2018年02月24日

その2 魔女狩り

〜side 徹〜


「いいか。なにもするなよ。
 呪いも、魔法も、使おうとするな」

 刃物の先端を俺に向けた、男が叫ぶように伝えてくる。

「いやいや、そんなもの元から使えないよ」

「嘘をつくな! 嘘に決まっている!」

 いやぁ、凄いね。中世ヨーロッパなのに、会話ができているよ。これって、お爺さんが伝え忘れていた特典って奴なのかな?

「はっははは、そんな訳ないじゃないか。
 嘘なんてついていないさ。呪いも魔法もできない。ほんとだよ」

 無害アピールも込めて、ちょっと陽気な感じで返事してみるも、反応はよろしくない。というより、さらに警戒した様子で、刃物をさらに近付けてくる。

 いやいやいや、本当に俺ってば普通の高校生だからね。
 確かに学生服なんていう周りから見れば変な服装しているし、顔つきとか目の色なんかも、ザ・日本人って感じから周りとは違うけどさ。
 そういえば、色々と気になって周りをキョロキョロと見渡したり、なんかボーっと思考に浸かったりとかもしていたけどさ。

 おかしい。いつの間にか、俺が怪しい人の行動をしていた。

「全身黒ずくめの、不可思議な服を着ている。
 それだけでも怪しいのに、俺たちは聞いたんだ。お前が死で溢れさせる、恐ろしい呪いをかけていたのを!
 『一瞬で伝染病が広がる』なんていう、死の言葉を聞いたんだ!」

 こんな不衛生な場所なんだから、伝染病が広がるのは当たり前。歴史が証明している事実である。
 だもんで、『一瞬で伝染病が広がる』って言葉だって事実を呟いただけである。

 変な服装した俺が、散々怪しい動きをして、『一瞬で伝染病が広がる』って言っただけ。

 現代に置き換えれば、囚人服を着た人間が、キョロキョロと周りを見渡し、『一瞬で盗みに入れるな』って言っているだけだ。

 うん、ダメだね。
 ダメだ。事実を呟いたどうこうって問題じゃなくて、普通にダメだよ。もう、伝染病を広げるために下見に来ている魔女じゃん!

 無理だ。どう考えてもこの人達全員に魔女じゃないって納得して貰うことなんてできない。
 ただ、大人しく捕まるっていうのは、絶対ダメだ。

 捕まれば、魔女と自白させるための拷問、自白したら火あぶりの刑なんて理不尽すぎる未来だ。
 一応言っておくけど、痛いはいやだ。

 ついさっきまで銀行強盗とドンパチやって、死んだばかりだよ。そんな俺に、また死ぬほど痛い思いなんてしたくない。

 とはいえども、説得は無理。周りを囲まれた状態で逃げるのも無理。そして捕まるわけにもいかない。
 もう、こんなのどうしようもないじゃん。詰んでるじゃん。どうしようもなさすぎて、笑うぐらいしか選択肢がないんだけど。

 昔のアクション映画かなんかでも言っていたし。辛い時、どうしようもない時は、とにかく笑ってみろって。本当に笑うしかないんじゃないの? これ?

「ははっははっははっははっは。
 イィーヒヒヒヒヒ、くひひっ、ヴぁっはははっははははは」


 うん、やっぱり無理。大声で笑っているけど、周りが更に警戒しただけで、全然解決しそうにない。

「な、なにが可笑しいんだ!」

 長い棒を持った男に聞かれるけど、どうしようもない。困ったから笑ってました、って正直に答えてるわけにもいかないし。

 現状の解決策も思い浮かばないことだし、更に笑い続けながら周りを見ていると、先程より武装した人達の腰が引けているのに気がついた。確かにこんなワケの分からない人、怖いし、腰ぐらい引けるよね。

 うん、もしそんな人いたら俺だって怖いし、近付こうとしないもん。

 ……あっ。もしかして俺、思いついちゃったかも。

「ふっふふ……
 あぁ、ごめんごめん」

 バカみたいな考え。さらに成功率とかだって低いだろう。

「ついつい、面白くなってね」

 だけど、俺には”コレ”しか思い浮かばなかった。

「そうあなた達の想像通り、俺が魔女だ」

 頑張って怖がらせて、逃げちゃおう作戦だ。

 作戦内容は自分が魔女だと言い張って、周りの人を怯えさせる。なんか混乱した所を見計らって逃げる。という高度な作戦だ。

 鍵となるのは、俺の演技力。運のいいことに、俺は演技力に自信があったりするのだ。
 なにせ、幼稚園の劇で、『おむすび』の役に抜擢されたことだってあるのだ。人どろこか、木ですらない。食べ物の役を完璧にこなせると思われ、抜擢されたのだ。もう、演技の才能が幼稚園児の時からキラリと輝いていたとしか考えられない。
 おむすび役は7人ほどいたことを考えると、劇団員養成所みたいな幼稚園だったのかもしれない。

「やはりか。いいか、何もするな。何をしたとしても無駄なあがきだ」

「それは、どうかな?」

 くぅぅうううう、決まったんじゃない!? 言ってみたいセリフベスト100に入るセリフを言えて、テンションが上がる。問題があるとすれば、格好いいセリフも、俺が言っちゃうとビジュアル的に魅力がガクンと落ちちゃうことかな?

 そんな、言ってみたいセリフにホクホクしながらも、行動を起こす。
 先程から、俺に突き付けられている長い棒を掴む。

 棒を持つ男は頭では戦うつもりなのであろう、上半身はしっかりと適正の位置にあり、棒に込める力もかなり篭っているのが血管が浮き出た様子からも分かる。
 だが、どうしようもなく恐怖している。頭ではなく、身体が、精神が怖がっていた。
 知らない格好をし、恐ろしいことを呟き、いきなり笑った男に。自分の武器となる棒を平然と掴んでくる男……つまり俺を怖がっていた。
 少しでも俺から離れようと身体が動いてしまい、腰が引けているのだ。
 本人は気付いていないのだろう。自分を鼓舞し、俺を恐れていないつもりなんだろう。恐怖に勝ったつもりなのだろう。

 だけど、身体は表してしまう。本人すらも気付かない感情を、無意識に表してしまう。

 上半身だけ前乗りになり、それでいながら腰がひけてしまっている……棒を持つ男は、そんな非常に都合のいい獲物だったのだ。

 棒を僅かに引っ張った後に、捻りを加えながら斜め前方向に押す。
 ただでさえ、滅茶苦茶だった男の重心は、ちょっとした崩しで、あっという間に崩壊した。

 シンプルに言えば、男は転んでしまったのだ。別に吹き飛んだとか、そういう凄いことじゃない。ただただ、こてんっと転んでしまっただけ。ケガの一つも負っていない。

 ……小学生の時、やっていてよかった。ちびっこ合気道教室。
 やったことは、男を転ばせただけである。正直大したことじゃない。

 けど、はたから見ればどのように見えただろうか。
 中世という時代の何も知らない一般人は、相手の持っている武器を持っただけで、簡単に転ばせてしまう俺を、どのように見ただろうか?

 オカルトが本気で信じられている時代だ。きっと俺を凄いハイレベル魔女と勘違いし、混乱するだろう。
 そう、すなわち逃げるチャンスとなるのだ。

 さぁ、勘違いしろ。スーパー魔女とか、なんかそんなのと勘違いするんだ!

「ば、化け物だ! 悪魔が、悪魔がいるぞ!」

 ……ランクアップしすぎじゃない?


posted by まどろみ at 23:10| Comment(2) | 流れて流されてネギまへ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 おひさしぶりです。今回は割と真面目?要素が多いですねぇ。てか、徹がルルーシュ並みに策士な感じが良いです。何か違う?てのと、これはこれでアリかな?と感じてます。次も楽しみです。
Posted by はるきよ at 2018年03月06日 23:25
はるきよ様、コメントありがとうございます。

暴走し、何も考えずにタイピングしていた内容を、なんとかリメイクしたら、徹がちょっぴり真面目になってしまいました。

このあたりの話は、過去の自分が殆ど調べず、プロットもなく、書き殴ったみたいで……
書き直すのが、大変やら恥ずかしいやらで複雑な心境でした(笑)

徐々に、勘違いとかギャグ、あとエヴァちゃんの裸とか出て来ると思いますので、楽しみにしていただけるとうれしいです。
Posted by まどろみ at 2018年03月07日 00:12
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。