2012年03月30日

第4章 吸血鬼編 その9

〜side エヴァ〜







人間が吸血鬼を恐れる、畏れる、怖れる、というのは当たり前の事である。
それが、例えその吸血鬼自身の本質を見ようとせず、ただただ吸血鬼というだけで、忌避し、否定しようとする事は当たり前であり、吸血鬼の真祖である私自身としてもそれは正しい事であると思っている。

人間と言う存在は、余りにも儚く弱すぎるのだ。
先入観という、あまりにも不確かで曖昧な物に縋らなければならないほどに。

吸血鬼の真祖という化け物である私ですら先入観に踊らされる事が多々あるのだ。
それより脆い、人間は私よりも踊らされやすいというのは仕方の無い事。

そう、仕方ない事なのだ。





「エヴァンジェリンさんが吸血鬼の真祖??

え〜と、大分前に徹さんから聞いていて、知っていたんですけど……」



……先入観、仕事しろ。




〜side ネギ〜





僕の前で朗々と吸血鬼について語るエヴァンジェリンさん。
吸血鬼という存在の定義、種類、真祖と普通の吸血鬼の違い、さらにはヴラド・ツェペシュについてまで、解説しているのだ。

全てはそう

「どうだ?私が怖くなってきただろ??」

僕を怖がらせるために。

「いえ、あの、本当に申し訳ないんですが、特に怖ろしいとは特に思えないんですが……」

「貴様の頭は、一体なんのためについているのだ!?
あれほど吸血鬼という存在の怖ろしさ、厄介さを教えたにも関わらず、何故怖ろしくならないのだ!?」

「逆にどうやって、懇切丁寧に吸血鬼の恐ろしさ、その対処法を教えてくれている人に恐怖を覚えろっていうんですか!?」

いくら怖がれと言われても、正直無理な話である。

「私は悪い吸血鬼なんだぞ。
徹とか、徹とか、徹とかを襲う、怖い吸血鬼なんだぞ!!」

「……徹さんしかいないじゃないですか」

一体どうすれば、この吸血鬼さんを怖れられるのだろうか?
正直、僕としてはもう無理なんじゃないかと思ってしまっている。

「いいか?貴様を脅かすぞ!?
もう、ネギが夜に1人でトイレに行けないぐらい怖がらせるぞ!?」

「は、はい。
僕としても、怖がってあげたいので、ここで盛大に怯えさせて下さい」

「い、いくぞ……」

「はい」

訪れた緊張感。
ピンと張り詰めたような空気の中、僕のゴクリと、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。

そして、おもむろにエヴァンジェリンさんは両手を掲げ


「が、がお〜」




「え〜っと……きゃぁ〜??」

「気を使って、驚いたふりをするな!!
忘れろ!!さっきの事は忘れるんだ!!」





            ☆☆☆




「それで、どうしたんですか?」

「どうした、とは?」

エヴァンジェリンさんは、大分落ち着いたようで、普通の反応がようやく返ってくるようになった。

「いえ、自分が吸血鬼の真祖と言ったり、僕の血を欲したり、どうしたのかな〜と」

先ほどの騒ぎの元凶である。

「いやなに、私の崇高な計画のために貴様の血がどうしても必要だったのだ」

「崇高な、計画?」

「ふふふ、そうだ。

私は貴様の母親、サウザンドマスターに登校地獄などという屈辱極まりない呪いを掛けられた。
こいつのせいでな、私は30年もの間、学生生活をしなくてはならんのだ」

深くため息を吐くエヴァンジェリンさんを尻目に、僕は大きく興奮していた。
思いもよらない人、思いもよらない時に、憧れの人物、である母の名前が出てきたのだ。

驚き、喜び、興奮、それらの全てを混ぜたような感情に支配されてしまっていても、仕方ないであろう。

聞きたい事も、疑問も数多くある。
エヴァンジェリンさんと、サウザンドマスターとの関係は?
どうして呪いを掛けられたのか?等々

けど、そういうワケにもいかない。

エヴァンジェリンさんはいったのだ。

『サウザンドマスターに呪いを掛けられた』と。
どういった理由で、そうなったのか非常に知りたい事ではあるが、分からない。

だが、それが表すのは、エヴァンジェリンさんとお母さんが敵対していたという事。
そして、彼女を母に持つ僕の血を媒体とし、呪いを解こうとしている。

それは、警戒する事なのだろう。
警戒し、疑い、信じず、近づかず、観察するべきなのだろう。

彼女の存在を見極めるために。

それは、己の身を守るのに、大切な事。必要な事。



だけど


『あっ、そういえば一つ。
エヴァちゃんって実は吸血鬼なんだ。

だけどさ、良い子だから苛めたりしないであげてね』


あの人と約束しちゃったしなぁ、僕には、出来そうにもないや。


エヴァンジェリンさんは、朗々と語る。

「お前の血を使い呪いに干渉する。
もう、分かっただろ?」

彼女の問いかけに一つうなずく。

母がやった呪いだ。僕の血が非常に良い媒体になるというのは分かりきった事。
さらに、彼女は吸血鬼。血のプロフェッショナルといっても過言ではない存在である。

いくら英雄の封印とはいえども、それだけの条件が揃えば解呪は可能であろう。
後は、僕の気持ちしだい。
そう、後はそれだけなのだ。

「そう、たった30年じゃ全く足りないのだ!!
せめて倍。出来れば150年ほど、この登校地獄が続くよう、改竄するのだ!!!」

「お断りします」

自分でも驚くような即答だった。

「なぜだ。
痛くない、むしろ気持ちいいと評判なんだ。
怖がる必要はないぞ??」

怖がれと言ったり、怖がるなと言ったり、結局あなたは何をさせたいんですか!?

「そこは普通、解呪のために血を使う場面でしょう。
それをどうして、期間を増やそうとするんですか!?」

「まったく、何故分からないんだ?
徹が、たったの30年間で落とせるワケがないじゃないか」

「どうしてソコに徹さんが出てくるんですか!?」

「いや、どうしてって……

この登校地獄って、私と徹がくっつくためにの呪いだぞ?」

登校地獄って、そういう奴でしったっけ!?





            ☆☆☆




ようやく明らかになった登校地獄の本当の姿。

初めはただただ、徹さんがエヴァンジェリンさんに学園生活を送らせたかっただけだった。
ただそれだけなのに、なんかそれぞれの思惑が複雑に絡み合ったらしい。

その思惑の一つが、アルという人の『エヴァンジェリンさんと徹さんをくっつける』であったのだ。

今まで旅ばかりしていた2人。
そんな2人が、同じ家に2人っきりで暮らしていたら、なにか間違いを起こすはずだ。いや起こすに違いない!!

ただ、徹って鈍感だしなぁ、とりあえず30年ぐらい閉じ込めておこうか。

そうすれば、ナギも目標達成しやすいだろうし。


のような感じで、登校地獄がされたらしい。
もう、なんというのだろうか?
幾つも突っ込みたい所が満載であり、さらに理解出来ない部分も多々存在したのだが、もうそういう物と諦めてしまった方がいいような気がする。


「というわけで、私にはお前の血が必要なんだ」

「イヤですよ。
大体30年間の登校地獄っていうだけで不健全だというのに、それを延ばすなんてイヤです」

出来るのなら、すぐにでも呪いを解いてしまいたいぐらいだ。
今だったら、胸を張って言える。
この人、全然、驚くぐらい危険じゃない。
もう、びっくりするぐらい安全で、徹さんさえ居れば、危険度は野良犬以下だ。

「だったら、無理やりに」

「徹さんに言いますよ?」

「むむむっ……」



posted by まどろみ at 01:25| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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