2013年10月06日

第6章 麻帆良祭編 その7



δ 麻帆良祭 1日目




〜〜side エヴァ〜〜



「かぁぁぁあああああつ!!!」

愛おしい人の悲しみを帯びた、絞りだす様な叫び声が響いた。
それは悲痛の叫びだった。辛そうに、悲しそうに、それでも喉の奥から絞りだした叫びだった。

絞り出されたのは『喝』の叫び。
悲しみながらも、私を叱る声。

傷つきながら、悲しみながらも、発したのは私を叱る叫びだった。

「……エヴァちゃん、ストップだよ」

「徹……
何故なんだ?」

何故そんなに辛そうな、悲しそうな、そんな声を上げているというのに、喝なのだ?

「何故って……
エヴァちゃんはさ、キツく考え過ぎなんだよ」

徹。お前だって分かっているんだろ?
コイツがお前を中世へと送った犯人だと。

終わりの見えない、永遠という檻に入れられる事となった原因が彼女だと。
死にそうになりながらも、守りたかったモノを守った、そんなお前に最低の仕打ちをしたのが彼女だと。

私は知っているぞ?
ヘラヘラと笑いながらも、困ったような笑みを浮かべながらも、お前が苦しんでいた事を。


未来の知識があったせいで、救おうと駆けまわったにも関わらず、その救おうとした人々に信じられず変人として扱われたではないか。
不老不死なんかになったせいで、せっかく作った安定の地を追われたではないか。
可愛がっていたガキが老衰で自分よりも早く死ぬなんていう、不条理を味わい、あれ程辛そうにしていたではないか。


なぜ、なぜお前は、キツく考え過ぎなんて言えるんだっ!!


考えるに決まっているではないか。
誰も知らない、何も知らない場所に放り投げられたのだぞ!?

言葉も、人も、国も、時代さえも、全て、全て違う所に身一つで放り投げられたのだぞ!?
過去にさえ渡らなければ、不老不死なんていうワケの分からない物にされる事だってなかったのだぞ!?

叫び捲し立ててしまいたかった。
当事者でもないくせに、シャシャリ出て、更に自己満足で人を殺そうとしている。そんな愚かすぎる自分の事を棚に上げ、私は徹に捲し立ててしまいたかった。

だが無理だった。
捲し立てようと、彼を見た瞬間私は止まってしまった。

あろうことか、奴は笑みを浮かべていたのだ。

「まぁさ、そりゃちょっぴりショックだったりはするさ。

でも、でもさ」

慌てていたのだろう、ビショビショに濡れ、持っていたであろう弁当も地へと落ちてしまっている。
無理やり結界内へ入ろうとした結果だったのだろう。

髪に葉と枝をつけ、ボロボロになり、僅かに切れた頬から、ほんのりと血を滲ませながらも、困ったような笑みを浮かべていたのだ。

「悪い事ばかりじゃなかった!!」

奴は言い切ったのだ。
困った様な笑みが、ニッコリとした、嬉しそうな笑みへと変えながら、徹は言い切ったのだ。

あぁ、ズルい。
知ってはいたが、徹お前はズルい奴だ。

そんな笑みを見せられてしまっては、もう私に出来る事はなんにも無いじゃないか。





α 麻帆良祭 1日目



〜〜side 徹〜〜



グニっと嫌な感触が靴越しに足の裏へと伝わる。
足元を見る暇もない。

ただ分かるのは、自分がバランスを崩した事のみ。
右手に持っていた緑茶のLサイズは空を飛び、自分へとかかる。

勿体無い。だが緑茶はまだ良いのだ。そうまだ。
問題は左手に持っていた弁当。


朝からメイドさんに女装して、モエモエだのキュンキュンだの、ラブリーだの、そんな慣れない事をやっていたのだ。
なんだかんだ言いながら、飯を食えなかったオレがようやく手に入れた弁当。

ロボティラノとか、サーカスから逃げた動物たちから何とか死守してきた弁当がこれなのだ。

ようやく静かな場所に出てきて、弁当タイムが始まると思ったのだ。
それを、それを……

何とか少しでもバランスを取ろうと、左手の振動を僅かでも低減させようと、必死に必死に頑張った。
だが、もう遅かったのだ……

視線の先で鮮やかに舞う、濃い黄色。
目の前で揚げられた愛しいアイツ。たっぷりのパン粉でさっと揚げられたアレを見た瞬間からずっと楽しみだったのだ。

空中で1つの塊だった物が、二口サイズのモノに別れながら落下していく様子をオレはただただ、見る事しか出来なかったのだ。

あぁ、これは抵抗ですらない。ただの足掻きだ。
だが今のオレには足掻く事しか、声をあげる事しか出来ないのだ。



「かぁぁぁあああああつ!!!」


あぁ、せっかく買ったカツ丼が……
目の前で揚げてくれた、ジューシーなカツが……

ゆっくりと足元を見ると超包子の文字が入ったエプロンが……
ちゃおほうず?ちゃおほうこ?

読み方は分からなかったけど、どうやら超ちゃんの落し物が原因のようだ。
……足元に注意さえしていれば。

だが、いつまでも恨みがましくカツを見ていても仕方ない。
そう前を向いて歩き始めなければ、死んでいったカツも浮かばれないのだ!!

ゆっくりと視線をあげると、超ちゃんに剣を突きつけているエヴァちゃんの姿。

「……エヴァちゃん、ストップだよ」

そう、ストップだ、ストップ。
ぱっと見ただけで、現在がどう云う状況なのかは確かに分からない。

だがオレには人の何倍もの人生経験があるのだ。それを駆使すれば予測ぐらい、立てられる。
脳をフル回転させ、現在の状況を考える。

エヴァちゃんは怒っており、超ちゃんが反省している。
これは間違いない。それも演劇の練習とかそういうのじゃないっていうのも分かる。

つまり、あぁそうか、そういう事か。
エヴァちゃんはエプロンで、食べ物が無駄になってしまった事に怒っているのか。

完璧だ。
人生経験の豊富さだけは伊達ではないのだ。


「徹……
何故なんだ?」

ゆっくりと訪ねてくるエヴァちゃん。
何故自分が止められたか分からない様子であった。

「何故って……
エヴァちゃんはさ、キツく考え過ぎなんだよ」

確かに食べ物は無駄にしてはいけない。
中世では食べ物が食べれなくて困った時期も確かにあった。

そういった困難を味わった身としては確かに食べ物を無駄にしてしまった事を看過出来ないのだろう。
でも、超ちゃんも反省している様子。

さらにこの、エプロンだって態々食べ物を無駄にさせるために、トラップとして仕掛けたワケじゃなさそうだしね。
だからさ、許してあげようよ?

そんな剣とかで脅しちゃ可哀想だし。

「まぁさ、そりゃちょっぴりショックだったりはするさ

でも、でもさ」

反省しているんだし、許して上げよう。

みたいな事を言おうと思いながら話していた。
だけど、ふと視界の端に、可愛い黄金色のアイツを見つけてしまったのだ。

全部宙へと放り出され、地面へと落ちていったと勘違いしていた、可愛らしいアイツを。
2切れだけ、ご飯の上に乗っていたのだ。

かつ丼がただのお米となった時は落ち込んだ。
だけど、2切れ、2切れだけだが、しっかりと残っていてくれたのだ。

「悪い事ばかりじゃなかった!!」

ただの米じゃない、カツ丼が食えるのだ。
これほど嬉しい事はない。

「くっはははは、あっはははは。
エヴァンジェリン、一度は受け入れたが申し訳ないネ。

ここは逃げさせて貰うヨ」

言うと超ちゃんは、なんかワープしていた。
剣先に居たのに、いつの間にかエヴァちゃんの背後にいたのだ。

「……我が身の可愛さか?
それとも徹からの許しがあったからか?」

「確かにそれもあるネ。
浅ましい私は、確かに気持ちが軽くなってしまったヨ」

いや、浅ましいって……
なんか超ちゃんもメチャクチャ真剣に受け止めている様子。

確かに食べ物は大事だけど、そんな浅ましいとか……
もちろんワザとだったら叱りつけるけど、どちらかというと事故みたいだし……


「だが、それ以上に……
徹サンのあの言葉の後に争うなど、出来るはずがないネ」

「……はぁ、確かにその通りだな」

ため息を吐きながらも、エヴァちゃんの顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。



しっかし……
2人共生真面目すぎるよなぁ。

「よし、それじゃエヴァちゃん。
一緒に集合場所行こうか?」

逃げたり説得したりで、いい加減時間も迫ってるし、そろそろと向かわないとね。

「いや、先に言っていてくれ徹。
私は後から向かうからな」

「う〜ん……
まっ、良いか。

それじゃ先に行ってるよ」




踵を返し、集合場所へと向かうと、もう皆集まっていた。
いや、他の子達は分かるけど、エヴァちゃん……

なんでそんなに早いのさ?


あぁ、転移魔法か。





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posted by まどろみ at 16:27| Comment(9) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「かぁぁぁあああああつ!!!」ってそっちかよぉ!!やられた。えぇ、見事にやられましたよ。前回後半のセリフはまさかの食べ物に対する叫びとは・・・。これは全くの予想外でした。某吸血鬼殲滅機関の執事のようなまどろみさんの仕事ぶり・・・。パーフェクトっす。そして徹の勘違いの言動で超とエヴァの関係も元に戻ったような感じでちょっとホッとしました。後は、フェイトが男だらけのメイド喫茶で大暴れのような予感がします。も、もしやメイドの中にラカンとか・・・(汗)
わ、忘れて下さい!!(震)
Posted by はるきよ at 2013年10月06日 20:43
お久しぶりです。更新された話は読ませていただいてたんですが、コメントできず申し訳なかったです。今回読んだ話はあまりに衝撃的すぎてスルーすることが不可能だったので、感想書かせていただきますw


なんでだよ!!wwwwwやっぱり勘違いなのかよ!!wwwww

勘違い系の醍醐味がまさにここなんでしょうけど、やっぱりもったいないよなぁって思ってしまいますw
ここはちゃんと理解(わか)った上で話してほしかったwww
Posted by なおぽん at 2013年10月07日 18:17
あと何が一番すごいって、ここ結界張ってあるんでしょう?
それに何の抵抗も感じずこの場に来て、エヴァの巨大な魔力に反応すらせずにこの近距離まで来てたっていうwww
Posted by なおぽん at 2013年10月07日 18:21
カツなのかよ!w
徹の人生全く活かせてないのが悲しいやら楽しいやらですねw
そもそも結界に侵入した時点で術者に知られないのが一番すごいw
いや、マギと同じ術式な時点で仕方ないのかもしれないけどもw

というか徹は前も見て歩けばいいのにw
そうすれば一部始終わかったというのに
一瞬の感動を返せー!w
まぁ、あれで正確に当ててたならまた泥沼だったりしたんでしょうけどね

そしてエヴァちゃんも時間移動してるのねw
不死になった原因についてはどう考えてるのだろうか
時間移動した際に時間的要因が発生して、轍の時間が止まったとか?
身体の時間が止まったことにより不老、月姫の回復呪詛的な感じで不死になったとか?
結構考えさせられますねw
Posted by アサルト at 2013年10月08日 09:24
はるきよ様、コメントありがとうございます。

えぇ、そちらです。
そちらのカツなのですw

いやぁ、これがやりたかった。ずっとやりたかったんですw
どうやらウケてもらえたようで、非常に嬉しいです。

>後は、フェイトが男だらけのメイド喫茶で大暴れのような予感がします。も、もしやメイドの中にラカンとか・・・(汗)

……ナニソレ面白そう。
いやいや、流石にフェイト君だったらまだありえますが、ラカンがメイドの中に居るとか、ホントどんな状況ですか!?

いくらなんでも気合い1つで、ソコまでやられたらたまりません。

……あぁ、でもラカンだったらやりそうだなぁ。
徹の姿を一番近くで見るためだ!!とか言って……

これ以上はやめましょう。
もう彼にプロットをぶち壊されるのは、ホント勘弁してほしいんですw

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年10月10日 06:40
ちくしょう、シリアスだと思っていたのにこんなオチだったとは…。
伏線がいっぱい回収されるとのことですが、これからどれだけシリアスな引きがあっても、オチがシリアスであるはずがないと思ってしまうようになってしまいました…。
まぁ、最終は近辺のクライマックスはシリアスだと期待したいところですが(苦笑)

お早い次回更新、待ってます。
Posted by 悠 at 2013年10月14日 19:01
なおぽん様、お久しぶりです&コメントありがとうございます。


おっしゃる通り、酷すぎる勘違いでしたw

最近、勘違い成分が少ないような気がしたので、これで一気に挽回をはかった次第でありますw


>ここはちゃんと理解(わか)った上で話してほしかったwww

ま、まぁ、大丈夫ですよ。
て、徹君だってやる時は、しっかりとやりますから(震え)


>それに何の抵抗も感じずこの場に来て、エヴァの巨大な魔力に反応すらせずにこの近距離まで来てたっていうwww


補正がかかってますからねw
仕方ないですよwww

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年10月17日 00:12
アサルト様、コメントありがとうございます。


おっしゃる通り、カツです。
いやはや、なんかすみません。

>そもそも結界に侵入した時点で術者に知られないのが一番すごいw
いや、マギと同じ術式な時点で仕方ないのかもしれないけどもw

これは、徹君の補正です。
いやだって、彼なんとなくで、どこにでも侵入出来そうですし(汗)


>一瞬の感動を返せー!w

たしかに、感動が一瞬しかもたないですねw
き、きっと徹君だって、やる時はやってくれる・・・はずです。


>不死になった原因についてはどう考えてるのだろうか
時間移動した際に時間的要因が発生して、轍の時間が止まったとか?
身体の時間が止まったことにより不老、月姫の回復呪詛的な感じで不死になったとか?
結構考えさせられますねw


ガッツリと考えてあります。
ですので、いろいろと考えて頂けると嬉しいです。

これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年10月17日 00:20
悠様、コメントありがとうございます&返信が遅くなりすみません。

シリアスかと思った?
残念、勘違いでした。

なんというか、申し訳ないです。

>伏線がいっぱい回収されるとのことですが、これからどれだけシリアスな引きがあっても、オチがシリアスであるはずがないと思ってしまうようになってしまいました…。

いやいやいや、アレですよ?
うん、やる時はやりますよ、ガッツリとシリアスを。うん……

>まぁ、最終は近辺のクライマックスはシリアスだと期待したいところですが(苦笑)


そ、その辺りは多分、大丈夫かと思います。
う、うん大丈夫だ。問題ない。


出来れば今月中にもう一話更新しようと思っております。
待って頂けると嬉しいです。


これからも頑張っていきますので、よろしくお願いします。
Posted by まどろみ at 2013年10月26日 02:29
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