第拾八話
心の形


「いやはや、弐号機の覚醒、委員会・・・いえ、ゼーレにはどう言い訳するおつもりで?」
「弐号機は、我々のコントロールを離れていたわ。暴走するエヴァをNN兵器も含めた通常兵器で、どうこう出来るのならその方法を教えてもらいたいものね」

司令室でナオコと加持が応接セットでお茶をしながら話している。

「しかし、委員会は黙っちゃ無いでしょうな」
「弐号機は、凍結、委員会の別命あるまでは・・・」

「弐号機パイロットは取り込まれたままで?」
「サルベージは計画、進行しているわ」

「前例のないサルベージ、上手く行きますかね?」
「リョウちゃん?」
加持はギクッとした。

ナオコがこの呼び方をするときは碌な事がないのだ。

「そんな事に精を出さないで、貴方もそろそろ身の振り方を考えないとだめよ」
来たかと加持は渋い顔をした。

「葛城にまだそんな意志はありませんよ」
「あらそうなの?でも私が言ってるのは、そっちじゃないわよゼーレの鈴の加持リョウジ君?」

ビクッとする加持。

「ここでその話しをしますか・・・」
「内調の方は一応政府ですからね、簡単に殺す様な事はしないと思うけど、ゼーレは違うわよ?」

「はは、真摯に受け止めておきます」
「ミサトちゃんを泣かしたら駄目よ」

「はは・・・」
冷や汗を流すしか無い加持であった。

「サルベージは多分、問題ないわ。11年前と違ってMAGIもあるしリっちゃんもマヤちゃんも居る。シンジ君にレイちゃんもね」
「シンジ君ですか?」

「碇ユイと碇ゲンドウの息子よ彼は。それにレイちゃんは自分でシンクロの微調整が出来るほどエヴァに詳しいわ。NERVの中でも公にされては居ないけど知識だけならリっちゃんと良い勝負ね」

「正に天才児達ですか・・・」
「そうよ。だからと言って引き抜かないでね」

更に顔を引き攣らす加持であった。

「11年前と違うと言うのは?」
「あら知らなかったの?ユイは11年前の起動実験で初号機に取り込まれたのよ。その時はサルベージに失敗したわ。ユイに戻る気がなかったのかも知れないけど」

「なっ!」
簡単に極秘事項を喋ってしまうナオコに加持は驚愕する。

「貴方には、危ない橋をこれ以上渡らせる訳には行かないから、貴方の知りたい事を教えてあげるわ。だから自分で確かめようなんて事はしないで頂戴」
「自分の眼で確かめないと気が済まない質で」
加持はナオコの言葉に苦笑する。

「その眼で確かめるのだってMAGIを使ったり、残っている書物を見たりでしょ?それで事実は解るかも知れないけど真実には程遠いかも知れないのよ」
「それはどういう事です?」
加持は自分に自信があったため少しムッとする。

この辺りが一流に成り切れない所以なのだが、相手がナオコと言うのもあるのだろう。

「セカンドインパクトは葛城博士の実験の失敗によるエネルギーの放出だわ」
「アダムを卵まで還元した時にエネルギーが放出したので無かったのでわ?」

「そうよ、それが実験の失敗。本当はエネルギーの放出なんかなくってSS機関も人類の物となるはずだった。葛城博士の計画ではね」
「誰かが失敗に導いたと?」

「少し違うわ。失敗する事が解っているのに後押ししたのよ」
「それがゼーレ・・・」

「流石察しが良いわね」
「それが事実と真実は違うと言う事ですか?」
加持に取ってここまでの話しは事実であり真実であった。

事実と真実が違うと言う意味がくみ取れない加持。

「そうね、でもそれを知っていて全ての資料を持って前日に引き上げた人物が居るわ」
加持が眼を見開く。

「それがゲンドウさんよ」
「では碇司令は全て知っていたと」

「そうね、当時、ユイもその計画の事は知っていた。ユイは根本的に時期早々と反対していたわ。その意を受けてゲンドウさんは引き上げたのね。引き上げる時に持てるだけ資料を持って引き上げるのは当然よね」

「成る程、事実だけを見れば碇司令は全て知ってた上で失敗する方に加担していた様に思える。しかし真実は奥様の提言を受け入れ逃げ出しただけだと?」
「ゲンドウさんの望んでいたのはサードインパクトを利用して初号機に溶けたユイに逢う事だけよ。これでその話しに信憑性が出るでしょ?」

「ま、まさか全人類を生け贄に奥さんに会おうとしてたんですか?」
「そんな大袈裟な物じゃないわ。使徒を倒せば条件が揃う。その後小規模なサードインパクトで実現しようとしていただけよ。精々NERV本部くらいかしら彼の予想では」

「それにしたって・・・」
「そうね、やって来た事は許される事ではなかったわ」

「じゃぁゼーレの人類補完計画は・・・」
「全ての生命を儀式によるアンチATフィールドで一つの生命体とする。その後、強靱な精神を持っており優秀な民族であると思い込んでいる老人達は支配者になれると思っているのよ」

「馬鹿な・・・」
「そう、妄想に取り付かれた集団自殺にしかならないわ」

ほんの数十分で加持は今まで命を掛けて調べていた真実を簡単に説明されてしまった。
思わず煙草を取り出し火を付ける加持。

「私の解る事なら何でも教えてあげるわ、だから、もう危ない橋を渡るのは止めなさい」
「解らない事があるのですか?」

「人の心の中までは解らないわ」
「確かに・・・」
ゆっくりと煙を燻らせ、これからの自分の身の振り方を真剣に考えなければいけないなぁと思う加持であった。



「しかし、この映像は後で惣流さんには見せられないね」
「・・・どうして?」
端末を操作しながら、シンジとレイが話している。

正面のモニターにはエントリープラグの内部が映されており、そこにはアスカが着ていた制服と下着や靴下が漂っているのだ。
流石にブラウスの中からブラジャーは出てきていないが、パンティは既にスカートの中から出てきて、そのピンクの姿を惜しげもなく晒している。
しかもLCLに浸かっているため、濡れた状態でありスケスケに見えるのだ。

「彼女はプライドが高いからね、自分の下着を大勢の眼に晒したと解ったら憤慨すると思うよ」
「・・・シンジになら見られても良いわ」
顔を紅潮させて言うレイ。

「彼女はそうは思ってないんじゃないかな?」
シンジはプログラムを打ち込みながら苦笑している。

レイはシンジに頼まれたデータ収集とその打ち込みを行っていた。

世間話をしながらも着々と作業が進んでいく二人に職員達も最初は驚愕していたが、今では、いつもの事と自分の作業を必死に行っていた。

世間話をしながら作業する中学生二人よりも自分達の方が作業量が少ない事が発覚したからだ。



「鈴原、アスカは無事なの?」
「解らん、今、赤木はんとシンジ達が何やらやってるらしいわ」
トウジの腕枕でヒカリが親友の身を案じていた。

ヒカリの部屋には姉と妹が居る。
トウジの部屋には妹が居た。
そこで二人が考えた作戦が、トウジの妹をヒカリの部屋に遊びに行かせる事だった。

幸いヒカリの妹とトウジの妹は仲が良かった。
そしてヒカリの姉は、そんなヒカリの状況をよく理解していて協力してくれているのである。

既に施設内ではとっくに公認の二人である。
オマセな妹達も気を利かしていると言う訳であった。

「碇君が?」
ヒカリには少し大人びているとは言っても普通の中学生が何か出来るとは思えなかった。

「あぁ、シンジの奴はかなり優秀らしわ、惣流も大学卒業してるらしいし、綾波なんかエヴァの事は赤木はんと同レベルって伊吹はんがゆうとったわ」
「へぇ皆凄いのねぇ」

「あぁわしだけ何か普通の中学生っちゅう感じや。ちょっと落ち込むで」
「うふっ、私は普通の鈴原が好きよ」
そう言ってトウジに口吻るヒカリ。

外では照れて手も繋いでくれないが、二人っきりの時はトウジもこういう行動でも受け入れる。

「な、なんや委員長、照れるやないか」
言葉には弱かった。



葬儀の最中で聞こえてくる話。

「仮定が現実の話になった。因果なものだな、提唱して本人が実験台とは」
「では、あの接触実験が直接の原因と言う訳か」
「精神崩壊、それが接触の結果か」
「しかし、残酷なものさ、あんな小さな子を残して自殺とは」
「いや、案外それだけが原因ではないかもしれんな」
大人達の話しを物陰で聞いている小さなアスカ。

「アスカちゃぁん、ママねぇ今日貴方の大好物を作ったのよ、ほら、好き嫌いしてるとそこのお姉ちゃんに笑われますよぉ」
病院で母親を見ているアスカ、そこのお姉ちゃんとはアスカを指している。

病院の医師らしき女性と父親の話し声が聞こえる。

「毎日あの調子ですわ、人形を娘さんだと思って話しかけてます」
「彼女なりに責任を感じているのでしょう、研究ばかりの毎日で娘を構ってやる余裕もありませんでしたから」
「ご主人のお気持ちはお察しします」
「しかし、あれではまるで人形の親子だ、いや、人間と人形の差なんて紙一重なのかも知れません」

「人形は、人間が自分の姿を模して作ったものですから、もし神が居たとしたら我々はその人形に過ぎないのかもしれません」
「近代医学の担い手とは思えないお言葉ですな」
「私だって医師の前にただの人間、一人の女ですわ」

墓標の前で血縁者らしきおばあさんが泣きながら話しかけてくる。
「偉いわねアスカちゃん、いいのよ我慢しなくても」
「いいの、あたしは泣かない、あたしは自分で考えるの」

猿のぬいぐるみを抱き泣いているアスカ。
「ウェェェーーーン、ヒック、ェェーーッン」
(なんであたし泣いているんだろう、もう泣かないって決めたのに)

引き裂かれるぬいぐるみ。
「どうしたんだ?アスカ、新しいママからのプレゼントだ、気に入らなかったのか?」
「いいの」
「何がいいのかな?」
「あたしは子供じゃない、早く大人になるの、人形なんてあたしには要らないわ」

「だからあたしを見て、ママお願いだからママを止めないで」
「一緒に死んでちょうだい」

「ママ、お願いだからあたしを殺さないで!嫌!あたしはママの人形じゃない!自分で考え自分で生きるの!パパもママも要らない一人で生きるの」
「アスカちゃん、一緒に死んでちょうだい」

「一緒に死ぬわママ、だからママを止めないで、ねぇママ!」
「ママーーーーーーーッ!!」

そんなアスカを後ろから優しく抱締める手。

「頑張ったのねアスカちゃん」
「ママ!ママ!」

振り返り縋り付くように抱き付くアスカ。

「もう大丈夫よ」
金髪碧眼の女性がアスカを優しく抱締める。

「ママ!もうどこにも行かない?」
「ママは何時もアスカちゃんと一緒に居たわ」

「ママ?」
「アスカちゃん?皆、貴女を待っているわ」

「ママさえいればいいの!」
「それは本当かい?」

「あなたは誰?」
金髪碧眼の女性が、突然現れた男の子からアスカを護る様に背中に庇い尋ねた。

「僕はシンジ、碇シンジです」
「・・・綾波レイ」

「シンジとレイ?」
「あらアスカちゃんのお友達?」

「惣流=キョウコ=ツェッペリンさん、アスカとここを出て貰えませんか?」
「それは出来ないわ、それより碇シンジ・・・まさかユイの?」

「その通りです。そして惣流さんと貴女を連れ戻しに来ました」
「私が出たらアスカちゃんが・・・」

「惣流さんはお母さんさえ居れば良いとさっき仰ってましたよ」
「そしたら使徒は?」

「使徒なんてどうとでもなります。それより惣流さんの方が心配じゃないですか?」
「アスカちゃん?それで良いの?」

「どう言う事?」
「キョウコさんが、ここから出ると惣流さんはもうエヴァには乗れなくなるんだ」

「あたしにママかエヴァを選べって言うの?」
「元々、キョウコさんに見て貰いたくてエヴァに乗ったのに選択の余地があるの?」

「使徒はどうするのよ!」
「・・・私と碇君でなんとかするわ」

「なんとかってどうするのよ!」
「僕達がここに来られる理由、キョウコさんは薄々感づいているのでは無いですか?」

「そう、そう言う事なのね、解ったわ。アスカちゃん一緒に行きましょう」
「ママ?」

「もう離さないわ、私の大事なアスカちゃん」
「ママ!」
しっかりと抱き合うアスカとキョウコ。

そして、アスカの手をレイが取り、キョウコの手をシンジが取って光の漏れる方向に歩いて行く。



「サルベージ、スタート」
リツコの合図と共に、アスカのサルベージ計画がスタートした。

ナオコも真剣に見ている。

シンジからの懇願で、シンジはコアに手を付いている。
その後ろではレイが何故か二人分の白衣を持って佇んでいた。

その時、計器が異常な数値をはじき出し、警報が鳴り響く。

「どう言う事!?」
「つまり・・・失敗」

「え!?」
「干渉中止、現状維持を最優先。パルスの逆流を防いで」
ミサトが呆然としている間にも、リツコは最善と思われる指示を出し続ける。

「なぜ?帰りたくないの?アスカ・・・」

サルベージを簡潔に言えば、プラグ内に存在しているアスカの体を構成する物質に、他人から見たアスカのイメージを送り込む事で自我を確立させ、魂によって体の再構成を促す事だ。

しかし、そのイメージはあくまでも他人から見たもので、アスカの内面とは、かけ離れたものでしかない。
そんなイメージから、アスカが自分を見つけられる筈もないのだ。

「全作業中止、電源を落として」
リツコから、その指示が出た時には遅すぎた。

「ダメです。プラグがイグジットされます!」
「アスカ!!」

プラグが開いて、中から溢れるように流れ出たLCLを見て、ミサトが叫んだ。

「人、一人・・・人、一人助けられなくて、何が科学よ!!アスカを返して・・・返してよ!!」
ミサトはアスカの制服を強く掴み抱締めて泣いている。

使徒との戦闘時以外は、人情の厚いお姉さんで有ることは間違いないのだ。

「そんなに悲観するものじゃないわよ」

弐号機の前に座り込んで泣きじゃくるミサトに、上の方から優しく声が掛けられた。

「・・・え?」
声のする方に目をやったミサトは、その光景を理解できない。

「でも、ありがとうアスカちゃんのために泣いてくれて」
ミサトの知らない女性が白衣を着てミサトに話し掛けていたのだ。

「・・・まさか!!・・・そんな・・・」
リツコは、その姿にミサト以上の驚愕の表情を浮かべた。

「あらあら、アスカちゃんてまだこんな可愛い下着をつけていたのね」
そう言うとキョウコはLCLと共に流れ出てきたアスカのパンティを嬉しそうに拾い上げる。

「キョウコ!」
後ろでモニターを見ていたナオコが叫んだ。

そして、キョウコの後ろには白衣に覆われて眠っているアスカをシンジが抱えている。

エントリープラグに皆が意識を囚われている時にシンジはコアから二人を引きずりだしたのだ。

キョウコは意識があったが、アスカは昏睡していた。

「これがシンジ君の言っていた、驚かす事だったのね」
リツコとマヤは前日にシンジから話しを聞いていた。

根本的にエヴァのサルベージはデータ転送のみでは不可能だとシンジは結論付けていた。
何故なら、その魂はエヴァの中、即ちコアに取り込まれているからである。
元々のサルベージ方法はエントリープラグに魂ごと身体の構成物質が存在していると考えられていた方法なのだ。

身体の構成物質はエヴァの素体から作る事ができる。
LCLはエヴァ(使徒)の体液以外のなにものでもないからだ。

そしてシンジが弐号機のコアから二人を連れ出すカモフラージュとして、サルベージは行われたのである。
勿論、オペレータルームにはシンジ達の行動は映っていない。

つまり、リツコとマヤは解っていて芝居を打ったのである。
しかしキョウコがサルベージされる事は聞いていなかったのだ。

ただ、シンジから「ナオコさんを驚かす事がある」と聞いていただけだった。

「シンジ君にレイちゃん、本当に有りがとう」
そう言ってキョウコはシンジ達に頭を下げる。

「それより速く惣流さんと、キョウコさんも一緒に検査を受けた方が良いですよ」
「そうね、そうさせて頂くわ」
そう言ってキョウコは入ってきた救護班と共にアスカをストレッチャーに乗せケイジを後にした。



「ここは・・・」
アスカは見知らぬ病室で目覚めた。

「おはようアスカちゃん」
「ママ?」

キョウコはニッコリと微笑んでアスカの手を握っている。

「嘘!そんなはずない。ママは死んだのよ!」
「シンジ君とレイちゃんが助けてくれたのよ」
他人が聞いたら話しが噛合ってないと思っただろう。

しかし、この言葉はアスカが叫び出すのを止めるのに充分な効果があった。
夢だと思っていた事を、この自分の手を握っている女性は知っているのだ。

そして、その夢の中に居た母親と同じ容姿。
自分を置いて死んでしまった時の歳ぐらいで更に血色が良い。

「どうして・・・ママなの?本当に?」
コクリと頷くキョウコ。

理性ではそんなはずはないと言っている。
しかし本能が確信していた。
紛れもなく自分の母親だと。

「ママ!」
アスカは遂に泣き出して、キョウコに抱き付いた。

「あらあら、大丈夫、もうママはどこにも行かないわ」
「ママ、あれは現実の事だったの?」

「そうね、現実であり現実でない空間、アスカちゃんとママの心が繋がった空間よ」
「何故シンジ達が出てきたの?」

「それはアスカちゃんを思う強い心が私達に呼びかけてくれたのよ」
「シンジとレイが?」
コクリと頷くキョウコ。

「じゃぁあたし、エヴァに乗れなくなったの?」
「そうね、それも事実だわ。エヴァよりママを取ってくれて嬉しかったわ」
キョウコは、そう言ってニッコリと微笑む。

そこに扉が開き、ナオコとリツコが入って来た。

「お目覚めねアスカ」
「リツコ・・・司令・・・」

「でもキョウコ?それは反則じゃない?私はこんなに老けてしまったのに」
「あら?全く老けなんて感じさせませんわよ」

「なんか勝ち誇ってて気分悪いわよ」
そう言ってナオコは笑っている。

「アスカ?貴女はもうエヴァには乗れないわ、それは理解している?」
コクンと頷くアスカ。

「そう、良かった、じゃぁ退院したらシンジ君達と同じくNERV基金管理課に席を置いてくれるかしら?」
「アタシはまだNERVに居てもいいの?」
アスカらしくない怖ず怖ずとした眼をして尋ねる。

「勿論、貴重なエヴァの操縦を行っていたチルドレン、更には既に大学も出ているわ。NERVとして、そんな貴重な人材を手放すはずないでしょ」
リツコは微笑みながらアスカにそう言った。

「本当に?アタシはここに居てもいいの?ママと一緒に居られるの?」
コクリと頷くキョウコ。

ナオコとリツコも微笑みあっていた。



その頃ミサトは自分の執務室で端末に向かっていた。

そこにはミサトが気にも留めていなかったが大事な事が多種多様に存在した。
ゲンドウの居ない今、ミサトの閲覧できる物はかなり多くなっていた。

エヴァの制作者。
制作年度。
初号機の実験失敗の記録。
弐号機の実験失敗の記録。

その中にはミサトの聞いた事もない様な話まで閲覧できた。
マルドゥック機関の事。
第3新東京市立第壱中学校2−Aに集められていたチルドレン候補達。
そのための保護施設。
エヴァのシンクロの原理。
近親者のコアは既に存在する事。

ロンギヌスの槍。
人類補完委員会。
そしてセカンドインパクトの真意。

「何ですって!!」
ミサトは叫び声を上げる。

ミサトは頭を抱えて暫く固まった。
余りにも自分が情けなくなっていた。

「私は何をやっていたの?」
それは見える所にあるのに見る事さえしないで、誤った認識で居た自分への自己嫌悪。

実は、それらの多くはゲンドウが居なくなってから閲覧が可能に成った物だが、ミサトはそれが最初から見る事が出来ていた物だと思い、更に落ち込んでいた。

そして、最初の戦闘からの記録を見直す。

シンジを無理矢理初号機に乗せるNERV。
客観的に見て自分の撤退命令に従っていたら初号機が殲滅されて居たと推測される第四使徒戦。
無謀にも敵の攻撃手段も調査せず敵の目の前に射出させた初号機。
シンジの提言を聞かず僅か8.7%の勝率の作戦を強行。
その結果二体のエヴァを失ってしまった。

ナオコに指摘された第六使徒戦。
敵の殲滅を確認せず気を抜いた第七使徒戦。
捕獲を優先して死なせてしまったフィフスチルドレン。
1/10000の勝率もない作戦を提案した第拾使徒戦。
リツコとナオコが倒した様な物の第壱拾壱使徒。
シンジの発言であっけなく倒された第壱拾弐使徒。
結局、少年達を救出できなかった第壱拾参使徒。
そして弐号機の暴走で勝てた前回の使徒。

「私の作戦と指揮で倒した使徒なんて居ない・・・」
ミサトはポロポロと泪を流し始めた。

その場に居る時は自分の指揮で倒した気になっていた。
しかし、今、映像を見直すと客観的に見て、自分は喚いているだけで的確な指示を出して居ない。
更には、問題な指示まで出している。
そして、指示に従わないと喚いていたのだ。

「私は馬鹿だ・・・」
ミサトは自分を詰る以外に術は無かった。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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