Migraine


何も見えなくなっていた視力が回復して、ノイズだらけだった無線が静かになって、ようやく少しだけ気が弛んで。

その瞬間、両腕からむず痒さにも似た痛みを感じた。
それは初号機の痛覚。
形こそ元通りにはなっているが、焼失した部位は未だに治りきっていないのだ。

あの人が、自身の安全を放り出して彼女を助けた代償。
自分の後ろのシートに座るその助けられた人物に視線を送ると、少し怪訝そうな気配とこちらを気遣うような感覚が伝わってきた。

そうだ、今、私はつながっているのだ。
このエヴァという存在を通して、あの、綾波レイと。
拒絶して、憎んで、逃げていた、あの女と、感覚を、心を共有しているのだ。

そう考えるのはあまり愉快なものではなかったが、しかし意外にも自分は冷静でいるようだった。
それは私が今の自分の想いに対して気負いすぎていたからかもしれない。
しかし、それだけじゃない。

憎いとさえ思っていた、私のいるはずの場所にいただろう少女の、その心の中に、図らずも私は見つけてしまった。
人々から疎まれる疎外感を、それを肯定し、日常としてしまった心の壁を、そしてその奥に空いた、孤独という暗い穴を。
私が今まで生きてきて、感じてきた、同類の物よりもっと深くて、暗くて、固く閉じこもった、そんな物を。

そしてまた、知ってしまった。
彼女もそんな暗闇から抜け出すために、少しずつ扉を開いて、一歩ずつ前に進もうとしている事を。
何も判らない世界へ、怯えながら、迷いながら、それでも前を向こうとしている事を。

そんな人を憎み続けるなど、私にできる訳が無かった。
だってそれは、自分の想いも否定する事になってしまうから。
だから私は、もう彼女を拒む事はなくなっていて、こうして、共に戦う事もできていた。

「碇さん、また、来るわ」
「……わかってる」

こうやって言葉にすると、まだふいと拗ねたようになってしまうけど。
でも、伝わってるはずだった。
照れ隠しの恥ずかしい想いも、私の決意も。

私は彼女を、許していたのだから。

第拾伍話:真心を君に。

こころ


――なんとか、なったわね。

本当にギリギリだった。
あと少し初号機を出すのが遅れていたら、地表は外殻ごとすべて吹き飛ばされ、本部施設が丸裸にされるところだった。
ここが地下空間である事が彼らの侵攻を遅らせているのは間違いなく、そのアドバンテージが失われればいつまで持ち堪えられるかわからない。

『葛城三佐、今の爆発は?』
「日向君、無事なのね?……ふう、本当に助かったわね」

もしあのN2が地上をなぎ払っていたら。
地上施設を防衛していた彼らがどうなっていたかと考えると、背筋が凍る思いだった。

『戦自の連中、今頃になって退却し始めましたが……どういうことです?』
「N2の情報が彼らにも無かったということ?それにしても、このタイミングで引くなんて」

何かある。
日向二尉からの報告は、そう思わせるに十分な物だった。
そしてその想像は、すぐに現実の物となる。

「ミサト、どうもまずい事になっているわ」
「まさかMAGIが?リツコ、あんたがいながら……」
「こちらはまだ大丈夫。けれど松代がやられたわ」

現在、本部のMAGIが比較的自由に動いているのは、松代のMAGIコピーを攻撃への壁代わりに用いていたからだ。
松代に侵入への抵抗を行わせつつ、こちらのMAGIオリジナルが侵攻された部分を再侵攻する事で強引に乗っ取りを押さえ込む。
そんな終わらない"共食い"によって均衡を保ち、余力を捻出する事で本部施設の制御を可能にしていた。
それが、成立しなくなった。

「じゃあ、これからは松代も敵、という訳ね」
「いいえ」

彼女の答えに怪訝な顔をすると同時に、続けて答えが返ってきた。

「松代のMAGIは破壊されたわ。外部からの攻撃によって」
「あそこは日本政府の目と鼻の先なのよ?いくら戦自でもそうそう簡単にはいかないはずなのに」

まさかの事態に、更なる報告が割り込む。

「すいませんがこっちでも緊急事態です。横須賀が、やられました!」
「青葉君、正確な情報をお願い」
「向こうの内通者からの定時連絡が途絶えました。最後の連絡は領空侵犯機の撃墜。
その後回線はひっちゃかめっちゃかになってますが、どうやらエヴァキャリアーに手を出したようです」

海軍基地は多くが中立の立場を取り、ネルフ、ゼーレ、そのどちらにも加担していなかった。
領空侵犯とされた機体を撃墜したのも自分たちの職務を全うしたのだと主張するのだろうが、こちらとしては司令部内にネルフに好意的な勢力がいたのだろうと想像しても良いだろう。

しかし代償は大きい。
S2搭載型とされるエヴァが相手ではまともな抵抗はできなかっただろう。
そして、ふと気がついた可能性にリツコを見れば、彼女も同じ結論を出していたのだろう、静かに頷いた。

――松代もエヴァにやられたか。

この二つの事実は、量産型エヴァが既にすぐそこまで迫っている事を意味している。
だが一方で、我々に有利な状況が生まれた事も意味していた。

「横須賀と松代には悪いけれど、チャンスね。奴らの足並みが乱れた。
観測班、対空警戒を厳に。1秒でも早く敵機を発見してちょうだい」

状況から、彼らは日本海側と太平洋側から同時に第3新東京市へ到達する予定だったはず。
松代のMAGIの抵抗と横須賀基地の正義感が、その到着にずれを生じさせ、体勢を整える機会を与えたのだ。
まさに千載一遇のチャンスだった。

「中央ブロックの使用可能なリニアを利用してポジトロンライフルを初号機と弐号機に送って。
遠距離迎撃を試みます。MAGIが動けるうちに、急いで!」

壁となっていた松代が潰された今、MAGIは直接の電子攻撃を受けている。
オリジナルとはいえ、4機のMAGIを相手にしてはそう長く持たないのは明白だった。
対抗策はあるが、それはあくまで乗っ取りに対する対抗であり、行使すればこちらもMAGIの力は当てにできなくなる。
そして、MAGIが使えなければ、我々司令部はエヴァを支援する手段のほとんどを失う事になる。
時間的にも、状況的にも、今しかないのだ。

そう、大人達が子供達を助けてやれるのは、後ほんのわずかな時間のみ。
できれば、最後まで私たちが解決すべき問題だけれど。

「エヴァキャリアーと思われる機影を発見。方位334、距離150kmです」
「了解、……アスカ、シンジさん、ポジトロンライフル装備。狙撃準備を始めてちょうだい」

司令に異口同音で答える彼女達の声。
不安と恐怖、そして決意のにじんだ、まだあどけなさの残るその声に、私は心が揺さぶられるのを感じ、慌てて自分を奮い立たせる。
子供達が生きて帰ってこれるよう全力を尽くす為に、感傷など不要な物だった。

――私たちの手で彼女達に未来を。

絶望と希望で染められた想いを心の奥にしまい、私は彼女達に、無慈悲な命令を下す。

「照準、不明機先頭一番、撃て!」

子供達に枷を背負わす、引き金をひかせる、一言。



ポジトロンライフルを構えた右腕が重たく感じる。

ディスプレイに表示された目標を指示するマーカー、その向こう側の敵機はあまりに遠いように思えた。
まともな実戦経験などない私のただでさえ不安定な狙いは、不安と緊張によって酷く揺れていた。
こんな状態で当てられるとは思えない。
けれど、時間は待ってくれない。

葛城さんからの、攻撃指令が届いた。

――やるしか、ない。

呼吸が乱れ、LCLの循環が激しくなるのを感じる。
指が、腕が、思うように動かない。
それでも、引き金を引かなければならない。
そうしないと、せっかくこれに乗った意味がなくなってしまう。
戦うと決めたのだから。
逃げないと、決めたのだから。

そう思っても、照準は定まらない。
もう、撃たなければならないというのに。

「大丈夫。出来るわ」

静かな声が、後ろから届いた。
綾波さんの声だと認識して、漸く自分がどれほど焦っていたのか判る。
でも、そう判ったところで、どうなるというのだろう。

「でもやっぱり……」
「わたしが狙うから。あなたは、合わせて。大丈夫」

強い意志が流れてくるのを感じて、彼女が私を導こうとしてくれていることに気がついた。
彼女がエヴァに乗っていた時、いつもそうしていたように、意識を集中して自分以外のものの手足を動かす、そのための心の使い方を私に伝えようとしていたのだ。

その意識の流れに自分の意識を重ねる。
何か考えてのことではなく、彼女の言葉に従っただけの行為だったが、それは図らずも自らの意志で彼女の心を覗き込む形となっていた。

伝わってきたのは彼女が伝えようとしたことだけでは無かった。
今まで薄らと感じていた彼女の考え、感情、想い、そう言ったものが、まるで温かな湯の中にどっぷりと浸かったように全身から染み渡ってきたのだ。

きっと彼女は気付いていないだろう、先の言葉が私だけでなく、自分にも言い聞かせていたのだという事に。
わたしは知ってしまった、ともすれば無表情で冷徹にすら見える彼女が、その内面では様々な感情が渦巻き、なんとか自身を保とうと必死に生きているのだと。

そうしてまた知る。
彼女にもまた、わたしが何を知ったのかがわかったという事を。
お互いがお互いを感じ、そしてお互いに自分を知って行く。
2人の心がゆっくりと混ざり合い一つに溶け合っていく。

今なら、引き金を引けると思った。
当てられる自信などないけど、彼女がそう言い聞かせてくれたのだから。
きっと、大丈夫。

不思議な安心感に支えられて、あれほど不安定だった照準がぴたりと定まった。
私は、ただ彼女に合わせて、彼女のように振る舞い、彼女の動きを伝える。

引き金は自然に引かれ、銃口が光を放った。
大気を焼くエネルギーの塊が、遥か彼方の目標の中心を貫き、弾けた。



「……やるじゃない。負けらんないわね」

そんな呟きと同時に、わたしもまたポジトロンライフルを発射した。
既に航行能力を失っていた大型輸送機に駄目押しの一撃が叩き込まれ、対消滅の破滅的な熱量が全てを燃やし尽くした。

まずは一機。
先手を取ることができた。
だが、見えている機影だけでも未だに4つは残っている。
それ等をすべて叩き潰したとしても、更に五体の量産型エヴァがこちらに向かってくるのは間違いなく、こちらに不利な状況であるのは変わっていない。

「次、目標右側不明機2番。冷却完了次第順次発射!」
「了解!」

叫ぶように応答して、素早く照準を修正する。
流石にこちらに気が付いたか、回避運動を取り始めていたが、超重量のエヴァを運ぶために超大型機となっているエヴァキャリアーの転進は鈍重だ。
高初速で吐き出された陽電子は目標との距離を一瞬でゼロにすると、その片翼を粉砕した。
さらに初号機からの一撃が逆の翼も吹き飛ばし、揚力のほとんど全てを失った輸送機は放物線に沿って墜落して行く。
だが、それは狙撃の失敗と言えた。
格納庫にあるであろうエヴァ本体のダメージは期待できないためだ。

「ちい、次弾装填、遅いのよ!」
『足止めにはなるわ。アスカ、次の目標を狙って』
「くっ、了解」

苛立ちと後悔を溜め込んだ僅かな時間のすぐ後に、地面に突撃した輸送機が爆発した閃光が山の向こうに見えた。
考えている暇は無かった。
長距離射撃だったとはいえ、残りの三機はすぐそこまで迫っている。

『大当たりは望まないわ。相手の足並みを乱れさせればいい。弍号機は右翼4番、初号機は5番を落として』

豆粒のようだった機影は既に相当に大きくなっており、旋回によりこちらを向いた側面がはっきりと認識できた。

ーー今度こそ当てる。

昂った精神にそう言い聞かせて、意識を敵機の中心に向ける。
大丈夫、この距離なら外さない。
カチリという扱っている武装に対して酷く軽いスイッチ音とともに、三度目の反応光が閃き、今度は確実に輸送機の格納庫に命中した。

そのはずだった。

「弾かれた!?」

陽電子が命中する直前、突如として四散した。
このような事が可能なのは。

「ATフィールド!もう起動しているの?」

散らされた反物質が周囲に撒き散らされ、輸送機の装甲が消滅し鎔解していく。
はじけようとも陽電子の粒子は機体を破壊する十分な威力を残していた。
だが、起動しているエヴァにその程度はたいした問題ではないだろう。

逆側の初号機が狙っていた機体も同様に干渉光を放ち、ポジトロンライフルの一撃を防いだようだった。
コントロールを失った機体は墜落して行くが、その場所は既に山一つの距離もない。

「くそ、あれじゃすぐ来るわ。ミサト、準備は?」
『MAGIが自閉モードに入るまでもう時間がないわ。これが最後の射出だと考えて。出せるだけ出しておくから、思いっきり戦ってちょうだい』
「サービスがいいのか悪いのか、なんていってられないか」

そう言いつつもこちらへ向かってくる最後の一機に狙いを定めようとしたその時、突如として違和感を覚えた。
回避運動すら行わずこちらに真っ直ぐ機種を向けて進んでくる機影は、もうすぐそこまで迫っており、望遠視界を解除せねばならないほどの至近にあったのだが。

――……まさか!この角度、このまま特攻するつもり!?

『二人とも、退避!』

気付くとほぼ同時にミサトからも指示が飛んだ。
おそらく現存する中で最大の質量を持つ輸送機による突撃。

それはこの要塞都市であっても十分に損害を出しうる攻撃と言えた。
それにしてもエヴァキャリアーをあっさり使い捨てするとは、連中も必死ということか。
急降下をかけてくる衝突軌道から外れるために大きく跳躍を行う。
一度落下コースに乗った鈍重な機体がこちらに軌道修正出来るはずもなく、そのまま真っ直ぐに突進していく。

距離を取りながら落下先となるだろう第3新東京市のビル群に視線を移す。

「ちょっと、なんでまだそこにいるのよ!?」

視界に入ったのは紫色の機体。
とっくに回避し終わっているであろう初号機だった。

「何やってんのよ!ぶつかるわよ!」
『でも、逃げたら街が潰れちゃう』
「今更何いってるのよ。地上人員の退避は終わってるんだから……」
『それでも!』

スピーカーから響いた細い叫び声に、私の声が遮られた。
いや、続けられなくなった。
だって、その響きが余りにもシンジに似ていたから。
同じ顔で、同じ声で、同じ叫びで、だからきっと、同じ想いで。

『この街はきっと私の居場所だから。皆の居場所だから。守らなきゃ』
『……そう。ここは私の居場所でもあるわ。そして、あの人の居場所でもある』
「レイ、あんたまで!」
『大丈夫。受け止めて見せる』

もう抗議している時間は残されていなかった。
初号機が右肩にマウントしていたポジトロンライフルをパージし、その両腕を自らの前方、猛スピードで吶喊してくるエヴァキャリアーに向けて突き出す。
そしてそのさらに前方に、柔らかな光の力場が僅かな干渉光とともに出現した。

エヴァに乗っているからこそ見ることのできる、ATフィールドの光の壁。
軽く拡散しながら前進していく障壁が、程なく目標の輸送機と接触した。
だが物理的な攻撃をはねのけてきた力は、普段と違い相手を包むように柔らかに拡がり動きを抑え込んでいく。

レイは受け止めると言っていた。
まさにその言葉通り、初号機のATフィールドを使って巨大な輸送機を受け止め、減速させているのだ。
ただ守るだけでない、出来るだけ何も壊さない、そんな難しい手段を選択した彼女達に驚嘆する。

レイはそれほど大胆だっただろうか。
そしてあいつは、それほどの勇気を持ち合わせていただろうか。
私が捨ててしまった道を選択した二人。
何かが変わりつつある、そう思えた。

だけど。世界はまだ、非情だ。

押さえ込まれつつある輸送機の内側に発現した力。

何かいう暇もなかった。
硬度を伴わない初号機のATフィールドが、一瞬で食い破られ、霧散した。

ATフィールドによる圧力から解き放たれた金属の塊が再度加速し、そのまま正面に構えていたレイたちに激突する。
予想外の状況に対応の遅れた初号機は、潰れていく機首に埋まるようにして押し飛ばされていく。

『きゃああああああああっ!!』
「レイ、シンジ!」

二人の悲鳴。
押し込まれていく機体。
すでに崩壊寸前の輸送機の内部から感じる力がさらに高まり、強烈な存在感を発した。

初号機が背面から兵装ビルに叩き付けられると同時に、強い敵意とともに視認できるほどに実体化したATフィールドが初号機との間に光の壁となって出現した。

そして、その数瞬後。
エヴァキャリアーが爆散した。
直視出来ないほどの、強烈なN2の閃光を放ちながら。



頭の奥がずきりと痛む。
苛立ちとも懐かしさともとれる妙な感覚に、意識が浮かび上がってきた。
だが、あの戦闘の最中の騒々しさは感じない。
いやむしろ、一切の音が存在しなくなったかのような静けさだった。
不審に思い瞳をゆっくりと開き、周囲を認識する。

見覚えのある光景だった。
どこまでも続く赤い海と、宇宙の色をそのままに通した黒い空。
その間に浮かぶ、白砂の世界。

久しく見ていなかった彼女の世界だ。
私と彼女が分かたれてから、みることのなかった静かな悪夢。
私はそこに傍観者として存在していた。

原色で構成された風景と静かに打ち寄せる波の音で出来上がった世界は、生命と言うものをまるで感じさせない。
全てが終わった世界。

そんな所に残された人影があった。
それは、私と同じ位の歳の少年の背中だった。

こちらに背を向けて、うずくまるようにして座っているその姿はあの頃の私に重なるものだったが、彼は目を背けるためにそうしているわけではなかった。
静かに、しかし懸命に見つめ続ける視線の先には、もう一つの人影が横たわっていた。

すぐに分かった。
あれは、もう一人の私だ。
生きる事を渇望して、でも生きる事を放棄した、哀しい人。
前の戦いで消えてしまった彼女がそこにいた。

ただ、その場所から感じられる気配があまりに薄くて、今にも消えてしまいそうに思えて、だからもっと近くに行こうとして。

「来ないでよ。お願いだ、こっちに来ないでよ」

聞こえたのは、少年の拒絶の言葉だった。
いや、拒絶と言うには弱過ぎる、懇願だった。

「もう静かに、休ませてあげてよ。
もう十分だ、もう沢山だ。
これ以上彼女を苦しめるのは、耐えられない。
お願いだから、そっとしておいて」

彼の思いは否定の出来ないもので、その辛さに同調してしまうと、わたしはそれ以上進む事が出来なくなった。
そして同時に、意識が覚醒して行くのを感じる。
今度こそ、外の世界へ引き戻されて行く。

そうだ、戻らなきゃいけない。
今のわたしには、やると決めた事があるのだから。

そう考えると、急に彼等から引き離されたように感じた。
私の外側から、誰かの呼ぶ声が聞こえてくる。
原色の世界が白く滲み、二人の姿が遠く、小さくなって行く。

だけど夢と現実が入れ替わる直前。
彼女の意識を、感じたような気がした。