第拾七話
暴走


エヴァのケイジで参号機から降りてきたトウジをミサトは笑顔で迎えた。

「何、辛気くさい顔してるのよ、使徒を殲滅したのよ。もっと嬉しそうにしなさい」
ニコニコとトウジに話し掛けるミサト。

「わし達のせいで、彼奴らは助からんかったんですよね」
「そ、そんな事ないわよ!あれは仕方なかったのよ!」

「ミサトはん、言わはったやないですか?あいつの命を救えるかどうかは、わし達次第って」
「そ、それは・・・」

「わしは・・・わしはシンジに助けてもろたのに、彼奴らを助けられへんかった・・・」
トウジは眼に泪を浮かべケイジを離れて行く。

「まったく、使徒を倒したって言うのに・・・」
そう呟きながら、懲りもせずアスカの方に向かうミサト。

「ごめん、今は話し掛けないで」
しかし、ミサトが言葉を発する前いアスカにそう言われてしまった。

「な、何なのよ!一体!」
ミサトは自分の指揮で使徒を倒した事に嬉々としており、アスカ達の心情にまで考えが及ばなかったのだ。



ここ数日は第一中学校の2−Aも施設もお通夜の様であった。
マナの事は、使徒戦では無いためシェルターへの避難もなく報道管制も薄く、見ていた人間も多く存在したのだ。

また、突然使徒化したため警報を流したものの使徒殲滅までにシェルターに避難仕切れず見ていた者も多かった。

特にマナに懐いていた子供達への影響は大きかった。

死と言う物に自分の親達で直面していた子供達は、気丈であった。
だから「お姉ちゃん死んでないよね?」と言う様に取り乱す子供達は居ない。

しかし、親しい者が死んだ悲しみは心に滲みる。
ここに居る限り、何時、隣で笑っている友達が死んでも不思議は無いと言う現実が重くのし掛るのだ。

そして黙って抱き付き泪を堪えている姿にシンジは痛々しい物を感じていた。

「泣きたい時は泣いていいんだよ」
「お兄ちゃん・・・うぐっ・・・えぐっ」
泣き始める子供達の頭を優しく撫でるシンジ。

レイも同じ様に沢山の子供達に抱き付かれ、その頭を優しく撫でていた。



施設からの帰り道、何時にも増して無口なシンジとレイ。

「・・・シンジ」
「僕はもう大丈夫だよ。レイも悲しかったのにごめんね」
フルフルと首を横に振りシンジにしがみつくレイ。

シンジに取ってレイ以外の人間の事など、どうでも良い事だとシンジ自身思っていた。
しかし、実際マナに対して取り乱した事にシンジは狼狽していた。

(僕は何様のつもりなんだろうね)
(・・・大切な人を護りたいと思うのは同じ、あの娘を助けても今度はあの娘が、今の碇君と同じ苦しみを味わったわ)
(ありがとう綾波)

ともすれば以前の内罰的思考に陥ってしまうところだが、今はシンジの中にレイが居る。
実際に抱締めてくれるレイも居る。
そのおかげでシンジの立ち直りは意外と速かった。



いつもの様に訓練から帰ってきてヒカリに御飯を作って貰うトウジとアスカ。

「ごちそうさま」
お通夜の様に何も話さず食べていたアスカは、その一言を残し食堂を後にした。

「アスカ・・・」
掛ける言葉を持たないヒカリ。

トウジもいつもの覇気がない。
一応戦闘員であると言う自覚があるアスカは、それでも食事をきちんと食べていた。
しかし、トウジは普段の様に食べる事さえままならないでいたのだ。

「鈴原・・・」
そんなトウジに我知らず声を掛けるヒカリ。

「委員長、わしは、役に立たん・・・誰も護れん」
「鈴原!」
泪を零すトウジをヒカリは思わず抱締めた。

「委員長、わしは、わしは・・・」
「鈴原は頑張ってる!それは私が一番よく知っている!だから・・・だから・・・」
ヒカリもそこまで言って泪が溢れてきた。

黙ってヒカリの胸に顔を埋めているトウジ。

トウジの顔をヒカリは持ち上げるとその唇に貪り付いた。
一瞬眼を見開くもトウジもヒカリを抱締める。

お互いに吸い合う唇。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・鈴原・・・」
唇を離したヒカリは紅潮しており、濡れた唇が艶めかしい。

「委員長!」
トウジはそのままヒカリを押し倒し、再び唇を吸った。

抗いもせずトウジの行動を受け入れるヒカリ。
トウジはヒカリのTシャツとブラジャーを一気に捲り上げその乳房に貪りつく。

「ぁっ」
小さな吐息も漏らすもトウジの頭を優しく抱締めるヒカリ。

「委員長・・・委員長・・・」
トウジはヒカリの身体に唇を這わせながらヒカリのジーパンに手を掛けた。

腰を浮かすヒカリ。
トウジは、その白いパンティと共にジーパンを脱がす。

ジーパンとパンティがヒカリの片方の足だけに引っ掛かっていた。
トウジはジャージをトランクスごとずり下げると一気に挿入しようとする。

「そ、そこじゃない鈴原」
「す、すまん・・・委員長」
初めてのため、なかなか上手く行かないトウジ。

ヒカリはそっとトウジの物に手を添え導いた。

「ぅっ!」
自ら導いたとは言え、処女であるヒカリに痛みが走る。
小さな呻き声と共にトウジに強くしがみついた。

「委員長!」
トウジはしきりに腰を振っているが、処女膜に締め付けられあっと言う間に果てる。

初めてのヒカリには快感と言う物は味わえなかった。
しかし、思い人とやっと一つになれたと言う達成感で満たされる。

「・・・すまん、委員長」
「謝らないで鈴原、私は鈴原が好きよ」
そう言ってヒカリは優しくトウジに口吻する。

「委員長・・・」
「鈴原、誰か来るかも知れないから」
赤くなっているヒカリ。

こう言う時に現実的なのは女性の方だ。

「そ、そやな・・・」
慌ててジャージをずり上げるトウジ。

ヒカリも乱れた服装を直した。
しかしトウジもヒカリも後の処理をしていない。

トウジはネトネトとした股間にもじもじとする。
ヒカリも未だ何か挟まった様な感じがする股間にツーッと垂れてくる物を感じ苦笑した。

「い、委員長、よかったらこれから、わしの部屋にけぇへんか?」
眼を逸らしながら真っ赤になって言うトウジ。

ヒカリはそんなトウジの腕に抱き付き小さく頷いた。



それぞれがそれぞれの方法でゆっくり補完されていく中、使徒が現れた。

「第壱拾四使徒を光学で捕らえました」
発令所のメインモニターに使徒が映し出される。

「1撃で第17装甲板まで貫通!!」
その威力に驚愕したマコトが悲鳴の様な報告を行った。

「17枚もの装甲を一瞬にして・・・第伍使徒の加粒子砲並の破壊力ね」
リツコが呟く。

「エヴァの地上迎撃は間に合わないわ、弐号機、参号機を本部の防御に回して!」
ミサトが張り切って指示を出す。

結果論とは言え、前回ミサトの行動により、素早く使徒に対応できたのだ。
そして、パイロットに任せっきりだったのだが、ミサトは自分の指揮で使徒を倒したと思い増長していた。

状況と事実だけを述べると人命尊重のためエヴァを出動させ、素早く使徒殲滅に移行したとなる。
ナオコ達も対外的なものもあり使徒殲滅に対する貢献と相殺する以外にミサトの行動を責め切れなかったのだ。

「両パイロットまだ到着していません!」
「何ですってぇ!!」
マヤの報告にミサトは喚く。

通常の連絡を行って、アスカ達がそれ程、速く到着出来るわけはない。
今は昼間なのだ。
アスカ達は学校に通っている。

その頃、トウジとアスカはNERV名物の長いエスカレータを走っていた。
時折訪れる振動にもめげず一気に駆け下りるトウジとアスカ。

プラグスーツにも着替えず二人はケイジに向かう。
状況が一刻を争う事を感じ取っていたのだ。

「エントリープラグが挿入されます!」
「急いで起動シーケンス!」
マヤの報告にリツコが指示を出した。

「何やってたの!遅いわよ!」
いきなり通信を繋ぐと喚くミサト。

『煩いっ!だったら戦闘機ででも迎えに寄越しなさいよ!こっちはプラグスーツに着替えてもいないのよ!』

NERVの車から降りたアスカ達はNERVゲートから走って来ており、プラグスーツに着替えもしないでエントリーしているのだ。
ミサトに遅いと言われる筋合いは無かった。

「何ですってぇ!」
「ミサト!今は起動シーケンスの最中なのよ邪魔しないで!」

「くっ!」
自分は何もしていないのにただ、罵倒するだけのミサトをリツコが抑止する。
ミサトはそれでも起動シーケンスさえ終れば戦闘を行えると堪えた。

「アスカ!ごめんなさい、使徒はすぐジオフロントに入るわ、本部を護って」
リツコが代りにアスカに謝りを入れる。

精神的な安定がエヴァのシンクロには重要なのだ。

『任せて!』

「何、勝手に指示してんのよリツコ!」
「だったら使徒の状況ぐらい、伝えなさい!それが貴女の仕事でしょ!」

「くっ!アスカ、トウジ君、使徒は一瞬で17枚の装甲を撃ち抜いたわ。ありったけの銃火器をジオフロントに出すから応戦して!」

『他の武器は?』

「へ?」
ミサトが呆けた顔をする。

「アスカちゃん、出せる武器は全て出すわ。二人とも気を抜かないで」
そこでナオコが口を挟んだ。

『了解』

流石にミサトも司令に突っ掛る様な事はしなかった。

「使徒メインシャフトを降下中!!」
「ここに来るわ!!総員待避!!」

『総員待避!総員!』
突然メインスクリーンが爆発した。

使徒が発令所に乗り込んできた。

「くっ!ぐずぐずしてるから!」
ミサトが自分勝手な事を喚く。

使徒の眼が光り始め、全員が最後を覚悟したときに横の壁が破壊され弐号機が乗り込んできて使徒を殴り飛ばした。

「アスカ!」
リツコは喜びの表情で叫ぶ。

弐号機は使徒を射出口にまで押しつけるとアスカが叫んだ。

『くっ射出して!』

「マヤっ!五番ゲート射出!」
アスカの声に素早く反応しマヤに指示を出すリツコ。

ジオフロントへ射出される使徒と弐号機。

「参号機をターミナルドグマへ」
ナオコの言葉に頷くリツコ。

ミサトは食い入るようにモニターを見つめるだけで、有効な指示を出せないでいた。

「アスカ!そのまま使徒を殲滅!」
具体的な方法も述べずにミサトが指示を出す。

『ぐはぁぁぁっ!』

使徒を組み伏せていた弐号機を使徒の光線が貫く。
使徒の顔らしきところが光った時に咄嗟に避けた弐号機は左腕を持って行かれた。

「左腕の神経接続をカット!急いで!」
リツコの悲鳴にも似た指示が響く。

「アスカちゃん!無理しないでトウジ君が行くまで耐えて!」
ナオコが叫ぶもアスカの概念ではトウジが来ても援護ぐらいしか出来ない。

そして、この使徒の強さは身を持って感じていた。

『あたしは、あんたなんかに負けてらんないのよぉっ!!』

アスカのその叫びと共に弐号機の咆吼が響き渡る。

「弐号機のシンクロ率が急激に上昇!200%!まだ上がります!」
「駄目よ!アスカ!落ち着いて!それ以上シンクロ率を上げちゃ駄目!」
マヤの報告にリツコが叫ぶ。

「アスカ!その調子よ!使徒を殲滅しなさい!」
バッチーン

ミサトの指示と共に、リツコがミサトに平手を見舞った。

「なっ!」
リツコを睨付けるミサト。

「貴女にも資料を渡しているはずよ!これ以上シンクロ率が上がって400%を超えたらどうなるか!解ってて言ってるんでしょうね!」

「シンクロ率が上がれば良いんじゃ・・・」
「いい加減、資料ぐらい読みなさい!」

「駄目です!300%を超えました!」
「落ち着きなさい!アスカ!」
マヤの報告になんとかアスカを止めようとリツコが叫ぶ。

その間も使徒と戦闘を行い、使徒の触手を引き千切ると自分の左腕に付け再生させる弐号機。

「「「凄い・・・」」」
その光景を見たミサト、マコト、シゲルは揃って声を上げた。

その意味を知っているリツコとマヤ、ナオコと冬月は苦虫を噛み潰した様な顔をしている。

「シンクロ率400%超えました!」
「アスカ!」

一方的に使徒を殺戮する弐号機。
そして、マウントポジションで使徒を殴り付けていた弐号機がいきなり使徒にかぶりついた。

「使徒を・・・使徒を喰ってる・・・」
ミサトが震えながら呟く。

参号機が赤い槍を携えジオフロントに出てきた時には既に使徒は殆ど弐号機に喰われていた。

『惣流・・・』

その様子に気分が悪くなったマヤが吐く。

「SS機関を取り込んでいるんだわ」
そう言ったリツコの顔には明らかな恐怖が浮かんでいた。

そして弐号機は立ち上がり、ジオフロント全体を揺るがす咆吼を上げたかと思うと弐号機の装甲板が吹き飛んだ。

「な、拘束具が」
「拘束具?」

「あれは、衝撃から身を守る装甲板ではなく、エヴァの有り余る力を押さえ込むための拘束具なのよ・・・呪縛を自らの力で解いたエヴァはもう誰にもとめられないわ」
リツコの独白に近い呟きが漏れる。

「キョウコ・・・」
ナオコのその呟きを聞いたのは冬月だけだった。



ジオフロント内になぜか存在している西瓜畑では、何を考えているのか、加持が水をまきながら、弐号機を見ていた。

「さてさて、弐号機の覚醒とSS機関の開放・・・ゼーレが黙っちゃいませんぜ。赤木司令」
加持はピラミッド状のネルフ本部の最上部に目をやった。



「シンジ君、アスカが取り込まれたわ」
マヤの家で食事中にリツコが口を開いた。

「そうですか、でもリツコさんなら大丈夫ですよ」
ニッコリと笑い、そう答えるシンジ。

トライデントの件以来、暗い話しばかりであったが、リツコはそのシンジの笑顔に救われた。

「シンジ君、手伝ってくれない?」
「えっ?僕ですか?」
うんうんと頷くマヤ。

「解ってるわ、レイも一緒で構わないから」
そう、シンジはレイと離れるわけには行かないからと、NERV内での手伝いは断っていたのだ。

現に何度も襲われているレイとシンジの状況から、シンジだけNERVで作業させる事は出来ない事は解っていた。

シンジの知識量についてはナオコも認めている。
既にリツコはナオコの了承を得ていた。

「・・・私は、何をすれば良いの?」
「レイ?貴女もエヴァの知識についてはかなりの物を持っているのよ。シンジ君のサポートをお願いするわ」

「・・・私は、私はシンジを護れば良いのね」
「「「・・・(汗)」」」
ちょっと違うぞと冷や汗を流す3人であった。



弐号機が格納されているケイジが一望できるオペレートルームでは、拘束された弐号機の状況が調査されていた。

包帯でぐるぐるに巻かれたような弐号機の状態。
装甲を吹き飛ばした弐号機は素体が剥き出しのための応急処置である。
その容姿はミイラの様にも見える。

「やはりダメです。エントリープラグの排出信号、受けつけません」
「予備と擬似信号は?」

「拒絶されています。直結回路も繋がりません」
「プラグの映像回線、繋がりました。主モニターに廻します」
モニターに映し出されたプラグ内の映像を見て、そこに居た全員が一瞬息を飲んだ。

「なによ、これ・・・」
そこに映し出された映像にはアスカの姿は無く、ただ少し濁ったLCLの液体だけがあった。

そこに漂うアスカの制服。
スカートだったからだろう、アスカの靴下とパンティがふわふわと漂っている。

「アスカは、一体どうなったのよ?!」
「これがシンクロ率400%の正体・・・アスカはエヴァ弐号機に取り込まれてしまったわ」
ミサトの怒声を浴びた問いにリツコが淡々と答える。

「何よそれ!エヴァって何なのよ!」
「人の作り出した、人に近い形をした物体としか言いようが無いわね」

「人の作り出した?あの時、南極で拾った物を、ただコピーしただけじゃないの!オリジナルが聞いて呆れるわ」
「ただのコピーとは違うわ、人の意志が込められているもの」

「これも誰かの意志だって言うの?」
「あるいはエヴァの」

「なんとかなさいよ!あんたが作ったんでしょ!最後まで責任取りなさいよ!」
「貴女に言われるまでも無いわ。それよりミサト、貴女は自分の責任をどう取るつもりなのかしら?」

「私の責任って何よ!」
「シンクロ率400%の結果は資料で渡してあったわ、でも貴女は私の抑止を聞かないでアスカを戦闘に煽り立てた。これは貴女の戦闘指示の結果でもあるのよ」

「私が悪いって言うの?!」
「何も悪くないと思っているの?」

「ぐっ!」
それはミサトにとって自らを偽り、自己完結している問題であった。

全ては使徒を倒すためにしかたのなかった事として。
そしてその感情の矛盾は責めれる所を見つけると責めると言う行動に出ている。

「ここに居ても喚いているだけなら邪魔だわ。出て行って頂戴!」
「なっ!」
その時、漸くミサトも周りの視線に気が付いた。


そして流石のミサトも居辛くなりオペレートルームを後にする。

すると、オペレートルームに向かってくる仲睦まじいカップルが眼についた。

「あらぁ、貴方達は相変わらず仲良いわねぇ」
フレンドリーに話し掛けるミサトに嫌悪の眼を向けるシンジとレイ。

「な、何よ!その眼は!同じチルドレンが瀕死になって使徒と戦っていると言うのにイチャついている癖に!」
ミサトは二人の自分を見る眼に怯み、つい思ってもいない事を口走る。

明らかにしまったと言う顔をしているミサト。

「・・・私達のエヴァを壊したのは貴女の作戦。忘れたの?」
「なっ!なんですってぇ!」

「そして今回は惣流さんがエヴァに取り込まれる事が解っていて使徒の追撃を指示」
「なっ!私はそんな事、知らなかったわよ!」

「・・・資料に書いてあるわ」
「僕でも知ってる事ですよ」
シンジの方が遙かに多くを知っているが、その事は別にして、シンジ達が閲覧できるレベルの資料に書かれていると言う事だ。

「貴方達チルドレンは私の指揮に従う義務があるのよ!」
「・・・私達はチルドレンではないわ」

「へ?」
「僕達はNERV基金管理課に席を置いています」

シンジとレイは呆けているミサトを後にし、オペレートルームに入っていった。

「ぐっ!馬鹿にしてぇ!」
壁を殴りつけるミサトに黒服達が近寄ってくる。

「な、何よ!」
「司令がお呼びです。執務時間中だと言うのに、なんど執務室にご連絡しても留守でしたので我々がお迎えに上がりました」

「そ、そう・・・」
そして黒服達に囲まれ司令室に向かうミサトはまるで拘束されて連行されている様であった。



以前と違い、明るい司令室ではあったが、今日は執務机に腰掛けているナオコ。
司令室が明るくなってからは、応接セットを奨められていたミサトは、その雰囲気に剣呑な物を感じていた。

「葛城一尉、貴女の仕事は何かしら?」
「そ、それはエヴァを使って使徒を倒す事・・・」

「では、貴女の役職は?」
「は?作戦課長ですが」

「作戦課の仕事はなにかしら?」
「それは使徒に有効な作戦を立案し、その準備と指揮を行う事です」

「じゃぁもう一度聞くわね?貴女の仕事は何かしら?」
「・・・・・」
ミサトは答えに詰まってしまった。

作戦課が作戦立案とその準備、指揮を仕事としているなら、そこの長はその統括が仕事である。
エヴァを使って使徒を倒す事が仕事ではない。
有効な作戦があればエヴァを使用しなくても良いのだ。

「答えられないの?」
「作戦課の統括です・・・」

「そうね、それを忘れないで頂戴。そしてそのためには資料には全て眼を通して貰わないと行けないと言うのも解るわね」
「はい・・・」

「下がっていいわよ」
「失礼します」

司令室を出たミサトは落ち込んでしまった。
自分は何をやって来たのだろうか。
今更ながら舞い上がっていた自分に気付く。

「私の責任か・・・」
ミサトは蘇ってきたリツコの言葉をポツリと呟いた。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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