2012年03月30日

幕章 麻帆良編 その5

〜side テツ〜







「徹と私の子供が欲しい。」


この時、間違いなく世界は固まった。
さて、今どんな状況か考えてみよう。

4、5歳の女の子が、ボディー年齢17歳のオレに向かって、子供が欲しいという。
何と言うか……。

非常に不味いんじゃないか?
この状況。

そして、状況はもっと悪くなる。

「まて、貴様。

徹との子は私が産むんだからな。」

まさかのエヴァちゃん参戦である。

「だめ。
私が産む。

理想は、初めに女の子、次に男の子を産む事。
でも、徹が望めば、何人でも産む。」

「私だって、テツが望むのなら、何人でも産んでやるさ。」

「私、良い奥さんになる。

料理も、掃除も頑張る。」

「そんななりで、何が出来るというのだ?

そもそも、女は尽くすだけじゃいかんさ。
テツを支え、家を守ってやれるのは私だけだ。」

「エヴァ、自意識過剰。

そんなの、当たり前。私だって出来る。
出来なくても、出来る様に努力する。」

10歳ボディーのエヴァちゃんと、5歳ボディーの明日菜ちゃんの口喧嘩。
喧嘩の内容は、どっちがオレ(17歳ボディー)の子供を産むか……。

平日のお昼時。
人はあまり居ないとはいえ、けしてゼロというワケでは無い。

子供通しの微笑ましい喧嘩として、見てくれれば非常に助かる。

というより、エヴァちゃんと明日菜ちゃんの普通の喧嘩だったら、ココまで周りの視線が気にならないであろう。

『テツ、結婚しよ。』

『まて、貴様。

私がテツと結婚する。』


みたいな感じだったら、非常に微笑ましいであろう。

だが、2人とも見た目とは裏腹に、持っている知識は非常に高い。
それ故に

「そもそもだな、貴様。

始めては痛いんだぞ。」

「知っている。

でも、テツに捧げられるのだったら、きっと幸せ。」

「くっ、甘い。甘いぞぉ。

奴のモノの大きさを、貴様は知らないだろ?
そんな小さいナリじゃ、受け止められんさ。」

「逆を言えば、それだけ深く徹と繋がれる。」

この様な、微笑ましいとは言えない、色々とギリギリすぎる会話になってしまっているのだ。

周りから非常に痛々しい視線がビシビシと突き刺さるぜ。

アルに助けて貰おうと、視線を送ると、非常に良い笑顔が返ってくる。
どうやら、助けるつもりはないようだ。


どうやって、この場を収めよう?

頭を悩ましているうちに、ちょっとした疑問が脳裏によぎる。
それは、すなわち

どうして、明日菜ちゃんは、いきなりこんな事を言い出したのか?

である。
エヴァちゃんが参戦した理由は何となく分かる。
いわゆる、兄を取られたくない妹、又は父を取られたくない娘のような気持ちであろう。

オレとエヴァちゃんには明確な繋がりはない。
まぁ、500年も一緒に居たんだから、親愛だったり、家族愛だったりという繋がりは勿論あるし、オレもエヴァちゃんも、互いの事を大切に思っている。

それでも、血の繋がりや、夫婦といった、明確な繋がりがないため、急に不安になったのであろう。

勿論、そんな不安など感じる必要はない。
500年も共に居続けたのだ。
そんな明確な繋がりがなくても、十分互いに繋がっていると、オレは思っている。

さて、問題は明日菜ちゃんの方だ。
彼女にとって、オレは初対面の男。

思いは無くならないとはいえども、記憶は無くなっているのだ。
そんな、彼女が、記憶がなくなる前に仲良くしていたからと言って、はたして唐突に、『徹と私の子供が欲しい。』などと言うであろうか?

普通であったら、言わない。
それは、間違いない事だ。

では、一体何故?

徹との子供が欲しい。
徹の子供を産みたい。

強情と言えるほど、明日菜ちゃんが、言う理由。

そして、記憶は消えるけど、思いは消えないという、アルの言葉。

笑顔を浮かべない、アスナちゃん。

無感情な表情で、肩車された男の子を眺めるアスナちゃん。

子供が欲しい。
2人。
でも、オレが望めば、何人でも……。

そして、良い奥さんになるという発言。

全部、分かった様な気がした。

記憶は消えるけど、思いは消えない。

それは、オレやエヴァちゃん、紅き翼の面々といった、知り合いに対する情を忘れないというのも確かだが
逆に、家族の情を無意識のうちに求めた思いも、自信を空っぽだといった虚無感も忘れていないと言う事。

表面上の記憶は失われているけど、奥深くに燻ぶる思いは何も変わっていない。

アスナちゃんは、オレに懐いていた。
残念ながら、彼女を笑顔にさせる事は出来なかったが、それでも嬉しそうにオレに肩車されていた。

そして、彼女は家族という物を、無意識のうちに求めていた。

この二つの思いが、彼女の中で渦巻いた。

そして、その疼きが出した答えと言うのが

『この男と家族になる。』

であったのだろう。

そして、明日菜ちゃんの中で、家族になる=結婚。
結婚とは、子供を産む事。

という、過程を経て、あのような発言が出てしまったのであろう。

コレが、正解かどうかは分からない。
もしかしたら、明日菜ちゃん本人だって、分かっていないのかもしれない。

でも、オレには、そうとしか思えなかったのだ。

「大体、お前みたいな小さな口ではしっかりと入るはずもない。」

「大丈夫、舐めるから。

そもそも、後数年したら私だって成長する。
とりあえず、今は今の良さを堪能して貰う。」

まだ、ギリギリの話をしている2人の間に、割って入るオレ。

「むっ。」

「徹?」

ギリギリな議論は、これだけで収束をみせた。
なんていうか、もっと早くやっておくべきだった。

とりあえず、ヤバい状況の打破は完了した。
そして、次は明日菜ちゃんの希望を叶える番だ。

「と言うワケで、明日菜ちゃん。

家族になろうか。」


「なっ……」

「うん。」


2人の反応は正反対であった。

明日菜ちゃんは、喜び。
そして、エヴァちゃんは、絶望。

明日菜ちゃんの喜びっぷりは、一目見れば分かった。
何せ、笑顔が見れたのだ。

初めて見る、彼女の笑顔。それはとても、愛らしかった。


ココで、問題なのはエヴァちゃんの方である。
青い顔をし、彼女は今にも泣きだしそうに、目には涙をため、唇を震わせているのだ。

鈍感なオレだって分かる。
エヴァちゃんは自分が捨てられないかと、怖れているのだ。

何百年も2人だけで居続けた。
それだけ、繋がりが強いとも言えるだろうが、逆に言えば、それだけ変化がなかったのだ。
故に、エヴァちゃんはこの変化が怖かったんだと思う。

「大丈夫だよ。
エヴァちゃん。

君を手放すつもりもないから。」

膝を付き、2人に目線を合わせながら、2人を包み込む。
右手にエヴァちゃん。左手に明日菜ちゃんが、すっぽりと入る。

「片方は愛人?

いきなり、浮気?」

「一体、どう言う事だ?
つまり、奴は昔から私を女として見ていたのか?」

腕の中でぶつぶつと、何か言っている様だが、声が小さい事、さらに二人同時に喋っていたため、いまいち何を言っているのかは不明だった。

「妹なのか、娘なのか……。

どっちかは分からないけど、これで明日菜ちゃん。君もオレ達の家族だよ。
ちなみに、お姉さんはエヴァちゃんね。」

言葉というのは、非常に難しい。
もっと色々な事を伝えたかった。
もっと分かりやすく伝えてあげたかった。

でも、今のオレにはコレが限界。
上手く伝わったかどうかは分からない。


でも、まぁ〜……。

とりあえず、家族が一人増えました。


posted by まどろみ at 01:06| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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