2012年03月30日

2話目

2話目

才人は、ルイズと共に部屋を出ると、似たような木でできたドアが壁に三つ並んでいた。
そのドアの一つが開いて、中から赤い髪の女性が現れた。
背が高く、むっちりとした褐色美人さんであった。
ボン、キュッ、ボン。という奴である。

恐らく、自身の色気という物をしっかりと分かっているのだろう。

ブラウスの1番目と2番目のボタンは外されており、ブラジャーなんてないから、生の胸が強調されている。
3番目のボタンを外せば、そこは桃源郷なのであろう。
その微妙なチラリズムが、より男を興奮させ、自然と前かがみになってしまうであろう。

彼女はルイズを見ると、にやっと笑った。

「おはよう。ルイズ。」

一方のルイズは、対照的に顔をしかめる。

「おはよう。キュルケ。」
「あんたの使い魔って、それ?」

指で差されながら、バカにした様な口調で言われる才人。

「そうよ。」

「あっはっは!
ほんとに人間なのね!すごいじゃない!」

すごい。
類似語としてあげられるのは、素晴らしいや、非常に良い、などであろう。

「やったなルイズ。褒められたぞ。」

「バカにされたのよ!!!」

首を傾ける才人。

「……ルイズ。
その平民、頭足りてるの?」

「……。
い、岩を破壊するぐらいの力は持ってるわ。」

「……そう。」

キュルケが、ルイズを眺める目には、同情の色が浮かんでいた。

そんな事を気にしない才人君。
2人で話し始めてしまい、つまらなく、視線をウロウロさせていると、大きなトカゲを発見。

「うおっ、すんげぇ〜。」

撫でまわしたり、フニフニする。
気持ち良さげに、トカゲは僅かに目を細めた。
怖い顔をしている癖に、その仕草が妙に可愛く感じた。

抱きつく、頬ずりをする。
さらに顎の下をくすぐったり、鼻を合わせたり、とにかく才人はトカゲとコミュニケーションを取ろうとした。
結果、ルイズから怒られた。







「本当に信じられない!!」

大股で、ずかずかとルイズは歩き回る。
その様子は、貴族らしいとはとても言えない物であったが、それでも彼女の怒りは抑えられなかった。

サイトと言う名の少年が召喚されてから、彼に振り回されっぱなしなのだ。

先ほどの朝食でもそうだ。
貴族しか入れない食堂で、朝食を食べる。

平民にとっては光栄であり、それだけで咽び泣くような栄誉を私は与えた。
ただ、自分と平民との力関係をはっきりとさせなくてはいけないので、平民を床に座らせ、パン一つとスープ、肉を3切れを与えたのだ。

自分と同じ場所、さらに貴族と同じ物を平民に与えた。
それだけで、ルイズは平民が、自分を敬う物だと思っていた。

そして、平民は咽び泣き、ルイズに永遠の忠誠を誓う物だと思っていた。
いや、流石に永遠の忠誠は誓わないまでも、少しぐらいルイズを敬う様になると考えていた。

実際、平民は泣いた。

「……おかわり。」

「なし。」

「足りない。」

「ない。」

その後、泣いたのだ。
泣きたくなったのは、こっちである。

だが、泣くのもが急だったら、止まるのも急だった。

「確かに、何も働いていな俺が贅沢を言っちゃいけない。」

言い、袖で涙を拭き。

「じゃ〜、行ってくる!!」

と言って、平民は出て行ったのだ。
ご主人の許可も無しに、勝手に飛び出したのだ。

通常、学校の授業は使い魔と共にでる。
教室に大きすぎて入れないなどといった、やむを得ない事情を除くが、それ以外は一緒である。

とは言うのも、メイジにとって使い魔というのは、己の半身にも等しいものであるとされるためである。

才人は教室に入れないほど巨大ではない。
という事で、彼がルイズと共に居ないという事は、自身の使い魔をまともに扱えていないという、メイジとしての失態を表すのだ。

ご飯を与え、寝る場所も与えた。
それも、貴族の自分と同じ場所で与えたのだ。

ルイズにとっては、栄誉を使い魔に与えたつもりでいた。
彼女なりに、最大限の歓迎する気持ちを示した。

それにも関わらず、勝手に行動する使い魔に、彼女は怒っていたのだ。

教室へ入り、席へと座る。
周りを眺めれば、見知った生徒の傍には様々な使い魔がいた。

バグベア、バジリスク、ヘビ、猫などなど。

別にサラマンダ−のような、凄い使い魔でなくとも良かった。
ネズミや、猫といった、何処でもみれる、使い魔として優秀とは言い難い物でも、良かった。

自分の使い魔が召喚されるだけで、ルイズは自分が『ゼロ』ではないと、証明出来るのだから。
なにせ、魔法の使えないルイズにとっての、可能性なのだから。
今は使えないが、いずれは魔法が使えるという可能性。

確かに、普通ではない使い魔が出て、彼女は落ち込んだ。
それは、失敗だったのかもしれない。

それでも、彼女は爆発以外の失敗。
それも、限りなく成功に近い失敗というのは初めてであり、それ故希望をもった。
事実、その後に行った、『コントラクト・サーヴァント』は成功したのだ。

ルイズにとって、才人と言う人間は自分の希望であったのだ。

だからこそ、己の出来る最高の歓迎をした。

ルイズは、同級生が使い魔とじゃれ合っている様子を嫉妬の眼差しで眺める。
その嫉妬は、普通の使い魔を羨む物ではなく、互いに絆を持ち始めている様子を羨んでいる物だと、ルイズは気付かない。

扉が開き、ミセス・シュヴルーズが入ってきた。
紫のローブと三角帽子は、少々彼女のセンスを疑う。

滞りなく、授業が始まり、そのままゆったりと時間が流れて行く。
時間にしておよそ45分。

ようやく、授業の折り返し地点に着た時、問題が発生した。

何気なく、ルイズが視線を横へと向けると、窓の向こうにドラゴンに乗った平民の姿が映った。
唖然とした。

どうやら平民を、ルイズに気付いたようで、笑顔で手を振ってきたのだ。
ちなみに、もう片方の手にはウサギがぶら下がっていた。

「ミス・ヴァリエール
しっかりと、こちらを見なさい。」

「すみません……」

ルイズは謝罪しながら慌てて、視線を正面へと戻す。

「よそ見する暇があるのなら、あなたにやってもらいましょう。
ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい。」

指名され、ルイズは戸惑う。
ルイズの魔法は失敗し、爆発を起こす。
正確には、爆発を起こす事しかルイズには出来ないのだ。
しかも、その規模はかなりの物であり、楽に教室の一室がめちゃくちゃになる。

故に、何度も授業を潰した事があるのだ。

最初の方は、ルイズを受け持つ先生達は何とかしようと、たびたびルイズを指名したりしていたのだが、そのたびに授業が潰れてしまい、皆さじを投げてしまった。
シュヴルーズが、そんなルイズを指名したのは、彼女が教育熱心であったり、授業を潰したかったりするワケでは無い。

ただ、単純にルイズの失敗魔法を知らないだけであった。

何時も被害受けている同級生から、蒼白な顔をしながら、止めてくれっと懇願されたが、逆にルイズはムキになってしまう。
そのまま、前へと歩いて行く。

そして、短くルーンを唱え、構えた杖を振り落とす。

やはり、爆発した。

爆風をもろに受けたシュヴルーズは、吹き飛ばされ、黒板に叩きつけられる。
爆発音に驚いた、それぞれの使い魔達は暴れまわる。

まさに阿鼻叫喚。

そんな中、ルイズはゆっくりと立ち上がった。
スカートの中に入っているハンカチを取り出し、顔についた煤を落とし、一言。

「ちょっと失敗したみたいね。」

大物である。







ルイズが滅茶苦茶にした教室を、才人はせっせと後片づけをしていた。
重たい机を運び、脚の折れた椅子の修理など、額に汗を浮かべながら才人は行った。

一方、ルイズは行儀悪く机に座って才人を見下ろしている。

「……笑いたければ、笑いなさいよ。」

不機嫌そうに、目を吊り上げ、ルイズは言葉を紡ぐ。

「貴族のくせに、まともに魔法が使えないのよ。貴方のご主人様は。
情けなさ過ぎて、笑えるでしょ?
笑いなさいよ。」

ルイズの目には涙が溜まり始めており、とてもじゃないが笑えるような空気ではない。
だが、空気の読めない才人にとっては、なんの問題もなかった。

「わっはっはっはっはっは。」

「ホントに笑うな!!」

「……どうすればいいよ?」

言いながら、才人は頭を掻く。

なんとなくだが、才人は気付いていた。
なにせ、ルイズの様子は酷く自分と似ていたから。

かめはめ波を打つ。
幼い頃友達に言ったら、共感して貰えたが、年を重ねる毎に、引かれるようになった。
最近では、ギャグだと思われ、涙を流すほど笑われた。

段々と、他の人に言う事はなくなりっていき、最後には誰にも言わなくなった。

それでも、才人は身体を鍛えた。
もしかしたらと思い、高校では習わない様なエネルギーの専門書だって読み、それに関しての質問を色んな人に聞いて回った。

何度挑戦しても、努力しても、全く手ごたえがない、全く報われない日々が続いた。
何度も諦めようと思った。

非現実的だと分かっていながらも、才人は挑戦し続けた。
空しく思い、自分に怒りを感じ、それでも足掻き続けた。

そんな、自分と今のルイズが似ていると感じたのだ。

大きな壁があり、どんなに足掻こうと、挑戦しようと、どうにもならない様な……。

才人は、誰もが不可能と言う事。
ルイズは、出来て当たり前である事。

その違いはあったが、互いに報われぬ努力をし続けたという点は確かに同じであった。

「ルイズ……。
諦めたら楽になるよ。」

本音であった。
諦めたら楽になる。
かめはめ波なんて、打てなくて良いじゃないか。
宇宙人が攻めてくるわけでも、人造人間が居るワケでもない。

そんな力無くても良いじゃないか。

何度も囁かれた、甘い言葉。


事実、人間には得手不得手ある事には間違いない。
故に、それに括るだけではなく、他の道でそれを補うというのも一つの手であるのだ。

「嫌よ!!」

ルイズの返事はスグだった。

「だったら、それで良いじゃん。」

才人はそれだけ言うと、再び止めていた手を動かす。
まだまだ、片づけなくてはいけない所は多くあるのだ。

「いったい、何なのよ!?
あんたは!!」

「さぁ?

あっ、ドラゴン。
とりあえず、窓ガラス一式持ってきくれる?」

「きゅいきゅい」

窓の外に居るドラゴンは鳴き声を上げながら、飛んで行った。

「なんで、ウィンドドラゴンがあんたの言う事を聞くのよ!?」


posted by まどろみ at 02:32| Comment(0) | ザ・使い魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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