2018年02月18日

リメイク その1 異世界の森ってワクワクする

〜side 徹〜


 思わずつぶってしまった目を、ゆっくりと目を開いてみれば、そこは深い森の中だった。
 道なんて贅沢なものがなく、太い幹と青々とした葉っぱ、空は木々に大分覆われており、隙間からしか見えないが、日がしっかりと出ているのが分かる。

 自分の身体を見てみれば、死ぬ前と同様、学生服に運動靴の姿。ポケットの中にはレシートが数枚入っているのみである。

 どうやら、俺はお爺さんが言うように、『異世界へ転生』という奴をしたらしい。
 お爺さんが、”ネギま”なんて言ったから、焼き鳥しかない世界なんかを想像してしまったが、そうではない様子。多分、急に焼き鳥が食べたくなっちゃったんだろうな。お爺さん。
 俺も時々そういうことあるし。

 それにしても森……異世界の森かぁ……

「よし、探検だ!」

 もうさ、『異世界の森』っていうだけで、男のワクワクする要素しかない。こんな所に来たんだったら、探検以外に選択肢ないでしょ。

 気付いて見れば木々も異世界っぽい。ほら、なんていうの? こう葉っぱの緑が微妙に濃いような、薄いような気がするし、空気だって、無色透明でなんか、異世界っぽい。

 落ちていた木の枝を持ち、振り回しながら進んでいく、異世界探検隊。ちなみに隊員は俺一人である。しばらくの間、探検しクワガタのような虫や、狐のような動物等を発見した。
 ぱっと見た感じ、普通の虫や動物だが、ここは異世界。こう、光沢とか毛並みとか、そういうところが異世界っぽい感じになっている、ような気がする。

 そんなこんなで、異世界の探検を満喫していると、ちょっとした道らしき物が目に入った。道に沿っていけば町や村があるはずである。

 つまり、異世界人との接触ができるかもしらないのだ。

 道らしき物を歩いていくこと30分。
 転がりくる岩を避けることもなく、蛇との格闘なんかも全然ないまま、何事もなく普通に街にたどり着いてしまった。普通に森からでて、道を歩き、村へ到着。探検要素が全くないまま、町に着いてしまったことに、なんとなく罪悪感を覚えてしまう。

『ついに、村重隊員は異世界の街へと足を踏み入れる。そして、そこで恐るべきものを目にした!?』

 ナレーションを挟むとすれば、こんなところだろう。そんな風に脳内で遊びながら、俺は街へと入り……見てしまったのだ。

 正直言ってしまえば、油断していた。あまりにも平和で、変化のない探検に、油断してしまったのだ。恐ろしい景色だった。自分の本能、心の奥底から拒絶を示す光景であった。
 今まで17年生きてきた、自分の経験全てが拒絶するような、ありえない様子が、町には広がっていたのだ……


 石畳の道には、糞尿が溢れ、家々からも、そうした糞尿を道へと捨てていく、そんな恐ろしい景色が……


 ダメだこれ。もう探検とか云々とか言っている場合じゃない。
 地面の石畳を覆い隠している糞尿っ、どういう状況だよ。もう放送事故だよ。非難殺到だよ!!

「おーい、気をつけろよー」

 気が抜けた忠告が聞こえたかと思えば、上から糞尿ダバーである。
 本当に勘弁してほしい。異世界探索でワクワクしていたものなんて、一瞬で萎えた。

 というよりも、ここって本当に異世界なのだろうか?
 異世界といえば、空飛ぶドラゴンに、村々を襲うモンスター。そうしたモンスターの手から人々を守るため、大きな剣を背負った戦士や、ナイフを自在に扱う盗賊とかである。

 一方のこちらは、道には糞尿が溢れ、上から降って注ぎ、シルクハットとマントを被った紳士に直撃させていたりするのだ……
 たしかに、ある意味想像以上の光景ではあるんだけど、そういうのを望んでたんじゃないんだよ。

 ある意味、異世界的な光景ではあるけども、別に異世界だから起きているようなことではない。特別というわけではなく、中世ヨーロッパの生活は普通にこんな感じだった。

 下水道なんてない中世ヨーロッパでは、おまる一杯までに色々と汚物を溜め込み、外へ放り投げる。そんな感じの生活だ。

 ということはだ。俺は世界を渡り異世界着いたのではなく、タイムスリップをして中世ヨーロッパに着いたという可能性が非常に高いのだ。

 俺はタイムスリップだと嬉しいです。いや、だってさ……夢と希望と幻想に溢れている『異世界』が汚物まみれって嫌じゃん! タイムスリップだったら、あぁ、仕方ないねってなるけど、異世界がコレだったら泣くよ。俺!!

 うん、タイムスリップにしておこうよ。そうすれば、誰も不幸にならないから。

 というわけで、タイムスリップ。誰がなんと言おうともこれはタイムスリップです。そうだ、よくよく考えてみれば空気だって別に異世界っぽくないし、クワガタや狐だって、普通の虫と動物だった。
 つまり、ここは過去の世界、中世ヨーロッパで間違いなし。

 というわけで、過去に来ちゃったけど、どうしようかな。織田信長とか、なんかそういう有名人に会いに行ってみようかな。いや、そういうのもいいけど、日本のお茶屋さんで外にでている椅子に座って、団子とか食べてみたい。
 他にも、800年の不老不死? をお爺さんから貰ったから、もしかしたら坂本龍馬とかとも会えるかも。

 いやぁ、もうちょっと真面目に授業受けとけばよかったなぁ。
 なにせ、せっかくタイムスリップ(もう、俺の中ではタイムスリップで確定である)したのに、大して勉強してなかったから、やりたいことが全然思い浮かばない。こう、歴史が好きだったり、知っている人だったら色々と思いつくんだろうけど、全然出てこないや。

 町の中を少し歩いてみたのだが、たしかに立派な家々が立ち並んでおり、中世だというのに、大勢の人がこの町に住んでいるのが分かった。多分だが、この町は比較的都市部に分類されるのだろう。

 ……こんなに大勢が住んでいるのに、下水がなかったら、こうなるのも仕方ないかもしれない。
 とりあえず、ココから脱出しよう。とにかく、現代日本人の俺でも普通に暮らせる所を探そう。住めば都っていうし、慣れるかもしれないけど、こんな環境だ。

「一瞬で伝染病が広がる」

 よし、健康のためにも逃げよう。どこに行くかは分からないけど、ここの環境はあまり長いしていい環境じゃないのは確か。どこに逃げるかは二の次でよし。
 ……800年間不老不死ってのを貰った俺が健康のことを考えるのも、なんかおかしいような気がするけど、気にしない。

 さぁ、新しい所へ旅立ちだ。贅沢は言わないけどいい所を探しに行こう。
 具体的に言えば、糞尿が溢れていない小奇麗な場所を。

 滞在時間30分程度。もう、色々と我慢ができなくなったので、すぐにでも町から出ていこうと周りを見渡してみれば……

「おい、そこの魔女め!!」

 いつしか、人々に囲まれていたのだ。

 手には包丁や長棒、鍋等々、各々武器になりそうな物を手にして、ギラギラとした目で睨みつけてくる様子は、穏やかではない。

 あぁ、そうだ。
 気をつけなければいけないのは伝染病……黒死病だけではなかったじゃないか。
 黒死病の流行と、ほぼ同列に扱われる、中世ヨーロッパの悲惨な出来事があったじゃないか。

 なんで、思いつかなかったんだろう。どうして、気付かなかったのだろう。

 現代日本であれば、バカバカしいで終わる事柄。だが、それはこの人たちの真実ではないのだ。家族を、友人を、隣人を守るために、彼らはこれしかないと信じて立ち上がっているのだ。

 包丁を向けている男性。恐れ、怯え、そして怒りを混ぜたような眼差しが全てだった。

 あぁ、お爺さん。ごめんなさい。確かにこの世界には色々な特典なるものが必要だったかもしれない。

 云百年も後の世界で、俺は教えられる。この悲惨な異常を。
 云百年の時を、先人達は後世へ伝え続けたのだ。

 老若男女関係なく、大勢の人々を魔女と呼び、狩られてきた歴史を。
 この『魔女狩り』を……


posted by まどろみ at 23:11| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
早速読みました。時代背景が真面目なだけに徹が今後どう動くのか楽しみです!!そろそろエヴァの登場かな?外伝のエヴァと婆ちゃんとのやり取り中に出くわすのもアリか?と色々勝手な妄想が膨らみます。笑      次回が気になります!!






  ・・・・ラ、ラカンは無いよね?・・・忘れてください(マジで!)
Posted by はるきよ at 2018年02月19日 23:16
はるきよ様、コメントありがとうございます。

早速読んでいただいたみたいで、ありがとうございます。
色々と待たせてしまったり、いきなりリメイクだったりと、そっぽ向かれても仕方ないのですが……
こうしてコメントをいただくことができ、非常に嬉しいです。(本当にありがとうございます)

エヴァちゃんの登場は、その4で初登場となります。色々と想像しながら、もう少し待っていただければと思います。

今月中に、次回も更新します。
待っていただけると、泣いて喜びます。



え? ラカンですか?
超のタイムマシンを使えば、あるいは……
Posted by まどろみ at 2018年02月21日 22:17
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