2013年03月23日

幕章 ヘルマン編 前編

〜side あすな〜







何もない。
ぽっかりと空いてしまっている。


人殺し、兵器、役に立ってもらう。




化け物





何回も、何回も、何回も聞かされた言葉。

奪い、奪われる。

与えられるのは、冷たい言葉と苦痛。

長い長い、長い間。
ただ奪い、奪われる日々が続く。


何もないのに、また奪われる。
何も持てないのに、また奪う……

「え〜と、すみません。
道に迷っちゃって〜。

あっ、今取り込み中ですか?」

音が聞こえた。

「徹、お前な……

はぁ、なんでもない」

「お、お前等一体何処から入って来っ」

「真中に小さい少女に、それを囲う怪しいフードの集団……
なるほど、誘拐犯か!!」

うんうん、オレ達も良く同じような状況になったしなぁ
等々呟きながらも男は何か納得している様子であった

「なっ、違う!!

えぇい、衛兵よ何をしている!?」

「そんな男に構うな、時間がないんだぞ!!」

そして、言葉が紡がれ始める。
何百、何千と聞いた、奪わせ、奪う前座の言葉。

そして、苦痛が襲って


「グヘェ」


来なかった。

「あぁ〜、徹。
一応聞いておこうか。どうして殴ったんだ?」

「いや、だってアレでしょ?

可愛い女の子を誘拐したぜ。グヘヘヘ、それじゃ〜、今からお楽しみタイム♪

みたいな感じで、口ではとても言えない様な事をするための魔法を」

「もういい。全く……
何故好き好んで道化のフリをするか、私には理解が出来んな」

私と同じぐらいの女の人の言葉を無視して男は私へと手を伸ばした。
ニッコリと笑いながら、手を伸ばしてきた。

「それじゃ、逃げようか」

「なっ、貴様!!
貴様が何をやろうとしているのか分かっているのか!?

これが無ければ我々は負けっ」

「何に負けるのか、んなのは分からないけどさ……
子供にこんな目させないと勝てないんだったら、負けとけや」

あの人のあれ程怖い顔を見たのは、これが最初で最後だったと思う。

「という訳で、」



これ以上はダメ。
これは私の物。貴方のじゃない。

「えっ?」

振り返ると、小さい子が居た。
暗くてよく分からないけど、多分女の子。

『こんなトコロまで探しに来てくれたのは嬉しいよ?
でも、ダメ。

私はそんな事望んでないから、今のままで十分幸せだから……
だからさ、もう起きなさい。ね?』

一瞬だけ明るくなり、そこに居たのは……






「小さい時の……私?」




〜side 明日菜〜





「……あれ?なんだっけ?」

何か大切な事だったような気が……

「まっ、そんな大切なことだったら忘れるはずないものね。
うん、気のせい、気のせ」


「おはよう、明日菜ちゃん」

聞こえてきたのは愛おしい愛おしい声。
朝の目覚めから、彼の声を聞きたいと思っていた事は間違いない。

えぇ、思っていましたよ!!
いやね、別に向こうの家に泊まればそれぐらい簡単に出来るだろうけど、なんていうの?
こう、二人して生まれたままの姿で、ちょっと中学生には刺激が強い夜を過ごした後に、こう彼が私の寝顔を眺めている云々みたいなね?
こう甘酸っぱい感じのを求めていたのであってね、普通にガースカ寝ている横で、お茶とお煎餅を楽しんで欲しいわけじゃないのよ!!

「まぁ、なんだ。
一人暮らしをしているお前に、休日の過ごし方の文句などあまり言うつもりじゃないが……

昼近くまで寝ているのはどうかと思うぞ?」

文句言ってるじゃないの……

「はっはははは……
昨日まで修学旅行でしたからね、きっと明日菜さんも疲れてるんですよ」

10歳の子にフォローされる私って一体……

「と、というかですね、へ?
いや、徹さんもエヴァちゃん、ネギちゃんまで……なんでココに。

というより、ここ女子寮で」

そう女子寮なのだ。
女性の花園……っていうほど優雅ではないけど、とにかく男子禁制なのだ。

「へ?
管理人の婆ちゃんに普通に挨拶して入ってきたんだけど……不味かった?」

徹さんだとまかり通っちゃうのね……

はうわうわ、とにかく着替え、寝間着を見られるっていうのは流石にもんだ……
あぁ、ダメじゃないの!?
流石に徹さんの前で着替えられるほど、女捨ててないわよ!!

というか、恋する乙女にそんな試練を与えないでよ!!


「……あの娘と別れなくて良い事は確かに嬉しいけど、君に会えないのは、やっぱりちょっと寂しいかな?」

「やっぱり、気付いていたのね。

安心して、私は十分幸せ。
彼女を犠牲になんかしたら、それこそ不幸になる」

かと言って、このまま寝間着の姿を徹さんに見せ続けるワケにはいかない。
出来ればお洒落な格好に……

いやいや、デートする訳じゃないし、あまり気合い入れ過ぎちゃうと引かれちゃうかもしれないし……

「でも、やっぱりオレは君にも出てきて欲しいかな。
あっ、もちろん、この娘とも別れずにね……」

「……欲張り」

よし、とりあえずそれとなく着替えを持って、他の子の部屋に避難。
委員長辺りに泣きつきに行けば……

それとなく部屋を出るって、どうすれば出来るのよ!?

「うん、オレは欲張りなんだよ。
それにさ、この娘も君も、お互いの事を考えているんだから……
何とかなるでしょ」

そう言いながら彼は柔らかい笑みを浮かべながら私の頭を乱暴に撫でてきた。
髪がぐしゃぐしゃになり、あんまり好きじゃなかった撫で方。

「……長く居すぎたせいで混じって来たみたいね。
それじゃ、そろそろ戻るわ。

じゃね、テツ……」

「うん、またねー」






「……メソポタ!?

テテテ、徹さん!?
一体何を、やって、へ!?」

さっきまでお茶飲んでいた徹さんが、いつの間にか目の前にいるのだ。
ホント、目と鼻の先という表現が合うほど近くに、彼の顔があるのだ。

焦らない方が無理というものである。

「いやー、最近明日菜ちゃんとスキンシップとってないなーと思ってさ」

ニカッと笑うと、徹さんは髪の毛を散々乱し初めた。
その乱暴で大雑把な撫で方が不思議と私を暖かい気持ちにさせてくれた。




そういえば寝間着に関して全然解決してないや……




〜side フェイト〜





「ふむ、これまた厄介な状況になったな」

口調とは裏腹に、この悪魔は愉快そうに笑みを浮かべるだけだ。

「まぁ、僕としては契約を執行してくれれば十分だし、わざと逃した事に文句言うつもりはないよ」

「あぁ、もちろんだとも。
あの窮屈な封印を解いてくれたのだ、しっかりと約束は果たそうじゃないか」

大きな笑い声を上げながらの返答はやはり胡散臭い。
契約の手順はしっかりと踏んでいるため、彼の言葉に嘘はないのだろうが……

「あの子を逃したのは私の趣味による者だよ。
あの年齢でアレほどの動き、あそこで終わらせてしまうには酷くツマラナイではないか」

己の弱みを握られたというのに、この様子だ。
悪魔らしいといえば悪魔らしいのかもしれない。

「まぁいい。
では僕の願いを叶えて貰おう。

学園都市麻帆良の内部と戦力の調査をして貰いたい
特に念入りに様子を見て欲しいのが、未来人徹」「いや、それ無理」

……即答されてしまった。

「少し待ってくれたまえ、あの化け物が居るのか!?
それを、どうして一番初めに言わなかったんだ……」

そう言うと、酷く大きなため息を吐いた。
ただの偽装であるはずの、老紳士の姿とそのため息が大いに合い、急に老けこんで見えてしまった。

「あぁ、そうか。
あれ程昔の事だから、習わしを知らないのか……

いいか?
彼を敵に回すと宣言、いや脳内に浮かべただけで既に彼にバレていると思ったほうがいい。

君が、彼のことを調べようと考えていた時点で、あの化け物は事象を操作するんだ。
あの若者も彼の手の者だろうね……

本人が把握しているかどうか分からないが」

いや、ちょっと待て。
どんな化け物だい?それは。

「例え調査が成功したとしても、それは彼が態と漏らした物であり、君の不利益にしかならない。
600年近く、彼と共に有り続けた悪魔が断言しよう。

今の君に出来る最良の手は、私との契約等々を捨て、自分の所へ帰る事だ

どうしてもと言うのなら、麻帆良へ調査しに行ってもいいが……
あまりおすすめは出来ないな……」

まだ、まだまだ、僕は徹という存在を過小評価していたという事か。
彼という壁は巨大過ぎる。
あまりにも大きすぎる……

仲間に引きこむでもいい、関わらせないでもいい。
どうにか、どうにかしなければ僕達は前に進めない。


あまりの大きさに絶望するべきなのだろう。
目の前の老人のように、大きなため息を吐くべきなのだろう。


だが、僕は笑みの様な物を浮かべているはずだ。
感情の起伏が薄いこの僕がだ。

あぁ、素晴らしい。
知れば知るほど、巨大になっていく彼という存在が、あまりにも大きすぎる彼が。

なんて素晴らしいんだ。



「確かに今の僕では、君の足元にも及ばないだろう。

だが待っていろ、未来人よ。
必ずそこまでたどり着いてやる!!」


posted by まどろみ at 05:37| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いやぁ〜、相変わらず徹はパネェッス!!ヘルマンが調査拒否ってるのは考えてませんでした。おかげでフェイトに火がついちゃってますね(笑)勘違い系の物で英雄クラスは色々読みましたが、もう神クラスにまで勘違いされてますね〜。今後のフェイトとの絡みにも期待してます。
Posted by はるきよ at 2013年03月23日 21:46
はるきよ様、コメントありがとうございます。

相変わらずの徹君節。
イベントというイベントが何故か省略されてしまい、ホント勘弁してください。

流々を書くにあたって、はるきよ様の言う『英雄クラスの勘違い物』に憧れ書きはじめたんです。
ですが、ソレを書く力はどうやら僕にはなかったようで、気付けばラッ◯ーマン的な勘違い物になっていったのものいい思い出です。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。

Posted by まどろみ at 2013年03月31日 23:11
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