2012年03月30日

キュゥべえ、ひらめく

「そうか、答えは簡単だったんだ」

梅子(88歳)との契約という無理難題を上から命じられ早3ヶ月目。
だんだんと、料理の腕前が上がってきた頃にようやくキュゥべえは梅子との契約方法を思いついたのだ。

「僕が貴子さんになれば良いんだ!?」

3ヶ月もの間、考えた結果だったのだ。

彼が梅子との契約がなせなかった理由は以下の通りである。

1つ、ただのお願いであり、代価として魔法老婆になると明確に言っていない。
2つ、会話が成立していない。
3つ、そもそも、キュゥべえと貴子さんなる人を間違えている。
4つ、あれ?これ無理じゃね?

以上の4つによって彼は契約出来なかったのだ。
だが、だ。
だが、キュゥべえが貴子さんとなったらどうだろうか?

一気に話の一貫性がとれ、契約することが出来るのだ。
もちろん、やっている事は詐欺その物。許されざる行為ではあるのだが、その辺を華麗にスルーするのがキュゥべえなのだ。

「という訳で、僕は今から貴子さんだ」

堂々と梅子に宣言する。
なお、『この』キュゥべえを認識しているのは梅子以外居ない、という点から考えるに梅子本人が了承したらキュゥべえという存在が貴子さんなる存在になりえる。

とか、良くワケの分からない言い訳がキュゥべえの頭の中で渦巻いているのだが、それはどうでもいいので略。

「はいはい、分かりましたよ」

梅子の了承を取ることも完了した。
これで、ようやく契約出来るのだ。

キュゥべえ、改め貴子さんは感情のないくせに感涙しそうになっていた。
たった3ヵ月とはいえ、彼にとって苦労の連続。
四本足だというのに、料理をしたり、浴槽の準備、梅子が足等を滑らせない様に、見張り。

転びそうになった時は、その身を犠牲にし、助けたのだ。

だが、ようやくその苦労も終わる。

「じゃ、梅子。
改めて言うよ。僕と契約して魔法老婆になろうよ」

今までの苦労を噛み締めながら、キュゥべえは吐き出すように言った。
これで、もし何か適当な言葉。
例えば、『貴子さん、料理をお願いしますね』等の言葉でも、契約をするから、代わりに料理をしてくれという意味に歪曲して理解する事も不可能ではない。

明らかに、意思の疎通が出来ていないが、キュゥべえの中ではOKなのだ。

「料理、お願いしますね」

勝った……
ついに、キュゥべえは勝ったのだ。
100を超え、数えるのをやめた「ワケが分からないよ」もこれ以上言わなくてもすむのだ。

感情がないはずのキュゥべえの胸の内に宿る、達成感にも似た何か……
それを噛み締

「ジョセフィーヌさん」




「なん……だと……」





「僕は今からジョセフィーヌさんだ」

「はいはい、分かってますよ。ライダーさん」

「僕は今からライダーさんだ

「はいはい、分かっていますよ。翔太さん」



☆☆☆



「ぜぇぜぇ……
分かった。僕は今日からじゅげむじゅげむごこうのすりきれかいじゃりすいぎょすいぎょ……って、あぁぁああ。
なんだい、この名前は!?

もういい。何でもないよ」

「そうですか……
所で、お昼はまだですか?」

「今から準備するよ」

ため息を吐きながら、料理をしようとする。
もし彼の表情が動くのであれば、きっと苦笑を浮かべているのだろう。


感情を知らないキュゥべえは気付かない。自分が安堵している事に。

「よろしくお願いしますね。
キュゥべえ」

「……え?」

振り向くと、ニコニコしている梅子の顔が見えるだけだ。

「梅子、今僕の名前を……」

梅子はニコニコと笑みを浮かべたながら、キュゥべえを見つめるだけ。
キュゥべえは首を傾げながら台所へと向かうのだった。

まだまだ、今日は始まったばかり



頑張れ、キュゥべえ。
負けるな、キュゥべえ。



posted by まどろみ at 02:06| Comment(0) | 魔法老婆 うめこ☆マギカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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