第弐話
使徒、再び


『本日12時30分、東海地方を中心とした、関東地方全域に特別非常事態宣言が発令されました。住民の方々は速やかに指定のシェルターに避難して下さい』

駅のホームは既に誰もいない。
ただ辺り一帯に機械的な声でアナウンスが流れている。
澄み渡った青空の上に、銀色に輝く戦闘機が描く一筋の白線。

空を見上げ佇む一人の少年。
その容姿は中世的な顔立ちに、後ろで一つに束ねた黒い長髪に黒い瞳。
14歳になった碇シンジがそこに居た。

ふと視線を落とすとアスファルトの上で蜃気楼のように頼りなく立ち尽くし、シンジを見ている蒼銀の髪に紅い瞳の少女。
シンジはその少女を見つけ眼を見開く。

「どう言う事?」
(・・・きっと起動実験が失敗したの)

「まさか?!もう代わりは居ないんだよ?」
(・・・代りが居ないから尚更だったのかも知れない)

レイの推測通り、ゲンドウは何故か自分にあまり縋らない一人目のレイに楔を打ち込もうとしたのだ。
代りも居ないため、自分しか見ていない自分の命令だけを聴く存在でないと計画に支障があるからだ。
ゲンドウ自身それ程、大きな事故になるとは思って居なかった。
ただ、自分が最初に駆付けると言うシチュエーションを演じるためだけにオートイジェクションを作動する様に細工していたのだ。

その結果、エントリープラグが実験室の天井と激突し、墜落する事になって中ではシェイカーの如く掻き回される事になるとは考えてもいなかった。

その時、強風がシンジを襲う。
「くっ」

再び視線を戻した時には少女の姿は掻き消えていた。
そこへ一台の車が横滑りで現れる。

「おまたせ!シンジ君、急いで乗って頂戴」
「はい、リツコさん」



「15年ぶりだな」
「・・・ああ、間違いない、使徒だ」

前方の巨大なスクリーンに映し出される戦闘を見ながら白髪の男(冬月コウゾウ)と顎鬚にサングラスの男(碇ゲンドウ)は、意味不明な会話を行っている。


「何故だ!?全弾直撃の筈だ!」
そんな話しをしているとは知らずに現在戦闘指揮を執っているらしき壮年の軍人達は喚いていた。


「やはりATフィールドかね?」
「・・・ああ、使徒に対して通常兵器は役に立たんよ」
冬月とゲンドウは、尚も理解不能な会話を行っていた。


スクリーンに映し出されているのは、ミサイル等の攻撃を物ともせず侵攻している物体。
その容姿は二本の手と二本の足があり二足歩行を行っているも、とても人類とは似ても似つかない。

突然の閃光にスクリーンがホワイトアウトする。

「見たかね? これが我々の切り札、NN地雷の威力だよ」
「これで君の新兵器の出番は二度と無い」

NN地雷が爆発した直後の発令所では、壮年の軍人達が顎鬚にサングラスの男、碇ゲンドウに高笑いを浴びせていた。

「電波障害のため、目標確認まで暫くお待ち下さい!!」
「あの爆発だ、ケリは付いている!!」

忠実に任務をこなすオペレーターに「そんなことは無駄だ」とでも言わんばかりに、軍人達は言った。
彼等は自分達の兵器に絶大な自信と信頼を抱いていた。

確かに、それは今まで常に有効であったのだから当然であった。

「ば、爆心地付近にエネルギー反応!!」
「映像、出ます!!」

「我々の切り札が!!」
「馬鹿な!? 街を一つ犠牲にしたんだぞ!?」

「なんて奴だ!!」
「化け物め!!」


「予定通り自己回復中か」
「・・・ああ、そうでなければ単独兵器として役に立たんよ」

「ほぅ、機能増幅まで可能か」
「・・・おまけに知恵までついたようだな」
「これでは、再度侵攻は時間の問題だな」
冬月と会話していたゲンドウは、あたかもシナリオ通りとニヤリと笑いを浮かべた。


信じられない驚愕の叫びをあげる軍人達に冷や水を浴びせるように、彼等の机の電話が突然鳴り響く。

「――はっ、わかっております。しかし――はいっ、了解しました」

軍人達の態度の変わり様から見て、その電話は上層部からの命令であったのだろう。
忌々しげに睨みつけながら、彼等は命令を全うすべくゲンドウに告げた。

「碇君、総司令部からの通達だよ。只今より本作戦の指揮権は君に移った。お手並み拝見させてもらおう」
「我々国連軍の所有兵器が目標に対し無効であった事は認めよう。だが碇君!君なら勝てるのかね?」

悔しさに歯噛みする軍人達の言葉に、ゲンドウは言葉少なに告げる。

「そのためのNERVです」
右手で直したサングラスの奥の目は、不敵な自信に満ち溢れていた。



「あらあら、もうNN地雷を使ったのね」
車をかなりのスピードで走らせているのに、それを追い越す様に飛んでくる小石等を見てリツコは事もなげに言い放つ。

シンジを乗せ、一目散に戦線を離脱しているため、車が引っ繰り返る程の影響は受けていない。

「それより、リツコさん零号機の起動実験、失敗したんですか?」
その言葉に心底悔しそうな顔をするリツコ。

「ごめんなさい、チェックはしていたのだけどまんまと司令に遣られたわ。どうして解ったの?」
「さっきレイの幻影を見ました。多分、意識だけ飛んで来たのでしょう」

「そう・・・」
俄かに信じられない事だが、リツコも慣れていた。

シンジはレイに逢ってから度々レイの所へ訪れていた。
それをリツコに見つかったのが、リツコとシンジの出会いであった。

当時、リツコはまだ大学生であり、そんな幼子二人を責める様な事はせず、3人の秘密と言う事で内緒にしていたのである。

この10年、シンジは何度もレイに逢いに来ており、レイもそれを楽しみにするようになっていた。
唯一の同年代の友達だったのである。
そしてこれがレイがゲンドウにあまり縋らなくなっている原因でもあった。

リツコがNERVに入った時、レイはリツコを敬遠していた。
赤木ナオコの娘としてNERVに来訪しているうちは優しいお姉さんであった。
しかし、いざNERVの職員、しかも骨幹の開発者となるとレイの事を報告する義務が出来る。
レイはシンジの事を報告されるかも知れないと恐れていたのだ。

最初、リツコはレイに何故敬遠されているのか解らなかった。
もしやと思い、その事を告げるとレイの表情が変わったのだ。
リツコはその事は口外しないとレイに誓った。
それ以来、リツコはレイと仲が良く、シンジとも何度も面識があったのだ。
故に、この事は今でも3人の秘密であった。

そしてシンジは時折、今の科学で説明できない事を言うのであった。
その中でシンジは徐々に、赤木親子を懐柔していった。

従って、零号機の起動実験も気をつけるようには言われていたのだ。
シンジも代わりが居ない事だし無茶な事はしないだろうと余り強くは言っていなかったのだが、実際失敗している事を知り、後悔していた。

一方ゲンドウと冬月は、素体ならびにリリス本体が消えた事でかなり狼狽し、計画の変更を余儀なくされていた。

この当時から考えられていたダミープラグ、その元が無くなってしまった。
代替案として出てきたのはナオコが推奨したダミーシステムであり、その開発のためにリツコもNERVに向かえ入れられた。
当然、ナオコ推奨の案を実現するためには、ナオコを陥れて殺す事もできなかったのである。

ゲンドウ達はリリスや素体は存在が耐え切れずLCLに帰ったと結論付けていた。
元々レイはリリスの細胞と碇ユイの細胞を掛け合わせ培養した物だったのである。
それはゲンドウがエヴァにシンクロできる人造人間を作り出そうとする禁断の行為であった。
しかし、その素体に魂が宿ったのである。
自我を持ったと言うべきかも知れない。
それが一人目の綾波レイであったのだ。

リツコがシンジが碇シンジと言う司令の息子である事を知ったのは、つい最近である。
ナオコが存続している今、リツコはゲンドウに犯されてもいないし、当然ゲンドウに懐柔もされていない。
従ってサードチルドレンの話しを聞かされ資料を見て初めて知ったのだ。

リツコが作戦課長の葛城ミサトが迎えに行くと言ったのを押しのけて自分が行くと言い出したのもそのためである。



「UNもご退散か・・・どうする?碇」
「・・・初号機を起動させる」

「パイロットが居ないぞ?」
「問題ない・・・たった今予備が届いた」

(息子を予備呼ばわりかユイ君が聞いたら何と言うかな・・・)

「では後を頼む」
ゲンドウは、そう言って下へ降りる。

「10年ぶりの対面か」

「副司令、目標が再び移動を開始しました」
「よし、総員第一種戦闘配置」

冬月は、ゲンドウの代わりに指示を出した。



「着いたわ。ここよ」
「真っ暗ですね・・・」

「今、明かりを点けるわ」
リツコの声と共にパチッと言う音がして明かりが灯る。

「ひっ!」
リツコはそこに立つ般若の様な顔をした、赤いジャケットを着た女性に驚いた。

「み、ミサトっ!ここで何してるの?」
「この子が例の男の子ね」
リツコの問いには答えず値踏みするようにシンジを見るミサト。

「久しぶりだな、シンジ」
そこに自分のシナリオを崩されて機嫌の悪いゲンドウが声を掛けた。

ゲンドウのシナリオでは、ここでシンジがエヴァンゲリオン初号機を見て「これが父の仕事ですか?」とでも言ったところで「そうだ!」と言う登場を練っていたのだ。

10年も逢っていない息子に父の偉大さを知らしめるために。

しかし、ミサトのイレギュラーな行動のため、シンジが驚く暇もエヴァをリツコが説明する間もなくなってしまった。
しかたなしに、この場をシナリオ通りに進めるためにゲンドウは声を発したのだ。

「どなたでしたでしょうか?」
「なっ!貴方のお父さんでしょうがっ!」
シンジの言葉に司令の息子と言うリツコから聞いた一部の言葉しか理解していなかったミサトが叫ぶ。

「あぁすみません。10年も会ってなかったので顔も覚えていないんですよ」
「へ?」
ミサトは素っ頓狂な声をあげた。

目の前に居るのは14歳の少年だ。
10年も会ってないと言う事は4歳の時から会ってない事になる。
しかも人は10年も経てば、その容姿はかなり変るだろう。
顔を覚えていなくて当然と言えば当然である。

シンジが10年もゲンドウと会っていなかったのは、シンジが一度もユイの墓参りに行かなかったからだ。
忘れていたとも言う。
独りで組織と対抗する気はシンジには毛頭ない。
ただ、シンジの中のレイの願いを叶える事。
そのために色々下準備を行っていたため、ユイの墓参りなど全く忘れていたのだ。

「フッ・・・出撃」
サングラスを中指で押し上げ、何の脈略もなくゲンドウが言い放つ。

「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?まさか、初号機を使うつもりっ!?」
それでもミサトはゲンドウの言葉に反応して喚く。

自分が既にシンジが乗る事を前提に喚いている矛盾に気がつきもしないで。

「他に方法はないわ」
「だってパイロットがいないわよ?」
「さっき着いたわ」
「・・・マジなの?」
そして今気が付いた様な科白。

「碇シンジ君。あなたが乗るのよ」
「待ってください司令!綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに七ヶ月もかかったんです!今来たばかりのシンジ君にはとても無理です!」
ミサトは先程とは打って変わって、さも当たり前の事を言う。

シンジの返事も待たずに。

「座っていればいいわ。それ以上は望みません」

リツコが言うとゲンドウが高圧的に続けた。

「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」
漸くシナリオ通りに話しが進み出してゲンドウは機嫌が少し治ったのかニヤリと笑いを浮かべた。
黙っているシンジを、父の偉大さに怯えているのだと勘違いして。

本来ならこの辺りで乗るつもりであったシンジだが、今はじっと待っている。
レイが心配なのだ。
一刻も早くレイを楽にしてやりたいのだが、このままエヴァに乗るとレイに逢うまでに時間が掛かる。

シンジはゲンドウがレイを呼び出すのを待った。


「冬月っレイを起こせ!」
『使えるのかね?』
「死んでいるわけではない」


「もういちど初号機のシステムをレイに書き換えて、再起動よ!」
リツコが指示を出している。

現状システムをレイに書き換える必要はない。
シンジのデータなど無いのだから元々レイのデータなのだ。
しかし、リツコは敢えてゲンドウのシナリオに沿った行動を取る。
リツコもシンジが乗ると言い出さない事に疑問を感じていたが、何か考えがあるのだろうとの判断だ。

「シンジ君それでいいの?何をしにここまで来たの?逃げちゃ駄目よ!シンジ君、お父さんから、何よりも自分からっ!」
ミサトがシンジを説得に掛かった。

この場では唯一シナリオを知らず道化を演じさせられているミサト。
それは、演出者の期待に応えた行動であった。

先程「無理だ」と言った事など棚の上に上げて。
それが全く的外れな滑稽な科白であることに気付く事もなく。

その時、ケイジの扉が開き白衣の人間達に押されてストレッチャーが入ってくる。

「レイ、予備が使えなくなった。もう一度だ」
「はい・・・くっ」
小さな呻き声を上げながら起きあがろうとするレイ。

シンジはレイの方を向き辛そうな表情を浮かべた。

「いつまでそこに居る!お前など必要ない!さっさと帰れ! 人類の存亡をかけた戦いに臆病者は不要だっ!!」

「乗りなさいシンジ君!!シンジ君が乗らなければ、あの娘が乗る事になるのよ!恥ずかしくないのっ?!」
シンジの肩を掴んで説得するミサト。

「あの娘を乗せようとしているのは貴方達です。僕じゃないでしょ?それに僕は乗らないなんて一言も言ってませんよ」
シンジはそんなミサトに侮蔑の眼を向けるとレイの元へ歩み寄った。

ミサトはシンジの言った言葉を理解できず、固まっている。

リツコに案内された事で道にも迷わず、まだ使徒が攻撃をしかけて来るまでには時間があった。

「ごめんよ、僕が迂闊だったために怪我を負わせてしまった」
シンジがレイを支えなが小声で呟く。

「・・・くっシンジ?」
その見知った声に苦しいながらも瞑っていた眼を僅かに開き確認するレイ。

一人目のレイはシンジの事を「シンジ」と呼ぶ。
最初にシンジが自己紹介する時に名前しか言わなかったためだ。
尚かつ幼かったレイは「君」とか敬称を付ける事を覚えていなかった。

「君の怪我を治すために僕の中の綾波に力を貸して貰う、受け入れてくれる?」
コクンと頷くレイ。

このレイはシンジの言う事に疑いを持たない。
10年間、自分に普通に接してきてくれた唯一の同年代の友人であり、出会いの時から自分に危害を与える者では無いと確信している。
未だ本人は気付いていないが、恋慕も抱いている。
恋心と言う意味ではシンジの中のレイよりも強いかもしれない。

シンジはそっとレイの唇に口吻る。
レイは瞬間、眼を見開くも拒絶はしない。
(ごめん綾波、頼んだよ)
(・・・コクン)

シンジの中のレイが一人目のレイに入り、そのリリスの力を持ってレイを治癒する。
暖かい感覚がレイの中に広がりレイは眠りについた。
シンジはそっとレイをストレッチャーに寝かせるとリツコに目配せをする。

頷くリツコ。

ゲンドウとミサトは何が起きているのか理解できないで居る。
ゲンドウ達の方からは、シンジが何をしているのか見えては居ないのだ。

「綾波は治癒しました。ばれないようにお願いします」
シンジはリツコに小声で伝える。

その言葉にリツコは頷くとインタフェースをシンジに渡す。
ここでリツコはシンジの意図を漸く理解した。

リツコから渡されたインタフェースを装備しながらリツコと共にエントリープラグに向かうシンジ。

その姿を見て、シンジが「乗る」と言ったのだろうとニヤリと笑いを浮かべるゲンドウ。
そしてゲンドウと同じ解釈を行い、ミサトは発令所に駆けて行った。



発令所では起動シーケンスが進んでいる。
「エントリープラグ挿入」
「プラグ固定終了」
「第一次接触開始」
「LCL注入」

シンジは眼を瞑り集中しているようだ。

「彼、驚かないわね」
「ちゃんと説明したもの」
ミサトの疑問にリツコはあっけなく答える。

「説明されたからって簡単に受け入れられる物?」
「ミサト!いい加減、邪魔しないで黙ってて!」
先般、零号機の起動実験で暴走してしまい、慎重に行っている起動シーケンスなのに、余計な事ばかり言って邪魔にしかならないミサトにリツコは頭にきていた。

そんなリツコの叱責に少しだけへこむミサト。
大学時代からの友人であるがミサトには他に友人と呼べる人間が居ない。
だから唯一の友人であるリツコに怒られるのは堪えるのだ。

ミサトは誰にでもフレンドリーに接するが、それが上辺だけであるが故に友達と呼べる付き合いには至らない。
逆にリツコは、常に「赤木ナオコの娘」と言う偏見で見られていたため、そんな事を歯牙にも掛けないミサトの態度が心地良かったのだ。
それでミサトと友達となってしまったリツコは、もしかしたら不幸だったのかもしれない。

「主電源接続」
「全回路動力伝達」
「第2次コンタクト開始」
「思考形態は日本語を基礎原則としてフィックス!」
「A10神経接続異常なし」
「初期コンタクト全て異常なし」
「双方向回線開きます」

そこまで行って報告が途切れた。
「どうしたの?マヤ、続けなさい」

呆然と目の前のモニタを見つめていたショートカットで黒髪の女性、伊吹マヤは、リツコの声に我に返り報告を続ける。

「あっはい、あ、あの・・・」
「「?」」
「シンクロ率・・・76.67%」

「そ、そんな・・・訓練もプラグスーツもなしに、イキナリ・・・有り得ないわ」

リツコはモニター計測器をみて驚く。
「すごいわ!シンクロ誤差0.3%以内よ!」

「ハーモニクス、全て正常位置。暴走、ありません!」
今度はマヤも躊躇なく報告する。


「碇・・・これはシナリオにはないぞ」
「予想以上にシンジが母親を求めていただけだ」
「そうだといいがな」
「・・・問題ない」
ゲンドウは何とも思ってないようだが、冬月は異常な事態を懸念していた。


「いけるわ」
リツコは、ミサトの方を振り向いて暗に「ここから先は貴女の仕事よ」と示唆する。

「エヴァンゲリオン初号機!発進準備!!」
それに応えたミサトの号令が響き渡った。

『第一ロックボルト解除!』
『解除確認!アンビリカルブリッジ移動開始!』
『第2ロックボルト解除!』
『第一拘束具を除去!』
『同じく第2拘束具を除去!』
『1番から15番までの安全装置を解除!』

『内部電源充電完了!』
『外部電源用コンセント異常なし!』

「EVA初号機射出口へ!」
何度も行われたシミュレート通りの手順に頷き、ミサトは次ぎの号令を発する。

ミサトの号令と共に射出口へ移動していく初号機。

『5番ゲートスタンバイ!』
『進路クリア!オールグリーン!』

「発進準備完了!」
技術部最高責任者であるリツコの最終確認が出される。

「了解!」
ミサトが声を発し、何かの決意を固める。

「かまいませんね?」
NERV総司令であるゲンドウの方を向き確認するミサト。

「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」
机に肘を付き顔の前で手を組んだポーズで言うゲンドウ。

「エヴァンゲリオン初号機発進!!」
ミサトの勇ましい声と共に射出口固定台ごと地上に打ち上げられる初号機。

「くっ!」
それまで眼を瞑り沈黙を保っていたが、その凄まじいスピードによるGの為にたまらず呻くシンジ。

地上に出るエヴァンゲリオン初号機。

目前に見える使徒の姿。その姿は地下のNERV発令所にも送られる。

激しい衝撃とともに、シンジの体は地表へと押し出された。

「シンジ君。準備はいいわね?」
「・・・何も聞いてませんが何をどう準備するんですか?」
敵の前に放り出す前に、何も伝えず、前に出してから「準備はいいわね」って何をどう準備するんだとシンジも少し怒気を含んでいた。

「なっ?!」
ミサトが何か喚きかけた所で遮る様に報告が入る。

『目標は、最終防衛ラインに侵入しました』
モニターに映る、第三新東京市街へと侵入する使徒の姿が見える。

「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!!」
全く何の説明もせず、敵の眼の前に出すミサト。

「シンジ君。死なないで」
号令の後、ミサトが呟くが、それは自分を謀る言葉でしかなかった。

何も教えず、何も援護せず、ただ、決戦兵器に乗せ敵の眼の前に射出するのみ。
動かせるかどうかも解らなかった物に乗せ、人類最大の武器と思われていたNN地雷でも殲滅できない化け物の前に放り出しておいて何を言うのだろうか。

「あんたまだ生きてるんでしょ!だったらしっかり生きなさい!」
その言葉がシンジの中にリフレインする。

「何もしなかったら私許さないからね!」
頭の中に響いてくる声。

こんな女に自分は家族を与えて貰ったと思っていたのかと無償に怒りが込み上げてくるシンジ。
その思いは行動に出る。

『うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!』
叫んだかと思うと一瞬で使徒との間合いを詰めると一気に貫手を使徒のコアに指す初号機。

誰もその行動に口を挟む隙がなかった。

「パイロットの心拍数、急激に上昇!」
マヤの報告にざわめく発令所。

パシャン

「パ、パターン青消滅、し、使徒消滅しました」
ロン毛のオペレータ青葉シゲルの報告に静まりかえる発令所。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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