2012年11月08日

第5章 京都編 その8

〜side ネギ〜







「いや〜、ゴメンゴメン
ちょっと通らしてもらうよ」

「あぁ、すみません。
こんな道の真ん中で」

とっさに謝りながら、道をあけようとする。
事実、こんな一直線の道の真ん中でドンパチやっていたのだ。かなり迷惑だったに違いない。

ぱっ、と声の主を見上げると

「……あれ?徹さんとエヴァンジェリンさん?」

見慣れた二人だった。

「あらら、全然気付いてなかったのね。

あっ、そうそう犬耳君」

と、奴へと話をふる。
先程まで戦闘していた、しかも僕からしてみれば急に攻撃された敵へと徹さんが仲良さげに話しかけるというのには、少しばかり気分が良くない。

自分でも子供っぽいとは思うが、自然と頬が膨らんでしまったのは仕方ないよね?

「酔った際に漏らしてしまった失言がここまで化けるとはな、フフフッ」

笑みというよりも苦笑?
とにかく、口の端を僅かに上げながら、エヴァンジェリンさんは歩いて来た。

「戦闘に関しては文句はない。
よくぞ、たかがあれだけの助言とも言えない戯言を信じ、ココまで来たな」

エヴァンジェリンさんの思わぬ高評価に喜びながらも、罪悪感が重くのしかかる。

「いえ、僕は信じきれませんでした」

そう、あの助言を僕は信じきれなかったのだ。
もし手以外から射手を出すことが出来るのなら、もし射手の性質を変えられるのなら、もし射手が曲がるのだったら……

戦闘中に己の準備不足を何度後悔したか。
ほんのちょっと、後ほんのちょっとまじめに研究していれば、実現出来たはずなのだ。
もっと色々な方法があったはずだった!!

全ては、エヴァンジェリンさんの助言を半分程度しか信じられなかった自分のせいだ。

「そんなのは、どうでもいい。」

「でもっ!!」

「アホが、戦闘だけは多少使える様になったかもしれないが、本質を見誤ってるんだ、貴様は。
今回の助言も同じように2つだけだ。

いいか?


重要なのは己の知力を使い戦う事だ。
そして出来る限り戦わずに勝て」

「え?矛盾してい」

「お〜い、エヴァちゃ、ウワッ!?」

何事かと思い咄嗟に徹さんの方へと視線を移すと、彼の足元から射手が伸びて行くのが目に入る。

解呪、不可、僕の手を離れている、射手で相殺、不可、間に合わない、移動不可、当りどころが悪かったら、死亡可能性有り、重症確率大、あの野郎が気付いた、僅かに遅い、助けられない。
そして、脳裏に浮かんだ結果は


バチッ


外された。


非常に奇妙な体勢で射手を叩(はた)き落とすなんていう、想像もしていなかった形で……

「イチチッ……」

言いながら手を振っているが、特に赤くもなっていない。

「……えっ?」

徹さんに何にもなかったのは良かったよ、本当に良かったけど……
なんか納得いかない。

「……そうか、お前は知らんのか。

喜べ、もう一つだけヒントだ。
よくよく周りを見てみるといい。手本は意外と側にいるぞ?」

「よし、それじゃ〜エヴァちゃん行こうか」

もう話すことは無い、とばかりに背を向け徹さんへ向かい歩き始めてしまった。



「はぁ、全く何やったんや?
あの兄ちゃん達……」

ため息を吐きながら、ポツリと零す野郎。
ただ、非常に気に喰わないが、コイツの気持ちも分かる。
ホント、気に喰わないけど。

「いつも、あの人はあんな感じだよ……」

なんて言うか、器が大きいというか、鈍感というか、我が道を行くというか……
とにかくアレがデフォルトなのだ。

そのデフォルトのまま、日常だろうが、危険地帯だろうが、混浴露天風呂だろうが、乙女の柔肌を見ようが、突っ切って行くのだ。

……あれ?
もしかして、あの人って全然普通の人じゃない?

「そ、そうなんか……」

冷や汗を額に浮かべつつ、絞り出したその言葉に、不覚にも何となく共感を覚えてしまった。

「き、気は削がれちまったが続きと行こうか、西洋魔術師!!」

あいつは気合いを無理やり入れなおし、仕切り直しをしようとするが……

「それは別に良いんだけどさ、ループ型結界の中なんだから、あの二人またココに来るんじゃない?」

ギリギリの状態で保っていた気合いとか、バトルな空気とかが、全部抜けてしまった瞬間だった。





            ☆☆☆




「そして、一時間以上待ってるんだけどさ、来ないね……」

「せやな」

あと、それダウトね。

「チッ、何で分かるんや!?」

「……何となく?」

実際、何となくなんだから仕方ない。

「はぁ、ヤメヤメ。
こういう頭使うゲームじゃ、勝てへんわ」

そう言いながら、立ち上がりながらカードを放り出した、犬耳。
ちなみに、裏側だったカードをめくってみると、やはり嘘(ダウト)だった。

「それで、急に立ち上がってどうしたの?」

「便所だよ、便所」

そう言いながら、近くの茂みにガサゴソと入っていくバカ。

一応僕も女なんだから、気を使って欲しい所ではあるのだが、気付く。

ポンと手を叩き

「マーキングだ!!」

「ちゃうわ、ボケ!!」


「だったら、外でしないでよ、手も洗えないだろうに」

「はん、んなの気にせんわ。
たっションぐらいチビ助もやっただろ?」

あるワケない。
というより、身体の構造上出来ない。

いや、試した事ないから分からないんだけど、試したいとも思えないし……

「途中に休憩所があったから、そっちでやって来てよ!!」

「へいへい……
都会っ子はお上品で」

渋々といった様子で、休憩所へと歩を向ける。
何となしにその様子を眺めていたら、ダルそうに半開きだった目が急速に釣り上がっていく。

それは、飼い犬から闘犬、いや野生の狼へとの変化だったのかもしれない。
飢えた獣のようにギラギラと瞳を輝かせている様子は、ヤツが急速に戦闘モードへと移行している事が伺える。

とは言っても、その敵意とかは僕へと向かっているワケでは無いようだ。

「なぁ、チビ助。
お前、あそこの鳥居に射手が当たったかどうか、覚えとるか?」

そうやって、指差すのはなんの変哲もない鳥居だった。

「……いや、掠りもしてない」

「そうか、お前が言うって事は、そうなんやろうな。
まぁ、ネタバレなんやけどな、あそこの鳥居の印、3つを削ったら結界から抜けれるんや。
ちなみに印は見えへんようにされとるで」

……唐突な戦闘態勢への移行、益のない解呪方法の解説、そして先程の質問。

「何故か結界が壊されていたってとこかな?」

「その通りや……」

僕の攻撃はもちろん、犬耳の攻撃も当たっていない。
余波で飛ばされた石も、破壊された礫(れき)も、多少掠りはしただろうけど、その程度で解呪されるような軟な作りではないはず。

そもそも徹さん達が来る直前までループ型結界を利用しながら彼を攻撃していたのだから、解呪されたのはその後。

「徹さんが現れてから、今までの間に破壊されたはず、二人が戻ってこないのはループを抜けたから?
となると……」

僕が覚えていない、そしてあの鳥居に向かった攻撃、又はそれに類するナニカ……
そんな物……



『お〜い、エヴァちゃ、ウワッ!?』



アレは僕の思慮が足りなかったせいで起きた事故だろ?

たまたま上へと射手を出した後、徹さん達という予想外の人間達が入ってきたせいで、たまたま意識から外れてしまい、そしてその意識から外れた射手がたまたま徹さんへと向かってしまった。

客観的に見るのなら偶然に偶然が重なり起きてしまった事故であろう。


ちなみに、主観的に見るのなら世話になっている恩人を己の思慮が足らなかった故に殺してしまいそうだったという、ちょっとこの場から居なくなりたい、というか謝りたい、もう本当に謝り倒したい。って僕まだ謝ってないじゃん!?いや、ある意味アレは徹さんが謝らせてくれなかったのか!?等々、大いに思考が脱線というより、僕自身が潰れそうになるので、後で考える事にしよう。


その偶発的な事故により徹さんへと向けて放たれた一矢が叩かれる事によって、偶然3本に分裂し、そして偶然鳥居の3つの印に当たったという事は考えられないだろうか?

いや、ココまで偶然が重なるはずもない。


彼は、"ソレ"を狙っていたのだ。

一切、攻撃をせず、意図的な攻撃を受けず。
まさに彼は戦わずに勝ったのだ。


成る程

『己の知力を使い戦い、出来る限り戦わずに勝つ』

エヴァンジェリンさんの言った通りだ。

軽く声をかけるだけで、僕と彼との戦いを止めてしまい、そして結界を壊し先へと進むという形で勝ちを得た……

これが、エヴァンジェリンさんの言う知力を使った戦い。
それは僕が考えていた戦いとは、全くの別次元で行なっている戦い。


エヴァンジェリンさんの言うとおり、確かに手本となる方はすぐ側に居た。

ようやく、その戦い方の入口に立ったばかりの僕なんかでは、彼の背中は霞むほど遠くにあったのだ。





掲示板はコチラ


posted by まどろみ at 02:55| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも楽しく読ませてもらってるトウノです(`∇´ゞ

また絶妙な勘違いな展開で今回も面白かったです!

これからも更新がんばって下さいo(^-^)o
Posted by トウノ at 2012年11月09日 19:04
コメントありがとうございます。
楽しんでもらえているようで、ほっと一安心、そして嬉しく思います。

>>また絶妙な勘違いな展開で今回も面白かったです!

絶妙ではなく微妙な勘違いかもしれませんがwww
まぁ、楽しんで貰えれば嬉しいです。


応援ありがとうございます。
マイペースな更新になると思いますが頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2012年11月11日 03:03
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。