2012年03月30日

キュゥべえ、ひとり

キュゥべえは、ポツポツと道を歩いていた。
いつも通りの表情で。ポツポツと。

すぐ傍で、幼子が転ぶ。
呆然とした表情。

膝からは僅かに血が滲む。

だんだんと、顔がぐしゃぐしゃになっていき、盛大に泣いた。
ワンワンと、盛大に泣き、母親と思われる女性の下へと走って行くのだ。

女の腰に抱きつき、甲高い声でワンワンと泣き続ける。

それをキュゥべえは、じっと見つめていた。

あの幼子は痛みから泣く。
確かに、泣くという行為は痛みを訴えるにはピッタリであろう。
己が健康体ではない事を、己を守る者に訴えるに、それは正しい判断。
ああして、保護者に抱きつく事によって安堵を覚えるのも、己を無条件で守るという、奇特な存在であるという打算的思考からであるのだろう。

そんな、酷く下らない思考をしながら、キュゥべえは泣く子供から目が離せなかった。
そんな、愚かで、哀れで、悲しい思考をするために、キュゥべえは子供を見つめているわけではない。何故見つめているのか?と聞かれてしまうと困ってしまうが。

梅子が今のキュゥべえを見たら、簡単に見つめている理由を言い当てるだろう。
『キュゥべえ?
そんな、羨ましそうに子供を見て、どうしたんですか?』と。

だけど、梅子は居ないのだ。

あっけない最後だった。
散々、キュゥべえを振り回した傍若無人っぷりからは想像が出来ない、呆気無いもの。

突然倒れ、意識不明。
病院で2週間過ごし、そのまま帰らぬ人となったのだ。

個体単体の死なんて、小さい物であり、それに捕らわれる事は愚かな事である。
それをあまりにも、尊重する人間という存在は『ワケが分からないよ』というキュゥべえのセリフに集約しており、その言葉通り意味不明で、理解出来ない気持ち悪い物であった。


にも関わらず、キュゥべえはジクジクと妙な痛みにさいなまれるのだ。

ワケの分からない、ジクジクとした痛みに。





『キュゥべえ。
幸せになりなさい』

2週間も寝たままであった、梅子が唐突に目を開き、喋った

最後の言葉だった。


契約するでも、助けてでもない。


ただただ、キュゥべえに対する言葉。




全くもって



「ワケが分からないよ」




「梅子。君はいつだってそうだね。
いったい君は何度このセリフを僕に言わせる気なんだい?

これからも、君のせいで、何度もこのセリフを吐く事になりそうだよ」


気付けば、泣いていた幼子は、笑顔となり、女性と手をつなぎ歩いていた。




「ワケが分からないよ」






魔法老婆 うめこ☆マギカ     完








posted by まどろみ at 02:07| Comment(0) | 魔法老婆 うめこ☆マギカ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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