第七話
壊れ出す関係


「以上が戦況の報告です。結果としてシンジ君の取った行動により我々はサードインパクトを回避できた物と判断できます」

司令室でゲンドウと冬月を前に、先の戦闘状況を報告しているリツコ。
その頭には包帯が巻かれ、左腕は三角巾で吊られている。

発令所の殆どの人間がなんらかの形で負傷していた。

「ご苦労さんだったね、レイが無事だったのは不幸中の幸いだったな」
「・・・あぁ」
戦果の功労者であるシンジではなくレイの安否を気遣う二人に侮蔑の眼差しを向けるリツコ。

「二人の処遇は如何致しましょうか?」
専属機が無くなってしまった二人をチルドレンのままとするのか、登録を抹消するのかと言う質問である。

「・・・現状維持だ」
それは登録を抹消するとレイを保護しておく理由がなくなるため。

「二人は今後、他組織から狙われるかもしれないからね、今後もチルドレンとしてNERVで保護する必要があるんだよ」
それは詭弁、建前である。

この二人に取ってシンジは既に用済みであった。
初号機の無い今、この二人に取ってシンジがどうなろうが知った事ではない。
体面上、レイと同じとする必要があるだけである。

「葛城一尉の処遇は?」
「・・・現状維持だ」

最早、何が壊されようが構わない。
むちゃくちゃな作戦と指揮であろうが使徒殲滅さえ行えれば良いのである。
老人達の庇護にある彼女を自分達の命運を賭けてまで排除する必要は無くなったのである。

「葛城一尉は零号機のエントリープラグ緊急射出を止めました。私はそれを無視して緊急射出を行いました。それでは私の処遇は?」
「・・・現状維持だ」

全くの無策。
リツコはほとほと上層部二人に愛想を尽かしていた。

「NERV本部の実働部隊、双子山に集結していた殆どの人員を失いました。補充はどうされますか?」
「・・・各支部から集める」

リツコが退室した後、二人は打って変わってドンヨリとした雰囲気を醸し出す。
リツコの手前、気丈に振る舞っていたが、初号機消滅は二人に未だ重い物を背負わせているのだ。

いや、この先何をすれば良いのかさえ解っていない。
リツコにはレイが生きていて良かったような事を言っていたが、それでさえ空元気だったのである。
本来は初号機こそが一番重要だったのだ。

本音ではミサトを八つ裂きにしてしまいたい程、怒りを抱えている。
しかし、それはゼーレの庇護により出来ない。

ゼーレはあくまで、セカンドインパクトの生き残りが人類補完計画に成す功績を信じているのだ。
そして、リツコを罰する事はミサトを増長させる事になる。
これ以上ミサトを増長させると何をしでかすか解った物ではない。

どちらも現状維持がゲンドウ達に出来る精一杯の抵抗だったのだ。

そこへ一本の直通電話が鳴り響いた。

怠惰な動きでそれを取るゲンドウ。

「また君に借りが出来たな」
『返すつもりもないんでしょ。で、どうです?例のものは。こっちで手、打ちましょうか?』

「いや。君の資料を見る限り、問題はなかろう」
『では、シナリオ通りに』

「気をつけたまえ」
『あなたこそ、気をつけた方がよろしいのでは?最近はまた、煩方もいらっしゃるようで』

「フッ・・・問題ない」
『そうですか・・・では』

電話を切ったゲンドウに冬月が一言話し掛ける。

「日重の件かね」
「・・・あぁ」

二人の意識など関係なく、時だけは全ての人間に平等に流れていく。

そして二人は再び重い空気に包まれて行った。
窓から差し込む光は以前より明るい光。

それは第伍使徒と初号機の爆発により大きく開いた穴から差し込まれる太陽の光であった。
自然の光は二人には眩しすぎる。
しかし、地下であるこの場所にこんな光が差し込む事など想定しておらず、ブラインド等は装備していなかった。



病院で眼を醒ますシンジ。

(ありがとう綾波)
(・・・・・)
フルフルと首を横に振っている感覚が伝わってくる。

シンジは苦笑すると、文字通り全身全霊を込めてレイの魂を包み込む。

(流石に今回は危なかったよ)


シンジはレイを護るため搭乗タラップでレイに口吻した時にシンジの中のレイを移したのだ。
従ってレイはリリスの力に護られ、殆ど負傷しなかった。

しかし、リリスの加護なく第伍使徒に突っ込んだシンジはボロボロだったのである。
使徒の爆発と初号機の爆発にエントリープラグをATフィールドで護るのが精一杯であった。

事実、エントリープラグから出て零号機のエントリープラグのハッチを開けた時、シンジは炭の様に真っ黒だったのである。

それを見たレイは慌ててシンジに口吻し、シンジの中のレイをシンジに戻した。
戻されたレイも慌ててシンジの治癒に専念したのである。

救護班が来るまでには、なんとか表層上を普通に戻す事が出来た。
その後、ゆっくりと体内を治癒していったのである。


(・・・少し疲れたわ)
(ありがとう、ゆっくり休んで)
(・・・えぇ)
シンジの代りにシンジの中のレイが眠りにつく。

シンジはベッドから降りると、レイの病室へと足を運んだ。

病室でレイはまだ寝ている。
特に酷い外傷は見あたらない。

シンジはレイの手を握り、そのままレイのベッドに俯せて眠ってしまった。


リツコがレイの病室へ訪れた時、シンジはレイに頭を撫でられて眠っていた。

「あらあら、貴方達は本当に仲が良いわね」
リツコはそんな二人を見て微笑む。

レイも微笑んでいた。

「あっリツコさん」
「お目覚め?」
ボーッとしているシンジ。

レイは少し不機嫌そうに頬を膨らませている。
もう少し頭を撫でていたかったのだろう。

「貴方達の処遇は現状維持だそうよ」
「そうですか」
「・・・自由にはなれないのね」

「あら?機体はないから実験も訓練もないし、NERVの加護下で自由と言う事よ」
「そうですね、今の時期では有る意味、最良かも知れない」
「・・・そうなの?」
レイがキョトンとする。

「うん、僕達を狙っている組織は多いからね」
そこに病院に似つかわしくないドタドタと言う音が近付いてくる。

バッと扉が開いたかと思うとNERVの制服にあちらこちら包帯を巻いた物体がシンジにぶつかって来た。

「シンジ君!レイちゃん!無事で良かったぁ〜!」
号泣しているマヤである。

「マヤさんもご無事でなによりです」
「シンジくぅん」
シンジに抱付いているマヤをレイは少し睨んでいるのだが、マヤもそんな事は気付かない。

そしていきなり今度はレイに抱付いた。
「本当に本当に無事で良かった」

暫くキョトンとするもレイは、今度はシンジではなく、マヤの頭を撫でている。

「マヤ?どっちが保護者だか解らないわよ」
「あっ先輩!あっす、すみません」
顔を真っ赤にするマヤ。

皆、包帯だらけだが、微笑み合い、束の間の安堵が流れていた。



耳をつんざく爆音が響く機内の中、一人の男が歩いている。
そして窓外側の席にいる、その機内でのたった一人の同乗者に声をかけた。

「便乗ついでに失礼。ここ、よろしいですか」

反応しないゲンドウに構わず、その隣に座る30も後半あたりの中国人らしき男。

「参号機、四号機の移籍と本部の修正予算、あっさり通りましたね」
「委員会も自分が生き残ることだけを考えている、そのための金はもう惜しむまい」

「使徒はもう現れない、というのが彼等の論拠でしたからね。もう一つ、朗報です。アメリカをのぞく全ての理事国がエヴァ6号機の予算を承認しました。アメリカも時間の問題でしょう。失業者アレルギーですからね、あの国」

「君の国は?」

「8号機から、建造に参加します。第2次整備計画はまだ生きていますから。ただパイロットが見つかっていない、という問題はありますが」

「使徒は再び現れた。我々の道は、彼等を倒すしかあるまい」
「私も、セカンド・インパクトの二の舞はもうごめんですからね」

焦燥感に打ち拉がれながらも遣ることは遣っていたらしい。
ゲンドウのその眼は何を見ているのか。



大型輸送ヘリの中、痛々しい姿のリツコとミサトが席に腰掛けている。
ミサトも右腕を三角巾で吊っており、顔には大きい絆創膏が貼られている。

ミニスカートから除く太腿や脹脛にも包帯がまかれており、全身打撲と言う感じだ。

ミサトもリツコも反対側の窓から外を眺めているだけで話そうともしない。

パイロットもそんな二人の雰囲気に重たい物を感じていた。

リツコは先のエントリープラグ緊急射出をミサトが止めた事を許す気がない。
ミサトはそれは戦略上やむを得ない行為だと思っている。

従ってミサトはシンジ達の病室にすら近付けない。
一度、向かっている所でリツコとマヤにはち合わせし、「殺そうとした人間のお見舞いに行くつもり?」と言われ、マヤからも睨付けられ、すごすごと退散したのだ。



記念パーティー会場では、先程から延々とJA(ジェットアローン)に関する説明がされている。
会場真ん中に置かれたネルフの招待席、他の席と違い料理は無く、真ん中にビールが数本置かれているだけだった。
更にその大きなテーブルを鋏んで両側にミサトとリツコは位置していた。

嫌がらせを仕掛けた側も、二人の雰囲気に固唾を飲む。

「質問を宜しいですか?」
「これは、これは、御高名な赤木リツコ博士、どうぞ」

「先程の説明ですと、内燃機関を内蔵とありますが」
「ええ、本機の大きな特徴です。連続150日間の作戦行動が保証されております」

「しかし、格闘戦を前提とした陸戦兵器にリアクターを内蔵することは、安全性の点から見てもリスクが大きすぎると思われますが?」
「5分も動けない決戦兵器よりは、より役に立つと思いますよ」

「では、NN地雷の直撃にも耐えられる構造と言う事で宜しいでしょうか?」
「そ、そんな衝撃は想定しておりません」

「先の戦闘で敵性体は加粒子砲を発射してきました。それに対抗するために日本中の電力が必要でしたが、その加粒子砲にも耐えられると?」
「その日本中の電力を徴収したために一体何人死んだと思っているんでしょうか?」
質問に質問で返す。

全く幼稚な対応であった。

「そうですね、NERV本部職員だけで4000人の命を犠牲にしました」
その数にざわめきが起こる。

ミサトもその言葉に顔を歪めた。

「そ、それはご愁傷様です」
司会を行っていた男も言葉を無くす。

某国で二万を超える死者を出そうとしているとか中傷の言葉を用意していたが、目の前にいる日本国内の施設で4000人と言う実際の数字は、予算から試算された数字より遙かに威力があったのだ。



控え室でもミサトとリツコに会話は無い。
リツコは黙ってパンフレットに火を付けるとゴミ箱に捨てた。



起動テストで暴走するJA。
為す術も無く見守る技術者達。

ミサトもエヴァの無い今、何も手は打てなかった。

「使える様なら徴収しようと思ってたけど、無駄だったわね」
帰り際にミサトが呟いたがリツコが返事をする事は無かった。



JAの記念パーティから戻ったリツコは大忙しであった。

4000人の人員受け入れ。
それが殆ど技術部なのである。

参号機と四号機が本部に来る事になった。
それに伴い、その技術者達も一緒に来る事になったのだ。
整備班から開発部から丸ごとである。

ゲンドウらしい丸ごとむしり取った形である。
当然、各支部は反対したが、では、1000人足らずの職員にエヴァも無いまま使徒に備えて何ができるのかと問われ、皆、沈黙してしまった。
更に、今回の損害は支部が兵力や人員を出し渋った結果であるとまで言ったのである。

そしてコード707、チルドレン候補の処遇である。
他のクラスに居るNERV職員の子供達は、親が死亡した事で親戚等に引き取られて行った。
しかし、チルドレン候補達は元々片親であり、親戚に引き取らせるとチルドレンとして採用する際に手間である。
そのためのコード707、第一中学の2−Aに集められていたのだ。

つまり保護者の居なくなった2−Aの生徒達をNERVで面倒を見る事になってしまったのである。

これにリツコは頭を悩ませていた。
2−Aだけならまだ、何とかなる。
しかし、兄弟の居る者も居るのだ。

2−Aだけと言う訳に行かない。
そして2−A以外にも両親がNERV職員で一気に両親を失った子供も居るのだ。

「母さん、早く帰ってきて」
リツコには珍しい泣き言を呟いていた。



苦肉の策でリツコは施設を用意した。

マヤに頼んで生活課と交渉し、設備を確保。
学校関係から保母や、先生の資格を持っている者を紹介してもらい、運営に当たらせた。

表向きは殉職したNERV職員の子供達で引き取り手の無い者全員とした。
2−Aに由来のあるものだけにする理由がゲンドウにも思いつかなかったためだ。

そしてこれが、後に大問題を起こす種になることなど、今のリツコには知る由も無かった。

「やっぱシンジと綾波はおらんのぉ」
「へん!パイロット様だから優遇されてるんだろ?」
トウジとケンスケである。

「何言ってるのよ!綾波さんと碇君は入院しているのよ!」
ヒカリである。

委員長であるヒカリは、この施設に入る事が連絡の来た時に、二人の事も聞いていたのだ。

「だから奴らが作戦失敗したからこんな事になったんだろ?俺がエヴァに乗ってればこんな事にはならなかったのに」
「アホか己は!また何も知らんと、勝手な情報流す気か?!いっぺん殺したろか」

「わっ冗談だよ冗談、本気にするなよ」
しかし、ケンスケは本気でそう思っていた。

そしてシンジとレイが仲が良いのはパイロット同士だからで、自分がパイロットならレイの隣には自分が居るんだと常に妄想していたのである。
当然、英雄願望の妄想であるが故に負ける事はない、不敗のヒーローである。

ケンスケの場合、更にモテモテになり、ハーレム状態まで妄想は膨らんでいた。

「流石、委員長やのぉ、これからは寝食も共にや、まぁよろしゅう頼むわ」
「す、鈴原・・・」
何故か顔を真っ赤に染めるヒカリ。

「なんや委員長、具合悪いんちゃうか?顔赤いで?」
「な、なんでもないわよ」
ヒカリは恥ずかしくて走って去っていく。

「どないしたんやろ?委員長」
「全くトウジも鈍感だよな」
知らぬはトウジばかりなりであった。



寝る暇もなく働いているリツコのところに暇そうにミサトが久しぶりにやって来た。

「何の用かしら?私は忙しいの。用が無いなら出て行って頂戴」
取り付く島も無いリツコの言葉。

「うっ!そろそろ許して貰えないかなぁ〜なんて思って来たんだけど・・・」
いつもより神妙ではあるが、それでも真摯な態度とは到底受けとれないミサトの態度。

リツコはそんなミサトを無視して仕事を続けていた。
追い出されないのをいいことに、ミサトはその辺りにある書類を手に取る。

「第伍使徒孤児の受け入れ施設要綱?NERVは何時から慈善事業になったの?」
ミサトの見ているその書類を引ったくるリツコ。

「貴女の作戦の失敗により死亡した4000人の職員のご遺族の事よ?慈善事業なんて言葉がよく出てくるわね」
「なっ!私の作戦は成功したから使徒は殲滅できたんでしょ!?」

「貴女の作戦はレンジ外、超長距離射撃。一発目で打ち返された時点で瓦解しているわ」
「なっ!それでも使徒は殲滅したわ!」

「シンジ君の特攻でね、貴女の作戦じゃないわ」
「それはあの餓鬼が勝手に・・・」

「ミサトッ!」
「あ、あによぉ〜」

「それじゃぁ貴女はあの時、有効な指示を出していたの?呆けていただけじゃない!」
「・・・・・」

「今までの使徒は、シンジ君の機転で倒せていた。でもこれからはシンジ君は居ない。貴女はそんなに暢気にしていていいの?」
「ぐっ・・・」
ミサトはぐぅの根も出ない。

「貴女はレイのエントリープラグの緊急射出を認めなかった。私は一生忘れないわ」
「なっ!だからあれは作戦上、仕方ない処置で・・・」

「それで、私が緊急射出を強行したけど、何か支障があったのかしら?それとも緊急射出しなければ使徒のATフィールドを打ち抜けたとでも?」
「うっ、そりは・・・」

「貴女、冷静になっても考えられないのね」
「何がよぉ〜」
ミサトはぷくぅっと膨れているがリツコの眼は笑っていない。

「あのまま緊急射出を行わなければシンジ君がどういう行動を取っていたか」
「あの糞餓鬼の事だから仮設発令所に攻撃でもしたかしらねぇ」

ふぅっとリツコは溜息を吐く。
「シンジ君は間違いなく、レイを助けたでしょうね」
「あっ!」
ここまで言われてミサトも漸く気が付いたようだ。

初号機がレイを助ける動作をする。
それは初号機の影となってたが故に助かった仮設発令所が加粒子砲を受けていたことになるのだ。

「それに一発目を無理に撃たなければ勝機はあったわ」
「どう言う事よ」
「カウントダウン時に敵のエネルギー収束を検知、この時点でレイに盾で受けさせ再計算させれば、逸れる事はなかった」
「そ、そんなの結果論でしょ」

「盾は17秒しか持たない、発射準備に20秒かかる。簡単な算数よ。それすら出来ないのが貴女の指揮なのよ!」
「そ、そんなの急には無理よ・・・」

「それが貴女の仕事じゃないの?それに助けて貰って仮にもサードインパクトを阻止したシンジ君を「糞餓鬼」呼ばわりしているのは貴女だけよ」
「だってアイツは私の命令を聞かないし・・・」

「貴女が自分の責務を放棄しているからでしょ!エヴァを特攻させるだけなら、作戦なんて要らないわ」
ミサトも一応堪えたのか、黙ってリツコの部屋を出て行った。



シンジとレイは家で寛いでいる。
退院したが、学校が未だ開始されていないのだ。

シンジはソファーに凭れ、そのシンジの足の間にレイが入りレイはシンジに凭れ掛かって本を読んでいる。
ダクトの隠れ家では、よく取っていた姿勢だ。

レイはこの姿勢が結構好きであった。

「・・・シンジ」
「何?」
顔を上げてシンジの方に振り返る様にしてレイが声を掛ける。

紅い瞳が上目遣いになり、口吻をせがんでいる様にも見える。

「・・・これで善かったの?」
「何が?」

「・・・4000人のNERV職員が死亡したと聞いたわ」
「それはレイのせいじゃ無いよ」
前を向き言葉を紡ぐレイ。

そんなレイの身体を後ろから抱締める様にしてシンジは答える。

「・・・でもシンジならそんな被害出さずに倒せたんじゃ」
「どうかな?それよりミサトさんの作戦を皆が遂行したんだから、皆にはその覚悟はあったと思っていいんじゃないかな」

「・・・覚悟?」
「三度目の正直って訳じゃないけど、今まで見てきたんだから、自分達で選べたはずなんだよ」
レイの肩に顎を乗せて話すシンジ。

「・・・何を?」
「ミサトさんの作戦で自分がどうなるかを」

「・・・そうなの?」
「考えない人は考えない人が悪いと思うんだ。自分が変えたい事は自分が行動しなければ何も変らない。それが僕がサードインパクトを経て唯一学んだ事だよ」

「・・・よく解らないわ」
「ミサトさんの失策はもう衆知だと思うんだ。だったらそれを補おうとするか、離脱すれば良いんだよ。それをしないのは何もしないのと一緒だって事さ」

「・・・そう」
「で、僕達は僕達の方法で離脱しただけさ」

「だって4000人の被害があったって事は4000人がそれに関わっていたんだよ、4000人が反対すれば、あの作戦は実現しなかった」
「・・・そうね」

「僕は父さんにもミサトさんにも提言した。それを取らなかったんだから責任は二人、いや冬月さんもだな、3人にあると思うよ」
「・・・責任なんか感じていないと思う」

「まぁね」
「・・・赤木博士は?」
レイはいつの間にか身体を反転させ、シンジに抱付いている。

シンジの膝の上に座りシンジの首に顔を埋める様にして手をシンジの首に回している。

「リツコさんは覚悟はあるよ、でもレイのエントリープラグ緊急射出を止められたのには切れたみたいだね」
「・・・そうなの?」

「うん、ミサトさんが駄目だって言ったけど、リツコさん自ら操作して緊急射出してくれたんだよ」
「・・・そう」

「そう言う意味ではリツコさんは自分で行動してるからね」
「・・・そうね」

「暫くは、外に出るときは僕と離れないでね」
「・・・どうして?」

「NERVの諜報員が手薄になってるし、組織以外の逆恨みも居ると思うから」
「・・・逆恨み?」

「僕達のせいで家族が居なくなったって思ってる人が居るってことさ」
「・・・何故?」

「第四使徒が来た時、トウジが僕に殴り掛かって来てたろ?ああいう八つ当たりが居るって事さ。死んだのはNERVの4000人だけじゃないはずだからね」
「・・・解ったわ」

頬をほんのり染めるレイ。
そんな事を言われなくてもレイはシンジと片時も離れる気は無かった。

しかし、シンジから言われたため公然と一緒に居られる事が嬉しかった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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