第八話
アスカと四人目五人目


「へ?施設の手伝いですか?」
「うん、先輩が大変そうで・・・シンジ君達が手伝ってくれたら私ももう少し先輩を助けられるかなって思って」
食事をしながらマヤが済まなさそうに切り出したのは、シンジ達に施設の運営を手伝って欲しいと言う事だった。

実際、小学生以下で上の兄弟が居ない子供達の面倒まで手が回らない状況なのだ。

「僕は構いませんよ」
「・・・問題ないわ」

「ありがとう♪後で、先輩に話して手配しちゃうね、OKが出たら連絡するから」

「実際、何をするんですか?」
「小学生以下の子供達のお守りかな」

「お守り・・・ですか」
「・・・嫌なの?」
レイがシンジの顔を覗き込む様にして聞く。

「嫌じゃないよ、でもその子達が僕達をどう思っているのかなって」
「大丈夫よ、貴方達は子供達に取っては英雄よ」

「それは、それで少し苦手だなぁ・・・」

「まぁ先輩の許可が出たらだから、その辺りも先輩に言っておくわ」
マヤはニッコリと微笑みながら、箸を進めた。



その頃、リツコは二つのファイルを見つめ溜息を吐いていた。

「やっぱりこの子達なのね」
ふぅ〜っと煙草の煙を燻らせる。

その手にあるのは、
・フォースチルドレン・・・鈴原トウジ・・・参号機専属パイロット
・フィフスチルドレン・・・相田ケンスケ・・四号機専属バイロット
と言うファイルであった。



翌日マヤに連れられシンジ達は久しぶりにNERVに来ていた。
リツコは昨夜帰って来なかったのだ。

リツコの執務室に入る3人。
幸い、朝からだったためかミサトとは遭遇しなかった。

「あら?どうしたの?」
部屋に入るとあからさまに疲れているリツコが、微笑みを以て迎え入れてくれた。

「先輩、実はシンジ君達に施設の方の運営を手伝って貰おうと思うんです」
「あら、それは良い考えね」

「本当ですか?!良かったぁ、これで先輩の仕事をもっと手伝えます!」
「あらマヤ、そんな事を考えていたの?私の仕事はもうすぐ落ち着くわ」

「そうなんですかぁ?でも先輩、凄く疲れている様に見えますよぉ」
「もう歳なのかしらね」
リツコはそう言って苦笑した。

「それで手伝うのは構わないんですが、前に僕がパイロットだと言うのが漏れた様に変に情報が漏れてレイが八つ当たりの対象にされないかが心配なんですが」
「それは、大丈夫だと思うわ」
リツコがニッコリと微笑んで言った。

実は、施設を手伝う手伝わない以前に、リツコもシンジ達が八つ当たりの対象になるのではないかと危惧していたのだ。
それは、ミサトの態度を見て確信していた。

NERV内の生き残りは実状をしっている。
しかし、下手に結果だけが表に出ると作戦失敗、その為の被害となってしまうだろう。
それは作戦遂行者の失敗と普通は考える。

リツコは文章的に残る物には全て、作戦の不備とパイロットの機転による功績を付け加えていたのだ。

それでも曲解するものは居るだろう。
しかし、人の思考にまでは介入できない。
それは、しかたのない事であろう。

同じ物を読んでも人それぞれ感じ方が違う。
だから小説などの読み物は面白いのだ。

「それとシンジ君?先に言っておくわ。フォースチルドレンは鈴原トウジ君、フィフスチルドレンは相田ケンスケ君に決まったわ」
「そうですか」

シンジは別段、興味もなさそうに返事をする。
リツコに取ってもシンジのリアクションを期待したわけでは無い。
ただ、黙っていたと思われたくなかっただけであった。

「僕の知ってるNERVでは無くなってしまいました。これから先は予測がつきませんね」
「一つだけ聞きたかったのだけど、前は2発目で第伍使徒を殲滅したのよね?今回は何故、殲滅できなかったのかしら?」
「それは僕にも解りません、ただ・・・」

「ただ?」
「気のせいかも知れませんが使徒が若干強くなっている気がします」

「「!!」」
リツコとマヤは驚愕する。

前回はシンジと初号機で最後の使徒まで進んだのだ。
今回、最強のエヴァは既に無い。
それで使徒が強くなっているとしたら、この先、勝てるのだろうかと言う不安だ。

「本当に気のせいかも知れないんですが、零号機の盾が溶けるのが早かったような気がするんです。それで僕も焦って緊急射出をお願いしてしまいました」
「そう・・・」

原因は解らない、だが、シンジの知識だけに頼る訳には行かないと言う事だとリツコは感じていた。



「ミル輸送ヘリ!こんなことでもなきゃ、一生乗る機会なんてなかったよ〜ほんとエヴァのパイロットになって良かったって感じだよなトウジ・・・」

ここは、空母オーバーザレインボーでドイツから運ばれてきたエヴァ弐号機と、そのパイロットであるセカンドチルドレンを引き取りに向かう輸送ヘリの中。

客室の乗員はミサト・トウジ・ケンスケの3人。

リツコは忙しくて自分で行けないため、ミサトにトウジとケンスケのチルドレン勧誘を振ったのである。
ミサトは意気揚々として施設に出掛けて行き、二人にチルドレンの素質があることが解ったのでチルドレンと成る気はないかと尋ねたのだ。

当然ケンスケは二つ返事で承諾した。
トウジは考えていたのだが、今日は弐号機パイロットを迎えに行くから取り敢ず一緒に行きましょうとミサトが強引に連れてきたのだ。

勿論ミサトは弐号機パイロット、惣流=アスカ=ラングレーが美貌であることを知っている。
彼女に逢わせる事で、パイロット承諾に傾く事はあっても断る理由になることはないと踏んでの行動であった。


「ああ、見えたわよ。ほら、太平洋艦隊だわ」

「おおう、空母が五、戦艦四、大艦隊だ。正にゴージャス!流石国連軍が誇る正規空母、オーバー・ザ・レインボー!」
ケンスケは更にテンションを上げている。

「あんな老朽艦が良く浮いていられるものねー」
「いやいや、セカンドインパクト前のビンテージ物じゃないっすかあ」

「おお、空母が5、戦艦が4・・・。太平洋艦隊の揃い踏みだ〜!」

その光景をケンスケが必死に写真に収める中、ヘリはオーバーザレインボーに着艦し、3人は空母に乗り移った。


「ヘロゥ、ミサト!元気してた?」

突然、少し上方にある甲板から声がかかっので声のする方に目をやると、黄色いワンピースを着た赤っぽい金色の髪に青い瞳をした少女が、腰に手を当てて見下ろしていた。

「まあね、あなたも背、伸びたんじゃない?」
「そ、他の所もちゃあんと女らしくなってるわよ?」

「紹介するわ、エヴァンゲリオン弐号機のパイロット、惣流・アスカ・ラングレーよ」
その時、甲板に突風が吹いて少女のワンピースの裾が捲れ上がる。

パンッ、パンッ!

「「何すんねん(るんだよっ)!」」

その平手打ちのためカメラのレンズに罅が入ったケンスケとトウジが叫んだ。

「見物料よ、安いものでしょ!」
「何やて!そんなもんぐらいわしかて見せたる」
そう言ってジャージを下ろしたトウジの下半身は下着も一緒に下りていた。

「キャー!エッチ!バカッ!変態!」
トウジは更に顔に手形を増やしボコボコに踏みつけられている。

ケンスケは涙目になってカメラのレンズを取り替えていた。

「で、噂のサードチルドレンってどれよ?!まさかこの変態じゃないでしょね!」
アスカはフゥフゥと息を上げて一息に言った。

「サードは来ていないわ、アスカの足下に居るのが今度フォースチルドレンに選抜された鈴原トウジ君、こっちがフィフスチルドレンに選抜された相田ケンスケ君よ。仲良くしてあげてね」

「なんでファーストとサードは来ないのよ!」

「彼らは、もう乗る機体が無いから・・・」
少し間を置いて、ミサトが斜め下をみながら言い難そうに言う。

「そう、あの噂は本当だったのね、まぁアタシが来たからには、もうアンタ達に出番はないわ!使徒は全部アタシが倒してあげる!」
そう言ってアスカは颯爽と歩いて行った。

「はぁ〜っ気の強いおなごやなぁ」
「ふん!今に俺の実力を見せてやるさ」
どこからその自信が湧いてくるのか、ケンスケはスカートを翻して歩いていくアスカの後ろ姿を見ながらニヤリと笑っていた。



「恰好いぃ〜」
提督とミサトの遣り取りをケンスケは羨望の眼差しで見ていた。
内容は稚拙な縄張争いなのだが、ケンスケにそこまで理解は出来ない。

凛としたミサトの態度に見とれていたのだ。

その階級差を考えれば傲慢で失礼極まりない態度であることなど感じもせずに。
ミサトは一尉で提督は将官である。
ミサトからは4つ以上も差があるのだ。

軍隊では上から大将、中将、少将、大佐、中佐、少佐、大尉、中尉、少尉となる。
NERVでは一将、二将、准将、一佐、二佐、三佐、一尉、二尉、三尉、准尉となっている。
一尉は大尉と同等なのである。

「相変わらず凛々しいなぁ」
「加持先輩!!」

「よっ」
ミサトがいやな予感をさせながら振り向いたドアの所には、彼女のよく見知った顔があった。

素っ頓狂な声を挙げ、あからさまに「ゲッ」という顔をするミサト。

「加持君!君をブリッジに招待した覚えはないぞ」
「それは失礼」

艦長の言葉を飄々とした態度ですり抜ける加持。

「提督?そんなに冷たくしなくても宜しいんじゃありません?」
「うっ、い、いやドクター赤木、貴女に言ったわけではありませんよ」
何故か提督が赤くなっている。

声を掛けたのは、白衣ではなく紫のナイトドレスを着込んだ赤木ナオコであった。
真っ昼間から何故ナイトドレスなのか、些か謎である。

「リョウちゃんもミサトちゃんをからかってないで」
「いや、ははは」
加持もこの女性には弱いようだ。

「ナオコさん?」
「久しぶりねミサトちゃん、食堂でお茶でもしない?」

「は、はい、で、では、これで失礼します。新横須賀までの輸送をよろしく」
敬礼をしながらミサトは艦長へとそういい、はしゃぐケンスケを押しやりながら下へ向かうエレベーターへと向かった。



「何でアンタがここにいるのよ!」
「彼女の随伴でね。ドイツから出張さ」

4人乗りのエレベータに6人乗っており、ミサトと加持はギリギリのポジションで向かい合っていた。
隅っこにエレベーターの外すら撮影するケンスケがいたり、つんとした顔で加持の後ろに陣取っているアスカがいたりしたが、そこのあたりは細かいことだろう。
何故かナオコは涼しい顔をしてミサトと加持の遣り取りを微笑みながら見ていた。

「迂闊だったわ。充分考えられる事態だったのに・・・ちょっと、触らないでよ!」
「仕方ないだろ?」

6人は館内の士官食堂へと降りてくる。
提督の言葉ではないが、本当にボーイスカウトの引率と言うぐらい喧しい。



「今、つきあってるやつ、いるの?」
「そんな事あんたに関係ないでしょ!」
素っ気なく言い放つミサト。
そんな中テーブルの下では加持の足がミサトの足へと伸び、人知れず攻防が繰り広げられている。

「あら?私も興味あるわぁ。で、どうなの?」
「もぅナオコさんまで、変な事聞かないで下さい」
どうやら、ナオコ相手では、流石のミサトも何時もの調子ではないらしい。

「それよりミサトちゃん、リっちゃんとは仲直りしたの?」
「・・・・・」
俯き加減で黙り込んでしまったミサト。

加持も、これはまずいとテーブル下の攻撃の手を緩めた。

加持に頷くナオコ。
加持はアスカやトウジ達を連れてその場を離れた。

「リっちゃんも今度ばかりは本気で怒ってるみたいだから、ミサトちゃんも本気で謝らないと親友を失っちゃうわよ」
「ナオコさん・・・」

「まぁ私は現場に居たわけでは無いから状況は解らないけど、ちょっとこの三戦での指揮はまずかったかも知れないわねぇ?ミサトちゃんも解っているんでしょ?」
ナオコの言葉にコクンと頷くミサト。

どうやら、ミサトもナオコには素直になれるようだ。

「後悔は人を立ち止まらせるけど、反省は人を成長させるわ。ミサトちゃんも反省していると感じればリっちゃんも許してくれるわよ」
「でも、リツコは一生忘れないって取り付く島も無いんです」

「フフフ、そんなの当たり前じゃない、忘れないから許さないわけじゃないわよ」
「えっ?」

「全くゲンドウさんも冬月先生も、黙っているだけなら上に居る必要は無いって言うのよね、帰ったらとっちめてやらなくちゃ」
ミサトに向かって優しく微笑みながら言うナオコだった。



艦外のデッキに立つ加持とアスカ。
トウジはケンスケに連れられ写真撮影のお供だ。

「どうだ、新しいチルドレン達は」
手すりにもたれかかって煙草を銜えている加持。

「サイッテー!あんなのがチルドレンだなんて信じられない!」
海の方を見ながら、手すりを使って体を手で浮かせているアスカ。

「まぁな、急遽選ばれたらしいから、まだ訓練も何も受けて居ないんだろ。それよりサードチルドレンが来なかったのは残念だな」
「ふん!エヴァを壊すような奴はチルドレン失格よ!」

「だが、彼のシンクロ率はいきなりの実戦で76%オーバーらしいぞ」
「嘘!」
険しい顔で爪を噛むアスカ。



そして使途が現れる。
弐号機の元へ急ぐアスカ。

「ちわ〜ネルフですがぁ。見えない敵の情報と、的確な対処はいかがっすか〜〜?」

場に似つかわしくないのんびりとした口調で、ブリッジ中に響き渡るよう艦長に声をかけるミサト。

「戦闘中だ!見学者の立ち入りは許可できん!」

「これは私見ですがどー見ても使徒の攻撃ですねぇ〜」
「全艦任意に迎撃っ」
ミサトの言葉を無視して命令を下す提督。

「無駄なことを」
「もうミサトちゃんも提督も大人げないんだから」
二人の遣り取りをやれやれと言う表情で見ているナオコ。

手すりに寄りかかって見物している加持。
「この程度じゃ、ATフィールドは破れない、か」

「しかし、なぜ使徒がここに・・・まさか!?」
ミサトは全く見当はずれの思い違いをしていた。

その時ブリッジ内に悲痛な通信が響き渡る。

『オセローより入電。エヴァ弐号機起動!』

「なんだと!」

「ナイスッ!アスカ!」

「しかし、本気ですか?弐号機はB型装備のままです」
「えっ?」
副官の冷ややかな言葉に冷や汗を流すミサト。

「B型装備(改)よ」
ナオコが不敵に微笑んだ。



「いかん!起動中止だ、直ぐに戻せ!!」

マイクに向かって提督が叫ぶ。
後ろからミサトがそのマイクをひったくるとアスカに命令を出す。

「かまわないわ、アスカ!発進して!!」

再びマイクを奪い返す提督。

「エヴァ及びパイロットは我々の管轄下だ!勝手は許さん!!」

その時、大きな破壊音がマイクの内外から響き渡る。
使徒が弐号機のまだ載っていたオセローを破砕したのだ。

「なんて無茶をする!」

提督はその非常識さに呆気にとられ呟くように言い放った。

間一髪、タンカーを踏み台にして跳躍した弐号機はイージス艦の上に着地した。
当然その質量と衝撃に耐えられず、巨大な波しぶきがイージス艦のまわりに起こる。

が、バランスを完璧に取り直した弐号機は、その手に持つ機体を覆い隠していたカバーをマント状にまとい、さらに跳んだ。

「アスカ、あと58秒しか保たないわ」

『わぁかってる!ミサト!非常用の外部電源を甲板に用意して』

「わかったわ」
何かいいたそうにしている提督を一瞥して、ミサトは答えた。

マントにしていたカバーを投げ捨て、大跳躍を見せる弐号機。

一隻、また一隻と確実に大損害を与えながら空母へと、まさに八艘跳びを行う弐号機の予備電源ケーブルを用意している空母甲板は、大慌てで人が蜘蛛の子を散らすように艦内に逃げ込んでいく。

使徒も弐号機の後を、まるでとどめを刺していくがごとく、踏み台にされた艦を貫きながら迫っている。

「予備電源出ました!リアクターと直結完了!飛行甲板退避!」
「エヴァ着艦準備よし!総員対ショック姿勢」

「デタラメだ!」
提督は再び驚愕と非難の叫びをあげた。

『エヴァ弐号機、着艦しま〜す!』

アスカのやけに嬉しそうな声が、マイクを通してブリッジに響きわたる。

だが、もっと強烈な声がブリッジを貫いた。

「「あああっ、Su-27がぁっ!」」

着艦の衝撃で傾いた空母の甲板から海に落ちていく戦闘機。
それを見たケンスケと提督が同時に叫んだのだ。

「くぅ、これ以上の予算編成は無理なんだぞ!」
「なんてこった!こんな事なら全角度からデジタルカメラにおさめとけばよかった」
そんな艦内の喧噪とは別に、甲板ではソケットを取り付けて準備万端の弐号機。

「外部電源に切り替え...完了。さあ、かかってきなさい!!」

電源メータが無限大を現す88:88:88:88を表示する。
背中からソニックブレイブを抜き斜めに構えるアスカ。

そこにガギエルが突っ込んできた。

「くぅうぅぅ......こんのぉぉぉぉ!!!!」

正面からガギエルを押さえ込む弐号機。
強烈な突撃の影響で船体が大きく傾ぐ。

ソニックブレイブが突き刺さったガギエルと力比べをしているように見えるが、実際は巨体のガギエルに押し潰されそうになっている弐号機。

ガギエルの強烈な体当たりを何とか凌いでいた弐号機だったが、慣性の法則によって船体が揺れ戻った衝撃で、甲板の舳先に置いていた片足を踏み外してしまう。

「きゃぁぁぁぁ!な、なによぉぉぉ!!」

「くぅ、絶体絶命って奴じゃないの!まったく、無茶するんだから、アスカ」

ブリッジで苦い顔をしているミサトの、もはや粉々に砕け散ったガラスを通すこともなくなった視線の先では、弐号機に電力を供給しているアンビリカルケーブルがトランス付きのボビンから猛スピードで送り出されている。

と、幸いにも損傷を免れていた一つのエレベーターから戦闘機が上ってきた。

「あれは・・・加持君!」

思わず嬉しそうな顔をするミサト。
しかし、次にブリッジのスピーカーから入ってきた音声は

『悪い葛城ぃ!届け物があるんで、俺、先に行くわぁ』

呆気にとられているミサトをよそに、あっという間に離陸して飛び去っていく加持を乗せたYak-38改。

『じゃ、よろしく〜、葛城一尉(はぁと)』

「・・・に、逃げよった」
信じられないものを見る目つきで、飛び去るYak-38改を眺めながらトウジは言った。

『くちぃいぃ!?』

通信から聞こえてくるアスカの声に一瞬静寂が訪れる。

『きゃぁぁぁあ!!』

アスカの悲鳴と同時に水柱が上がる。

ガギエルの口の中には、弐号機がガップリと咥えられていた。

「おい・・・食われたぞ!」
「ええ・・・食われましたね」
提督と副官の会話。

「ギャラリーは黙ってなさい!!アスカ大丈夫!?」
背後の二人に怒鳴りつけるとマイクに向かって吼える。

『な、何とか・・・ね』

アスカから返事が返って来た事にミサトは胸を撫で下ろした。

「クッ!アスカケーブルが無くなるわ!衝撃に備えて!!」

声と同時にケーブルの残りが無くなる。
水中では弐号機がピーンと張られたケーブルの衝撃で、ガギエルの口から解放された。

「アスカちゃん、インダクションレバーの下にあるボタンを押して頂戴」
ナオコがいつの間にかマイクを取りアスカと通信を行っていた。

『えっ?これかしら?』
スイッチと共にエヴァの踵からスクリューが現れる。

「それで水中でも少しは動けるはずよ、それに予備のソニックブレイブも背中にあるわよ」

『ダンケ!』

「さて、ミサトちゃん?効率の良い作戦をお願いね」
「は、はいっ!」
一連の流れに呆気に取られていたミサトが職務を思い出し返事をする。



「無茶な!」
「無茶ですが、無理ではありません」
ミサトが提督に作戦を説明している。

それは残った護衛艦二隻を並べ、その間をエヴァのアンビリカルケーブルを引き上げる事により使徒をさも釣りの様に海上におびき寄せ、護衛艦による零距離射撃と言う物だ。

「アスカ!作戦は解った?使徒を捕まえたら絶対離さないで!そして洋上に出るまでに口を開けて頂戴!」

『えぇ〜そんな無茶なぁ〜』

「無茶でもなんでも、遣りなさい!」
「ミサトちゃん?別に口を開ける必要はないわよ」

「へっ?」
「アスカちゃんは洋上に出たらすかさず離脱、ATフィールドにより防御をするだけで良いわ」

「それだと、殲滅できないかも知れません!」
「エヴァごと、殲滅しちゃうつもり?だからリっちゃんに怒られるのよ」
ナオコは優しくミサトに諭す。

ミサトは未だ苦虫を噛み潰した様な顔をしている。

そして作戦通り、洋上に出た時点で弐号機は離脱。
ATフィールドで自らを護るも爆風により飛ばされた弐号機はオーバーザレインボーに着艦した。

「ご苦労様」
エントリープラグから出たアスカをナオコは労いの言葉で迎え入れるのだった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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