2012年03月30日

幕章 麻帆良編 その9

〜side テツ〜







『なるほど、と言うことはワンちゃんに上げるのは、極力やめたほうが良いと言うわけですね。』

『えぇ、そうなりますね。
そもそも、人間と犬は違う存在だという事をしっかりと飼い主は分かっておく必要があります。
自分と同じものを犬にも食べさせたいという気持ちも分からない事は───』


寝ぼけ眼で、ぼうっと、どうでも良いテレビを眺めていた。
ぽかぽかしており、外からは猫の鳴き声が聞こえる。
そんな、昼下がりだった。

昼飯を食べたばかりだからかな?
結構眠い。

このまま、のんびりとお昼寝タイムってのもいいかもしれない。
明日菜ちゃんは、お友達と出かけてるし、エヴァちゃんは部活関係で遅くなるとか言ってたしなぁ。

寝ちゃっても、咎められることはない。
でも食っちゃねって、身体に悪いだろうしなぁ〜

ちょっと、腹ごなしの散歩でもしようかね?
学園長に頼まれた見回りもそろそろやるべきだろうし、ちょうど良いかも。

うん、そうしよ。
それじゃ、とりあえず片づけを……。

あっ、やべぇ……。
さっき、ぼうっとしすぎていたみたいだ。

エヴァちゃんが楽しみにしていたクロスワードの所に、さっきの番組の内容を無意識のうちに書き連ねていたのだ。
内容は、びっくりするぐらい意味のない物だ。

ウチ、犬も猫も飼ってないし……。
まぁ、クロスワードは見づらいだろうけど、出来ない事はないだろうし……。


後で謝ろ。




〜side エヴァンジェリン〜





私の足取りは軽かった。
なにせ運が良い事に、予定よりも随分と早く部活が終わったのだ。

明日菜も、今日は予定があるらしく、多分まだ帰っていないだろう。
つまり、これから数時間はテツと二人きりということだ。

ふっふふふふ。
これが日ごろの行いと言う奴だな。

「今帰ったぞ。」

むっ?
テツの返事がないぞ。
昼寝中か?

それだったら、一緒に寝るかな?

……バカモノ、今は昼だぞ?
ただ、共に寝るだけだ。

うむっ。

確かに、明日菜が来てからというもの、回数が大いに減ってしまった。(一緒に暮らす者にばれない様にやるというのは、大変なのだ。)

だいたい、私は毎回毎回処女が再生してしまうんだ。
さらに、私の身体は出来上がっておらず小さいうえ、奴のソレが大きいという状況だ。
快楽より、痛みの方がよっぽど強い。
その痛みが2,3日も続くのだ。

そんな、マイナス要素しかない物を、真昼間からやる必要性など一切ないだろ?

そうだ。
そうなのだ。

例え、奴と一緒になる事に安心感を覚えようとも、寝ながらも私に強く抱きしめてきて、その力強さに胸が苦しくなろうとも、下半身の痛みが愛おしく感じようとも……えぇっと……。

テツは一体何処に居るのだ?
ソファーの上ではなく、寝室で寝ていてくれると色々と助かるのだが。

ボックスティッシュを片手に、軽く家の中を探してみたが、テツの姿は見当たらなかった。
出かけてた様だ。


えぇ〜い、こうなったら奴の布団に包まって寝てやるさ。

テツの部屋に移動しようとリビングを横切と、テーブルに新聞が出しっぱなしだった。
あまり、見栄えもいい物ではないので、ソレを片付けようと、手を伸ばした瞬間、私は固まってしまった。

「まったく、テツ、お前の頭はどうなんてんだ?」

ため息を一つ吐きながら、再び手元を見つめる。

たった4文字しか存在しない。
たったの4文字だ。

これが『LOVE』だったり、『愛してる』とかだったら、舞い上がっていただろう。
まぁ、奴にそんな物期待するだけ無駄さ。



見つめる先には、奴の字で


『ネギ危険』


とだけ、記されていた。




〜side 近右衛門〜





唐突にエヴァンジェリンから訪れた念波。
それが、わしの頭を悩ませている原因じゃった。

言われた事は酷く単純な事。

ネギ君に、危険が迫っているかもしれないと言うだけじゃ。
そう、テツ君が示唆した。

エヴァンジェリン曰く、徹君のこういった予測は9割がた当たるそうじゃ。

予測と言うには、あまりにも正確性が高すぎる情報。
すでに、その域は予測を通り過ぎ、未来視といっても過言ではなかろう。
そして、恐ろしいのが、これがあくまで、予測であると言うことじゃ。

隠者や、特殊な装置を使って、情報を得たワケじゃなく。
彼が手に入れる情報など、わしが手に入れる物よりもよっぽど少ないぐらいじゃろう。

情報収集能力がない彼が、わしも知らんような情報をどうして持っているのか、普通であったら不思議に思うところじゃろう。
わしも、初めは不思議で仕方がなかった。

わしはてっきり、卓越した情報収集能力が彼に『未来人』という二つ名が与えられた原因と思っておったからの。
情報収集能力が高いというのは、後に起こることも分かるという事じゃ。
その二つ名が付いたとしても、全く持って不思議ではあるまい。

それじゃって、十分に凄い事じゃ。

じゃが、村重 徹という男は、わしの想像をより遥か上の男じゃった。
奴はただ、推測しているだけだったのだ。

何気ない仕草で、心を読み、テレビのCMで世界を読み、穏やかに吹く風で未来を読む。

もちろん、推測であるため外す事もあるが、圧倒的に当てる可能性のほうが高い。
徹君は、あまりに人の欲望に敏感すぎる。
不幸中の幸いは、彼が意識しなければ、人の心のうちを読めないという事じゃ。

無意識のウチにも、人の心を読めるのなら、エヴァンジェリンや明日菜ちゃんは、ここまで苦労する事はなかっただろう。
さらに、無意識のうちに読めるのなら、そちらの方が都合が良いのも事実。じゃが、わしは安心してしまったんじゃ。
徹君の力は大きく、巨大である。
その力に、幾度も助けられてきたわしが、このような事思ってはいかんかもしれぬし、もしかしたら徹君を侮辱している事と同義なのかもしれん。
それでも、わしは安心してしまったのだ。

人の心を読む。それは夢の様な能力なのかもしれぬ。
誰しも、一度や二度、人の心を読みたいと思った事もあるじゃろう。

だが、それはあまりにも哀しすぎるではないか。

見たくもない、心が読まれるのだ。
どんなに頑張っても、どんなに素晴らしい者でも、湧き上がる気持ちはどうにもならんのじゃ。

そんなモノばかりを、見てしまう。
そんなもの、あまりにも哀しいではないか。

この思いじゃって、彼を侮辱しているとわし自身分かっておる。分かっておるが、どうしても止まらぬのだ。
どれだけ歳を重ねようと、どうにもならん。

じゃから、わしは意識しないと読めないという事に安心したんじゃ。
まだ、まだ徹君に僅かな救いがあると、安心したんじゃ。

その能力によって、数え切れぬほどの苦痛があったはずなのに、安心したんじゃ。

わしには、想像付かないような苦悩があったはずなのに、安心してしまったんじゃ。






徹君の事について考える事なんて、後でいくらも出来る。
今はそんな事をやってる暇なんぞないんじゃからな。

救えるはずの子供がおるのじゃ。
それを救わないワケにはいかん。

力量的にも、人柄的にも、一番信頼がおけるタカミチ君に、行って貰おうかの?
大学には、適当に話を付けておけば良いじゃろう。

そうなると、彼が抜けた部分の調整は、別の者に……。
それは、後でやれるからの、とりあえず今はタカミチ君に連絡をとるべきじゃ。

その様に、これからの事を考えておると、頭の端にちょっとした疑問が生まれた。
何故徹君は、ネギ君が危険と言うことしか知らせなかったのだろうか?
分からなかったというのなら、それまでだが、何かが可笑しいような気がする。
そもそも、エヴァに対しての書き置き、さらにあれほど短い物で済ます理由がないはずじゃ。

そういった疑問を、無理やり押さえ込みながら、作業をしていく。
疑問は確かにあるんじゃが、今必要なことではあるまい。

湧き出そうな疑問と戦いながら、大学への言い訳を報告書にまとめていると、大きな音と共にドアが開かれた。

「学園長、明日菜ちゃんと木乃香ちゃんの誘拐未遂が発生しました。」

ノックもなくいきなりドアが開けられた事、タカミチ君の唐突な言葉、それらの性で一瞬固まるが、すぐに持ち直す。

「誘拐未遂?」

とりあえず、誘拐されたワケではなく、未遂だという事なので、あまり慌てる必要はないじゃろう。

「えぇ、徹さんが対処してくれました。

あの人が居なかったら、多分防げなかったかと……。」

タカミチ君の言葉で、わしは先ほどの疑問がようやく解決したのだ。
何故、徹君があれほど曖昧な形でネギ君の危険をわしに伝えてきたか。
純粋に、時間が足りなかったのじゃ。

2人を救うために必要な時間が。

「まったく、わし等は徹君に救われてばかりだな。」

小さく呟きいた後、タカミチ君から詳細を聞き、念波を使い、ガンドルフィーニ君に この後の処理を指示する。

「タカミチ君、すまないが少し、待っとってくれ。」

タカミチ君の返事を聞きながら、次は徹君へと念波を飛ばす。




〜side テツ〜





ぽかぽかとした、いい天気で、非常に気分よく散歩していたら、落ちた。
うん、何を言っているか分からないかもしれないけど、事実なんだよ。

ホント、それは偶然だったんだ。

世界樹の下をのんびりと散歩してたら、地面がすっぽ抜けて落下。
滑り台っぽく、滑って、到達点にいた男の上に着地……。

そんでもって、次に目に入ってきたのは、涙が僅かに浮かんでいる木乃香ちゃんと、それを庇う様にしている明日菜ちゃんの二人が驚いたような顔だった。

「あははは、ハロー。」

とりあえず、笑って挨拶をするが、反応はなかった。



話を聞いていくと、どうやら二人とも誘拐されそうだったらしい。
世界樹の木の下に追い込まれ、同じように落下。(どうやら、誘拐犯がわざわざこの穴を用意したらしい。用途は普通に犯罪だけど、能力は凄いと思う。)

まぁ、その後は、オレが落下してきて、誘拐犯を気絶させたとの事。
なんていうか、締まらないなぁ。

『誘拐犯を撃退!!』
っていうカッコいい言葉なのに、ただ落ちて踏んじゃっただけというね……。

「まぁ、2人とも無事で良かったよ。」

うん、これは本心だ。
抱きつきながら泣いている木乃香ちゃんを撫でながら、助けが来るのを待つ。
いや、まぁ10才にもならない子だ。泣くのも仕方ないよ。

タカミチに念波でSOSしておいたから、多分来るでしょう。

明日菜ちゃんは、ちょっと離れている。
まぁ、多分木乃香ちゃんに遠慮しているんじゃないかな?

明日菜ちゃんだって怖かったはずなのにね。

「明日菜ちゃんもおいで。」

複雑な年頃故の恥ずかしさからか、真っ赤な顔になりながらもトコトコと近づいてくる明日菜ちゃん。

「明日菜ちゃんも、よく頑張ったね。」

無理やり、明日菜ちゃんを抱き寄せた。
明日菜ちゃんは、甘え下手だから、こうやって無理やりぐらいが丁度いいんだよねぇ。

そうやってると、念波が飛んで来た。

『唐突ですまないのぉ、徹君。

まず、誘拐を未然に防いでくれた事、感謝するぞい。』

『いえいえ。そんなにお気になさらず。』

明日菜ちゃんと木乃香ちゃんには、魔法は内緒なので、2人に勘付かれない様に、念波を送る。

『そういう訳にはいかんのぉ。
わしはが、徹君に感謝してもしても、全然足りておらぬ。
それだけの事を、徹君はしてくれたのじゃよ。』

ただ穴に落ちただけのオレに、ココまで言うとは……。
なんていうか学園長に対して、罪悪感に似た何かを感じてしまう。

『あぁ〜、どういたしまして。で良いんでしょうかね?

それでですね、今世界樹の下に閉じ込められていまして……。』

念じながら、木乃香ちゃんの髪の毛をわしゃわしゃと撫でる。
よく、エヴァちゃんから撫でる時は髪を崩すなと言われているんだが、うまく出来なかったようで、木乃香ちゃんの髪の毛はある意味前衛的な物へと変化しつつある。

『それについては、ガンドルフィーニ君が迎えに来るように手配したぞい。
君からの念波をタカミチ君がすぐ伝えに来てくれたからのぉ。』

『どうも、助かります。』

誘拐犯の対処も終わっているし、迎えもしっかりと来る。
これで、とりあえずは安心である。

『あぁ〜、それでな。徹君が書いたネギに関してじゃが……。

それ以上の情報はなにか、ないかな?』

一安心したところで、あまりに急な話題転換。
と言うか、いきなりどうしてネギが出てくるのか分からない。

そこで、脳裏を過ぎったのは、クロスワードに書いちゃった『ネギ危険』という文字。

どうやら、学園長の愛犬がネギを食べちゃったらしい。

『……下手したら命に関わります。』

詳しくは知らないけど、大量摂取したら、命に関わるとか言っていたよな?

『出来るなら、すぐに対処をした方が良いです』

吐かせたり、医者に連れて行ったりとか。
対処が早ければ早いほど、良いだろう。

『分かった。助かったぞい。

あっ、そうそう。
出来るなら木乃香の事を今日一日頼んでいいかのぉ?

今回の事件、木乃香か明日菜の個人を狙った可能性が高い。
とりあえず、落ち着くまではそちらで預かって貰いたいんじゃが。』

『別に良いですよ。』

そう念じるのと、ほぼ同時に、ガンドルフィーニ先生の救助がやってきた。




〜side 木乃香〜





白馬に乗った王子様。
明日菜が、頬を染めながら徹さんをそない例えたん。

こう言うちゃアカンやもしれへんけど、ウチ、その言葉聞いて笑ってもうたん。

確かに、徹さんは優しい人って思うんやけどな、白馬に乗った王子様ってのは似あわへん。
徹さんの印象って言うのは、優しゅうて、物腰が柔らかいって感じや。
良い人って言うのは分かるんやけど、なぁ?

せやけどな、ウチの間違いやったん。

たまたま、タダの偶然やと思う。
でもな、明日菜(お姫様)の危機に、颯爽と登場した徹さんはな、確かに王子様だったん。

ウチには、そう見えたん。

徹さんが来たとたん、ウチ安心して、明日菜が近くにおるちゅうに、徹さんに抱きついて泣いてもうたん。

うぅ、ウチとしては最大の失敗やわ。



posted by まどろみ at 01:08| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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