2013年01月14日

第六話

昼行灯。
日中に灯っている行灯なぞ役に立たずから、役に立たない事やボンヤリしている人間の事をいう。愚図や間抜けといった意味も含まれている。

竜族の女に囲まれている婚約者は、良くその様に揶揄されていた。

純血であればあるほどドラゴンの力が強くなる。
そんな中、彼は混血だ。それも上層部によって意図的に作られた、"より純血から遠い"混血である。
8種類のウチ7種のドラゴンの血が均一に彼の中を流れており、竜族の中で最も弱き存在。
ブラッド(血)なんていう、己をドラゴンの落ちこぼれの原因の名をつけられた婚約者。

性格もまた、何処かボンヤリとし、ドラゴンに最低限備わっているはずの威圧感などまるでない男。
なるほど、昼行灯という言葉が当てはまるのも分からないでもない。

だが、私、リュミスベルンの婚約者を昼行灯などと呼ぶことが、気に喰わない。

最も強き竜であるリュミスベルンには不釣り合いな落ちこぼれの昼行灯。
私が不満に思っていると、思い込んでいるからこそ、そのような発言を彼等はするのだろう。


気に喰わないわ。

確かに日中に灯っている行灯は役には立たない。
だが、夜はいつか来るのだ。
その時に、灯っている行灯は夜目が効かないモノにとって最も必要な物であろうに。

実に気に喰わない。

忘れもしない、彼と初めて出会った時。
まだ生まれたばかりの乳児だったにも関わらず、その瞳には理性と知性があった。

衝撃が走った。
身体の細胞一つ一つが彼を、まだ乳児に過ぎない彼を求めた。
あぁ、私は彼に求められるために生まれたのだと、遺伝子が叫ぶのだ。

それは、竜族としても異端な才、身震いするような畏れ。
純血の遺伝子が、最強の身体が、彼を求めた。

彼を必要としたのだ!!


そんな彼が多数の女に襲われかけている。
あぁ、気に喰わない。

沸々と湧き上がる怒りは既に耐えられない所まで来ており、徐々に瞳孔が細く縦に裂けていく。
牙が伸び始め、口の端も僅かに裂け始める。

「姉さん」

肩を叩かれると共に、竜へとなりかけていたモノが一気に人のソレへと戻る。

「ブラッドだったら大丈夫だから、いざとなったら俺が行く」

睨みつけるように、ブラッドを囲む者達を見ながら、そんな事を言う弟。

「……どうでもいいけど、アンタの目も縦に裂け始めているわよ」

「おっと」

私に指摘されると、弟はすぐに目を戻した。

「戻ったかな?」

愚弟は自分の瞳が良く見えるようにか、僅かに屈みながら私の瞳を覗き見る。
ルビー色の瞳は良く光を反射し、自分の姿も綺麗に写す。

「えぇ、戻ってい」

私の声を遮り絶叫が上がる。
それは理性のカケラもない、獣の鳴き声。

人の姿で致命傷を受けると、ドラゴンは本来の姿に戻り暴れまわる。

予想していなかったワケではない。
だが、いくらなんでも貴重な男を簡単に殺そうとするはずがないと、油断していたのだ。

頭によぎるのは、ブラッドが血を流している姿。
ドラゴンとなり、絶叫しながら暴れる姿。

そんな事態であれば、いくらブラッドに言われていようと見守るなんていう呑気な事言ってられない。
暴れようと逆立ちしようと竜の男は女に絶対に勝てないんだから。

慌てて彼の下へと行こうするのだが、手を引かれたのだ。
このような危険な状況だ。
いくら弟だとはいえ、引き止めようとするのだったら、容赦はしないつもりだったのだが……

「はっはははは
逃げるぞぉ、リュミス、マイト。ダッシュだ、ダッシュ」

暴れているはずのブラッドが手を引いていたのだ。
ちなみに彼の反対の手は愚弟と繋がっている。

彼に引きづられるように走りながらも後ろを振り向けば理性なく暴れまわる竜。
その数は5。彼を取り囲んでいた女の数と同じ数だった。



☆☆☆



「で、結局残ったのは荒野と瀕死の竜達だけ。
男に関わらずアイツは複数の女を相手取り勝っちゃったのよ」

と最後に締め、相手の反応を見た。
ブラッドの巣へと派遣された魔族の娘、確かクーと言ったかしら?

僅かながら眉を潜め、首もまた僅かながらに曲がる。

「……正直言ってしまうと、ちょっと想像がつかないですね。
いえ、ご主人様の事を貶めているワケではないですよ?
素晴らしい方の下へと派遣してもらったと思っております。

ただ、何と言いますか。巣でのご主人様の様子を見ていますと、そのような力があるようには見えないんんですよ」

「まぁ、アイツは昼行灯だからね。
夜にでもならない限り、いい加減で変なだけよ」

バカ丸出しの行動なんてしょっちゅう。
楽しければメチャクチャに笑い、悲しければ周りなんて気にしないで泣く。

ただでさえ混血で落ちこぼれなんて言われているのに、性格的にも竜らしくないんだから、そりゃ浮くわよ。

「……夜ですか。
竜の女性たちに襲われる様な事になれば、ご主人様とはいえども真剣になるんですね……」

「へ?違うわよ?」

「え?」

それぐらいだったら簡単にアイツは対処するし。

「確かにその事件から頭角をあらわしたわよ?
でも、ソレって2つあった自分の暗殺計画をおじゃんにさせるのと、竜族を滅亡とか、天界・魔界の滅亡とかを回避するためだったし」

「……つまりなんですか?
夜っていうのは、一族滅亡の回避とか、そういったレベルの事をいうんですか!?」

当たり前じゃない。
彼は、このリュミスベルンを乳児の時に畏れさせた化け物よ?

「……それ本当にご主人様ですか?」

「当たり前よ。

アイツさ、ずっとあの昼行灯のままで解決しちゃうもんだから、全然威圧感がないのよ。
ほとんどの奴が全部解決するまでアイツの異常性に気付かなくてね、もう何度暴れそうになったか……

でもね、気付いたら、皆顔色が真っ青。
いやー、あの時の気分は良かったわ」

ん?
いつもと変わらない様子で解決したって事は、まだ昼行灯状態で、夜になっていなかったのかしら?

……まぁ、どうでもいい事ね。
重要なのはそんな凄さとか才能とかじゃないし。

「さて、この話は終わり。
貴方を呼び出したのは、こんな事を話すためじゃないんだから。

巣作りはそんなに進んでいないらしいけど、アイツに意欲はあるのよね?」

「は、はい。
えぇ、ちょっと特殊な方法で稼いでいますので、あまり進んで居ませんが、意欲は間違いなくあります」


……昼行灯。
最強の竜たる私だって、太陽には敵わない。

だけど、愛おしい昼行灯は、その太陽にすら勝てるのかもしれない。

日中だというのに、行灯が灯っている事に気付けるのだから。
それは、太陽よりも輝いている事の証拠なんじゃないかしら?

「……特殊ねぇ。
まぁいいわ。ブラッドに意欲があるんだったらなんとかなるでしょう」

畏ろしい所も、化け物だと言う所も、バカな所も、抜けている所も、意外と泣き虫な所も、全部全部まとめて惚れてしまったのだ。

これほどまでに私を惚れさせたのだ。
だからブラッドには、応える義務があるはずよ?

だからね、ブラッド。
早く迎えに来なさいよ?

「それで、夜の生活の事なんだけど……」

「あぁ……
ご、ご主人様、お金を貯めてから風俗に通うつもりらしくて」

「……え?」



〜〜〜〜おまけ〜〜〜〜



「そういえば、ご主人様。
リュミス様から伺ったんですが、複数の女性のドラゴンから攻撃されたとか」

「あぁ、そんな事もあったなぁ
いや、その時の一人がさ、人型なのに力が竜なみでさぁ。

岩砕く様なパンチだぜ?
もう、怖くって怖くって」

はっはは、と笑いながら話すご主人様。
本当に怖がっていたのか分からないその様子は、なるほど確かに大物なのかもしれない。

ようやく、私の認識がリュミス様やマイト様、他のメイド達等々に近付いて来た。

「んで、逃げようとしたら、コケちゃってさ」

……あれ?雲行きが怪しくなってきた?

「そのおかげで、ソイツの拳は俺には当たらなかったんだけど、代わりに後ろの奴に当たっちゃって、致命傷。
竜になって大暴れ。

そんで、周りに居た奴等も巻き込まれて竜化。
いやぁ、あの時は危なかった危なかった」

……ご主人様はやっぱり、ご主人様だった。





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posted by まどろみ at 06:24| Comment(7) | 巣作れドラゴン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
新年初の更新お疲れ様です!

いやぁ、毎日寝不足で待機していた甲斐がありましたwww

この作品の巣ドラのブラッド君と徹君が揃えば、天界・魔界どころかまどか☆マギカみたいなバッドエンド風な異世界でもいつの間にか救ってしまいそうなイメージが思い浮かんでしまったwww

何時かリュミスの言う昼行灯なブラッドの伝説(竜の一族や天界・魔界規模の話)を見てみたいですwww






………リクエスト作品も楽しみに待ってますw(ボソッ
Posted by カミヤ at 2013年01月14日 10:53
カミヤ様コメントありがとうございます。
今年もどうか、よろしくお願いします。

>>いやぁ、毎日寝不足で待機していた甲斐がありましたwww

お待たせしました。第六話です。
いやぁ、いつも更新する日って深夜ですしねwww

第六話なんて、深夜通りすぎて朝になっていますしw


ブラッドの昼行灯伝説に付きましては、まぁ、近いうちに書けるかと思います。
うん……多分……


>>………リクエスト作品も楽しみに待ってますw(ボソッ

リクエスト作品というと、らかん☆マギカですかねぇ(汗
まぁ、出来る事なら短編の物を書きたいですが、いやはや、プロットが真っ白だったりして(汗


こ、これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年01月18日 00:19
前回の読み違いの気分転換がてら読みました。巣作りは原作全く知らないのですが面白かったですwww!こういう勘違い系を読んでると、歴史上の英雄や偉人も実はこんな感じだったのでは・・・。」と思ってしまいます。徹にしろブラッドにしろイイ感じで期待を裏切るので次回も楽しみです。
Posted by はるきよ at 2013年03月05日 21:53
前回の失態の気分転換がてら1話から読みました。原作知らないのですが徹に負けない勘違いっぷりが面白かったですwww!読んでいると「歴史上の英雄や偉人の行動も案外周りの勘違いなのでは?」等と考えてしまいます。
Posted by はるきよ at 2013年03月05日 22:09
はるきよ様コメントありがとうございます。

楽しんで貰えたようで非常に嬉しく思います。

18歳以上お断りのゲームで、ちょっと昔のものなので、知らない方は多いかもしれませね。

>>読んでいると「歴史上の英雄や偉人の行動も案外周りの勘違いなのでは?」等と考えてしまいます。

wwwwww
斜め上の発想で、衝撃を覚えましたw

これからも、楽しんでもらえるよう精進していきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年03月18日 20:42
巣作りSSを探して辿り着きました
面白い!
のに更新止まってる…(´・ω・`)
Posted by 通りすがり at 2013年09月26日 17:05
通りすがり様、コメントありがとうございます。

確かに、更新止まってますね(汗)
まぁ、後でいいや、とか思っていたら半年以上更新してなかったです。

いやぁ、時間が経つのは早いですね。ほんと。
第七話の構成も一応立っていたので、本日更新しました。

読んで頂けるとうれしです。

これからも精進していきので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年09月28日 17:04
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