Migraine


第八話:星の降る日


「良くやってくれた。チルドレンの諸君」

エヴァから下りたケージで、あの碇司令が、珍しく直々に謝辞を述べていた。
司令自身がこの場に赴くことなど今まで無かったことだ。
もっとも、そもそも司令は留守のことも多かったのだが。

「……体は大丈夫か?」

唐突に、碇司令が尋ねた。
サングラスに隠された視線は、その質問を誰にしているのか教えてくれない。
ただ、普通に考えればその対象は一人だろう。
シンジちゃんは私に支えられて何とか立っている状態なのだから。

「大丈夫、です」

何とか姿勢を保っている、といった様子なのに、そう答えている彼女。
どこまでもけなげな子だ、まったく。

「……そうか、ご苦労だった」

そう答える司令の心のうちはうかがい知れない。
ネルフ司令として心配しているのか。
父親として心配しているのか。
それとも、心配などしていないのか。

「……葛城ミサト一尉」

その言葉と共に司令が私のほうへ顔を向けた。

「はい」
「辞令だ。君は三佐に昇進になる。書類は後ほど届くだろう」

そういい残し、司令は立ち去った。



お父さんがいなくなり、思わずその場の空気が緩んだ。
全員がほっと息をついたような、そんな状態。
だけど、そのせいだろうか。
しがみついていた腕から、力が抜けてしまう。

「シンちゃん!」

ミサトさんの肩にかかっていた腕がはずれて。
気がついたときには、まるで糸が切れた人形のように、床に倒れていた。

「シンジ、あんたそのどこが大丈夫なのよ!」
「ははは、大丈夫、ちょっと、気が抜けただけだから」

そうなじってくるアスカに答える。
怪我をする位いつものことだった。
気を失わずにすんでいるのだから、今回はたいしたことは無いのだ。

そう思いつつ、体を起こす。
いや、起こそうとしたのだけれど。

「あれ?」

体が思うように動かない。
腕も、足も、力が入らない。
体中が突然激痛を伝え始めた。

「シンジ!」

僕の異常に気づいたのか、アスカが駆け寄ってくる。
僕なんかを心配してもらわなくても、大丈夫なのに。
だから、安心させようと、言葉を。

「ん、だい、じょ……」

――大丈夫、心配しないで……。

すべての感覚が途絶えた。



何で、何でこうなってしまうのか。
今度こそ大丈夫だったと、そう思っていたのに。

「どういうことよ」

だから、その怒りをミサトにぶつけた。

「あんた、まもるって、いってたじゃない!」

シンジはまた、広い病室に寝かされていた。
あれからまだ意識は戻らない。

「これじゃ、これじゃなんのために、あんたが乗ってたっていうのよ!」

わざわざタンデムプラグなどというものを使っておきながら、結局シンジはこうなってしまった。
これでは今までと何も変わらない。

「……ごめんなさい。言い訳はしないわ」

静かにそういうミサトの声が、私を苛立たせる。
何でそう冷静でいられる。
仮にも一緒に暮らしているというのに。

「気に入らないなら殴ってくれてもいいわよ」

そういう彼女の目は伏せられている。
出撃前に、ミサトはどんなことでも聞くといっていた。
だから、どんなことでも受け入れると、そういうつもりなのか。
そうやって殴られれば、私の気が済むとでも思っているのか。

「殴りたい、殴りたいわよ」
「でも、できるわけ、無いじゃない」

全部ミサトのせいにしたかった。
でもできない。

「わかってるわよ。私の、責任だってことくらい」

私が出遅れなければ。
私がもっとしっかりしていれば。
私が、もっと強ければ。

「なんで、なんでなのよ」
「何で私はこいつに勝てないの」
「何で私はこいつみたいに戦えないの」
「何で私は、私は……!」

もう、感情を抑えられなかった。

「……アスカ……」

後ろからの声に、びくりと反応してしまう。

「シンジ……」

いつの間にか、彼女が目を醒ましていた。

「ミサトさんを、責めないで」
「自分も、責めないで」

細い、穏やかな声。

「本当に、僕は、大丈夫だから」
「だってほら、僕は、生きてるじゃない」
「この街も、守れたじゃない、ね?」

ミサトが許せなかった。
自分は、もっと許せなかった。

なのに、当の本人にこう言われてしまっては、私は、私たちは、もう、何もできなかった。

――本当に、馬鹿、なんだから。



二人が出て行ってから、入れ違いにリツコさんが入ってきた。

「レイ、悪いけど、あなたも出てもらえないかしら?」
「……わかりました」

綾波さんも追い出され、病室には僕とリツコさんの二人。
何か、話があるのだろう。
それはきっと、僕の体のことで。

「リツコさん……」
「もう、気がついているとは思うけれど」
「……はい」

必要以上に事務的な響きを持たせた、抑揚の無い言い方が、余計に意識させる。

「中枢神経の一部が損傷しているわ」
「それに、その右肩も、もう……」

受けている点滴のおかげだろうか。
体の痛みはほとんど感じない。
だけど。

ベッドの中の右足は、いつまでも痺れた様なままだった。
左足は、感覚すらほとんど無かった。
右手は布団を跳ね上げることすらできなかった。

「いつ、元に戻りますか?」
「……今の医療では、完治は不可能なの」

その言葉も、なんとなく予想はしていた。

「ごめんなさい。この戦いが終わって、エヴァの技術が転用できれば直せるかもしれないわ」
「でも、今はまだ……」

いくらエヴァが治せても、エヴァが人に近いものであっても、エヴァはエヴァであり、人間とは違った。
人の壊れた部分を取り替える、そんな技術があるなら、怪我で、病気で死んでいく人などいなくなるはずなのだから。

「そう、ですか」
「冷静なのね?」
「覚悟はしてましたから」

みんなを守れるなら、僕などどうなってもいいから。

「僕は、戦えるんでしょう?守れるんでしょう?」
「……ええ、エヴァに乗ることには支障は無いはずよ」

それなら、僕は、大丈夫。

大丈夫な、はずだった。

「ウ、ヒクッ、ウウ……」

気がつけば、涙があふれ、声が、震えていた。

「ごめん、なさ、少し、泣かせて……」
「いいのよ、こんなとき位、ちゃんと泣いても」

僕は、どうなったっていいと、思っていたはずなのに。
自分がどうにかなってしまって。
まともに、歩けなくなってしまって。
もう、みんなと同じにできなくなって。

自分の覚悟なんて、ただの逃避でしかなかったと気がついた。

――もっと、みんなと一緒に、歩いていきたかったのに。

もっと、みんなと遊んでいたい。
もっと、みんなと暮していたい。
もっと、みんなと生きていたい。

自分の本当の気持ちを、いまさら思い知らされて。

自分の体が、ただ悔しくて、悲しくて。

僕は、静かに泣き続けた。



わかってはいたけれど、体から痛みがなくなっても、やっぱり足の感覚は戻らなかった。
入院期間の大部分、僕は怪我を治していたというわけじゃない。
そのほとんどをリハビリに費やしていた。
機能を回復するためのものではなく、日常生活を送るための、生きていくためのリハビリ。
状態の割には早い退院。

ミサトさんが、迎えに来てくれていた。



日の落ちる時。
夕暮れの中の、第3新東京市。
いつかも来た場所。
見晴らしのよい展望公園に、僕たちはまた、寄り道していた。

そこかしこで復旧の工事が進められているけれど、暖かな光に包まれたその姿は、やはり美しかった。

「シンジちゃん、いまさらだけれど、本当にごめんなさい」
「気にしないでください」

ドアを開け放って、シートに座ったまま、そう答えた。
何気なく左足をさすっている自分に気がつく。
触っている感触はあっても、触られている感触は限りなく鈍い。
杖も装具もなしには、自立することも困難だった。

ミサトさんが、黙ったまま僕のそばへ来て、体を支えてくれた。
左腕をミサトさんの首にかけて、体重を預ける。
彼女がしっかりと僕の体を支えてくれているおかげで、立ち上がり、何とか前に歩くことができた。

二人で寄り添い、街を見下ろす。
触れ合った体から伝わるぬくもりが心地よかった。

どのくらい、静かにそうしていただろうか。
日が翳り、空が赤から紫へと変わるころ、ミサトさんが突然口を開いた。

「……私の父は、自分の研究、夢の中に生きる人だった」

唐突に語り始めた、ミサトさんのお父さんの話。
家族の事を聞いたのはこれが初めてのことだった。

「母や私、家族のことなどかまってくれなかった」
「そんな父を私は許せなかった、憎んでいさえいたわ」
「だから、母が父と別れたときにはすぐに賛成した」
「父はショックだったみたいだけれど、自業自得だと笑ったわ」

淡々と語り続ける言葉が少し途切れた。
ミサトさんは僕のほうを向いていない。
ただ、何かを確認するかのように虚空を見つめていた。

「けれど」
「最後は、私の身代わりになって死んだの」

思わず体を強張らせ、ミサトさんを見ると、彼女がようやくこちらを見て、軽く微笑みかけてくれた。

「セカンドインパクトのときにね。私と父は南極にいたわ」
「今でも覚えている。いえ、忘れられないわ」
「最後に見えた血塗れの父、立ち上がる光の巨人の姿」
「あの時私は、14歳だった」

そういうと、また視線を前に戻す。

「……あの時、あなたを引き取ったとき」
「私は、自分とあなたを重ねていたのかもしれない」

お父さんと一緒にすむことができなかった僕と、お父さんに見てもらえなかったミサトさん。
確かに少し似ていたのかもしれなかった。

「過去の自分とあなたの境遇を重ねて、一人で放り出すことができなくて」

その言い方が寂しげだから、僕は前と同じように答えた。

「感謝してます。僕は、一人では生きていけなかったと思うから」

本当に、本当に感謝していた。
彼女と暮らしていなければ、今頃僕はどうなっていたかわからなかった。
記憶の無い僕にとって、ミサトさんは唯一家族と呼べる人になっていた。

「……ありがとう、でも」
「そんなあなたを、私は自分のために利用しているのよ」

目を伏せつつそういうミサトさんに対して、僕は何もいえなかった。
ただ、彼女が言葉をつむぐのを静かに聞いていた。

「セカンドインパクトが父を奪って、私にはわからなくなった」
「父を憎んでいたのか。好きだったのか」
「はっきりしていたのは、それをを起こした使徒を倒す。そのためにネルフに入った」

それが、ミサトさんがここにいる理由。

「だから、私はあなたをエヴァに乗せている」
「あなたを使って、使徒を倒して」

淡々と、抑えていた口調が、徐々に荒々しく変わっていた。
苛立ち混じりのその声を聞き続けたくは無かったけれど、とめる事はできなかった。

「結局、私はただ、父への復讐を果たしたいだけ」
「父の呪縛から逃れたいだけ」
「ただそんな理由のために、私はあなたを、傷つけている」

僕を支えてくれている腕に、痛いくらいに力が込められる。

「壊して、ぼろぼろにして、こんなになって」
「わざわざ自分で乗り込んでまで戦って」
「それでもあなたを守ることすらできなくて」
「なのに、そんな私が昇進?」
「ただ使徒を倒し続けて、あなたを酷い目に合わせ続けて」
「その評価がこれ?冗談じゃないわよ!」

叩きつけるように叫んだ後には、しゃくりあげる音が聞こえて。
ミサトさんは、盛大に泣いていた。

さめざめと涙を流す、この人。
僕は、その体にもう片方の腕も巻きつけ、抱きしめていた。

「僕は、生きています。あなたのおかげで、生きています」
「シンちゃん……」
「だから、泣かないでください」

僕の体がこんなになったのは、誰かに責任があるわけじゃない。
例え誰かのせいであっても、ミサトさんのせいなんかじゃない。
もしミサトさんが原因であっても、僕は彼女を責めることは出来なかった。

僕にとって、ミサトさんは作戦部長である前に、僕を救ってくれた、とても大切な人だった。
その人がやっぱり僕を心配してくれているとわかっただけで、嬉しかった。
その人が僕のことで苦悩していると知って、苦しかった。

彼女の感情が感染したのだろうか。
気がつけば僕もまた、ミサトさんの胸に顔を埋めたまま泣いていた。

「……本当に、保護者失格ね、私……」

そうつぶやいた彼女は、しっかりと、強く、強く僕を抱きしめた。

日の光は既に消え、星々が夜空を彩り始めていた。



久々に帰った我が家。
でも、何かが、明らかにおかしい。

例えばリビングルームが思ったよりも綺麗だったり。
ゴミ袋の代わりに段ボール箱が山と積み上げられていたり。

予想外の光景にしばし固まっていると、突然、隣の――つまりは、僕の部屋の、だ――ふすまが開いた。

「お帰り、ミサト」
「アスカぁ!?」

出てきたのはアスカだった。

「……お帰り、シンジ」
「え、あ、た、ただいま」

彼女の素っ気無い挨拶に、たどたどしくも答える。
だけど、何故アスカがここに?
何故、僕の部屋から出てくるのか?

その疑問を口にする前に、答えが返ってきた。

「今日から私も、ここに住むから」

それってつまり。
僕とアスカが、同居すると、言うことだろうか?

「何で急に……」
「なによ。私とは住みたくないって言うの?」
「ううん。そう言うわけじゃないけど」
「だったらいいじゃない、ねえ」

そうだ、別に嫌というわけじゃない。
ただ、状況がつかめなかった。
彼女の登場で、混乱した頭の中。
そこに、玄関のチャイムが鳴る。
入ってきた人たちが、それに拍車をかけた。

「お邪魔しまーす」

声をそろえて現れたのは、鈴原君に相田君、洞木さん、そして、綾波さん。

「みんな、どうして?」
「私が呼んどいたのよ」

即座に答えたのはアスカ。
見ると、彼らの手には買い物袋。

「私の転居祝いと、あんたの退院祝い。それと……」
「ミサトの昇進祝いも、ついでにね」

そういって彼女は私にウインクしてきた。
ミサトさんはというと、少し申し訳なさそうな顔で頭を掻いていた。
その様子に、苦笑する。

「ん、みんな、ありがと」
「かまへんかまへん。それより、ほんまに大丈夫なんか?」

鈴原君が心配そうに尋ねてきた。
ここにいる皆は、もう、僕の体のことを知っていた。
お見舞いにきてくれたときに、自分から話したからだ。
反応は様々だったけれど、皆、僕のことを心配してくれて。
でも、お見舞いにきてくれるたびに悲しそうな顔をするのが、とてもつらかった。

「心配しないで。ちょっと不自由だけどね」

視線が、僕の左足に集中する。
スカートからはみ出したその部分は、装具の一部が見えていた。
僕の意思が伝わらない左足で、体重を支えるための仕掛け。
左手には杖も持っている。
本当は右腕がつかえればよかったらしいのだけれど。
僕の壊れた肩関節では体重を支えることは出来なかった。

「ほらほらあ、しんみりしないの。お祝いでしょう?」

少し落ち込んだその場の空気を、ミサトさんが和らげてくれた。

「あんたの分はついでよ、つ、い、で!」
「なによアスカ、それはないんじゃないのお?」

そのやりとりでようやくおのおのが動き始めた。
洞木さんが台所へ、男の子達はリビングを片付けに。
即席の祝いの席が出来上がっていく。

「あ、僕も何か……」
「いいからあんたは座ってなさい。シンジのためのお祝いなんだからね」
「アスカも転居祝いなんでしょ?」
「だから私は何もしてないじゃない」

言われて、思わず笑ってしまった。
何時の間にか横に来ていた綾波さんが、僕を支えて、椅子まで誘導してくれていた。
皆が忙しそうにしている中でこうしているのはなんだか申し訳なくて、むず痒かったけれど。

――こんな時くらいは、良いよね。

まだそばから離れない綾波さんを見ながら、そんなことを考えた。



「そんじゃ、気いつけや」
「碇さん、お大事にね」

夜も更けてきた。
わざわざきてくれた皆も、帰宅していく。

「碇さん……」

最後に玄関に残った綾波さんが、何事か考えるようにしばらく目を閉じていたけれど、またこちらを見て。

「それじゃ、また」

そういい残すと、彼女もまた帰っていった。
残ったのは、僕と、ミサトさんと、アスカ。

もっとも、ミサトさんはものすごい勢いで酔いつぶれ、自室に収納されてしまっていた。
しかも、アスカも何時の間にかお酒を飲んでいて、フラフラの様相だった。
真っ赤な顔をしてソファにもたれこんだ彼女に、先に寝るよ、と言おうとして。
気がついた。

「アスカ、部屋、どうするの?」

ミサトさんのマンションは独身にしては十分広かったが、それでも三人分の部屋を用意できるほどではなかった。
空いているのは小部屋くらいだけれど、そこには既に荷物が詰め込まれ、まともなスペースは存在しなかった。

「良いじゃなーい、シンジと相部屋でー」

どたばたしていて忘れていたが、そういえばアスカは僕の部屋から出てきたのだった。
中をのぞいてみると、床が片付けられて、既に布団が運び込まれていた。

「で、でも、それってまずいんじゃ?」
「なにがよー?女の子同士でしょー。それにあの小部屋で暮らせるわけないしー」

酔っ払っているけれど正論を言う彼女に、反論できなかった。
普通に考えれば何もまずいことはないはずなのだ。
思わずそういってしまったのは、まだ僕に男の子の感覚が残っていたからだろうか。
ずいぶんと自分が女であることを自覚してきたと思っていたのだけれど。

おもむろにアスカが立ち上がる。

「そんじゃ、寝よっか」

そう言うと、僕を支えて、部屋まで連れて行ってくれた。
多少ふらついているのは怖かったけれど、文句をいう気にはなれなかった。

「……先に言っとくけど、あんたが上で寝なさいよ」

ちょうど思案しようとしていた矢先に、あっさりと決められてしまった。

「でも……」
「でももへちまもないの。……下で寝たら、いろいろ大変でしょ」

そういうと、すぐに彼女は床に布団を広げ、そこに入ってしまった。
僕がやろうとするすべてのことについて先手を打ってしまうその強引さに、少し呆れたけれど。
全部、僕のためにそうしてくれているんだとわかる。
何か見透かされているような気分だったけど、素直に彼女に従うことにした。

装具を外し、寝巻きに着替え、布団に入る。
そう、確かに今の僕には適度な高さが必要なのだ。
地面に寝た状態から立ち上がるには、それだけで多大な労力を要するのだから。

「アスカ、ありがと」

横になったまま、彼女の不器用な気遣いに感謝の言葉を述べる。
僕は今、十分に幸せだと感じていた。
体が動かなくなったことがすべて受け入れられたわけじゃない。
だけど、それを隅に追いやれるくらいに、皆の気持ちが、暖かさが、嬉しかった。
これを守れたのだと思うだけで、安心できた。

息を吐いて、全身を弛緩させる。
と、寝ていると思ったアスカが、唐突に一言しゃべった。

「ごめんね、シンジ」

――え?

聞き返そうとした時には、彼女は安らかな寝息を立てていた。
その音を聞いているうちに、何時の間にか、僕の瞼も閉じられていた。