリを付けをつけようじゃないか?という提案だ。

そもそも、僕としてもナンパするのだったら、もっとおしとやかな女性を選ぶしね。」

「ぜってぇ、おめぇボコす!!!」

叫びながら、一人、白髪男へと特攻していくナギ……。
おいおい。

敵側としては、一対一で正々堂々なんてやる必要はない。
白髪男の左右に居た奴等、全員がナギを仕留めようと、攻撃を繰り出す。

まっ

「そんなに、簡単にやらせはしねぇんだがな。」

男の振り上げられた拳を握る。
そして、その手を力尽くで引っ張り、そのまま顔面へストレートをぶち込んでやった。

「たくよぉ、だいたい女一人に、野郎が5人ちゅうのはどうなんだい?」

何となくの感覚で、上手い事全員が一対一に持ち込めたっていうのが分かる。
つ〜事はだ。

俺は、コイツをブン殴りゃいいっちゅうわけだ。

ただただ、打つ。
正面からの打ち合っているせいで、さっきみたいに、上手く拳がはいらない。

だからこそ、ただただ打つ。
回転を上げ、威力よりも手数を増やす。

体中が酸素を求めるが、それを無視し、打つ。
速く、速く、速く。

求めるは乱打。
競うは耐久力。

下がれば、そのまま攻め込まれる。
打つのをやめれば、拳の嵐に巻き込まれる。

故に、俺と奴は足を止め打ち合う。


既に、拳の速度は互いが認知出来る速度を超えており、相手の目線と長年培った勘で避け、防ぎ、撃墜させる。

打つ、打つ、打つ、打つ。


そして、出来あがった僅かな間。
吐き出し続けた息を、奴は僅かに吸った。

その瞬間、奴は嵐に巻き込まれた。








「ぶはぁああああ。
疲れた……。」

周りを見渡すと、詠春、アル、ゼクトの方もほぼ同時に終わっていた。

そして、ナギはというと……。

「見事……。
理不尽までの強さだ。」

白髪男の喉元に稲妻の槍を突きつけていた。

「黄昏の姫御子はどこだ?
……消える前に吐け。」

2人は言葉を紡ぎ続ける。

「フ…フフフ……。
まさか君は未だに僕が黒幕だと思っているのか?」

男が呟いた瞬間


バシュッ……。


一筋の光線が、男とナギを貫く。

光線の元をたどると、僅かに揺らめく影が見えた。

「いかんッ!!」

一番初めに反応したのはゼクトであった。
ゼクトは複雑な幾何学を描く魔法陣を何重にも発動させる。

「むっ!!」

咄嗟の反応。
何かに気付いたワケでも、何かが見えたワケでも無かった。

ただただ、ゼクトが示す方向に腕を伸ばし、気での防御をしただけ。
ゼクトの行動につられて反応しただけだったのだが……

それは正解だった。

気付けば、目の前にバカみたいに魔力が込められた魔法が迫っていたのだ。

「ぬぅううっ。」

無理やり、抑え込もうと、さらに気を込めるが


ボキュっ


腕が引きちぎれた。

「バ、バカな……。」

ゼクトの防護陣を貫通し、さらに俺の気を限界まで込めた防御すらも腕ごと持って行ったのだ。あまりにも、力が違いすぎた。

地が削れ、舞っていた粉塵が、風により晴れる……。

そこには、ソレが立っていた……。



体中の細胞が警告をならす。
背筋が凍り、冷や汗が流れ続ける。

格が違うんじゃない。
存在その物が違っていた。


「ぐっ……。」

何とか、立ち上がろうとするが、身体が動かない。

「こっから後は、私に任せな。ラカン。」

肩に穴をあけながらも、ナギは立ち上がっていた。

「いけません!!ナギ!!
その身体では」

血を流し過ぎて、朦朧とする意識の中、ナギとアルのやりとりが聞こえてくる。

途切れ途切れで聞こえてくる、声から判断するに、ナギとゼクトの2人であの化け物の下へと向かうとかなんとか……。

「待て、ナギ。

奴は……別物だ。態勢を立て直せ。」

「バーカ。んなコトしてたら間にあわねぇよ。


任せておけ。無敵のサウザンドマスター様が何とかしてやるからよ。」


「ダ、メ だっ、行くな。行くなナギ……」

「とりあえず、両腕の止血を。」



コヒュー、コヒュー……。

「ダめだ、アレは別だ……」

朦朧とする意識の中、ナギへと向け、ただただ言う。
体中が警告を発しているのだ、マズイ、逃げろ、勝てないと。

それをナギへと伝える。

あれは、だめだ

コヒュー、コヒュー……。

「ラカン!!
ナギは既にいませんよ!?

ラカン!!聞こえてますか!?」


〜side アル〜



コヒュー、コヒュー……。

普通では無い呼吸。
喉に穴が開いた?それとも肺??

詳しい事は分かりませんが、とにかく今のラカンの様子が普通ではないという事は分かる。

「ラカン!!ラカン!!聞こえてますか!?」

魔力が少しでも残っていれば、治癒を掛ける事も出来たんですが、ナギの治療に全ての魔力を使ってしまい、まともな物が出来ない。
とりあえず、気休め程度にはなるかと、治癒を唱えますが、発動すらしてくれません。

ラカンと詠春。
2人は動けないナギを守るために、身を盾にし、あの一撃の直撃をくらいましたからね。

やはり、ダメージは私達3人と比べてかなり大きいでしょう。

せめて、両腕から流れる血を止める必要がありますね。
すでに、意識を失っている可能性もありますから、気道の確保。

呼吸音は可笑しいですが、とりあえず、呼吸はしている。

「ぐっ、ナギ……。」

どうやら、詠春も目を覚ました様だ。

「助けに、助けに行かなければ……。」

言いながら、詠春は起き上がろうとしている。

「いけません。詠春!!
死んでも可笑しくない怪我なんですよ!?」

くっ、詠春の怪我も見る限り非常に危ない。
ただ、安静にしていれば、死ぬ事はないはずだ。

私に少しでも魔力があれば……。
いや、でもあの時はナギに全てを託すしかなかった……。
そもそも、ラカンの怪我についてしっかりと、察知できなかった私の責任です。

救助が来るまでの間、何とかなれば良いんですけど……。


「むっ?
なんでお前達がこんな所にいるのだ?」


〜side ナギ〜



ドッ

体中の魔力という魔力を、右拳に溜めこみ、奴へと打ち込んだ。

「くはっははははは
私を倒すか、人間。それもよかろうっ。

私を倒し羊達の慰めともなろう。だが、ゆめ忘れるな。全てを満たす解は無い。」

言いながら、打ち込んでくる闇魔法を、障壁を張る事で緩和させる。

「グダグダ、言ってんじゃねぇ!!!」

ぶん殴る。

「たとえ、明日世界が滅びると知ろうとも、あきらめねぇのが、人間ってもんだろぉが!!」

殴り、蹴り、溜めた魔力を矢として放出し、そしてまた殴る。
まだ、グダグダと野郎がうるせぇ。

グダグダとワケが分からん事をのたまわって、しかも何だ?人間を救うとか、テメェはそんなに偉いのかよ!?

「人間を、なめんじゃねぇぇえええええええええ!!!」

長年、愛用している杖に魔力をまとわせ、奴を貫いた。



これで、ようやく全てが……。

「私を倒し、お前は英雄となるであろう。」

背後から聞こえる声。振り返ると、そこには

「お、お師匠?」

私の声に反応することなく、お師匠は喋り続ける。

「だが、武の英雄に未来を造る事は出来ぬ。」

呟く、お師匠の周りは魔力が渦巻き、そして少しずつ魔力に指向性を持たせ始めていた。

「破壊しか出来ない愚かな英雄よ。自らに問うがよい。ヒトとは、身を捨ててまで救うに足るものか?
貴様も我が2600年の絶望を知るがよい……。

コイツは、愚かな英雄へとなる貴様への手向けだ。」



そして、紡がれるは、世界を終わらせるための呪文


「リライッ ぶべらっ」



「ん?なんか思ったより衝撃が少ないな??

あっ、アスナちゃん、大丈夫?」


posted by まどろみ at 00:47| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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