Migraine


第伍話:アスカ来日

疑念


「それで、うわさのサードチルドレンってのは、どいつ?」

この私がわざわざ甲板まで迎えにきた、これが本題だった。
ミサトからの連絡でサードチルドレンと顔合わせすることを聞いていたからだ。
既に使徒を三体も撃滅したという。
私を差し置いてそんな活躍をしている、そいつの顔を拝んでやろう。本来はそういう算段だったのだが。

「まさか、この倒れてるやつじゃないでしょうね?」

些細なアクシデントのせいで、目的があやふやになるところだった。
ノックアウトされている少年は、ごつくて、ジャージを着た、いかにもがさつそうな風貌をしている。
こんな奴に遅れをとっているというのは勘弁願いたい。

「違うわよ」

ミサトの一言に、少々安心する。
だがもう一人のほうだというのもやはり心外だ。

「てことは、まさかそっちのオタク眼鏡?」

先ほどからカメラ片手に怪しく眼鏡を光らせているその姿は、お世辞にも格好良いとはいえないものだ。
軍事オタクといったところか。そんなのと同類というのもやはり勘弁願いたかったのだが。

「だから違うってば」

もう一度ミサトが否定した。
あれでもなくて、これでもない。
となると、残っているのは。少々意外な人物ということになる。

「……じゃあまさか、この子が?」
「そういうこと。サードチルドレン、碇シンジちゃん」
「エヴァ初号機の専属パイロットよ」
「よ、よろしく」

おどおどとそういう彼女は、どう見てもパイロットという感じのしない子だった。
華奢というよりは痩せ過ぎといった感のある、小柄な体。
骨折でもしたのか、右腕は小型のギプスで固められていた。
その体通りの線の細い顔つき。ショートカットにした髪の毛も、彼女の印象を活発なものには出来ていない。
そして右目だけが紅い、少々奇異な瞳。
全体としてみれば中々の美人と称せるところだが、やはり薄幸の少女といったほうがしっくりくる出で立ちだった。

「ん〜、ちょっと意外だったわ」

思わず一言口をついて出てしまう。
しかし考えてみれば、これほどこの場にふさわしくない人物を連れて来ている、という時点で、彼女は確かに最もふさわしい人物なのかもしれなかった。そうでなければこんな子がここにいる理由が思いつかない。

そんなことを考えていると、オタク眼鏡が感慨深げに何か言ってきた。

「そうだよなあ、碇シンジなんて名前で、こんな子は想像できないよなあ」
「俺も転校してきたその日は驚いたのなんのって」

私の驚きに相槌を打っている様子だったが、こいつと同じなどというのは私のプライドが許さない。
だから思わず言い返してしまった。

「失礼ね、あんたと同レベルと思われたくは無いわ」

彼の言葉から、私との相違点を即座に検索する。

「私は名前すら知らなかったわ!」
「余計悪いわ!」

真っ先に思いついた内容に、鋭い突っ込みが入った。
中々の反応速度だ、甘く見ていた。

「だってこんな、今にも倒れそうな子がパイロット、って言われてもね」
「あなたには悪いけど、頼りなさ過ぎるわ」

実も蓋も無い言い方になってしまったが、それが率直な理由ということになる。
誇張でもなんでもなく先ほどからふらふらと何度か倒れそうな様子だった。
これでエヴァに乗って、まともに戦えるとは思えない。

「まあ、シンジちゃん、まだ病み上がりだからねえ」

右腕のギプスからして、大怪我でもしたのか、はたまた別の病気にかかったのか。
そういわれてみれば彼女の状態が尋常でないことは良くわかる。
先ほどから顔色もよくない。炎天下の吹きっ晒しはこの子には堪えるだろう。
そんな彼女にミサトも心配そうに声をかけた。

「あら、やっぱり調子悪そうね」
「大丈夫ですよ」

そう答える様子は、どう見ても大丈夫な人間のそれではない。

「あんたたちはシンちゃん連れて先に食堂に向かってくれる?」
「私はちょっち手続きしに艦橋まで行かなきゃだめなのよ、後から向かうわ」

そういって歩き始めるミサト。
その後ろには眼鏡野郎が付き従っている。艦橋を見に行きたいのだろう、さすがはオタク。

「ほれ、つかまれや」

その声に振り向くと、いつの間にやら復活したジャージ男が彼女に肩を貸していた。
意外や意外、気が利くじゃない、などとは思ったが、それとは別に。
私の中の保護欲が彼の行為を許さなかった。

「ちょっと、そんなのに寄りかかったら、むさいのがうつるわよ!」
「な、なんやとわれ!」

相手の返答など無視して、奪い取るように彼女を支える。
こんなひ弱な存在をあのような男に任せるなど、出来ない。
そう考えた自分に気が付いて、心の中で少々苦笑した。

こんな成りでもこの子はエヴァのパイロット、つまりはライバルなのだ。
しかも正規訓練を積んだ私を差し置いて活躍している、目の上のたんこぶのような存在。
それなのにこんな気持ちになっている自分が、可笑しかった。



オーバーザレインボウ士官食堂。私たちはその一角に陣取った。

「この人が鈴原トウジ君、後、眼鏡の彼は相田ケンスケ君」

彼女の口から二人の名前を紹介されるが、あんな馬鹿どもに興味など無い。
それよりも彼女の事を聞きたかった。

資料では知っている。
第3使徒、第4使徒をエヴァンゲリオン初号機で葬り、第5使徒戦では砲撃手を務めた。
パイロットの絶対数が少ないとはいえ、数字だけなら立派なエースパイロットだ。
だが目の前のこの子が、そういった戦いを繰り広げたとは想像できない。

いかに大型空母とはいえ、甲板からここまで、そう長距離というわけでもない。
だがただ歩いてきただけのはずなのに、彼女は席に着くなりいかにもへとへとと言う感じで息を整えていたのだ。
シンクロさえ出来ればエヴァ自体の操縦はそう難しいわけではない。
だが仮にも決戦兵器に乗り込んでいるのだ、軟な体では戦闘の衝撃にも耐えられないのではないか。

「あんた、今まで使徒を倒してきたんでしょう?」
「まあ、そうなのかな?」
「どうやって倒したのか、教えなさいよ」

ミサトに聞いても答えてくれる気はする。
だがやはり、本人から聞きたかった。
私自身はいまだに使徒というものと戦ったことも、見たことすら無いのだ。
しかし彼女の答えは、落胆すべきものだった。

「うーん、実は、あまり良く覚えていないんだ」
「はぁ?あんたが倒したんでしょう?」
「でも、初めのときは気がついたらベッドの上だったし、二匹目のときも殆ど相打ちみたいなものだったし」

なんだ。
結局は偶然が続いただけの、まぐれ勝ちということか。
だがこのような人物ですらそれだけやれるのだ。私なら、何の問題も無い。

「ふん、でも私が来たからにはもう安心よ」
「あんた程度にやられる連中なんて、正規訓練を受けてきた私にとってはちょろい物よ」

そういって、少し胸を張り己の力を誇示してみた。

「うん、助かるよ」

あっさりそう答えた彼女の表情は、心底安心した風だった。
パイロットとしてのプライドというものは無いのだろうか。
少々拍子抜けするが、こう頼られているとわかると言うのは何とはなしに嬉しいがむず痒く。
照れ隠しに、挑発じみたもう一言。

「ま、まあそういうわけだから、あんたはもう用無しって訳よ」
「後は私が全部片付けちゃうからね」

「……嫌」

――え?

今まで、ただの内気な女の子だった彼女の表情が、突如として変化した。
これは、怯えだろうか?
今まで穏やかだっただけに、それとわかるほどに顔が青ざめている。

今の言葉の中に、そこまで怖がることが何かあったというのか。
私には想像がつかなかった。

どうしたの?と訊ねようとしたそのとき、食堂の入り口から声がした。

「やあ、お待たせしたかな?」
「加持先輩!」

軽い調子のその声に、思わず反応してしまった。
その先には長身の男性。着崩したYシャツに無精髭の彼が、加持リョウジさんだった。
飄々とした態度と身のこなしはそこらの男どもとは次元の違う格好よさ。

「なーんであんたがここにいるのよ!」

どこぞで落合ったのか、その隣にはミサトとオタク眼鏡――相田だったか――が連れ添っている。

「彼女の随伴でね、ドイツから出張さ」

そう、貴重なチルドレンである私の護衛として、彼はこの艦に乗っているのだ。
そういう彼を邪険にしているミサト。そういえば、知り合いだったか。

とにもかくにも全員がそろい、席に着いた。
加持さんは当然私の隣。ミサトがその向かいに座った。

微妙に浮かれた空気の加持さんと、正反対にふてくされたミサト。
相反する雰囲気が生み出した、なんともいえない空間に、妙な沈黙が訪れる。

「葛城、今、付き合ってるやつ、いるの?」

その空気を見事に無視した彼の一言は、私にとっては爆弾級。
それはそうだ、憧れの人が目の前で他の女を口説いている、としかいえない状況。
これを気にするなというほうが無理というもの。

つれない返事をするミサトの言葉を軽く流している加持さん。
不満を隠せない私を通り越して、彼の言葉はその隣にいた人物にかけられる。

「君は葛城と同居してるんだって?」
「え?ええ」

そう答えたのはサードチルドレン。
なぜそんなことを加持さんが聞くのか、と考えた矢先の彼の発言は、そんな思考を空の彼方へ吹き飛ばした。

「彼女の寝相の悪さ、直ってる?」

先ほどの発言が爆弾なら、今度のは核爆弾かN2爆弾級というところ。
いかにも疎そうなこの子は素直に答えているけれど、その言葉の意味するところはつまり。

「えーーー!」
「な、な、な、なにいってるのよ!」

顔を真っ赤にして否定するミサトが、奇しくもその想像を肯定していた。
憧れの男性の低俗的な面を唐突に見せられる、というのは中々に堪えるものだ。
加持さんの理想像が崩れ落ちるのを何とか食い止めようと必死になるが、少々株が下がるのは避けられそうに無かった。

「相変わらずか、碇シンジ君」

更に追い討ちをかけてくる加持さんだったが、その様子はいかにも軽い。
案外、ミサトをからかっているだけなのかもしれないが、それであっても彼らが同棲していた事実があればこそだろう。
その考えのために、意識を切り替えることは出来なかった。

「あれ?どうして僕の名前を?」

一人状況を把握していない彼女の発言が、ようやく話題の流れを変えてくれた。
下世話な問題をとりあえず隅に追いやるために、その意味を考える。
そうだ、まだ加持さんには自己紹介もしていないはずだった。

「そりゃ知ってるさ」

だが加持さんはさも当然というようにそれに答えた。

「この世界じゃ、君は有名だからね」
「何の訓練もなしに、エヴァを実戦で動かしたサードチルドレン」

加持さんの言葉で、今までの悩みは完全にどこかへ押しやられた。

――私は知らなかった。

この世界、というのはネルフの関係者を指すのだろうか。
だが、最も近い立場にいるはずの私は、戦闘のあらまし以外は知らされていない。
まさか、訓練をまったく受けずに乗り込んだなど。

「偶然ですよ」

偶然。偶然であっさりエヴァが動くものなのか。
この私ですら訓練を重ねてようやく戦闘可能だと判断されたというのに。
そんな私の想いを知ってか知らずか、加持さんが言った。

「偶然も運命の一部さ、才能なんだよ、君の」

それは私の能力が、才能が、この子より劣っているということか?
今までやってきたことが、ただその一言で覆されるというのか?
そんなことは、私の矜持が許さなかった。

話題の主を睨み付ける。
先ほどまで、ただの脆弱な、庇護すべき対象だった人物。
だが今は、私の地位を脅かす敵として、瞳に写っていた。



「で、どうだ。碇シンジ君は?」

彼らと別れた後、加持さんが私に訊ねてきた。
今の私の感情は複雑だ。彼女に対する二つの評価が、せめぎ合っていた。

体の弱いただの女の子である碇シンジ。
エヴァのパイロットである碇シンジ。

外見から得た情報と、外聞から得た情報。
どちらにしても、私はまだあの子を知らなさ過ぎた。

「正直、良くわかんない子なのよね」
「それが率直な感想かい?」

促されて、更に付け加えてみる。

「なんていうか、パイロットって言われても未だにピンとこないのよねえ」
「実際会ったってのに、あれがサードチルドレンだなんて実感が湧かなくて」

実像と虚像が離れすぎている、そう感じていた。

「しかし、いきなりの実戦で、彼女のシンクロ率は120%を軽く超えていたらしい」
「嘘?」

加持さんからの新たな情報は、私の混乱と疑惑に拍車をかけた。

――120%?そんな数字が有得るの?

シンクロ率が100%に近づくことで、エヴァはより自分の思い通りに動くようになる。
そういわれてきたし、自身の体験からもそれはわかっていた。
だがならば、完全に思い通りに動くはずの100%、それを超えるとは一体どういうことなのか。
いやそもそも、そんな数字を出すことは可能なのか。
考えてもわからない。分析し、理解するための知識と情報が足りなさ過ぎた。

どうやら私の中の碇シンジの評価に、興味の対象というものも追加されたようだった。



ここはエヴァンゲリオン輸送専用艦、その急造ドック。
大型タンカーを改造して造られたこの船は、内部に長期間エヴァを保管できるシステムが組み込まれている。
私の専用エヴァである弐号機は、そのドック内に、冷却循環液に浸され寝かされていた。

なぜそんなところにいるのか。
それは、隣にいる彼女――碇シンジ――に見せつけるためだった。

加持さんとの会話から、いてもたってもいられなくなり、私は彼女をすぐに探し出すと強引にここまで連れてきたのだった。
この子のことを徹底的に理解するために、今日は連れ回してやると心に決めていた。
まずは私のエヴァを披露し、反応を見てみたかった。

だが、肝心の彼女というと。

「……本当にひ弱ね」
「ごめん」

ぺたりと座り込んでいる。勢いに任せて少々急ぎすぎただろうか。
ライバルだろう人物ではあるが、弱っている人間をいびり倒すというのは趣味ではない。
私は負けていない、そういう自負もある。嫌がらせなどというのは勝てない人間の僻みというもの、私がやるべき行為ではなかった。多少の罪悪感がある。
彼女が回復するのを待って、今度こそ弐号機のお披露目。

「どう、私の弐号機は?」
「うっ」

うめき声に怪訝な顔をしてそちらをみると、彼女が頭を抱えていた。
今度は何だ。とことん軟なやつだと思い聞いてみると。

「ちょっと、赤一面だったんで、眩暈が」

少々カチンときた。
確かに私の弐号機は赤い。だがこれは私の愛機なのだ、それをそんな見方をされては心外である。

「ふん、所詮零号機と初号機は開発時のプロトタイプとテストタイプ、訓練なしのあなたなんかに簡単にシンクロするのがそのいい証拠よ」

だから相手の愛機を扱下ろしたくなった。
格の違いというものを教えてやる。

「けどこの弐号機は違う。これこそ実戦用に作られた、世界初の本物のエヴァンゲリオンなのよ!」

そうだ、これは試験機ではない。
使徒との戦闘に特化した、制式タイプ、その一号機なのだ。
今ネルフ本部で稼動している二機とは開発の意図からして違うのだから。

だが彼女の表情はその言葉にも特に反応を示していない。
自分が暗に貶されている事に、気が付いていないのだろうか。いちいち鈍い子だ。

更に言い募ろうとした、その時、この船全体が激しい振動に見舞われた。

――水中衝撃波!

危うく転びそうになっている彼女を支えて、ドックの外に出る。
そこでは、信じられない光景が繰り広げられていた。

UN軍の誇る太平洋艦隊、その巡洋艦が、中央から折れるように砕け、沈没していく。
更に水柱があがり、隣の艦が粉砕された。
何かが、水中から攻撃してきている。
それはわかる。だが、あの速度、あの威力で稼動する水中戦力など、有得ない。

「まさか、使徒!?」

彼女の一言に、はっとする。
あれが、本物の使徒。そう考えればあのでたらめな能力も納得できる。
使徒ならば、通常戦力では太刀打ちできない。
エヴァだけが、唯一それに対抗できる手段。

それに思い至ったとき、ある考えが閃いた。
状況を片付け、私の力を見せつける方法。

今までに無く深刻な表情をしている彼女を引っ張り、私はロッカールームへと急いだ。



入ってすぐにあるロッカールーム。
ここは、この船から直接エヴァを起動させる際を想定して作られている。
簡易ながらも殺菌装置が備え付けられ、その奥にはプラグスーツを収めた部屋があるのだ。

私の考えは単純明白、弐号機を起動し、使徒を殲滅する。ただし。

「ほら、あんたも着替えるのよ」

碇シンジ、彼女もプラグに乗せて、だ。
最も間近なところで私の実力を彼女に見せつける、同時に使徒も殲滅できる。これぞ一石二兎。

私が着替えるのを見て、顔を真っ赤にしながら固まっている彼女に、プラグスーツを押し付ける。
女同士で恥ずかしがるも無いだろうと思うのだが、まあ、私のナイスバディを見れば同性でも魅力を感じてしまうのは致し方ないところだ。
しかし赤い顔のまま彼女はべつの懸念を口にした。

「これはちょっと、着れないかも。ほら……」

そういうと右手をひょいと上げてみせるそこには、ギプスが装着されている。
しまった。密着するプラグスーツの構造上、少々問題がある。

「あ、確かこっちに……」

そういって別のロッカーから新たなプラグスーツを彼女に手渡した。
違いは一目瞭然。ノースリーブタイプのプラグスーツである。
各部位を怪我した場合に備えて、少数ながら一部が露出したものが用意されているのだ。
まあ、この腕の無いタイプはいいのだけれど、脚部の無いタイプはちょっと着たくないデザインなのだが。

「ほら、さっさと着替えなさいよ」

使徒が来ているのだ、時間はあまり無かった。
彼女もそれはわかっているのか、あきらめたように着替え始める。
プラグスーツは全裸で着なければならない。そのため当然彼女も裸になる。
その体を見て、絶句した。

――これはちょっと、拙かったかしら。

服を着ていたときより一層細く見える体。骨と皮しかないといったその様子は、明らかに病的で、異常だった。
こんな状態の彼女を乗せ戦闘機動して、本当に大丈夫だろうか。

「いまさら言うのもなんだけどさ、空母に戻っとく?」

そう訊ねるが、彼女はそれを聞きながらも黙々と着替えていく。
空気が抜ける音がして、プラグスーツの装着が完了した。
基本体型を私に合わせて作られたものだが、彼女が着ているとかなり小さく見える。
その強調された輪郭は、痛々しいまでに痩せ細っていた。

「僕も、乗せてくれるんでしょう?」

だが、そういってきた彼女の目は、表情は、今までとは明らかに違っていた。
何かを決意した、強い意志をもつものだけが発する、力強さ。
今、初めて出会ったならば、私は明確に彼女をパイロットと認識できただろう。
そう思わせるだけの何かが宿っていた。

「ふん、いい顔できるじゃない」
「……行くわよ」

その一言は、彼女に言ったものか。それとも、自分に言い聞かせたのか。
私たちは、エヴァンゲリオン弐号機、エントリープラグに乗り込んだ。