2012年04月23日

6話目

「さ、才人

これ、作ってみたんだが、食べてみてくれないか??」

ギーシュホモ勘違い事件を起こした後、才人とギーシュは仲良くなった。
いつの間にか、ホモだと思われていたのだ。ギーシュが怒っても仕方ない。ギーシュもギーシュで自分の気が短すぎたと反省。互いに謝罪を行った後、親しい仲になったのだ。

いわゆる、『「ふっ、貴様中々やるな。」「貴様もな」で芽生えた友情』現象である。
なお、これは河川敷やバックに夕日等があれば、おこる可能性がより高くなる。

「おっ、さんきゅ〜」

ギーシュが作ってくれるお菓子やお弁当を貰うほど仲が良い。
最近ではルイズが決闘に勝った褒美として、食事の量を少し増やした事、料理長であるマルトーさんと仲良くなり、余りを貰い、ギーシュがしょっちゅう作ってくれるお菓子も貰えるため、危惧していた食事事情は何とかなりつつあった。

「しかし、君はいつも訓練をしているな」

汗を拭きながらおにぎりにカブリ付く才人に切り出すギーシュ。
ギーシュが言うように、基本才人は食べているか、仕事をしているか、訓練をしているかのどれかだった。
仕事も現代のように、家電なんてものはないし、調理場の手伝いでは数多くいる生徒の物だ。量も多い事もあり、それ自体もまた身体を苛めてる行為である。

「う〜ん、それぐらいしかやる事がないしなぁ。

まぁ、前居た場所だと、色々とやらないといけない事があったから、こうやって身体を動かし続けるってのも新鮮で楽しいってのもあるんだけどね」

あと、かめはめ波が撃てた喜びもあり、もっと強くなりたいという彼の願望が高まっているのも理由の一つであろう。
ただ、ルイズにかめはめ波に関しては使う事、しゃべる事が禁止されているため、言うわけにはいかなかった。

「色々??」

「そそ、物理、数学、化学とか色々」

才人の得意な物順となってしまったのはご愛嬌だろう。

「へぇ〜。
ブツリとか、いまいち良く分からないけれど、何か難しそうな仕事だね」

「むぐむぐ……仕事というか、授業??
というか、俺って一応学生だよ??」

今更、自分が学生だった事を誰にも教えていなかった事に気付き、説明する才人。
というより、自分の夢の中だというのに、こうやって教えるというのも変な話である。

「あっ、才人は学生だったのか。
それじゃ〜、将来は、そのブツリとかを使って仕事をするというワケだね」

「いや、多分使わないんじゃない??
もぐもぐ……」

もちろん、使うところもあるかもしれないが、今まで学んできた物理、化学、数学だけみても、それを将来絶対に使うかと言うと、多分使わない部分の方が多いだろう。
実際、才人の両親に有機化合物の特徴、名前のつけ方など覚えていない事を才人は確認済みである。
そもそも両親どころか、多分、日本でも最高峰の大学を出てる政治家とかだって、高校で学んだ物全てを、完璧に理解している人間なんて殆どいないんじゃないだろうか?

「それじゃ〜、使いもしない事を学んでいるのかい??」

「まぁ、そういう事だね」

「僕には、良く分からないな。

明確に必要とされる所が分からないのに、学ぶ事が出来るというのは、凄い事なのかもしれないが……」

「むしゃむしゃ……んっ……

ほい、ご馳走様でした。
いやぁ〜、今日もおいしかったよ」

「そ、そうか。
それは良かった。
き、君さえよければ毎日でも作ってきても良いのだがね」

料理が趣味なのだろう。作っても苦ではないどころか、楽しくて仕方ないらしい。
ただ、どうやら男が料理を作るというのも、あまり格好が付かないらしく、よほど親しい人間以外には秘密にしているという。

どちらかといえば、料理も出来るイケメン(いけてるメンズの略である)というのはモテる要素の一つだと思うのだが、どうやら才人の夢の中では違う様だ。

「俺本当に頼んじゃうよ?
毎日、ギーシュの弁当楽しみにしちゃうよ?」

「全然構わないよ。
任せ給え」

どうやら、才人の食事事情は本当に回復したようだ。







平民というのは弱き存在であり、魔法を扱う貴族には敵わない。
ルイズの中でそれは常識であり、揺るがないものだった。

事実、親や知り合い、先生、はてまて当事者である平民も皆言うのだ。
『平民では貴族に敵わない』と。

ルイズは消して愚鈍ではなかった。
周りの言う事をそのまま信じ、己で考える事を怠らなかった。

だからこそ、彼女は自信を持ち、高らかに言うのだ。

『平民では貴族に敵わない』

平民の牙である、武器を使ったとしても、彼等は貴族に勝つことは難しいであろう。
所詮、牙なのだ。

貧弱な牙でしかないのだ。

剣はで斬ろうとしても、接近する前に魔法により死ぬであろう。
重厚な鎧を着たとしても、魔法の威力の前では意味を成さない。
弓で狙ったとしても、炎や風には敵わず、水や土のシールドで防がれて終わるであろう。
銃だったら、遠くから打てるが、音のせいで位置を知らせ、威力は弱く、命中率だって低いのだ。
毒薬を入れたとしても、水の魔法が使える者がいれば魔法薬以外の毒物など大抵治ってしまう。

余程の不意をうつ、または圧倒的な物量で攻めないかぎり、貴族は平民に勝てないのだ。
それは自明の理であり、常識であった。


だが、それをいとも容易く跳ね除けた男が居たのだ。

貧弱な牙すら持たず、己の身ひとつで貴族と戦い、傷ひとつ負わずに勝利した男が居たのだ。
恐怖の対象であるはずの魔法をあろうことか利用し、貴族に勝った平民が居たのだ。

この時、ルイズは何を思っただろうか?
ただの鈍器に過ぎない獲物を両手に持ち、貴族を圧倒した己の使い魔を見て、なんと思ったのだろうか?

あの、よくわからない『けぇめはめぇは?』を使わずに、勝利したのだ。

興奮した。絶対負けると思った自分の使い魔が勝利したのだから。
自分の使い魔が強いと、平民なのに貴族を倒せるのだと、周りに自慢してやりたかった。
何も満足に出来ないと言われてきたが、こんな凄い使い魔なんだぞ!!っと自慢してやりたかった。

だが、冷静になって気づいてしまう。
気づいてしまった。



何度も言うが『平民では貴族に敵わない』のだ。
故に貴族の誇りという奴で、弱き平民を守っているという環境が成り立つのだ。

そして、守られている弱き平民は貴族を敬い、皆でお礼としてお金を払う。
それが、貴族と平民の関係なのだ。

だが、もし平民が貴族に勝ってしまったら?
途端に、社会が変わってしまうであろう。
今の社会は『平民では貴族に敵わない』という大前提の基成り立っているのだ。

だからこそ、平民は貴族に勝ってはいけないのだ。


ここまでルイズが考えたワケでは無かった。
だが、漠然とした自分という立場が可笑しくなる不安の様な物を感じ、失敗魔法しか使えない自分など、あの使い魔にとっては簡単に倒せる存在だという事に気づいてしまったのだ。

『敵に後ろを見せず、勇気のある者を貴族と呼ぶ』

ルイズが持つ、貴族の吟味という奴の一つだ。
後ろには守るべき民達がいるのだ。
彼等を守るために、貴族には負けは許されず、後ろを見せてはいけない。

魔法の有無など関係ないのだ。


でも、それだと才人にも貴族になってもいいって事?
私のような落ちこぼれよりも、強い彼の方が民を救える?

いや、そんな事はないはずだ。
貴族の誇りと、吟味を持っていたら才人ももしかしたら貴族になっていいのかもしれないけど、それでも……


「ルイズ〜、蚊にチ○コくわれて、デカくなった!!」

「……馬鹿じゃないの?
もう寝るわよ」


(下らない事を考えていたわね。疲れているのかしら?)

布団に潜りながら、そんな事を思う。
なにせ、自分の使い魔は男性器が蚊に刺され、デカくなった事を報告してくる奴なのだ。
貴族云々とかの次元ではない。

(……でも、こんなヤツでもご褒美ぐらいは上げなくちゃいけないかもね)

貴族に勝てるという力を彼はあの大勢の生徒達に示したのだ。
これは、その主であるルイズの評価を上げる理由にもなった。

まぁ、才人は意図したワケではないだろうし、ああいった決闘はむしろ罰する要因になりうるのだが、それでもルイズはご褒美を上げようと思ったのだ。
今まで鍛えに鍛えてきた、才人のその愚直な努力に褒美を。

(素手でアレだけ強かったのだから、なにか武器でも持たせたらいいのかしら?
えぇ、そうしましょ。見栄えも少しは良くなるでしょうし)

「……言い忘れたけど、絶対私よりも遅く起きるのよ!!」

まだ、彼がルイズにトイレをしてしまうという恐怖は残っていた。


posted by まどろみ at 01:16| Comment(4) | ザ・使い魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
続きを楽しみにしています!(`・ω・´)
Posted by 通りすがり at 2013年09月26日 17:07
通りすがり様、コメントありがとうございます。

更新止まっていてすみません。
続き、頑張ります(`・ω・´)

止まっている物もありますが、全ての完結を目指し、頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年09月28日 17:05
面白いSSを見つけたと思ったら更新止まってた時の悲しみ…
Posted by あうあう at 2015年04月11日 22:58
あうあう様、コメントありがとうございます。

面白いと言ってもらい非常に嬉しく思います。
更新に関しては……すみません。
一応完結させるつもりではいるんですが、結局長い年月更新しないままだったりします。

いつか、いつかはきっと……
Posted by まどろみ at 2015年04月22日 23:40
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