2012年03月30日

幕章 麻帆良編 その2

幕章 麻帆良編 その2

僕は、呼ばれたんだ。

声が聞こえたんじゃない。
手招きされたワケじゃない。

でも、呼ばれたんだ。

おいで、おいで。って。

だから、僕はそこに行った。
真っ暗で、ちょっと怖い森の中を歩いた。

いつもだったら、いっぱい怖いはずなんだけど、ちょっとだけだった。
だって、優しかったから。

暖かくて、ポカポカ。

木の枝が、葉が、土が、鳥が……。
みんな、みんな、包んでくれていたから。

みんなに手を引かれ、僕は歩いて行く。

『ココ、ココ。
言われた、頼む?、約束。』

声が聞こえて、周りを見渡すけど誰もいない。
風がふわりと、僕の髪の毛を揺らした。

気付いたら、僕は広い場所に着いた。
真ん中に、おっきいな石の板みたいなのがある、広い場所。

近くに行ったら、模様が描かれているのが分かる。

ウネウネの、ミミズみたいな模様。
ぐにゃぐにゃで、繋がっていて、ふにゃふにゃ。

「それはな、墓だ。」

振り向いたら、男の人がいた。

「お墓?」

「そう。墓だ。

謝りたくて、謝りたくて、どうしようもなくて……。
そんな男の墓さ。」

「???」

「あぁ、すまないな。
確かに、これじゃ分からないよな。」

男の人は微笑んでいた。
でも、口だけ。

なんか、寂しそう。

「……君は、迷子か?」

「迷子??」

周りは、僕が全然知らない景色。
そして、ココも全然分からない所。

「うん、迷子。

おじいさんも、迷子?」

「おじいさん??

君には、オレが年寄りに見えるのか?」

聞いてくる男の人。
僕とは違う、高い鼻。

皺は一つもないし、白髪も全くない。

「見えない。

でも、おじいさんだよ?」

お兄さんに見えるけど、おじいさん。
うん、やっぱりこの人はおじいさんだ。

「くっ、くくくく。

そ、そうか。」

噛み殺した笑いだったけど、おじいさんの笑顔は、さっきのとは違う本物だった。
喜んでくれるのは嬉しいんだけど、なにが面白いのかな?

「おじいさん、どうしたの??」

「くっくくく。

マギだ。
オレの事は、マギと呼んでくれ。」

マギ。
おじいさんの名前みたい。

マギだったら、マーちゃん、マー君のどっちかが良いよね?
やっぱり、男の人だからマー君?

うん、マー君だ。

「分かった。マー君。」

マー君、何かびっくりしてる。
どうしたのかな?

「君……

の名前も教えてくれないか?」

「僕?

僕の名前はね……。」



〜side マギ?〜




一瞬一瞬で、この子供は表情を変えていた。
笑い、困り、そして悲しそうに。

黒い髪と、吸い込まれそうな、漆黒の瞳が、かつての友を彷彿とさせた。

不思議な子供だった。

世界を読むとでもいえば良いのだろうか?
オレと同じ物を見ているはずなのに、全く違う世界を眺めているようであった。

初見で、オレの正体に何となく、気付いている。
その異常性もまた、古き友を彷彿させた。

「マギだ。
オレの事は、マギと呼んでくれ。」

「分かった。マー君。」

いいながら、微笑む少年の顔を見て、オレは固まった。

完全に固まった。


その、少年の微笑みが、『アイツ』とそっくりで……。
オレを、『マー君』と呼ぶ、呼び方が『アイツ』のようで……。

あまりに、この子が『アイツ』に似すぎていて、オレは固まっていた。

「君……」

君は、一体何なんだ?
問おうとするが、無理に区切る。

目の前の、この純粋そうな子が、こんな質問されても、どうしようもないと、分かりきっていたから。

だから、無理やり方向性を変える。


「の名前も教えてくれないか?」

君の名前も教えてくれないか?


途中、変な”間”があったが、即興にしては、上手く誤魔化せたと思う。

ただの、誤魔化し。
その質問の答えに、大した期待もせず、ただただ適当にした質問。

そんな、どうでもいい質問に返ってきた答えは




「僕の名前はね、てつ。

むらしげ てつ。」



思いの他、重要であり、自分が求めていたモノであった。



『村重 徹』

オレ達を、輝かし続けた太陽であり、偉大な友でもあった男の名だった。


徹と、共に居た時の記憶は、もう何百年も前だというのに、鮮明に残っていた。

まぁ、自分がそう作られたというのもあるが、オレにとって、それだけ大切だったというのも事実である。


そして、ふと思い出す記憶。
まだ、自分の名を彼に教えていなかったというのに、唐突にオレの事を『マー君』と呼び始めた事。

その時は、別の奴に聞いたのかと思ったが……。

もし、そうでなかったら……。

様々なロジックを、頭の中で組み立てていく。

そして、今さらオレは気付く事となる。


この少年が、認識阻害の魔法を避けて、ココにたどり着いたという事に。

そもそも、ココは徹とエヴァンジェリンの2人が何時か来るだろうと、想定して残したものだ。
登録された者以外は入ってこれないように、認識阻害の魔法を掛けてある。

もちろん、偶然や、事故の可能性もあったが……。

オレは、彼の魔力情報を読み取る。


そして、涙した。


登録された徹と、全く同じ情報が彼の魔力から読み取れたから。

長い時を待ち、ようやく会えた、この瞬間。
そして、コレから訪れるであろう、少年の辛く長い人生を思い、オレは涙した。


あぁ、そうだったのか……。


ようやく気付く。

徹は、何処の世界の人間だったのかを。


ようやく知る。

徹が、ココへ、皆を導けた理由を……。


ようやく辿り着く。

徹が、オレを初めから友として扱ったワケを。



徹は、幼い頃にココへきていた。
故に、魔女狩りの際、皆をココに導けた。

徹は、幼い頃、オレと友となっていた。
故に、初めから友としてオレを扱った。

徹は、遠い遠い未来の住人だった。
そして、不老不死という重荷を背負わされ、何処とも知れぬ過去に送られた。

なにも知らぬ、知人は誰もいない、まるで違う世界に送られた。


気付けば、オレは徹を抱きしめていた。
泣きながら、抱きしめていた。


あぁ、世界は何処まで残酷なのだろうか。

そして、オレは一言呟く。


「すまない。」


それは、本当に色んな物を込めた物であった。

彼が陥るであろう、残酷な運命。

コレを、オレには覆す事は出来ない。
どんなに頑張っても、過去があってのイマなのだから、無理なのだ。


分かり切った事ではあった。
何度も、思った事でもあったが、思わずにはいられなかった。






世界というのは、どうしてこんなにも



優しくないのだろうか。










数時間ほど、共に居た後、オレは徹を出口まで案内した。
家族と共に旅行中で、偶然ココに来たらしい。

恐らく、彼の家族達は近くの村に居るであろう。
ここから村までの距離は100メートルもない。

事実、コチラ側では、村が既に見えていた。


「徹、あそこが村だ。

早く帰って、両親を安心させてやれ。」

言うと、徹は一つ頷く。
そして、溢れんばかりの笑顔でオレに言うのだ。


「ありがとう。

またね。」


「あぁ、またな。」

多分、この時のオレは穏やかな笑みが浮かんで居たんじゃないかと思う。

徹の後ろ姿が徐々に村へと向かっていく。


それと同時に、オレの身体が光の粒子へと徐々に変わって行った。


オレは、タダの記憶。

マギという存在は遠い過去に、既に亡くなっている。
オレは、そんなマギが残した唯の記憶であり、記録。
確かに、オレはマギであるが、本人では無い。

マギの強い思いに、精霊達が導かれ、作った存在に過ぎない。

マギ自身も、自分の分身が作られているなど、想像もしてないだろうな。







役目を終えたのだから、消えるっていうのも仕方ないだろう。
消えるっていうより、元に戻るっていう方が正しいか?

まぁ、どちらでも良い。

とりあえず、マギ。
こちら側が一方的にした約束だったが、とりあえず果たしたからな。



最後の最後。

身体が薄くなり、存在すると、しないの境界。


そんな一番最後に





「またな、徹。」



何故か、そんな呟きが漏れた。


posted by まどろみ at 01:05| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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