Migraine


第拾六話:君は、独りじゃない

Entoverse


頭の奥がずぐずぐと痛む。
顔をしかめた私を心配そうに伺う顔は今や見慣れた人物のものだった。
ただ、サングラスを掛けているのは初めて見たかも知れない。
私が意識を向けた事に気付いたのだろうか、すっとそのサングラスを外して、不敵な笑みをこちらに投げかけた。

ーーああ、ミサトさん、無理しちゃって。

何事にも物怖じしなさそうな大人の女性、そんな表情を繕っている事くらい分かる程度には、私もこの人と一緒に過ごしていたのだ。
わざとらしい声音も、普段だって滅多に着ないセクシーな装いも、距離感を図る為の武装だ。
それ位は、分かる。
けれど、その後の肌の温もりは、まだ知らなかった。
咄嗟に私を庇い、押し付けられた身体から伝わる温もりと僅かな汗の匂い。
それは私にとって、初めて触れた、ヒトの熱でもあったのだ。

ーー初めて?そんな筈ない。私は。

私は、なんだ?
私は、碇シンジ。
外側の呼び掛ける声と、私の記憶が重なる。
でも、私は碇シンジじゃない。
私は、なんだ?
私は、私じゃない?

気付けば赤木さんが私を見下ろしていた。
私はこの人のことをよく知らない。
検査の時も訓練の時も、結局話す機会など殆ど無かったのだから。
それなのに、冷静を装っているその下では、意外と感情豊かなのだと分かっていた。

頭の奥の痛みが激しくなり、私は自分の内側に引き込まれる。
目の前の人物に対する二つの奇妙な評価が入り混じっている。
これが初対面なはずなのに。初対面だと、分かっているのに。

ストレッチャーに乗せられたまま連れてこられた真っ暗な場所。
その闇の奥にいるモノを私は知っている。
どうしようもなく怖くて、けれど棄てることの出来なかった、力の象徴。
汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオン。

明かりが灯り、その異形が露わになる前に、私は理解していた。
これから、これに乗って戦うのだと。
全く同じ経験を以前にもしていたから。
その時の私は拒絶する以外に何も出来なかったのだけれど。

上方の監視設備に、人影が現れた。
父さんだ。
逆光ぼ中の佇まいは私が知っているのと笑ってしまうくらい同じ。
その他の何もかも、語られる言葉すらおんなじ。
その中で違っているのは、私自身。
私だけが、私と違っている。

私と違う私、その内側を、戦うことに対する恐怖など消し飛んでしまう程の、失うことに対する恐怖が捕らえていた。
もう何も無くしたくない、もう一人にはなりたくない。
そんな衝動が私ではない私を突き動かし、叫び声となって飛び出していく。
こんな張り裂けるような心の痛みなど、私は知らない。
こんな絶望的な寒気のする孤独感など、私は感じたこともない。
だけど私は、確かにそれを感じている。

「乗ります。ぼくが、乗ります。みんなを、みんなを守ります!」

気付けば、そんな言葉を口走っていた。
戸惑ったような父さんの顔が、何か可笑しかった。

乗り慣れた、初めての、懐かしいコックピット。
そのシートに身体を納めて、LCLの中に全身を沈めて。
シンクロと呼ばれるエヴァとの神経接続が始まって。
そこでも、やっぱりいつもとは違う。
自分が自分と違う何かと繋がっている違和感や不快感は存在していなかった。
代わりにあったのは、エヴァその物が自分自身だと感じられる、不思議な一体感。
カタパルトから射出される時の強烈なはずの加速ものんびりとした物に感じてしまう、ヒトではないヒトの感覚に、僅かに高揚感すらあった。

そうして撃ち出された地上で出会った、同じ位の大きさの人型。
その姿とともに甦る恐怖の記憶。
私はあれを、確かに見た事がある。
そう、非現実の日々の始まりの、もしくは私の日常の最後に、確かに私はあれを見ていた。
覚えている。
私はあの使徒との戦いに巻き込まれて、墜落したVTOL機に吹き飛ばされたのだ。
鮮やかに思い出した光景に身じろぎする間に、その存在は私に近付き、左手首を捕まえていた。

あっと思ったのも束の間、次の瞬間、私は声にならない声を上げていた。
握りつぶされていく初号機の手首が叫ぶ危険信号を、私の神経がそのまま強烈な痛覚として伝えてきたから。
万力で締め上げ続けられればこの様に感じるだろうか。とにかくそんな感じで、その感覚は私が知っているフィードバックの痛み以上の物だった。
やがてみしみしと硬い物が砕ける音が体の中から伝わってくると、バチンと、手首が弾け、左手は中身のない手袋のように垂れ下がったままになった。
"自分"の目に意識を戻せば、果たして私の左手も冗談の様にねじ切れかかり、LCLに漂っている。
刺激が強烈過ぎて半ば麻痺したみたいになり、ひくついた顔が笑った様に不自然に歪んだ。
逃げないと、そう思っても、全身が引き攣れて動かない。

相手の人型の腕がこちらに伸びてきて、左手が私の顔を鷲掴みにする。

「はっ……」

殆ど吐き切っていた肺の中のLCLが、漏れ出す。
手首を握りつぶすほどの握力で掴み上げられた私の顔面が歪みそうだった。
正しくはエヴァが、なのだろうけれど、既にどちらがどちらなんて区別は無意味だった。
今、私は初号機で、初号機は私なのだ。

「あ……?」

相手の掌にほとんどおおわれた視界の中、突然、光が生まれた。
網膜が焼け付きそうな光が、右目に叩き付けられる。
比喩ではなく、本当に光の固まりが、私を掴んだままの掌から撃ち出されている!

一回、二回、三回。
一撃ごとに、私を守る殻が、破れていく。
執拗に繰り返される攻撃。
頭蓋に響く衝撃が、一際大きくなって、何かが、砕け散った。

「あ……」

守ってくれていた物を失った眼球が、抉れる。
眼底を貫き、脳細胞をグチャグチャとかき回して、衝撃が後頭部を突き抜けた。
およそ生きた人間が感じる事の無い、太い棒が頭の中に突き刺さる感触。
過剰すぎる刺激に、すべてがショートしたようになって。
“私”は、意識を失っていく。

それを感じてる私が、確かにいるのだ。
そう、やっぱり私は、”私”じゃない、”僕”じゃない。
意識を失った”私”から、私の体が、ずれていく。
“私”が、私で無くなっていく。

私が私を取り戻したその場所は、静かな白い世界。
エヴァンゲリオン初号機の、内側の世界。
私が、彼女と向き合った場所、助けようとした場所。

「そうだ、思い出した。私は、あの人を助けようって。私を、分けてあげて、せめて消えてしまわないようにって」

それなのに、私は一体何をしているのだろう。
これは、きっと彼女の記憶だ。
私は、彼女に私を見せてあげなきゃならないのに、なぜ私が、彼女を見ていたのだろう。

とにかく、もう一度、試してみよう。
そう思って、違和感に気付いた。

「……ここは、違う?戻ってきたんじゃ、無い?」

あの白い世界に戻ってきたのだと思った。
けれど、私は彼女のいるところから、ズレていると感じた。
私は彼女に重なることが出来るけれど、触れる事は出来なかった。
ほとんど完全にこの場にいるようで、色の無い、極薄くて、でも破る事の出来ない何かで隔てられたところに、私はいるらしかった。

少し離れたところに、”彼”を見つけた。
怒りに身を任せて、エヴァの構造をまるで無視した挙動で、圧倒的な力を持って目の前の使徒を破壊していく。
この空間を支配している彼も、やはり私には気付かない。
相手を破壊し尽くし、自爆すら防ぎきったあと、彼はただ彼女を抱きしめ続けていた。

ーー これは、この世界は。

唐突に、すとんと何かが嵌った。
私は今、彼女の、碇シンジの過去を覗き見てる。
彼女が私として生きた時間、空間、その全部の記憶を。
私の知らない約一年の、世界の記憶を。

その中で私は"私"として、生きている。
いや、それも少し正しくない。
彼女の過去の行動、過去の感情、そんな物をそのままなぞっていく、そう、傍観者。

ここには、知りたかった事が沢山あった。
知りたくなかった事も沢山あった。

父さんは、あんな父さんは初めて見た。
父さんを知らない私と向き合った時の動揺も、いつもの人を寄せ付けない雰囲気とは違ったぎこちなさも、不器用すぎる優しさも、全部初めて見たものだった。
思えば父さんはいままで私に、厳しい姿以外を見せない様にしていたのかもしれない。
きっとああいう姿を見せたくなかったから。
私と同じ、不器用で臆病な人だから。

そう、思えたら。
ふと、あの父の事が、少しだけ、可愛らしいと感じた。
自分を知らない”私”とうまく接することも出来ず、無様に狼狽えて、気遣って、それでも体面を保とうとしてる、格好のつかない一人の人間。
こんな側面を早くに知っていたら、私は父さんを避けるようにならなかったかもしれない。
苦笑しながら、折り合いを付けられたかもしれない。

それとも、今からでも遅くはないのだろうか。
あの父さんと、家族として共に生きていく事が、出来るのだろうか。
考えても、結論は出なかった。
けれど、絶対に無理だとは、もう思えなくなっていた。

初めて出来た、本当の友達。
一人はあの相田君で、もう一人は、鈴原君だった。
人生で初めてグーで殴られたのも、鈴原君だったけれど。
二人を乗せての、エヴァでの戦闘。
そして、仲直り。
生の感情を気持ちよくぶつけてきて、ぶつけてくれる、そんな彼らは”私”にとって本当にかけがえの無い存在だった。

綾波レイは、不思議な人だった。
いや、初めて出会った時は、人と言うより、人形の様だと感じた。
初めに溢れた感情は、きっと以前の"私"が"僕"だった頃にも大切な存在だったことを表していたのだろう。
碇シンジにとって大切だった人は、"私"にとっても大切な人になった。
少し低めの体温に触れる度、感じる冷たい肌の温もりはいつも心地よかった。
普段表情を作らない顔が綻ぶのを見るのがとても嬉しかった。
大切な人は、もっと大切な人になっていった。

アスカはレイとはまた違った関係だった。
思っていた通りにプライドの高い人。
けれど、思っていなかったほどに面倒見の良い人でもあった。
姉と言うものがいたら、きっとあんな感じなのだろう。
お節介で、意地っ張りで、でも、いつも気遣ってくれていた。
ずっと信じられなかったけど、私達は、確かにあの部屋で一緒に暮らしていた。
私達は、確かに、友達だった。

他にも、いろいろな事を見て、聴いて、感じた。
たった一年だなんて信じられないほど、新鮮で濃密な時間。
いや、きっとそうで無ければ、"私"は"私"でいられなかったのだ。
何もかもが壊れて、消えて、捨ててしまった、そんな彼女が生きていくには、これだけの密度の時間が必要だったのだ。

でも。

それと引き換えにする様に、彼女はボロボロになっていった。
心が満たされていくのと同時に、肉体は壊れていった。
使徒との戦いの度、どこかが傷つく。
やがてその傷は取り返しがつかない程に酷い物となって、歩く事すら難しくなって。
それでも、彼女は普段通りに振る舞い続けた。
そうやって壊れていくのが当たり前と受け入れているかの様に。

「本当は怖くて仕方がなかったくせに、無理しちゃって」

"私"の心の中では、いつだって自分が壊れる事に対する恐怖が渦巻いてた。
ただ、それを上回る恐怖と、ある種の諦観がその恐れから目を背けさせていた。
誰もいなくなる、誰もいない世界への恐怖。
自分の存在に価値を見出せない価値観。
潜在的には、逃げ出してしまった自分への罰だと捉えている部分もあったかもしれない。
今そこに生きている"私"の存在を霞ませる、終わってしまった過去。
その過去がまた、彼女を生き急がせてもいた。

貪欲なくらいに積極的に生きようとして、そのくせ生き続ける事をあっさり放棄する。
そんな奇妙な二面性が創り出した沈んだ鈍い輝き。
死と生が溶け合った危険な光に気付いた人はどれだけいただろうか。

アスカはその危うさを守るべき対象として見ていた。
相田くんはきっとそれをファインダー越しに見つめていた。
綾波さんはそこに、自分自身を見ていた。

その危うすぎる生き方が、私じゃあり得なかったみんなとの関係を築いて、"私"を生かし続けたのだ。
彼らと、彼女達との絆が、今にも崩れそうな彼女の心を繋ぎ止め、縫い合わせ、支えてくれたから、"私"は生き続けられたのだ。
そう言う意味では世界は私が思うより優しいのかもしれなかった。

「でも、だからこそ耐え切れなかった。絆が壊れてしまう事に」

戦う度に大切な物が増えていき、大切な物を守るために更に戦う。
そんな終わりのない拡大が何時までも続く訳はなかった。
守るべき物と戦わなくてはならなくなった時、彼女はなにも出来なかった。
そして彼女を守ろうとする別の絆が、彼女を死よりも辛い現実に突き落としてしまった。

エヴァと一体化しているといっていい状態のまま、エヴァの手は彼女の意志を無視して大切な物の一つを握り潰した。
あの感触、空缶を潰す様にひしゃげたエントリープラグの薄っぺらな金属の硬さが、何時までも残り続けている。
それが潰れた時の音は、彼女の心が壊れる音でもあった。
少しずつ形を整えてきた心の殻は呆気なく砕け散って、ついに私を庇う事も出来なくなって。

そこからは私も知っている出来事だ。
突然現実に放りだされた私が、その現実を受け入れられずもがいている間、彼女もまたもがいていた。
私と交わした約束を守ろうと、消えてしまいそうな自分を必死に繋ぎとめて。
ただひたすら、自分自身に課した一つの言葉を、皆を守るのだと言う決意のみを拠り所に、既に壊れた心を更に粉々にしながら、戦い続けた。

これまで自分を支えてくれた絆をくれた人々の為なら、彼女にはなんだって出来た。
死を否定せず、生きることすら望まずに、小さな手で抱えきれる筈のない物を支え続けて。
その結果が今の彼女であり、そしてまた、今の私でもあった。

「……あなたのおかげで、きっと私はまだ戦えてる。あなたのおかげで皆まだ生きてるんだと思う。本当にあなたには感謝してる。でも」

記憶の世界で、今まさに消えゆこうとしている彼女の幻影を抱きしめる。

「でも、あなた一つ忘れてる。とても大切な事。君が守りたいっていってる誰もが、君の事を守りたいって思ってる事。君がいなくなったら皆悲しむって事。あなたは自分になんて価値が無いと思ってるかもしれない。けどね、そうじゃない、そんな訳ない」

形を失い、辺りに混ざって消えてしまいそうな朧げな存在を、それでも私の手の中に集めて、消えないように、ここに彼女がいるのだと、ヒトの形を抱きしめて。
語りかける声はほとんど叫び声になっていた。

「あなたはひとりなんかじゃないよ。アスカも、レイも、鈴原君も、あなたを守りたいって、そう言って必死に戦ってる。渚君もそんな私達を助けてくれてる。ミサトさんは無茶をしてでも私達を守ってくれてる。……父さんだって、戦ってる、戦ってくれてる。私達の為に。きっと私の知らない誰かだって、戦ってくれてる。もしかしたらあなただって知らない人すら」

彼女の作ってきた絆、その中で私が引き継いだ絆、まだ知らない絆、そして、今の私の絆。
全部全部繋がって、そうして今の私がいる。世界がある。
そして、あなたがいる。

お願いだから、消えないで。
一緒に過ごす日々の柔らかさを忘れないで。
こうやって触れ合う肌の暖かさを思い出して。
現実のあなたの居場所を否定なんてしないで。
生きる事を諦めないで。

「もどって、きて。……お願い!」

叫んだ声は掠れて、溜め切れなくなった涙が頬を伝っていく。
彼女と触れている筈の肌から感じる冷たさに恐怖しながら、それでも、だからこそさらに強く抱きしめて。

この人が寒いと言うなら、私の熱くらいいくらでも分けてあげられる。
この人が寂しいと言うなら、ずっとそばにいてあげられる。
だってこの人は私なんだから。
何処かで別の道を歩んだだけの、もしかしたら私自身だってそうなっていたかもしれない存在だから。
私は、私を救いたい、そう思っているから。

けど、触れた部分の感覚は曖昧になり、痺れたように何も感じなくなって、私の体も凍えるように冷たくなって。
体の奥底からの震えを感じて、もう駄目なのか、そう思った時。

「あ……」

私の頭をそっと撫でる、弱々しい感覚。
同時に、彼女の頬にこすりつける様にしていた私の頬に、自分の物とは違う冷たい液体が伝っていく。

その頬が、小さく小さく、ささやかに震える声を感じる。
肌に直接伝わった一言。
確かに聞こえた「ありがとう」と言う言葉。

それを認識した時、私は体の芯から震えてた。
恐怖でじゃない、喜びに全身が打ち震えてた。

「よかった。本当によかった……」

ひとしきり涙を流し、確かに存在してる彼女を腕の中でしっかりと感じて。
改めて彼女の顔を覗き込んだ。
覗き返された黒と紅の瞳。
記憶の世界とそっくりそのままの深く沈んだ虹彩の奥には、記憶にはなかった柔らかな光がかすかに滲んでいた。

「今度はもう諦めないで。もう絶対生きる事を諦めないって、約束して」
「うん、さっきも、聞こえて……たよ。……ごめんね」
「ううん、いいの。あなたもやっぱり私何だから、私もやっぱりあなたなんだから」
「うん……、ごめん」

何度も謝る彼女、その心の内も全部一緒に聞こえてた。
そこにあったのは確かに私自身と同じ存在、自分の価値がわからずに、自分が好きになれずに、自分に正直にもなれない存在だった。
世界を無価値と感じて、誰も好きになれず、何もかも嘘で出来てるんだと納得しようとしていた私と、本質的には何も違わない、価値観を持ち得ない悲しい心。

私が彼女の事を知ったように、彼女もまた私を知った。
私が彼女の世界に入り込み、その目で見た物、聞いた物、感じた物の全てを体験していた時、彼女もまた、私の過ごしてきた空間を、私の生きてきた時間を、私が積み重ねてきた記憶を、自分の事のように見て、聞いて、感じてきたのだった。

自分の記憶ですり潰されそうだった彼女は、私を知って、私の形を受け入れる事でなんとか自分を保つ事が出来たのだった。
あれほど濃密で苛烈な一年の記憶を私の14年で支えられるだなどと思えなかったけれど、それでもそれは彼女にとって持ち得なかった14年で、この場に踏みとどまるだけの意味を与える事が出来たらしかった。

だから彼女は謝るのだ。
人の心の奥底、記憶の隅々までを知ってしまって、それに縋ってしまって、そんな事で謝っているのだ。
きっと、私と同じに。
そんな彼女をただ愛おしく思い、私はいま確かにそこにある彼女の体をしっかりと抱きしめ続けていた。