2018年02月01日

リメイク プロローグ

〜side 徹〜


 目を覚ましたら、そこはお花畑でした。
 普通であれば、布団の中。チョッピり不真面目な子だったら学校の机の上とかが一般的なはずなんだけど、何故かお花畑。
 確かにお花畑で目覚めるって、メルヘンチックで非常に良いと思うよ。でもさ、そういうのは女の子とか、格好いいイケメンさんがやるからこそ絵になるだけであって、一般ピーポー(花粉症持ち)の俺がやったら、地獄絵図にしかならない。

 ……とりあえず、アレだ。うん。

 整理をしよう。整理。どうやら俺ってば、ちょっと困惑しちゃっているみたいだし。

 たしか、従妹と一緒に銀行へお金をおろしに行ったんだ。

 そしたら、なぜか銀行強盗と偶然会って、人質にされちゃったんだよね。
 周りはもちろんパニック。小心者の俺は、もっとパニック。

 さらに、強盗が人質全員殺しておこうか。なんて言いだして、拳銃を人質その1である俺に向けてくるもんだから、阿鼻叫喚。
 ネットスラング的に言うと、『くぁwせdrftgyふじこlp』状態。

 人間パニックになると、可笑しなもので逆に冷静になるもの。俺もソレに漏れず冷静に『喫茶店の美味しいハンバーグ食べたい』なんて考えていた。

 ……今考えてみると、全然冷静じゃない。

 とにかく、このまま殺されちゃうとハンバーグが食べれないと気付いた俺は、なんとかして喫茶店に行こうと、両手を振り回したり、頭突きしたり、たまたま落ちていた拳銃を拾ってみたりと、抵抗してみた。
 だが、所詮は素人がパニックになっただけの、情けなく、みっともない抵抗。

 気がついてみれば、お腹とかに10発ぐらい撃たれいて……

 あれ? もしかして、俺ってば死んじゃっている?

「普通であれば、その発想が一番最初にくると思うんだがのぉ……」

 背後から、呆れたような溜息としゃがれた声が聞こえた。振り返ってみれば、長く真っ白いヒゲがチャームポイントのお爺さんがいた。

「お主を、お主をずっと探しとったんだ。村重 徹《むらしげ てつ》君」

「は、はぁ……探してくれて、ありがとうございます?」

 どうやら、このお爺さんは俺を探していたらしい。というよりも、どうして俺の名前を知っているんだろ? 初対面だよね?

「ほっほほほ、ここでお礼を言われたのは初めてじゃわい。
 さて、徹君。君が先ほど思い当たったように、残念ながらお主は亡くなってしまったんじゃ。

 お主達を殺そうとした、銀行強盗。彼らに抵抗したことによって」

「あぁ、やっぱりですか……」

 分かってはいたし、死んだかもしれないと覚悟もしていたけども……こうして他の人に言われるのが意外と堪えた。

「あっ、亜子ちゃんは!?
 一緒に銀行にいたんですけど、俺の従姉妹で……彼女は大丈夫ですか!?」

「無事じゃよ。
 お主が暴れ、時間を稼ぎ、強盗達を引き付けたおかげで、警察が突入できたんじゃ。
 残念ながらお主は、亡くなってしまったが、他の人質は皆が助かった。
 お主が救ったんじゃ」

「よ、よかったぁ……」

 よかった。本当にこの言葉に尽きた。思った以上に気を張っていたのか、お爺さんの優しい言葉を聞いた俺は、腰が抜けてしまい、へにゃへにゃと座り込んでしまった。

「ほっほほ、お主が救ったのは、人質だけではないぞ。
 お主は、核戦争の危機すら救っているのじゃよ。

 実感なんてあるまい。じゃが、儂ら神は皆々知っておる。あの銀行強盗全員捕らえたことが、めぐりめぐって、核戦争という運命が消した。そんな大層なことをお主がやったと。

 人々は強盗から人質を守った勇気ある少年と言うであろう。
 そして、儂ら神々は、悲惨な運命を変えた、偉大な少年と言うであろう」

 本当に、ほんっとうに、亜子ちゃんが助かってくれて良かった。だってさ、赤ん坊の時から知っている子だよ!? 小学校の高学年になって、最近生意気になってきたけど、それもすんごく可愛くて……
 うん、亜子ちゃんが助かったんだったら、俺の情けない抵抗だって意味があったよね。

「……って聞いてないようだのぉ。

 自分が死んだにも関わらず、他の者のことを気遣い、その者が生きていることを羨むこと、嫉妬することなく心から喜べる。

 そんなお主に、実感なき功績の話をしても、聞いてないのも無理もあるまい」

 ポンポン、と肩を叩かれる。意識を向けてみれば、呆れげに微笑んでいるお爺さんが目に入った。

「安堵しているところ、すまぬが話を聞いて貰ってもいいかのぉ」

「え、えぇ。俺の方こそ、なんかごめんなさい」

 亜子ちゃんの件であまりにも安心してしまい、なんというか意識が何処かに行っていたようだ。抜けた腰を入れ直し、何とか立ち上る。

「ほっほほ、それでじゃがな、これから、お主は異世界に転生してしまう。
 とある幼く老いた少女の願いを叶えるために……お主は、異世界に飛ばされることになるじゃろう。

 辛いことも、険しいことも、多くある道になるじゃろう。そんな理不尽なところへ君が送られてしまうのは非常に心苦い。
 じゃが、どうしてもお主が行かなければいけないようなんじゃ。
 祈り続けた少女を救い、数多の存在を救うには、お主でなければならない……のじゃ」

 しっかりと立ち上がり、聞く姿勢ってのをとり、しっかりと集中して聞いた。だけどお爺さんが何をいっているのか全然分からなかった。

 唯一分かることと言えば、多分それ、人選ミスをしているんじゃないかな? ということだけである。
 お爺さんが言っている人は、すごい重要そうなポジションの人である。物語の主人公とか、そういう感じのポジション。どう考えても、俺じゃない。

「理不尽に異世界へ飛ばされ、茨の道を行く。
 そんなお主に、儂らは望む特典を渡すぐらいしかできん」

「は、はぁ……」

 もう、こんな反応しかできないのも仕方ないと思う。
 というより、特典って、なに? 会員様限定30%割引き、とか言われても困るんだけど。

「じゃから、特典を望むがよい。なんでもいいぞ。

 お主の運動能力を上げるのもよし。魔力、気の限界値突破や、不老不死。一生困らぬ金銀財宝というのもいいじゃろう。お主のファンの神は沢山いるから、ありとあらゆる神々の秘宝も貰えるじゃろう。

 ふむ……態々選ぶ必要もあるまい。全部貰っとくというのはどうじゃ?」

「いや、あの……すみません。いらないです」

 どうやら、願い事を叶えてくれることを特典というようだ。
 願い事の例を聞くと、とんでもない願い事とか、なんでも叶えてくれそうだけど……なんていうか、身の丈に合わなさすぎる。

「ふむ……そうか。やはり少し足りなかったかのぉ。
 それでは徹君。お主はどのような特典がいいかのぉ」

 いや、足りないどころか、凄すぎて引いちゃっただけです。
 どうやら、お爺さんは特典を貰って欲しい様子。

 お爺さんに任せておくと、とんでもないものが出てきそうなので、自分で決めたほうがよさそうである。
 特典、願い事、貰えるもの。

 色々と考えて1つだけ、思いついた。そう、どうして忘れていたのだろうか。どうしても欲しい物があったではないか。心から欲したものが、欲しくて欲しくて仕方なくて……命をかけたほどのものが。

「それじゃ、喫茶店の美味しいハンバーグが食べたいです」
「うん、ちょっと待とうか」

 すごい勢いでストップがかかってしまった。

「徹君、少し冷静になろうか。
 よくよく考えてみるがよい。誰にも負けぬ強き身体、誰からも命令されぬ権力、何でも買える財力。
 人では手に入れることのできない、神秘の秘宝から、尽きぬ命。

 人間が求めてやまない、夢じゃぞ。そうした夢々を叶える機会がお主にはあるんじゃぞ」

「凄すぎて、身の丈に合わないです!」

「だからといって、ハンバーグは、ないじゃろ……
 いや、美味しいものを食べたいという願望は分かるが、喫茶店のハンバーグって……」

 死ぬ直前の願望を叶えて欲しいって、結構贅沢を言っているつもりだったのだが、お爺さんは不満そうである。
 とはいっても、他に特別に叶えて欲しい願いがないのも事実。

「分かった。お主に任せては、本当に特典がハンバーグになりそうだから、儂が決めるぞ。
 大丈夫じゃ、お主の希望どおり最低限の物にする。

 特典は2つじゃ。

 不老不死と、鍛えれば鍛えるほど強くなる。
 この2つ……なんじゃが、とんでもなく嫌そうな顔しているのぉ」

 よっぽど嫌そうな顔だったのだろうか。お爺さんに一瞬で見破られてしまった。
 鍛えれば鍛えるほど強くなる。こちらに不満はない。筋トレしたら、筋肉が増えるってことだし、生前と同じであるのだ。

 ただ不老不死。これは、本当に勘弁して欲しい。
 たしか、昔話にあったよね? 人魚の肉を食べて不老不死になったけど、結局幸せではなかった、っていう奴……

「すみません、本当に不老不死だけはなしでお願いします」

「分かった分かった。
 それでは、800年は最低でも生きてもらうが、それ以降は自分の意思で死ねる不老不死でどうじゃ。

 もう、本当に最低条件じゃよ?
 これ以上減らしたりしたら、異世界でやっていけないんじゃからな」

「はい、それでお願いします」

「はぁ、初めてじゃよ。
 儂が特典の押し売りをしたのは」

 ため息を吐く、お爺さんにチクリと罪悪感がうずく。

 そうなのだ。お爺さんは色々と凄すぎる願い事を叶えようとしてたけど、それは異世界に転生なるものをする俺を心配してだ。
 あまりに凄すぎて、断っちゃったけど、そんな俺に怒ることなく、最低限必要なものをくれたのだ。

「わがまま言っちゃってごめんなさい。
 あと、心配してくれて、ありがとうございます」

 お爺さんは、一瞬驚いたような顔をしたあと、目を細め嬉しそうに笑った。

「ほっほほほ、そんなお主じゃから、儂らはファンになってしまったんじゃ。
 そろそろ時間じゃ」

 お爺さんのその言葉がトリガーだったのだろう。世界は白で満たされ始める。

「お主が異世界で何をするのか、何を成すのか、楽しみにさせてもらうぞ」

 大半が白で満たされ、お爺さんも僅かな輪郭しか見えなくなる。

「さぁ、生くがよい。
 お主の世界とは違う世界、異世界に。
 ”ネギま”の世界に」

 世界は白で満たされた。

 というか、ネギま? 焼き鳥の異世界ってなに?


posted by まどろみ at 22:03| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
おひさしぶりです。早速リメイク読みました。リメイクされても徹は徹でした!!笑。転生で望むのがハンバーグって?!転生先がトリコになんの?ってツッコミ入れたくなりました。次回も楽しみです。
Posted by はるきよ at 2018年02月17日 01:09
はるきよ様、コメントありがとうございます。

とりあえずリメイク版の更新です。
4月に入ったら、違うHPでガッツリと更新しようかと画策中だったりしますので、4月まで楽しみにしていただけると嬉しいです。

リメイクでも楽しんでいただき、嬉しく思います。

とりあえずではありますが、次のリメイク版も更新しましたので、見ていただけると嬉しいです。
Posted by まどろみ at 2018年02月18日 23:16
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。