2012年03月30日

プロローグ

プロローグ

スースーだが、ガーガーなのかは分からないが、とにかく才人は寝ていた。
とりあえず、寝息は間(あいだ)をとって、ズーズーとにでもしておく。

平岡(ひらおか) 才人(さいと)。

これが、寝ている青年の名である。

彼の両親が、何を思って付けたのかは分からないが、文字だけで判断する限り、才のある人間になって欲しかったのだろうか?
両親の思いは分からないが、名前とは違い、才人は、努力型ではあったが、けして天才と言われるような人間では無かった。

まだ、その才能が開花していないだけなのかもしれないが、彼の人生、17年を振り返る限りは、凡人としか言いようがなかった。
才人自身、例え才能が開花したとしても『屁とライターで擬似火炎放射を作り出す才能』みたいなモンだろ?と、どうしようもない事を考えている所を見ると、どうでもよさそうである。

そんな風に、自身の才には頓着しない彼だが、やってきた努力に関しては誇りを持っていた。

夢を見、目標を作り、そして自分を研磨してきた時間は13年。
17という年齢を鑑みるに、その大半の時間を才人は夢のために努力してきたと言えよう。

人に笑われ、飽きられ、理解されない夢を追いかけ続け、今もなお追い続けている。


にへらっと、笑みを浮かべながら、涎を垂らして眠る姿からは想像がつかないが。

そんな凡人で、努力家で、笑みを浮かべながら眠る少年が、ゴロリと一回転した。
ゴロリゴロリと、器用に布団を身体に巻きつけながら、回転していると



どさり


ベットから落ちる。
それでも、才人は目を覚まさない。

身体に纏った布団が、衝撃を吸収してくれたというのも原因の一つであろう。
だが、それ以上に、夢のために、自分を苛め過ぎているというのが主な理由である。
とにかく、ベットから落ちる程度では、目を覚まさないぐらい、才人は熟睡していた。

そして、ゴロリ、ゴロリと、まだまだ回転する。

そして、8転、9転辺りで、才人の進行方向に楕円形の光る鏡のような物が現れる。
才人は気付かない。だって寝てるんだもの。

そして、13回転目で、才人は鏡の中に突入した。









「なによ、これ。」

鳶色(とびいろ)の目を大きく見開かせながら、ルイズは言ってしまった。
何せ、サモン・サーヴァントを行ったら、大きな芋虫のようなのが出てきてしまったのだ。

今まで、見た事のない存在。

目、鼻、口すらない、その生物は自分が使い魔といえども、やはり不気味であった。

「ミ、ミスタ・コルベール。
これは、なんなんですか?」

脳内にある、使い魔を検索してみたが、ヒット数は残念ながらゼロであった。
微妙に、ワームに似ていない事もないような気がするが、ワームには目も口もあるので、違う物だと分かる。

ともかく、自分よりも知識のある、教員に聞いてみたのだが

「さ、さぁ。私も、このような使い魔は見た事がないので、なんとも……。」

残念ながら、答えはでなかった。

「とにかく『コントラクト・サーヴァント』を。」

コントラクト・サーヴァント。
召喚した使い魔を、自分の物だと認識させるための儀式であり、呪文の後、キスをする事で完了する。
しかし、そのキスが問題なのだ。
確かに、生理的に無理というのもある。
なにせ、見た目も不気味。たまに、もぞもぞと動く姿など、もう涙が出てきそうになるほど、嫌悪感があるのだ。

周りで見学している同級生も、嫌悪感を露わにし、さらに”コレ”とキスをしなくてはいけないルイズに同情の眼差しを向けている。

だが、それ以上の問題があるのだ。

「ミスタ・コルベール。
口が何処にあるか分かりません。」

「ひっくり返したりして、探してみなさい。」

出来れば、コルベールにひっくり返して貰いたいのだが、自分の使い魔になる存在。
慣れる意味もこめて、恐る恐る、近付き、触れようとすると。

ゴロン、ゴロン。

いきなり、集まっていた生徒達に向かって回転し始めたのだ。

「きゃぁぁああ。」
「退け退け退けぇぇええ!!」
「フライ、フライ、ふらいぃぃいいいぃいいいいいい。」
「飛ばない、飛ばないよぉぉぉおおおお!!!」

阿鼻叫喚。
生徒達は一斉に、叫び声を上げ、何としてでも、この不気味な物から逃げようとしていたのだ。

「皆さん、落ちついて下さい!!
それは、転がってくるだけですよ!!!」

コルベールが声を上げ、何とか生徒達を落ち着かせようとするが、無駄であった。
脅威はないとは言えども、その転がってくる姿が怖いのだ。
そう簡単に、落ち着くことなど出来やしない。


そんな、地獄絵図の終わりは、案外あっけない物だった。


回転している間に、外側の皮と思われる物が破れ、中から人が出てきたのだ。

ズーズーと、寝息をたてる、黒髪の青年が。

「……へっ??」

変な沈黙が広がった後。

「な、何だよ。ただの平民かよ。」
「いやね。僕も少し可笑しいなって思っていたんだよ。」

笑いながら、話す生徒達。

「ミス・ヴァリエール。
とりあえず、口の場所も分かったのですから、『コントラクト・サーヴァント』を、やってしまって下さい。」

「分かりました。」

そう言うと、ルイズは呪文を唱える。
年頃の女の子としては、男とキスするという物に、抵抗は確かにあったが、先ほどの不気味な生物と比べたらよっぽどマシだと考えれた。

そして、ルイズは男の横へと座り、覆いかぶさるように、キスをした。

「ん……」

そのキスに反応して、男の口から僅かに、声が漏れる。

ルイズは、唇を離す。

「終わりまし


きゃっ」

言葉は、途中で終わってしまい、代わりに可愛らしい声が響く。
原因は、彼女の背へと回された少年の腕であった。

寝ぼけているだけ。
そのため、腕に込められた力は全力の1割にも満たないような物なのだが、見た目とは裏腹に鍛えぬいた彼の身体と、ルイズの非力さが相まって、抱きつかれたまま動けないという状況になってしまっていた。

「こらっ、離しなさい。」

必死の抵抗で、胸の当たりをポカポカと殴る。
それは、彼に痛みを与えるほどの威力はなかったのだが、どうやら起こす程度の威力はあったようだ。

「んっ……」

僅かなうめき声と共に、男は目を薄く開き

「だれ??」

もっともな質問を繰り出すのであった。
そんな、彼の左手の甲には、文字が刻まれていた。









どうでも良い事だが、才人は朝に弱い。

何とか起きたとしても、薄眼をあけ、ぬぼ〜っと5分ほどしなくては、まともに頭も働かない、起きる気力も出ないという状態である。
しかも、今回に限っては、寝始めて2時間程度で起こされたのだ。

平均6時間と、非常に健康的な睡眠時間を毎日とっている才人としては、それは辛い物であった。

故に、ぬぼ〜タイムが長くなってしまったというのも、いつも以上に頭が働かなかったのも、仕方ないといえた。

「ルイズよ。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。」

才人が先ほど放った言葉に、律儀に答えをピンク色が教えたが、寝ぼけていたため、自分で聞いておきながら、頭には全く入っていなかった。

「ふむ……
珍しいルーンだな。」

続けて、涙が出そうな頭をした、中年男性が言うが、やはり才人は適当に頷くだけであった。

そして、ようやく覚醒した頃には

「ルイズ、お前は歩いてこいよ。」
「その平民、あんたの使い魔にお似合いよ!」

等々、同じような格好をした少年少女が空中に浮かびながら、言い放っていていた。

まだ、自分が寝ぼけているのか?と一瞬疑問に思ったが、流石に寝ぼけて人が空に浮かぶような幻覚を見るはずがない。
というより、自分の部屋で寝ていたにも関わらず、起きたら野外である。

そして、才人は理解する。
寸分の狂いのない、完璧な理解。

あぁ、これは夢なんだ。と

夢と言うのは、中途半端な現実味があるくせに、酷く移り変わりやすい物である。
それ故、自身の夢の実現も出来るかもしれない。

才人の心は大きく揺れた。
13年という、自分が生きてきた時間の大半を費やしたにも関わらず、全く成果が出ていない『夢』の実現。

笑われ、飽きられ、理解されず、何時しか誰にも喋らなくなった、くだらない『夢』。
それでも、諦めきれず、ずっと追い求め続けてきた。


それが、例え夢の中とは言えども、叶うかも知れないのだ。

夢の中で、『夢』を実現させる。
それは、酷く空しい事なのかもしれないが、それでも才人は実現させたかった。
例え仮初でも、空しい物でも、それでも、才人は叶えたかったのだ。


故に

「かぁ〜」

才人は、行動した。

「めぇ〜」

幼き頃、憧れ、そして今も思い続ける夢を叶えるために。

「はぁ〜」

毎日練習し、擦り切れるほど参考書も読み漁った。

「めぇ〜」

それだけではダメだと、身体も鍛え、勉学だって頑張った。
全ては、この瞬間のために。

「波ぁああぁぁぁああ!!!!!!」

叫び、両の手を全方に向かって突き出す。

何時もであれば、何にも変化がなく、空しい気持ちになってお終いなのだが、今回は違った。
その両の手からは、確かに光が伸びそして一直線に近くの岩へと向かった。

そして、光線が当たると、岩が崩れる。

「で、出来た……。

出来た、出来た、出来たぁぁああああ。」

夢の中とは言えども、初めて出た成果。
仮初とは言えども、才人は嬉しかったのだ。

それは、近くのピンク色をした、少女に抱きついてしまうほどに。




平岡 才人。高校二年生の17才。
運動神経、上(ただし、かなりの偏り有り)。成績、上の下(ただし、かなりの偏り有り)。賞罰、皆勤賞。
先生の評価は『ああ、平岡君ね。のんびり屋で、考えが独特というか、個性的というか……。』
親の評価は『自慢の息子といえば、そうなんだけどねぇ?』

のんびりとしている癖に、いざという時の行動力だけは無駄に凄く、周りの人間からは、変人と思われているようである。
とはいえども、浮いたりする事なく、交友関係も広い。
運動神経良く、成績はある程度良し、交友関係も良い。という、比較的優等生と分類される人間。


夢は、かめはめ波を放つ事。


posted by まどろみ at 02:30| Comment(0) | ザ・使い魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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