第拾参話
夜空に羽ばたく


薄暗い司令室・・・

その面影は今はもうない。

広い司令室には、明るく灯りが灯され、応接セットや観葉植物まで備えられていた。
しかも小型の冷蔵庫やコーヒーメーカーまであって、有る意味人間臭くなっている。

何よりも今までと違うのは執務机の後ろにはロッカーが在り、中にはぎっしりと資料が並べられており、そして司令の執務机に直角に位置する形で副司令の執務机も備えられている事だろう。

「だって、こんな広い所に一人じゃ寂しいですわ」
と言うのがナオコの言だった。

今までの副司令執務室もそれ程狭かった訳ではない。

そこは、今ではNERV基金管理課と言う、先の第伍使徒戦におけるNERV職員未成年遺族施設の管理部署となっていた。
つまりNERV基金と言う予算を組み、NERV職員未成年遺族施設と言う施設を運営しているのである。
表向きは福利厚生の一貫と言う訳だ。

当然、そこの管理と運営はリツコとマヤで行われている。
最近ではリツコとマヤはこちらの部屋に居る事が多くなった。
エヴァ弐号機、参号機については当初からの技術員が本部職員補充として転勤してきているためだ。
更にMAGIについてはリツコとマヤの右に出る者は支部には居なかったのだが、ここ本部にはナオコが居るため、MAGIについてはそれ程、二人の労力は必要ないのだ。

そして、そこにレイとシンジの机もあった。
シンジ達は、リツコやマヤでなくとも済む様な事を任されるのだ。
と言っても、大した事ではない。

伝達事項を届けるとか、施設からNERVへの書類を届けるとかであり、後は以前と変らず幼い子供達の相手をしているだけであった。

「折角、冬月先生の席を設けたのに、また一人だわ」
冬月は現在、南極に出向いていたのだ。

ナオコは敢えて同行しなかった。
従って、ミサトが三佐に昇進する事もない。

「私も施設管理課に席を作っておけばよかったかしらねぇ」
自分の執務机ではなく、応接セットのソファーで寛ぐナオコであった。



「もぅぅ〜〜やってらんない!ミサト!あたしも施設に入る!」
ユニゾン訓練から済し崩しでミサトの家に住んでいたアスカが遂に切れた。

当初はケンスケが居るため施設には絶対入りたくないと思っていたアスカだったが、ケンスケの居ない今、ヒカリの居る施設はゴミ溜めとなっているミサトの家より百倍魅力的だったのである。

そして、ミサトとアスカであるため家で食べる食事は殆どインスタントかデリバリー。
最近では、アスカは訓練の後、NERVで食事を済ませて帰ってくる事が多くなっていた。

「でもシンちゃんやレイはリツコとマヤの家に居るのよ?」
「あいつらは乗る機体が無いんだからどうでも良いのよ!」

「でも、保安上問題なのよねぇ」
「ジャージだって施設に居るんだからチルドレンは施設に固まっていた方が何かと便利でしょ!」

ミサトとしてはリツコやマヤが羨ましくてアスカを引き込んでいるのだった。
生来寂しがり屋なのである。

「でも施設だと部屋狭いわよ?アスカの荷物、入りきらないと思うけど?」
「そんなの空いてる部屋か倉庫にでも入れるわよ!」

「う〜〜〜〜どうしても?」
「どうしてもっ!」
アスカは折れる気は無いようだ。

「アスカァ〜私を捨てないでぇ〜」
「えぇぇぇいっ!鬱陶しいっ!」
よよとアスカの脛にまとわりつくミサトを蹴散らすアスカ。

かくしてアスカのミサト宅脱出計画は、強行されたのである。



「ちわぁ〜引っ越しの赤井でぇす」
元気な挨拶と共に運び込まれる尋常でない数のダンボール箱。

子供達と大広間で遊んでいたシンジは口をポカンと開け、レイは眼を見開いて固まっていた。

「あっそれは、こっちの部屋、そっちの大きいのはこっちの部屋ね」
当然、指揮を執っているのはアスカである。

「アスカ?」
「ハァ〜イ!ヒカリ!今日からアタシもここの住人よ!宜しくね」

「う、うん、よろしく・・・じゃなくってどうして?」
ヒカリはアスカの勢いに気圧されつつも、そこは委員長としてクラスを長年修めてきた経験者、ちゃんと聞く事は聞いた。

「だってミサトの家ったらゴミだらけで、もう人外魔境!夢の島!腐海よ腐海!アタシはオームじゃないっての!だから逃げ出してきたのよ!」
何やら、意味不明な単語を並べるアスカ。

「そ、そう・・・大変だったのね」
何か論点がずれてる気がするものの、堂々としたアスカに他に言葉を発せられないヒカリ。

「・・・貴女は遺族じゃないわ」
そこに核心を突いたレイの言葉が響く。

「ここにパイロットが集まってた方が何かと便利でしょ!だから、このアタシがわざわざ来てやったのよ!」
「それって許可を貰ってないって事?」
用意していた言訳をあっさり看過するシンジの言葉にグッと詰まるアスカ。

「だ、大丈夫よ!ミサトにはちゃんと言って来たわ!」
手順を踏まず、即行動のアスカにシンジもやれやれと言う表情をする。

はっきりとは言えないがシンジもミサトの家の状況は解っているので強くは言えない。

「惣流さんの入居については後でリツコさんに確認するとして、今、荷物を運び込んでる部屋、元相田君の部屋だけどいいの?」
「ぐげっ!」
アスカは痛恨の一撃を食らった。

その夜はアスカの歓迎会となる。
どうして?っとシンジは思ったのだが「このアタシが来たんだから当然でしょ!」と押し切られた。

ヒカリは、それでも嬉しそうに準備をする。
アスカとは仲が良いのだ。

子供達も嬉しそうだ。
ここ最近、楽しいイベントが無かったのだ。
誰かの誕生日かクリスマスの様なそのイベントに幼い子供達もはしゃいでいた。

そんな姿を見て、シンジもまぁいっかとレイの方を向く。
レイもしかたないわねぇと言う表情で微笑んでいた。


「「「「「「かんぱぁい♪ようこそエデンへ」」」」」」

部屋にいた全員で乾杯を交した。

「エデン?」
「ここの施設、実はまだ名前が付いてないの。正式には【NERV職員未成年遺族施設】って言うんだけど堅苦しいでしょ?で子供達はここを【エデンの園】って呼んでるのよ」
アスカの質問にヒカリが答えた。

「へぇ〜エデンかぁ、なんとなく良いんじゃない?」
アスカが同意したことに周りの子供達は気を良くした。

「ねぇねぇお姉ちゃんの髪は何で金色なの?お目眼は何で青いの?」
「ん?お姉ちゃんはドイツ人とのクォータなのよ。お母さんがドイツ人とのハーフでね、お姉ちゃんは1/4だけ日本人なの」
流石のアスカも子供には優しいらしい。

「へぇ〜綺麗でいいなぁ」
「貴女の黒い髪と黒い眼もとっても綺麗よ。ドイツではね、東洋の神秘って言われるのよ」

「トウヨウノシンピ?」
子供には難しかったようだ。

うふふとヒカリと顔を合わせて微笑み合うアスカ。

「レイお姉ちゃんも綺麗な髪に綺麗な眼だし、エヴァのパイロットって綺麗な人しかなれないの?」
その言葉にトウジを思い出し、そんなこと有るわけないと言う思いで一杯になるアスカとヒカリであった。

「ファーストの場合は人類の神秘ね」
レイを見ながら失礼な事を言うアスカ。

子供の言葉なのに真っ赤になってるレイはご愛敬である。

ここは2−Aの生徒は殆ど居る。
シンジとレイも今は居るので全員だ。

そして子供達も沢山居る。
ヒカリの様に年上の姉妹が居る者も居るので結構な人数である。

そして2−Aの人間は見慣れているのと学校に居る時と変らないのでアスカに近付こうとする者は居ない。
しかし、高校生ぐらいの男の子達はアスカを見て嬉々としていた。

そこへ、リツコ、マヤそして加持がやって来た。

「「「「「「こんばんは♪リツコさんマヤさん」」」」」」
「「こんばんは」」
リツコは子供達に所長と呼ばせず名前で呼ばせていた。

そして子供達は元気に挨拶をする。

「加持さんだぁ〜♪」
アスカがはしゃいだ声を上げ加持に纏わり付く。

「おっ美味そうだな、俺も食べていいか?」
「どうぞどうぞぉ♪」
それを見て嬉々としていた男の子達がシュンとなった。

実はシンジが連絡していたのだ。
パーティになるようだから食事の用意が要らないと言うのが主旨だったが、それでも無断で引っ越してしまったアスカのためにリツコ達も寄る事にした。
加持は何故か付いて来ただけだったらしい。

「アスカ?私もミサトの家の状況は大体想像がつくから同情はするけど、こういう事はちゃんと手順を通して頂戴」
「はぁ〜い、ごめんなさぁい」
加持が居るからかアスカも素直だ。

「まぁ今回は大目に見るわ。ちゃんと共同生活して頂戴ね」
「はぁ〜い」

軽いアスカの返事に解ってるのかしらと言う顔をするリツコ。

マヤとシンジは肩を竦ませて笑っていた。

レイは・・・黙々とポテトサラダに侵攻していた。



紅い海。
白い巨大な結晶体の柱。

無数に天に踊る、でたらめな形のオーロラ群。
波の音さえ聞こえないような、完全な静寂がそこにあった。

南極・・・セカンドインパクトと呼んでいるカタストロフの、地球人類が完全に瓦解の憂き目にあった史上最初の災厄の、実存していた証。

「いかなる生命の存在も許さない死の世界、南極。いや、地獄と呼ぶべきかな」
数隻の艦隊の、扇状の陣形の中心に位置する大型巡洋艦、その甲板に設置されているガラス張りの観測室。
冬月はそこから目の前に広がる巨大な「死」を見つめ、誰にともなくその言葉を呟いた。

「人の傲慢が15年前の悲劇を生み出した。その結果がこれだ。与えられた罰にしては余りにも大き過ぎる」
そして冬月が振り返る。
その遙か後方に位置する空母の甲板上にあるロンギヌスの槍と呼ばれたものを透かし見るかのように。

再び、静寂が観測室に訪れる。
その時、スピーカから報告が届いた。

『報告します。ネルフ本部より入電。インド洋上空衛星軌道上に使徒、発見』



「インド洋上空、衛星軌道上に使徒発見!」
「2分前に突然現われました」
「目標を映像で捕捉」

発令所の画面に映し出された使徒の大きさとその前衛的な姿に、発令所内に驚きの声が上がる。

「こりゃ凄い・・・」
「常識を疑うわね」

突然使徒の映像を送っていた衛星がガシャンと言う音と共に破壊され、画面はノイズだけとなった。

「ATフィールド?」
「新しい使い方ね」

リツコは落ちついてミサトの質問に答えた。

「目標から構成部分が一部離脱。太平洋上に降下します。」

海上に落ちたパーツは爆発して海水を巻き上げたがそれだけだった。

それから1時間後に1回、そしてその1時間後に1回、さらにその1時間後に太平洋の小島に当たった。

「誤差修正」
「次ぎは来るわね」
メインモニターに浮かぶ巨大なクレータを見ながらミサトとリツコが呟く。

「本体毎ね」
リツコは平然と結論を導き出す。

「当たったら、第三芦ノ湖の誕生かしら?」
ミサトは、空元気のためか戯けて言った。

「富士五湖が一つになって太平洋とつながるわ。本部ごとね」
リツコの絶望的な言葉が周りの空気を冷やす。

「で、どうするの?」
「MAGIの判断は?」
平然と尋ねるリツコにミサトはMAGIの判断を尋ね返す。

「MAGI・システムは全会一致で撤退を推奨しています」
ミサトの質問に、そう報告するマヤの表情も心なしか曇っている。

「日本政府各省に通達、ネルフ権限における特別宣言D17、半径50Km以内の全市民はただちに避難。松代にはMAGIのバックアップを頼んで」

「ここを放棄するんですか?」
「いいえ、ただ皆で危ない橋を渡る事はないわ」

「う〜ん、良い判断だと思うけど、その前に作戦を考えて頂戴、ミサトちゃん」
発令所内が悲壮感を漂わせていると言うのに、そんな事を歯牙にも掛けない暢気な命令が頭上から下された。

「司令?」
「母さん?」
ミサトとリツコが同時に頭上を振り返り呟く。

「どの道、あの質量が落下してきたなら日本列島が分断されてしまうのでしょ?50km以上に逃げても無意味よ」
リツコよりも辛辣な判断を下すナオコ。

「第一種戦闘配置、住民をシェルターに避難。避難が終った後シンジ君とレイちゃんを呼んで頂戴」
「ファーストとサードですか?」
ミサトがその真意が掴めず聞き返す。

「シンジ君とレイちゃんよ」
ナオコは、そう言うとニッコリと微笑んだ。



「そう、エヴァで受け止めるの・・・勝算は?」
「0.00001%、万に一つもないわ」
ナオコの質問にリツコが答えた。

ここは司令室だが、応接セットでお茶を飲みながら話している。
ソファーに掛けながらも、リツコに万に一つも勝算がないと言われ、ミサトは俯いていた。

チルドレンの4人も同席していた。
アスカとトウジはプラグスーツを着ている。
シンジとレイは制服のままだ。

「どうでもいいけど、何でファーストとサードが居るの?!」
乗る機体もないのにと存外に言っている。

「私が呼んだのよ、アスカちゃん」
流石に司令にそう言われてはアスカも強く出る事は出来なかった。

「どう思う?シンジ君」
「そうですねぇ、使徒はほぼ自由落下でしょ?だったら、エヴァを高々度の上空で待機させ使徒と共に降下、ATフィールドの中和に専念させて、地上から迎撃ミサイルを撃ち込むと言うのが被害も少ないと思いますが」

ハッとするミサト。

「ちょっ!アンタ何偉そうに言ってるのよ!」
「アスカ!じゃぁ貴女の意見は?地上で手で受け止めた方が有効だと思うのね」
掴みかかろうとするアスカをリツコが制した。

「そ、そんな事、言ってないわよ!」
アスカはシンジが作戦を立案した事が気に入らないだけで、大気圏外から突っ込んでくる大質量を手で受け止めるなんて無謀だとは思っていたのだ。

しかし、ミサトと同じくエヴァで使徒を殲滅することに囚われているアスカもやはり、エヴァ以外での殲滅方法は考えに浮かばないのである。

「問題は着地方法なんですよね」
「それは大丈夫よ」
ナオコとリツコがニヤリと笑った。



「STOLは高度120000フィートが限界です。従って限界の120000フィートで使徒を迎えます。貴方達は使徒が上空に見えたら降下開始、ATフィールドの中和圏内に入ったらATフィールドの中和に専念。後は地上からの迎撃ミサイルを撃ち込みます。自由落下と考え時間は約500秒。エヴァには予備バッテリーを積んで行きます。以上よ」
「「了解!」」

「着地については、MAGIによる操作でエヴァに取り付けたロケットが着地前に貴方達を安全に着地できるようにする予定よ」
「「はい」」

「では、搭乗!地上に出たらSTOLに!」
「「了解」」

ブリーフィングルームで再度作戦の確認をするミサトとチルドレン二人。
ミサトは自分の作戦が却下されたものの、より安全確実な作戦と認め、心の荷が下りたためか多少穏やかになっていた。



「しっかし、シンジ君って何なのかしら?自信無くしちゃうわぁ」
「あら?今更?最初からシンジ君は貴女より的確に判断していたわよ」

「リツコォ〜〜〜」
発令所では、ミサトとリツコも普段の様に話している。

そんな二人に発令所内もMAGIが撤退を指示した時の悲壮感はない。
MAGIも今回の作戦を勝率89%と判断したのだ。

メインモニターに映し出される、二機のエヴァを腹部に伴い上空へと向かう全翼機。
ホロスコープには今正に大気圏に突入しようとする使徒を現わす光点が映し出されていた。

「今回の使徒はジャミングが強いため、通信はアテになりません。上空へ出たらパイロットの判断に委ねます」
「「了解」」
おそらく最後の通信となるであろう、指示をミサトが出した。

「なんか、私達って安全な所で見ているだけって感じね」
「あの子達が失敗すれば、安全でも何でもないわよ」

「そりはそうなんだけどさぁ〜」

「ATフィールドが中和されています。エヴァ両機が接触した模様!」
「よっしゃぁ対空ミサイル全弾発射!対空砲用意!」
ミサトの号令と共に用意されていた対空ミサイルが次々と発射されていく。

対空砲が用意だけなのは射程距離の問題だ。

「使徒が対空砲の射程内に入ったら、無条件に発射して!」
「了解!」
マコトが声も高く返事をした。



その頃、上空ではエヴァ二機が自由降下を行っていた。
アスカはスカイダイビングを行ったことがあるので比較的スムーズに使徒に近付いたが、トウジはグルグル廻っていた。

『ジャージ!何やってんのよ!』
『そんなこと言うたかって!』

『くっ!兎に角ATフィールドを中和しなさい!』
『解っとんがな!喚くなや!』

緊迫感も何もなかった。

どんどんと地上からのミサイルで削れていく使徒。
使徒全体が爆弾の様な物なのか、ミサイルの当ったところから爆発していく。

アスカはしっかりと使徒の斜め後ろATフィールド中和圏内ギリギリの位置を保っている。
トウジはグルグルと周りながら近付いたり遠のいたりしていた。
それでも付かず離れずなのは大した物である。

そして上空12000フィート、丁度残り1/10ぐらいのところで使徒が爆発した。

爆発の煽りを受け、エヴァは一端落下速度を減速する。
しかし、すぐ自由落下へと戻った。



「パターン青消失!使徒消滅しました」
シゲルの報告に、然したる被害なく使徒殲滅した事に発令所内に安堵の息が漏れる。

「通信回復します」
その報告と共にアスカの絶叫が飛び込んできた。

『ジャージ!何やってんのよ!』

「アスカ?どうしたの?」
アスカの尋常でない叫びにミサトが怪訝な表情で尋ねた。

「フォースチルドレン気絶しています!」
マヤの叫び。

「「なんですってぇ!」」
ミサトとリツコも叫んだ。

「着地用のロケットシステムは?」
リツコが一番大事な事を確認する。

『それが使徒の爆発で吹っ飛んだのよ!』

「アスカ!なんとか参号機を捕まえて!」

『やってるわよ!』

アスカは自由落下で落ちていく参号機に向かっていた。
しかし、スカイダイビングをやったことは有るとはいえ、上手く近付けない。

『ロケットシステムを作動させて!』

「推進力を得るのね!マヤ作動させてあげて!」
「はいっ!」

固唾を飲む発令所。
メインモニターには参号機に迫る弐号機が映し出されている。

ロケット噴射を上手く利用して参号機に近付いていく弐号機。
参号機はトウジが気絶しているため、力無く、頭から落ちて行っている。

『よっしゃぁ〜掴んだわ!』

皆の安堵の息が音として聞こえる程、発令所内に響き渡った。

「そのまま離さないで!」

『わぁかってるって!』

ゆるりと山頂部に降り立つ参号機を抱えた弐号機がメインモニターに映し出される。
流石のナオコもホッと安堵の息を漏らしたようであった。



シンジとレイは帰路に着いていた。

「なんでナオコさん、僕達も呼んだんだろうね?」
「・・・解らないわ」

手を繋いで歩くシンジとレイ。
道行く人々はシェルターからの帰路に着いている様だ。

「前もって言っていたから、ナオコさんから司令として指令してくれれば何も問題なかったと思うんだけどなぁ」
「・・・シンジの案と言う事を強調したかったのかも知れない」

「どうして?」
「・・・弐号機パイロットと葛城一尉のため」

「無駄だと思うけどね」
「・・・そう?」

「僕としては、あの二人に波風たてたくないんだけどなぁ」
「・・・立つの?」

「アスカなんて諸に」
そう言ってシンジは苦笑いする。

「・・・どうして?」
「彼女は自分が一番じゃないと気がすまないのさ、特にエヴァや使徒殲滅に関してはね」

「・・・彼女は作戦立案者や指揮者じゃないわ」
「それは僕も同じだろ?」

「・・・そうね」
「それより、ラーメンでも食べに行かない?」

「・・・構わないわ」
レイは数瞬、首を傾げたものの、そう返事をした。

ニッコリと笑い、屋台のラーメンに向かう二人。

「・・・ニンニクラーメンチャーシュー抜き」
躊躇なく注文するレイのその言葉にシンジはクスッと笑う。

「僕も同じ物を」
シンジはニコニコしながら注文した。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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