2012年08月10日

第5章 京都編 その4

〜side 徹〜



正義の味方、ヒーロ、英雄。

そんな物にオレはなりたかったんだよ。
社会って奴も、人って奴も、いまいち良く分からない小さい頃だったけど、なりたかったんだ。

いつしか、それは忘れ去られてしまった記憶。
社会やら、人やら、自分って奴やら……そんな物を知るにつれて諦めてしまった物。

そんなヒーロに今オレはなっていたりする。


「自然の使者。
そよぐ風と共に生きる。

アラブルバラグリーン 参上!!」


「いや、聞こえてなかったわけじゃないですから!!」

刹那ちゃんのツッコミで、もう心が折れそうです。
思った以上に自分のハートは軟弱なようで、やはりヒーローには向いていない。


木乃香ちゃんに言われ、刹那ちゃんを探してたら、なんか木乃香ちゃんの名前を呟きながら泣いている所に遭遇。

何故か思い出す、ナギさん達と一緒にボランティアをやっていた時に戦隊物の劇で子供たちを喜ばす場面。

そして、気付けば今である。

……どうやら、対応を誤ったらしい。

「くそぉ、せめてラカンさんとナギさんさえいればレッドとブラックも合わさるのに……
一人で戦隊物とか難易度が高すぎるよ!!」

顔に付けていたオカメのお面を取り外しながら、思わず叫ぶ。
ちなみに、このオカメは近くに飾ってあったのを拝借した物だ。

「はっ、そうだ。エヴァちゃんだ。
エヴァちゃんを、アラブルバラピンクにすれば、イケる!!


ちょっと待ってて、今からエヴァちゃん呼んでくるから」

「ヤメてください!!」

即入れられる否定の言葉。

よし、オーケー。分かった。

「そうか、君がアラブルバラホワイトをやってくれるという事か!!」

「なんでそうなるんですか!!」

コレでもダメなのか!?
やはり若い娘の考える事というのはイマイチ理解が出来ん。

「まぁいいや。
とにかく、刹那ちゃんの悩みをアラブルバラグリーンに相談してみる気はない?

こんなオレだけど、無駄に歳だけはとっているよ?」

「……貴方が一番良く分かっているんじゃないんですか?」

その声は、先ほどのツッコミからは想像が出来ない、酷く苦しそうで、切なそうな物へと変わっていた。
やはり、彼女の悩みというのは深いんだろうな。


俺が一番良く分かっているかどうかは疑問だけど、それでも彼女の悩みの推測ぐらい楽に出来る。
先程も言ったように、生きた年月だけは無駄に重ねている俺だ。多少の観察眼ぐらい養われている。

先ほどまで彼女は涙を流しながら、慈しむ様に、それでいて辛そうに木乃香ちゃんの名を呼んでいたのだ。
そんな彼女の様子を見れば、すぐに彼女が悩んでいる事柄が思い浮べる事が出来る。


愛ゆえの悩みに間違いないじゃないか!!


うん、今日の俺はいつもよりも冴えているぞ。
いつもの6倍(自分比)ぐらいは冴えわたっている。

確かに、女子中や、女子高じゃ多いと聞くしね。

「まぁね……
君は、木乃香ちゃんが大切で大切で仕方ないんだよね?」

「はい」

オレが木乃香ちゃんと話している時はいつも鋭い目で俺の事を睨みつけていたのは、嫉妬だろうな。

「そして、自分が今抱いている想いに悩んでいる」

同性愛。それがいけないなんて、言うつもりはない。
確かに非生産的であるかもしれないが、好きになるという事が罪なはずなどない。

とはいえ、一般的な事ではなく、彼女が思い悩んでしまう気持ちも分からなくもない。

「……」

無言のまま、彼女は涙を目に溜めながら、オレを睨みつけていた。
まぁ、刹那ちゃんの事を大して知らないっていうのに、こんな偉そうに喋っていたら、そりゃ睨みつけられるよ。

余計なおせっかいだと、声を大きく叫びたくもなるだろう。

とはいえ、妹分が浴衣を乱しながら、必死に頼ってきたのだ。
こんぐらいで引き下がりはしない。




〜side 刹那〜




「よし、とりあえず刹那ちゃんの悩みが何となくだけど分かっただけでも収穫収穫。
とにかく、君が木乃香ちゃんの事を嫌っているワケじゃない事が分かっただけでも十分だよ」

微笑みながら言うと、徹さんは携帯電話を取り出しパチパチと操作をし

「あっ、もしもし木乃香ちゃん?
刹那ちゃん見つけたよ。

え〜と、大広間側の食堂んとこ。え?大丈夫だって。

別に木乃香ちゃんの事が嫌いで避けていたワケじゃないよ。

恥ずかしかったから?うん、とにかくそんな理由みたい。
そそっ、だから、刹那ちゃん迎えに来てよ。

うん、足止めの方は任せておいて」

そして、電話を切ると徹さんは汗を拭う仕草を一つし

「ふぅ〜、いい仕事した」

「何やっているんですか!?」

いや、ほんとに何やっちゃっているの?この人!?

「あぁ〜、ゴメンゴメン」

ポリポリと、片頬を人差し指で掻きながら困ったような笑みを浮かべながらの、あまり誠意がない謝罪であった。

「たださ、木乃香ちゃん一生懸命だったんだよ?
刹那ちゃんの様子がおかしいって、年頃の娘が浴衣をはだけさせながらも、走って、必死にオレに助けてくれって頼んできたんだ。

君がその気持ちをどう扱うのかは分からないけどさ、それでも」

一息つき、そして私を見つめる。

「その気持ちを理由に、木乃香ちゃんと不仲になるのは、君も、木乃香ちゃんも不幸になるだけだよ」

言い放った。
そう、言い放ったのだ。

私が何も感じず、考えて居ないかとでも思っているのか?

今の状況が、お嬢様が望むものではない事ぐらい私だって分かっている。
だが、それを分かっていながらも私は決意したのだ。

考えに考え、悩みに悩み、決意したのだ。
徹さんの様に、出来の良い頭ではないが、それでも決意した事なのだ……

決意したはずだったのだ……

だが、その決意は先程粉々に砕かれたのだ。
あれほど、簡単に。

やはり、私にお嬢様を守る権利など

「うん、まぁオレとしては木乃香ちゃんが幸せだったら良しと思っているからね。
だから、君の恋心に反対はするつもりはないよ?」

ないの……だ?


え?
……こいごころ?KOIGOKORO?

私がお嬢様に恋心?

……え?

「なななななななな、なにを言うとるんや!?
ウチ、とこのちゃんは、そんな関係じゃ!?」

だ、だいたいウチとこのちゃんは同性なんよ!?

「分かってる分かってる。
刹那ちゃんは木乃香ちゃんの事が大好きなんだもんな」

「本当!?」

「うん、ホントホント。
別に嫌われているワケじゃないから、安心していいよ。

あっ、また浴衣がはだけてるよ?」

……お、お嬢様?
い、いつの間にソコに?

「さてさて、後は若い衆に任せておじゃま虫は退散しますか」

「ちょっと待てぇぇええええ!!
いや、待ってください!!」

ちょっ、抱きついてくるお嬢様に私は何をしたら!?
そんな、親指を立てるだけで、いい笑顔で去らないでくださいよ!?





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posted by まどろみ at 19:35| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
京都編くらいから次の記事へで続きが表示されなくなって不便です
Posted by ぱぴよん at 2013年09月07日 14:52
ぱぴよん様、コメントありがとうございます。

その『次の記事』というのは、次の話へと移るという機能ではないので、不具合ではありません。

一応、その辺りを考え目次を作りましたの、そちらからの移動をお願いします。

自分としても、この次へ、戻るといった物が無いのは不便だと思っていましたので、少しずつ変えて行こうかと思っております。

貴重なご意見ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年09月07日 23:26
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