2012年08月13日

第二話

色々な村へと飛び回り、様々なバイトを掛け持ちしつつ、毎日働いた。
数ヶ月も経つと、この環境にも慣れ始め、色々な所でホープなどと呼ばれるほどだ。

恐らくお世辞だろうが、それでも嬉しい物は嬉しい。

汗水流し働き、週に一度の贅沢でワインを嗜む。
家に帰れば、クーやメイド達が出迎えてくれる。

ほんと、俺ってば幸せだな。

お金も殆ど使わないので、貯まる一方。
このまま頑張れば、後数年もしたら結婚出来るんじゃないだろうか?

「……ご主人様、本気で言ってますか?」

「えっ?
なんか俺可笑しい事言った?」

この、微妙な沈黙とクーの白い眼差しが痛い。

「はい、ご主人様。正座です」

「えっ?えっ?」

「正座」

「あっ、はい」

なんか、今のクーには逆らっちゃいけない何かがある。
というより、一応俺、強くってカッコいいドラゴンなんだけど……いえ、何でもないです。

「はい、ではご主人様。
おおよそで宜しいですから、今月の稼いだ金額を教えてください」

今月か?
えぇ〜と、確か……

「およそ、30万ぐらいだな」

えっへんと胸を張りながら言う。
なにせ30万B(ブレッド)だ。

パン一つ1Bで購入出来る事を考えると、ちょっとズルをしたけど一ヶ月で稼ぐ額としては破格のもの。
十分胸を張るに足る額である。

返事は何故かため息であった。

「ご主人様、竜の結婚する際に使う費用はその万倍ぐらいですよ?」

万倍?

「30万の万倍って……3億」

「30億です」

万は0が4つだから……あっ、30億だ。

「って、30億!?」

「はい、さらにお相手は、"あの"リュミス様ですから、それ以上かと思います」

……今の調子で30億も稼ぐのって、何年ぐらいかかるんだろ?

「およそ830年ですね」

はぁ〜、先は遠いなぁ。
というか、他のドラゴン達は凄いなぁ。そんな莫大な財宝を稼いでいるんだから、さすがファンタジーの大御所なだけあるよ。

「さて、ご主人様。どうして正座させられているか分かりますか?」

「正確な結婚費用を分かってなかったから?」

「はい、もちろんそれもあります。
ご主人様がどのくらいの金額を想像していたかは分かりませんが、圧倒的に足りない事は確かだったようですし」

うん、まぁ〜考えていた金額よりも桁が2つぐらい違っていたね。

「ですが、それ以上に問題なのは、もっと稼げた機会があったにも関わらず、無視ってどういう事ですか」

「こういうのは自分で言うべきじゃないと思うけど、かなり頑張って稼いだつもりだぞ?」

慣れないながらもやってきた仕事なのだ。
それが認められないというのは、ちょっとばかり悲しい。

「いえ、ご主人様の働きを否定するつもりはありません。
これまで幾人かの竜族を見てきましたが、方向性が違うとはいえご主人様ほど働いている方はおりませんでした」

うんうん、そうだろ、そうだろ。
ただ、俺が一番働いているっていうのも、それはそれでドラゴンの将来が不安になるっていえばなるんだが……

「ただ先ほど言ったように、金品をもっと大量に得る機会があったにも関わらず、完全無視とはどういう事ですか!?」

「……あったか?そんな機会?」

クーの表情は相変わらず笑みのままではあったが、俺は知っている。
この微妙に歪んでいる笑みは怒っている時の物だ。

「ご主人様〜、それじゃ一昨日仕事が終わった後に何をしていたか聞かせてもらいましょうか?」

「普通に仕事した後、親方がボヤいていた盗賊のアジトをブレスで軽く吹き飛ばしてから、その財宝を近くの村々にばら撒いた」

あっ、ちょっとネコババしちゃったけどね。
このネコババした物が凄い額となって、30万も稼げたのだ。それがなければ、半分以下であっただろう。

「どうしてばら撒いちゃったんですか!?
全部持ってくればよかったじゃないですか」

いや、何でって

「……なんとなく?」

いや、普通に放置しといたら誰が持って帰るか分からんし、かといって奪われた人に返すってのも出来やしない。
だったら、根城にしていたアジト周辺の村にばら撒いとけば、多少は奪われた人に返せたかもしれないじゃないし。

「うん、なんとなくばら撒いた」

あっ、クーの笑顔が一層強張った。

「……先日ので3度目ですよ!!
えぇ、ご主人様の行動に文句は言いませんよ?
所詮私はギュンギュスカー商会の雇われメイドですから!!」

文句言っているじゃん。と言いたくなったが我慢。
言ったら、クーの機嫌が更に悪くなりそうだし。

「いや、俺ってばドラゴンだからさ、あれぐらい大した事ないんだよ。
そんな簡単な労働で、あんなお金稼げちゃうとちょっと怖くなっちゃってさ〜、ばら撒いちゃった」

ちなみに、この言葉も事実だ。というより大半の理由がこれだ。

「竜が恐がってどうするんですか!?
いいですか?世間一般の竜のイメージは洞窟の中に暮らしていて、財宝を一杯溜め込んでいるんです。

そんな竜がお金を恐がってどうするんですか!?
そんなの、満月が怖い狼男と変わりませんよ!?」

「えぇ〜、いくらなんでも満月が怖い狼男よりはマシだろ。
たぶん、イタズラが嫌いなピクシーぐらいじゃないか?」

「そんなのはどうでも良いんです!?」

あっ、余計怒らせちゃった。





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posted by まどろみ at 03:43| Comment(0) | 巣作れドラゴン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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