2012年03月30日

幕章 麻帆良編 その4

〜side アスナ〜







「本当によろしいのですか?」

「いい。
だけど、アル……。

本当に……」

「えぇ、大丈夫です。
記憶は消えますが、貴方の思いはけして、消える事はありません。」










目を覚ませば、目の前にフードを被った男がいた。
細い眼、口には微笑みが張り付いている。

「おはようございます。
明日菜さん。」

「……あすなさん?」

おはようございます。は分かった。挨拶だって。
だけど、あすなさんってのが、分からなかい。

頭の中で、単語を巡らすが、もっともらしい物が出て来ない。

「貴方の名前ですよ。

神楽坂明日菜。
コレが、貴方のフルネームです。

あっ、そうそう。私の名前はアルビレオ・イマと言います。
これからよろしくお願いしますね。」

そう言いながら、アルビレオ・イマは笑みを深くする。

「分かった。」

「それは良かったです。

それでですね。
麻帆良に一緒に行きましょうか。」

アルビレオ・イマが言った取りとめのない言葉。
話しの前後は違和感があり、いきなりマホラっという場所に行こうという。

何故?どうやって?そこは何処なの?どういった所なの?

初対面の男からの言葉だ。
それぐらいの疑問は持つべきでだった。

さらに、自分の身体は5、6歳程の幼い女性のモノである。
誘拐や人買いの可能性も十分にあり、出来るのなら周りの助けを呼ぶ、叫ぶと言った行動が必要な場面であるかもしれない。

だというのに、何故か、そういった懸念がなかった。

「分かった。」

言うと、アルビレオ・イマは少し困った様に苦笑いをする。

「素直なのは非常に助かりますが、そうやって知らない人をスグ信用してはいけませんよ。」

「大丈夫。普通だったらそうする。
アルビレオ・イマは特別。」

言うと、アルビレオ・イマは少し笑った。




〜side 徹〜





世の中には、正解がない事柄が多い。
こんなんでも、一応500年以上も生きているんだから、そんな事は分かり切っていた。

そして、案外、正解がない事柄ほど難しい問題で、重いという事も経験上分かっていた。

だけど、それでも思わずには居られない。
考えずには居られなかった。

正解ってなんなんだろう?っと。


アスナちゃんという子の立場は非常に複雑だった。
とはいっても、オレも全部知っているワケじゃないんから何とも言えないんだけど……。

とりあえず、彼女はその体質から魔法兵器として使われていたらしい。
初めて会った時も、その儀式の真っ最中だったらしい。

少しでも長い間、兵器として使えるように、成長しない時の魔法を掛けられる。
扱いは人としてではなく、兵器として扱われる。
自分の意志では無いのに、幾多の人を間接的に殺してしまう。

これでは、彼女から表情がなくなって当たり前だ。

そして、アスナちゃんを助け出した後。
ようやく人間としての時間が始まり、その時間には不必要な時の魔法を解除しようとした時、新しい問題が発生する。

時の魔法を解除する際、その間の記憶は消えてしまう。

思い出す可能性もある事はあるのだが、それでも可能性は限りなく低い。

はぁ……。
思った以上に重いため息が出た。

隣に居たエヴァちゃんが、オレを見つめてきたので、頭を撫でて誤魔化す。

「子供扱いするな。」

と、少し怒った様子で言いながらも、撫でる手は払われないので、そのまま撫でておく。





記憶がなくなる事が良いか、悪いかは、オレには判断できない。
だって、人殺しをした事や、物扱いされた時の記憶は、彼女が幸せになるには邪魔な記憶だろう。
でも、だからと言って、それを消してしまう事が正しいのか、悪いのかは、分からない。

そんな状況の中、アスナちゃんは決めた。

記憶を消すと。


どんな思いで、コレを決断したかはオレには分からない。





気付けば、アスナちゃんとアルが乗っている電車が到着していた。
ラッシュの時であれば、別なのだが、平日のお昼というこの時間帯である。

降りてきたのは、数人程度。

そのため、ゆっくりと改札口を通る、アルとアスナちゃんを簡単に発見できた。
どうやら、アルが気付いたようで、アスナちゃんを連れて歩いてくる。

エヴァちゃんの頭から手をどかす。

大した距離ではないので、2人がオレ達の目の前に来たのはスグだった。

そして、オレは言うのだ。
笑顔を浮かべながら


「ようこそ、麻帆良へ。

初めまして。明日菜ちゃん。」




〜side 明日菜〜





脳内にある単語。
意味は知っているけど、理解が出来ないような単語がいっぱいあった。

それは、家族だったり、友情だったり、と本当に多くある。


恋だの、愛だの、っと言った物。
これもまた、理解出来ない物である。

そして、惚れるという事も、同じように理解出来ない物である。

いや、正確には”あった”と言った方が正しい。


アル(そう呼ぶ様に言われた)に付いて行く。
目的地に到着するまで、三日ほど掛った。

そして、ようやく目的地に着いた時、彼はそこに居た。

優しく笑みを浮かべながら、金髪の少女を撫でる彼が……。

急に、胸が痛くなる。
ただ、この痛さは外部からの暴力、内側からの破壊とは全く違う種類の物。

キューと言った感じで、締め付けられるような感覚。
そして、勝手に頬は上気し、何故か涙も出そうになる。

いわゆる、一目惚れという奴だ。

彼は、私達を見て、深い笑みを浮かべる。
隣に居るアルは、軽く手を上げ、彼とコンタクトを取った。

どうやら、知り合いらしい。

そして、アルは彼に向って歩いて行く。
必死に、自分の変化を表に出さない様にしながら、付いてく。

彼の前に到着した時、彼は言った。


「ようこそ、麻帆良へ。

初めまして。明日菜ちゃん。」


その時の、声の優しさに、あまりに綺麗な笑顔に……

私は落ちた。

何か言おうとして、気付く。
私が、彼の名前すら知らない事に。

「……名前。」

たったコレだけの言葉。
それなのに、彼は分かった様で

「オレは、村重 徹。

そんで、こっちはエヴァちゃん。」

金髪の頭をポンポンと叩きながら、答えてくれた。

「ちょっと待て、テツ。

ソレだと、私の名前が勘違いされる可能性が高いぞ!!」

言う、エヴァ・チャン。

「もう良い、自分で言うわ。

良いか?私の名前は、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだからな。
覚えておけ。」

コクリと頷く。
とりあえず、エヴァンジェリンの名前も分かったが、優先度は低い。

そして、行うのは脳内探索。

徹が(多分)惚れた自分が、何を行えば良いかを頭をフルに回転させて考える。

とりあえず、自分だけが好きじゃいけない。
相手も好きになってくれないとダメ。

お互いに好きだと、結婚し、子供を産む。

つまり、子供が出来ると、互いに好きになる??

だったら、子供を作れば良い。

どうやって?
方法は分かるのだが、どうすれば徹がその気になってくれるかは不明。


「徹と私の子供が欲しい。」


とりあえず、素直に頼んでみた。


posted by まどろみ at 01:06| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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