2012年03月30日

第三章 世界放浪編 その18    裏

ズドドドドッ

そんな、破壊音で俺は眠りを妨げられた。
出来れば爽やかな目覚め、といきたい所だがダメだったようだ。

目を開けば、石で出来た天井が半分と、アルの顔が半分……。

目が合うと、微笑むアル。

「ようやく、起きましたか。」

「あぁ、起きた。起きたから、顔をどかしてくれ。」

視界の半分を占めるほど顔が近いのだ。
徹だったら、大歓迎なんだが、アルは勘弁願いたい。

「それで、調子はどうだ?」

「調子??
あぁ……、ちと腕がイテェが、悪くわねぇぜ。」

エヴァに聞かれたもんだから、そのまま普通に返事する。

身体を起こし、周りを見渡すと、自分が高そうな城っぽい所の床で寝ていたようだ。

そういや、俺ってば墓守り人の宮殿で寝ちまったんだっけ?

「エヴァンジェリン、ラカンの腕は……。」

「幻肢痛って奴だろ?
魔法性の義手でも与えてやれば治るさ。」

徐々に頭の中の霧が晴れていく。
最終決戦。
拳の嵐。

そして、『奴』の姿。

「おい、ナギは??
ナギはどう……ん??

なんで、エヴァがココに居るんだ?」

「テツと共に誘拐されたそうです。

あっ、そうそう。彼女に御礼しておいてくださいよ。
エヴァンジェリンが治療してくれなければ、多分死んでましたから。」

「おぉ、そうか。エヴァの嬢ちゃん、ありが……誘拐??」

ちょっと待て。
アルの言葉に結構ヤバい事があったぞ。

いや、確かに自分の生命の危機も少しヤバい事なんかもしれねぇが、それ以上にヤバい事だ。

アル曰く、エヴァは誘拐されてココまで来たと言う事だ。
しかも、”徹と共に”……。

OK、とりあえず情報の整理と考察だ。

徹とエヴァは誘拐されてココ、墓守り人の宮殿へと来た。
現在、墓守り人の宮殿では敵対組織の完全なる世界との最終戦争が始まっており、かなり緊迫した空気。

敵対勢力は、僅かな人間と大量な影の魔法による傀儡。
最初は、もっと多くの勢力があったのだが、そいつらの粛清はある程度出来ているので、現在の敵勢力はそんなもんだ。

さて、そんな戦場に誘拐されてきた徹。

しかも、彼女はそりゃもう本当に可愛い女性だ……。




確実に安全だと言えるだろうか?
いや、言えまい!!

「徹はどうなったんだ?」

「……今の所行方不明だそうです。

どうやら、エヴァンジェリンと別々にさせられたようで。」

「私の方は結構警備っていうのか?

その辺が杜撰だったからな。楽に逃げれたよ。

というか、誘拐されたって事にもいまいち気付かないような待遇のよさでな。
普通の豪華な部屋に多くの食料付きだっただけ。さらに鍵すらも掛っていなかったしな。」

つまり、エヴァには何時逃げられても良かったって事だ。
そうなると、この誘拐の本当の目的は徹ということになる。

エヴァがそれだけ良い待遇だという事は、徹もそれほど酷い状況では無いと思うのだが……。

「っと、これで詠春の治療も終わりだ。
まぁ、とはいっても応急処置に過ぎんからな。後で設備の整った所にでも行って来い。」

「ありがとうございます。」

「まっ、貸し1だ。覚えておけよ。」

やっぱり不安だ。
確かに、エヴァに何にも手を出したり、酷い事をしていないという点を考えれば、徹だけに暴力やらチョメチョメやらをやるっていう可能性は限りなく低いと思う。
ただ、その可能性っていうのは低いだけであって、ゼロというワケではないのだ。

確かに、徹は凄い娘(こ)だという事は俺自身良く知っている。
ただ、それ以前に彼女は女性なのだ。

「ぐぐっ……。」

「動いてはいけません。ラカン。

いくら応急手当てをしたからと言って、重症には変わりないんですよ。」

まぁ、確かにな。
自分の身体だ。自分が良く分かっている。
さらに、痛む腕を見てみりゃ、両方ともなくなっていやがるんだぜ??

そんな身体だ。
自分が重傷っちゅうのも分かっているし、下手な事すりゃ死んじまうちゅ〜のも分かっている。
だけどな、それでも……。

「惚れた女のためだ。ここで動かんかったら、男が廃るってもんだ。」

腕が無いせいで、滅茶苦茶違和感があるが、何とか立ち上がろうと身体を起こす。

「……お前の気持ちは分かった。
とりあえず、寝とけ。」

エヴァの声が聞こえたと思ったとたん、視界が闇に落ちた。

気を失う寸前見た、エヴァの顔は何故か苦々しかった。


〜side エヴァンジェリン〜



「ありがとうございます。
ホントは私がやるべき事だったのかもしれませんが……。」

「せっかく治療したのだからな、無駄に広げて欲しくなかっただけだ。」

少し、本当に少しだが、自分の命を賭けてまで、テツを助けに行こうとしたラカンが眩しかった。
確かに、テツが危険に陥れれば、私も助けに行こうとするだろう。

それこそ、命を賭して。

だが、テツはそんな危険になった事は殆どない。
テツのためにと覚えた治癒の魔法も、他の者に使う方が多いほどだ。

数回、ほんの数回、彼の危険を助けた事はあるのだが、自身が不老不死故、命を賭けるという状況にはなった事はなかった。

テツをこうまで思ってくれている事が嬉しい。テツへの思いで負けた様で悔しい。
そんな、下らぬ感情が胸を渦巻いていた。

「……ラカン、心配そうでしたね。」

「まぁ、徹だし大丈夫だろ。」

正直に言ってしまえば、これに尽きる。
人々の動きを読む計算能力。
どんな所に居たとしても、自分の望む結果をだす柔軟な思考。

それを考えれば、過小評価しても十分に無事だと考えられる。

確かに、心配ではあるが……。

「そういえば、ラカン。
この前指輪を買っていましたよ。

かなり良い奴。さらに魔法で伸縮自在の物を。」

「おい、まさかそれは……。」

嫌な予感がしてならなかった。

「えぇ、この戦いが終わったら徹にプロポーズするつもりのようです。」

「バカだ。アイツはバカだ!!!」

何度も何度も何度も、私達はテツは男だと言っているにも関わらず……。
しかも、プロポーズだと!?

「えぇ、私も『それは死亡フラグだからやめておきましょう』って再三忠告したのですが、無駄でした。」

「って、そっちか!!
そっちを注意したのか!?
徹が男だからと教えるべきだろ!?」

「いえ、その辺はもう既に諦めました。」

「そこは、一番諦めてはいけない事だろ!?」

いつも笑顔を見せているせいで、全く分からなかったが、どうやらアルもアルで結構精神的ダメージがあるようだ。
しかも、そのダメージが大きすぎるせいか、変な方向に達観してしまっている。

「テツとラカンでしたら、きっと素晴らしい家庭を持つ事が出来るかと。
あっ、きっと子供は二人ですね。
テツに良く似てのんびりとした長男、そして妹はラカンに似て少々活発な」

「出来るか!!アイツ等は男同士なんだぞ!!!
どうして、子供が出来るのだ!?」

なんか、アルも色々と限界が近い様だ。

「仲間を応援するのが、本当の仲間の様な気がしてきまして。」

「仲間だったら、間違いを正すべきだろ!?」

「私にも、結構重要な使命があったりするんですよ。
私のマスターが友を思って頼まれた重要な使命が……。

でも、ラカンのために、その使命を少し歪曲しちゃっても良いかなって思い始めるようになりまして。」

「話の前後がどうしようもないほど繋がっていない!!!」

何とか、何とかしてアルを正気に戻そうとしていると

ズズン

突如大きな破壊音が鳴り響いた。
反射的に、その方向へと顔を向けると、ナギが『奴』に拳を決める姿が視界に映る。

そして、フード姿のモノが黒い霧となり霧散する様子だった。

「いやはや……。
まさか、倒してしまうとは……。」

あんな軽口を叩いていた割に、緊張状態にあったらしく、アルは深いため息を吐くと同時に肩の力を抜く。

「これで、一通りの戦争は終わったのか??」

「えぇ、そうです。
まさか、ナギがあの化け物を倒すとは……。」

ふむっ

「まるでナギが負けると思っていたみたいではないか。」

「事実思っていましたよ。


……勝っちゃったみたいですけどね。」



『金髪幼女はぁはぁ』



「念波が来たみたいですね。」

「……貴様、先ほどの奴はなんだ?」

「着信音ですが??」

「そんな、アホみたいな着信音、今すぐ変えろ。」

「フフフ。
ナギ、全く驚かれますよ。貴方には。
貴方はいつも私の予測を」

「人の話を聞けぇ!!!」



posted by まどろみ at 00:48| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
凄い!面白かったです!
面白い上にしっかり過去編の最終章まで続けてるのも凄かった!

正直女装ネタいつまで引っ張るのかと思ってましたが、ここまで来るともはや様式美という感じでしたw
ネギま!のTSネタは基本的に好きでは無かったのですが、何か目覚めさせられたかもしれませんwww
Posted by の腹の at 2012年09月24日 22:11
コメントありがとうございます。

楽しんでもらえたようで、嬉しく思います。

僕としましても、この赤き翼が出ていた頃は結構面白いと思っていたりします。


自画自賛ですw


女装ネタを適当にふっておけば、ラカンが落としてくれるので書き手側としてはとても楽だったりしますw
いやー、ラカンは動かしやすかったですね

>>ネギま!のTSネタは基本的に好きでは無かったのですが、何か目覚めさせられたかもしれませんwww


実はネギ家がTSした理由は、徹君にアリカ(♂)を助けさせたかったからだったりしますw


これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2012年09月27日 22:49
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