2012年03月30日

幕章 赤き翼編 その3

〜side アリカ〜







クーデターによる父王の殺害、完全なる世界との関与、等の疑惑がかけられ、俺は牢屋へと入れられた。

そして、思うのだ。
あぁ、また戻ってきたのだな。と

思い出すのは、幼き時代。
本に囲まれた一室の中で、民を窓から見下ろし続けてた日々だった。

親らしき男と女と並び、2人と手を繋ぐ、少年の姿。
世界で最も自分が幸せであるかのように、満面の笑みを浮かべる彼が眩しく、羨ましかった。

友らしき少年と少女が手を繋ぐ姿。
互いに怒鳴り合い、泣きそうになりながらも、離れぬ手が、俺にはない絆を見せつけられているかの様で、悲しかった。

羨ましく、悲しく、妬ましい。
そんな外の世界。

俺の世界は空っぽだった。

無機質な瞳。
感情の籠っていない言葉。

たった一枚の窓を隔てるだけで、まるで違う世界が広がっているというのに、俺には、そちら側の世界に行く権利がなかった。
いや、行ってはいけなかったのだ。

ほんの少しの間だけ、外の世界に行ってしまった。
これはその罰なのかもしれない。

冷たく、カビ臭い牢屋が随分と懐かしく、そして空しかった。




〜side マクギル〜





「いやぁ〜、マクギル殿。
貴方が証言してくれるとは非常にありがたいですよ。」

「一元老院として、当たり前の行動ですよ。
災厄の王を野放しにしてなどおけませんからね。
これからの平和のためを考えればお安い物ですよ。」

笑みを浮かべながらの会話をし続ける。

「いやはや、マクギル殿の勇気ある行動には感服しますよ。」

「いやいやいや。
災厄の王と完全なる世界の関与を見つけた、貴方の勇気を見せつけられた時、ワシも行動しなくては。っと思いましてな。

せっかく、ワシが帝国と手を結ばせ訪れさせた平和。コレを潰すワケには行きませんよ。」

「確かにそうですな。
多くの者は、帝国と手を結ぶ様に働きかけたのは災厄の王と思いこんでいる。

本当の英雄は誰なのか。
アレを処刑した後、真実をしっかりと広めなくてはいけませんなぁ。」

英雄。
自分が死ぬかと思ったあの時、ワシはその二文字に大いに惹かれた。

あと、どれほどあるか分からない自分の人生。
そんな残り短い生涯を考えるに、唯一、自身が英雄になれる方法ではないだろうか?

幼き頃、憧れた夢。
くだらなく、現実を知らない子供が見る夢……。

それが、叶うかもしれないのだ。

ワシの証言が最後の決め手となり、アリカ王の処刑方法、処刑の日時が決定した。

彼の処刑はケラべラス渓谷にて5日後に行われる事になった。
アリカ王が捕えられて二か月も掛ってしまったが、ようやく決定したのだ。

彼の処刑に関する部隊の作成などやらなくてはいけない事は山ほどある。
何冊かの本を手に持ち、自分の部屋へと向かっていると

「マクギル元老院!!!」

背後から、声を掛けられた。
振り返れば、幼い少年の姿があった。

「おや?どうしたんだい?
クルト君?」

「一体、どうしてアリカ様を裏切るような真似を!?
一体、貴方は何を考えているんですか!?」

「ワシは、英雄になりたいんだよ。

死ぬ寸前になって気付いたんだ。
自分は紅き翼や、テツの様に、輝く英雄になりたいと。

こうすれば、ワシは英雄になれる。」

「そんなの、英雄なんかじゃない!!
そんな方法で、テツさんやナギさんにはなれるはずがない!!」

そんな事は分かっているさ。

「……やらなくてはいけない仕事があるから失礼するよ。」

クルト君に背中を向け、そのまま自室へと向かう。

「貴方には失望しました。」

背中に向けて放たれた言葉が、少し痛かった。




〜side ナギ〜





アリカの処刑が正式に決まった。
MM元老院の生贄として、民衆の恨みをアリカに向けるため、アリカはケラべラス渓谷で、生きたまま喰われる。


私達が命を掛けて戦ってきた返事がこれなのだ。

「なぁ、私達、なんのために戦ってきたんだろうな?」

思わず、私の口から洩れてしまった本音。
皆が思いながらも、けして口に出さなかった言葉を、思わず私は漏らしていた。

「ナギ、それは」

「分かってはいるんだよ。
別に、元老院共みたいな奴等ばかりじゃないって事なんて!!

それでもさ、ようやく戦争を終えてスグにこんな事されたら、どうしたって考えちゃうんだよ……。」


『ヒトとは、身を捨ててまで救うに足るものか?』

変わったお師匠が言っていた言葉が、どうしても脳裏をよぎる。

世界を救った事に後悔はしていない。
それは間違いない。


ただ、それでもやはり疑問に思ってしまうのだ。

どうして、私達は戦ってきたんだろう?と……。





───五日後、ケルべラス渓谷にて───   
〜side アリカ〜





ゆっくりと、一歩踏み出るたびに、俺は死へと近づいて行く。

恐怖はない。
だが、空しいのだ。

「魔獣うごめくケルべラス渓谷。
魔法を使えぬ、その谷底は魔法使いにとって、まさに死の谷。

古き残虐な処刑法ですが、この残酷さをもって、ようやく魔法世界全土の民も溜飲を下げる事となりましょう。」

元老院の小さな呟きが、異常に良く聞こえた。

奪い、奪われるだけの日々。
空っぽの世界の終わりが、今だというのなら、それも良いだろう。

俺ごときが、外の世界の礎となれる事をせめての誇りとしようではないか。


……こんな事を考えているのがばれたら、またテツに怒られちまうかもしれないけどな。
まぁ、最後なんだから許してくれよ?

そういえば、俺の手を取ってくれた礼、まだアイツにしていなかったな。
それが心残りっていえば心残りか……。

なんだ。
俺、空っぽなんかじゃなかったんだな。

全く、最後の最後まで、アイツからは貰いっ放しじゃないかよ……。



「……ありがとうな。」

誰にも聞こえないだろう呟きと共に、俺は落ちた。




〜side クルト〜





止まれ、止まってくれ。

一歩アリカ様が踏みしめるたびに、僕は祈り続け、奇跡を望み続けた。
ドラゴンがアリカ様を助ける。
テツさんが何かの奇跡を起こす。
唐突にMM元老院が崩壊する。

滑稽で、ありえない奇跡だと分かっていながらも、そんな奇跡ぐらいしか、アリカ様が助ける事が出来ないのだ。

分かっていた事だが、奇跡は一つも起こる事なく、アリカ様は思った以上に、あっけなく落ちて行った。


「あ、アリカ様……。」

あまりに、アリカ様の死が軽く、あっけなかったため、胸の内から一番初めに湧き出たのは戸惑いだった。

まだ、頭は理解していない。

けど、目には涙が溜まって行く。
そして、涙腺が崩壊する寸前。

「泣くな、クルト君。」

僕の隣にいた、マクギルが声を掛けてきたのだ。

怒鳴り散らそうとした。
貴方のせいで、アリカ様は死んだんだ!!!と。
裏切り者に怒鳴り散らそうとしたのだが、それより先に、マクギルが声を張り上げた。

「さぁ、処刑はココでお終いだ。
ココから先は、他言無用。

無かった事となる。よろしいかな?」

パチリ
と、マクギルが指を鳴らした瞬間、兵士の全員が一斉に持っている槍を元老院達に向けた。

「「「な!?」」」

「あっ、そうそう。

他の部隊もあてにしない方がいい。
何せ」

マクギルが喋っている途中、渓谷にいる魔獣とは違う、遠吠えが響き渡り、そして空から、ドラゴン達が現れる。

「黒き竜の傭兵団がいるからな。」

黒き竜の傭兵団。
突如、戦争に表れて頭角をだす。
ドラゴン、亜人、人間、精霊と普通では相容れない種族が入り混じっている。
一番上に、姫と称される人間がいる事は分かっているが、それ以外は不明とされている傭兵団なのだが……。

「何故、ココにいるんですか!?」

傭兵団とは名ばかりで、誰からの依頼も受けず、自由を重んじる組織。
それが、こんな面倒な事に手を貸してくれているかが分からないのだ。

「ワシも驚いたんだがな……。
ワシを助けてくれた部隊があっただろ?」

白髪の青年に、転移させられた時の事であろう。

「あの時、助けてくれたのが、あの傭兵団。
さらに、その主がテツでな。」

「そ、それじゃ、アリカ様は!?」

「テツが行ったさ。」

背後からの声に振り返ると

「エヴァンジェリンさんにアスナさん!?」

「少しは手伝いが必要かと思いきや、何もやる事がないとはな……。」
「エヴァ、不満気。」

確かに、ココに居る人間の9割が味方であり、数の暴力で、元老院達は既に壊滅。
周囲数十キロには、二個艦隊と精鋭部隊が三千人いるはずなのだが……。

戦闘音がない事を考えると、黒き竜の傭兵団によって、壊滅しているか、その全てが味方のどちらかであろう。

そんな、あまりにひどいリンチっぷりを考えると、エヴァンジェリンさんの出番がないのは当然と言えば当然であろう。

「ぐっ、こうなれば、紅き翼よ。我々を助けろ!!!」

余裕がなさすぎて、紅き翼に頼り始めた元老院。

「いや〜、助けてやりて〜のは山々何だけどさ。」

にやにやと笑うナギ。

「フフフ、ここに来る前に、貴方達が渡してきたギアスペーパーに契約をしてしまったので無理ですね。」

ちなみに、ギアスペーパーの中身は、今日、渓谷付近での戦闘及び敵対行為の禁止であったらしい。





「というワケだ。

まぁ、テツや紅き翼には負けるかも知れないが、ちょっとは英雄っぽかったろ?」

言いながら、マクギルさんは二ヤリと笑っていた。




〜side テツ〜




死の谷。
とりあえず、不思議パワーが使えなくなる谷らしく、そんな谷でアリカの死刑は行われた。

冤罪というか、何か非常にアリカがややこしい立場に居たため起きた死刑。
友達を助けたい。

たったそれだけ。
でも、俺にとっては、滅茶苦茶重要な事。

そんな酷く個人的な事に大勢の人が力を貸してくれた。

特にマクギルさん。
うん、あの人はマジで苦労させてしまった。
ホント、ありがとうございます。

そんで、唯一オレが活躍できる場がココである。

何せ、ココは気だの、魔法だのが使えなくなる谷。
他の人にとっては、かなりキツイ谷だけど、元から使えないオレにとっては、普段と変わりない所。

まぁ、もちろん、かなり危ないんだけど……。
ココで頑張らないと、男が廃るよね?

ってなワケで、アリカが落ちた時、何とかキャッチ(お姫様だっこ)し、着地をした。

「テ…ツ…?
え…?なぜテツが地獄に…?アレ?」

「ハロー。アリカ。」

ちょっと困惑気味のアリカを落ち着かせようと、何時も通りの挨拶を返して見るが、いまいち戻ってこない様子。
いつもだったら、のんびりと落ち着かせるんだろうけど……。

目の前の魔獣さんが、涎を垂らしだしているので、無理です。

とりあえず、ダッシュ!!

「ぬはははは、日々ストーカーさん達から逃げ回ってきた脚力舐めんって、ダメ!!!
そこは、ダメぇぇえええええ。」

胴が長い!!
っていうか、障害物が少なすぎって、ちょっ、ヤバっ。

「答えろ!!
何故だ!?何故お前がココに居る!?

前、言っていたじゃないか!?
戦いは苦手だと、痛いのは嫌いだと。」

「確かに、戦い苦手だしぃぃいい、痛いのも嫌だけど。
友達見捨てる方が、イヤなんだよ。

って、うぎゃぁぁああああ、オレのマントぉぉぉおぉおおぉお。」

この谷に居る魔獣……。
ミミズ型魔獣っていうの?
とにかく、そんなウネウネってしたバカデカイ魔獣が、オレのマントを食いちぎったワケですよ。

しかも、この魔獣達の口が非常に可笑しい。

今さっき気付いたんだけど、口が二段構え何ですよ。
つまり、口の中に、チッコイ口があるっていう状態。

より、餌を砕ける様にするために、行った進化なのかも知れないけど……。あまり頭の良い進化だとは思えない。
っていうか、それだったら前歯を増やすんじゃなくて、奥のすり鉢状の歯を作るべきだと思う。

そんな、作業効率面で見たら失笑物の口だが、ビジュアル的観点から見ると、非常に恐ろしい。
あんな口の様子見せられたら、冷や汗ダーダ−。
ちょっと、チビっても可笑しくないレベルである。

「テツ、自分が何を言っているのか分かっているのか!?

俺は、災厄の王だぞ!?
こうして、死ぬ事でしか、価値が生まれない災厄だ。

そんな、存在を助けるのに、命など賭けるな!!

お前一人だったら、まだ逃げれるだろう?
だから、さっさと俺を捨て置け。

俺が喰われている間に、逃げ」

「うっしゃい!!」

うるさい、と叫んだつもりだったのだが、興奮のしすぎで、噛んだ……。
うぅ、べろが痛い……。

とりあえず、ウネウネ魔獣を死にそうになりながら避けながら、オレは続ける。

「価値だの、死ぬなど、難しい事、今言うな!!
そんな、難しい事言われても、まともな返事が出来なぁぁあああああい。

っちょ、魔獣さん。いま、攻撃しちゃいけない場面でしょ!!!
空気よんでぇぇぇぇぇえええええぇえええええ。」

喋っている途中と、変身シーンでの攻撃は、禁止されているでしょうが!!

「なっ!?」

オレの呆れた発言に驚くアリカ。
まぁ、漫画とかの主人公だったら、ココで一発カッコいい事を言いながら、華麗に助けだすんだろうけど、オレには無理。

「だぁ、とりあえずアリカが、大切だからオレは助けたいの!!」

「……へ?」

死ぬか生きるかの追いかけっこ中。
もう、アドレナリンがガンガン分泌されており、自分でも何を言ってるのか分からないような状態。

「ぬぉぉおぉおお。

秘技、ジャンピング崖登りぃぃぃいぃいいいい。」

ジャンピング崖登り。
ジャンプしながら、崖を登るという恐ろしい必殺技である。

ジャンピング崖登り(ジャンプで崖を登る)、ハイジャンプ(頑張って、高くジャンプする)、空中ドルフィンキック(少しだけ、浮遊時間が延びるような気がする)

の三連コンボのおかげで、何とかクロちゃん(黒龍)の背まで逃げ切る事が出来た。
うん、ホント生きた心地しない。


僅かに沈み始めた夕焼けのせいで、アリカの顔は僅かに赤く見えた。
一方のオレは、命の危険だったり、アリカの危険だったりで、多分顔は真っ青であると思う。

ナギさん達とは違って、肝っ玉が滅茶苦茶小さい自分にチョッピリ絶望した。



でも、まぁ〜……。

オレにしては頑張った方だよね?



posted by まどろみ at 01:02| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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