2012年03月30日

外伝 ナギとアリカ

〜side アリカ〜







「今まで、我慢してきたが、もう限界だ。
私と結婚しろ、アリカ。
テメェの子を産ませろ」

俺の胸倉を掴み、叫んだナギ。
ナギに渡された、給料(?)三か月分の指輪の箱を片手に、呆然としていた。
あの時の俺は、本当にアホな顔をしていたんだと思う。ついでに、情けないほどパニックを起こしていた。
なにせ、ナギの頬が赤く染まっていたことも、俺の胸倉を掴む手が僅かに震えていた事にも気付かないぐらいだったからな。
胸倉を掴まれている故の苦しさか、それとも、別の"何か"による苦しさかは、分からなかったが、ゆっくりと言葉を発した。
己を支え続けてくれた女性に。





あの時の、選択は間違っていなかったと、お腹を大きくさせたナギを見ながら思う。

自分のお腹をゆっくりと撫で回しながら、笑みを浮かべる彼女。
子供が出来る前の彼女からは想像が出来ないほど、その笑みは穏やかだった。

「どうしたんだ?アリカ?
私の方をじっと見つめてさぁ。見惚れていたか?」

言いながら、俺を見るナギの顔には先ほどとは違う、悪戯をしている子供のような笑みを浮かべている。

「あぁ、見惚れていた」

恐らくは、ナギが想像していたのとは違う回答。
不意打ちだったからか、一気に顔を赤く染め上げるナギ。

「そ、そういえばさ。
この子の名前、考えてくれたか?」

笑えるほど下手な話題転換。
そんな、ナギの下手な話術、思うがままに返事を返せる事が、俺には幸せだった。

「また、唐突だな」

ナギの膨らんだお腹を眺める。
予定では、一ヶ月もしない内に生まれるだろう、新しい命がそこにはあった。
医者曰く、その子は、ほぼ間違いなく男であるらしい。

「……そうだな。
マギ、マギなんてどうだ?」

ナギよく似た名前。お前のように、強く、光り輝く子になるよう祈りを込めて。




〜side ナギ〜





「また、唐突だな」

少し悩む素振りを見せながら、アリカは言葉を続ける。
どうせ、くそ真面目なアリカの事だ。
悩む素振りを見せながらも、私がこの子を身ごもった時からずっと考え続けてくれていたに違いない。

「……そうだな」

ほら、すぐ思いついたふりをした。

「マギ、マギなんてどうだ?」

生真面目なあいつの事さ。
本気で悩みに悩んだんだろう。
けどなぁ〜、流石にマギはちょっとアレだろ?

少し不安そうに、それでいながら何かを期待している様にこちらを見つめるアリカに、無条件でOK出しちまいそうになるけど、ぐっと堪える。

「あぁ〜、流石にマギは不味いだろ。

他の名前を一緒に考えようぜ。」

別にアリカのネーミングセンスが無いっちゅうわけでない。
マギ・スプリングフィールド。
十分に良い名前だと思うのだが、如何せん、その名前はやめた方が良いだろ?普通。

「ぬっ?何故だ?」

いや、何故って……。

「『森の隣人』って奴と同じ名前じゃん」

子供の頃、よく聞かされた、森の隣人ってタイトルの昔話。
その昔話の主人公がマギなのだ。

「森の、隣人?」

首を傾げている様子から、どうやら知らないらしい。
そういやぁ、向こう(魔法世界)じゃマイナーっつ〜か、コッチでもマイナーな奴だっけな。
私の故郷じゃ、皆知っていたもんだから、当たり前だと思い込んでたぜ。




災害から救った英雄が力を畏れられ追い出された。
英雄が出て行った後、森の隣人は気付く。
いつも働きすぎといっても過言ではないほどに働いていた英雄。
彼が居なくなったのが原因で、畑から取れる物は減少し、動物達も病気になる。
村全体で耕していた畑の2割は、荒地となった。
人々は嘆いた。英雄に謝りたいと願った。

時は経ち、村は滅びた。

それでも、英雄は最後まで現れなかったとさ

「めでたしめでたし……。

ってな感じの話だ。
んでよ、英雄の友人がマギって名前なワケなんだけどよ。
そのマギって奴が、英雄の友人なのに、何も出来なくてずっと後悔し続けるんだ。
流石に、子供にその名前をつけるワケにはいかんだろ?」

子供が出来たら、この話を聞かせる。
私の故郷の文化とでも言うんかな?
そんな環境で育ったんだ。もし子供が出来たら間違いなく、この昔話を喋っちまうぜ。

流石に、子供と同じ名前の人間が不幸になる話しを聞かせたくねぇ。
しかもだ、この追い出された英雄って奴がアリカに当てはまるだろ?
そんで、子供の名前がマギだったりしてみろ。

なんか、滅茶苦茶嫌だぞ。

「ナギの言う通りだな。

思えば、俺一人で子供の名前を決めるという時点で間違っていた。
この子の親は、2人いるのだからな」

「そうだな。」

親は2人。
鳥頭だの、馬鹿だの言われている私だって分かる事だ。
父親と母親の一人ずつ。合わせて二人だ。

だけど、なんとなく私は気付いちまった。
本当になんとなくなんだけどな。

NagiとMagi、あまりに私の名に似すぎた名前。
偶然なんかじゃねぇ。
子供が私に似て欲しいと思って付けた名前だろう。

その思いはけして、嘘ではない。
でも、アリカは、それ以上に自分に似て欲しくないと思っているんじゃねぇか?

ずっと、アイツの事を見続けてきたから、なんとなく感じるんだ。
多分、アイツ以上に、私はアリカの事が分かっている。

生まれる子供が自分に似て欲しくない。
子供が愛おしくて、愛おしくて仕方ないからこそ、アリカは願っている。

少しでも、自分と言う存在が、子供からなくなるように。
確かに、アリカに似ていない方が、この子にとっては良いのかもしれない。
『災厄の王』の子供なんていったら、殺される可能性だってあるのだ。







でもな、アリカ。
それでも、間違いなく、この子は



「私達の子だ。
二人で良い名前をつけてやろうぜ」



posted by まどろみ at 01:19| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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