2012年03月30日

外伝 最悪な老婆の最悪な裏切り 裏

暖炉の炎が揺らめる中、老婆はただただ編んでいた。
毛糸を使い、ただただ編んでいく。

何を編むのか、何故編むのか。
老婆は知らない。
目的もなく老婆は編んでいた。

編む、編む、編む。
生きているから編むのか、編む故に生きているのか。
その境界すら曖昧になっていた。

いつの頃かは忘れていた。
だが、1人になり、気付いたら老婆は編むだけの存在になっていたのだ。

暖炉の前で編むなか、音が響いた。
何かが倒れたような、そんな音。

いつもであったのなら、老婆は音など気にすることなく、編み続けていたであろう。
だが、なぜかその音が気になったのだ。

ゆっくりとした動作で立ち上がり、ドアを開け……


運命の出会い。
陳腐かつ胡散臭い言葉であろう。

だが、物であった彼女を者へとしたこの出会いはやはり、運命の出会いという奴なのではないだろうか?

「ふん、態々人の家の前で死ぬんじゃないよ。小娘」

こうやって悪態を吐くのが久しぶりだという事に老婆はやはり気付かなかった。





            ☆☆☆




「今日は、満月か……」

白い息を吐きながら、老婆は呟く。

こんな寒い夜でなくても良いのではないか?

首を振り、その考えを打ち消した。
そうやって、言い訳を見つけては、何度も何度も先延ばしにしてきたのだ。

もう、時間はないのだ。





            ☆☆☆




「えっ……
あっ、私、私……」

怯えた様子で少女は後退っていた。
涙を目に浮かばせながら、少女は首から血を流す老婆を見ていたのだ。

「異常に尖った犬歯、満月……

小娘、今まで儂を騙していたのか!?」

「ち、ちがっ」

「黙れ!!」

持っている杖で叩きながら老婆は叫ぶ。
必死の形相で少女を叩く老婆が、恐ろしい鬼の様にも、苦しげに泣かまいとしている様にも見えた。

「あの、私は」

「去ねと言っている!!」

恩を感じるどころか、忌々しいと感じているはずの老婆に殴られながらも、少女は逃げない。
逃げなかったのだ。

「×××××××。××××××××××」

叫び、叩く。
それは愚かな言葉。絶対に言ってはいけない言葉。

それを老婆は少女に浴びせながら叩いたのだ。

その時になり、ようやく少女は背中を向けて家を飛び出した。
涙で頬を濡らせながら少女は走ったのだ。

「全く、人前で涙を見せるなと言っただろうに」

ゆっくりと呟く。

そんな丁寧な口調で話すな。
人に己の弱い所を見せるな。
ハリボテだとしても自分を大きく見せろ。
涙を見せるな。

老婆が言った言葉の何一つ、少女は実行していなかったのだ。

「全く……」

呟きながら剥ぎ取られたマフラーを、再び首に巻こうとするが、もう巻く必要がない事を思い出した。

老婆の首元には、幾つもの傷があった。
2つの鋭い物によって、皮膚を突き刺したような痕が幾つもあったのだ。


ゆっくりと、家に戻り、いつもの場所に座ると、老婆は再び編み始めた。
ゆるり、ゆるりと編んでいく。

そこに広がるのは3年前と全く同じ光景であった。

唯一の違いがあるとするのならば、編んでいるそれが子供服である事ぐらいだろうか?




















パチパチと薪がはじける音がする中、老婆は編んでいった。

暖炉の前で編むなか、音が響いた。
強く戸を叩く音。

ゆっくりとした動作で立ち上がり、ドアを開け、老婆はニヤリと笑った。

「思った以上に、早かったね。
アンタ達」

親しげに話す。
その人達は皆、農具や包丁等を手に持っていた。

「まぁ、丁度いいといえば、丁度いいもんだよ。

おっと、なんもしなくても良い。逆らいはしないさ。
何だったら、言ってやってもいい」

老婆は口の端を釣り上げる。

「儂が魔女さ。

そうだね。どんな奴が良いかい?
病を流行らしせた?
家畜を殺した?

何でもいい。
思いつくまま全て挙げな、それ全てが儂の仕業だからな」




posted by まどろみ at 01:42| Comment(0) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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