第拾九話
人の形


「さて、シンジ君、まずキョウコの事はお礼を言っておくわ」
今はすっかり明るくなった司令室の応接セットでナオコが紅茶とケーキを用意し、ニッコリと微笑みながら言う。

しかし、その微笑みはどちらかと言うと背筋に悪寒を走らせる類の笑顔。
シンジは引き攣った笑いを浮かべながら応対。

レイは横で我知らずと言う雰囲気でケーキを頬張っている。

「それはそれとして、一体どういうつもりかしら?」
「え、えっとぉ何の事でしょうか?」

「まずは、弐号機よ」
ふぅっと溜息を吐きながらナオコはソファーに深く腰掛け背中を凭れ掛けて言った。

「どの道、SS機関を取り込み暴走した弐号機は封印では?」
「確かにね、でも動かせるのと動かせないのとでは大きく違うわ、しかもSS機関搭載」

「どうしてもって言うなら僕が動かしても良いですよ、でももう必要ないと思いますけど」
「動かせるの?」
ナオコは眼を見開いた。

レイも頬に生クリームを付け、フォークを銜えたまま眼を見開いてシンジを見ている。

「操ると言った方が正しいですけどね」
「どう違うの?」
ナオコは興味津々に尋ねる。

「シンクロでは無いと言う事ですよ。まぁ当然シンクロ対象の魂が無いからなんですけど」
「取り込まれないの?」

「ええ、取り込まれるのは過剰シンクロ故にですから、操る分には大丈夫だと思います」
「どうやって?」
ナオコは言葉の掛け合いをすっ飛ばして聞きたい事を聞いた。

「同化するんです。弐号機はアダムのコピーですからね。同化できるんですよ」
「ふぅ〜計り知れないわね」
ナオコはお手上げと言うポーズを取る。

「まぁカヲル君、第壱拾七使徒ですけど、彼が遣っていたので僕にもできると思っているだけで試したわけじゃないですけどね」
「壱拾七使徒はまだ来てないわよ」

「僕の記憶ですよ」
シンジは紅茶を一口飲むとニッコリと微笑んでそう言った。

「まぁ良いわ、じゃぁアスカちゃんはどうするの?」
「僕達と同じ扱いじゃまずいですか?」

「扱いは構わないけど、弐号機が貴方に動かせると知ったら、自分にも乗せろって言って来るんじゃない?」
「だから、どうしてもって言う時にしてください」

「ふぅ一回こっきりって事ね」
「そうですね、それよりダミーシステムで動かした方が良いんじゃないですか?」

「そうね、その手があったわ。キョウコも居るし、すぐ実用にできそうね」
シンジはそんなナオコに微笑んでいた。

「後・・・貴方、ユイもサルベージ出来たんじゃないの?」
「できましたよ、でも母さんは既に狂ってましたから」

「狂ってた?」
「キョウコさんは取り込まれてからもずっとアスカと接して居たので自我を保って居られたんです。でも母さんは10年間もほったらかしでしたから」

「寝て居たんじゃないの?」
ぶっとシンジは紅茶を吹き出す。

「幾らなんでも10年間も寝てませんよ。起きる度にエヴァの虚無に晒されて、何もできずに居たんです。普通、狂いますよ?」
「キョウコはアスカちゃんを感じていれたから自我があったと言うのね?」

「えぇ、ドイツ支部の過酷な訓練スケジュールが逆に良かったのでしょうね」
「何が幸いとなるか解らないものねぇ」
ナオコも紅茶を一口飲むとふぅっと溜息を吐いた。



暗室に音声だけのモノリスが並ぶ。
その中に一ヶ所だけ、普通の机に普通の人間が浮かび上がっている。

ゲンドウの代りにNERV総司令となったナオコである。

『赤木ナオコ博士。惣流=キョウコ=ツェッペリン博士がサルベージされたと言うのは事実かね』
Number01と表示されているモノリスから議長であるキールの声が響く。

「はい、先の戦闘でシンクロ率400%を超え弐号機に取り込まれた弐号機パイロットをサルベージした際、一緒にサルベージされましたわ。嬉しい誤算ですわね」
物々しい雰囲気など歯牙にも掛けずナオコがしれっと言い放つ。

『早急なる新しいコアの乗せ替えとチルドレンの選出を行い賜え』

「あら?弐号機は封印ではございませんでしたか?」

『しかし、動かせるチルドレンが居ないのではいざと言う時に困るだろう』
別なモノリスから甲高い声が聞こえる。

「問題有りませんわ。ダミーシステムで起動させます」

『なんと!ダミーシステムが完成したのかね?』

「いえ、まだですわよ。しかし、弐号機パイロットは健在、しかも惣流=キョウコ=ツェッペリン博士まで復活した今、完成は時間の問題ですわ」

『確かにデータも潤沢であり、頭脳も揃っている』
『残る使徒は後3体、早急なる完成を期待しますよ』

「そこで予算の追加をお願いしたいと存知ますの」

『それは、無理だ。我々にも無尽蔵に金が湧いて出てくるわけではない』

「それは困りましたわねぇ、前回の使徒による被害と、更にダミーシステムの開発を急ぐとなると予算が足りませんわ」

『解った、予算については一考しよう。赤木博士、後は頼みましたぞ』

議長であるキールが締め括る。
ダミーシステムの完成が近い事を知ったゼーレの老人達は機嫌が良いようだ。

現在のシンクロ方法は、近親者の魂をまずコアにインストール。
そして、その子供をシンクロさせると言う方法であり、やってみなければシンクロする確率も不明、非常に曖昧且つ労力の要する作業であったのだ。
倫理感から言えばとんでもない事なのだが、彼らからすれば、その労力こそがネックであった。

しかし、その近親者の魂を必要としないダミーシステムは、彼らにとって都合良く動かせるエヴァが、労力を必要とせず誕生すると錯覚させたのである。

「解っておりますわ」

『では、後は、こちらの仕事だ』
キールの言葉と共に次々と消えていくモノリス。

『期待しておりますぞ、赤木博士』
一言を残してキールのモノリスも消え去り、後には老人達を小馬鹿にした笑みを湛えたナオコが残った。



ミサトは家で呆然としていた。
自分がこれからどうするべきなのか解らない。

自分はNERVに居て良いのだろうか?
いや、居て何か出来るのだろうか?

父の仇と思っていた。
使徒を殲滅したとき、仇を取ったと快感が走った。
しかし、現実は自分は何もしていない事に気が付いたのだ。

仇と思っているボクサーを誰かが叩きのめすのをテレビで観戦している様な行動だった。
セコンドにすらなっていない。
それどころか、感情に任せてビールの缶をリングに投げ入れ、そのせいで仇を打ちのめしてくれている者が不利に陥る様な事をしていた。

首からぶら下がる十字架を握り締め、思考の淵に落ち込んでいる時に電話が鳴る。
取る気にもなれず、ボーッと眺めていると留守電に変った。

「葛城、俺だ、多分この話を聞いている時は君に多大な迷惑を掛けた後だと思う。すまない。りっちゃんにもすまないと謝っておいてくれ。後、迷惑ついでに俺の育てていた花がある、俺の代りに水をやってくれると嬉しい。場所はジオフロントのG−8エリアだ。葛城、真実は君と共にある。迷わず進んでくれ。もし、もう一度逢える事があったら8年前に言えなかった言葉を言うよ、じゃぁ」

「何が「じゃぁ」よっ!いい加減にしなさいっ!あんた今、何処に居るの!」

「か、葛城っ!、なっなんで居るんだ?!」
「何でもかんでも、何が8年前に言えなかった事よ!今いいなさい!すぐいいなさい!即言いなさいっ!」

「い、いや、それはだな、その、もう一度逢えた時にだな・・・」
「じゃぁ今逢いなさい!すぐ逢いなさい!即逢いなさいっ!」

「わ、解った、解った、じゃぁ30分後に、例の喫茶店で」
「いいわ、1分でも遅れたら只じゃ置かないからねっ!」

「わ、解った「ツーツーツー」・・・」
加持は計画を少し遅らせる事を余儀なくされた。

「なんでこんな時間に葛城は居たんだ?」
首を傾げながらも約束の場所に向かう加持。

歯車は、予期しない場所で組み上がって行く。



「元気そうだね?これ施設の皆から」
アスカの病室で、シンジがそう言うとレイが手に持っていた果物のバスケットをアスカに渡した。

「あ、ありがとう」
アスカはシンジとレイが病室に入ってきてからどこか落ち着かない。

アスカとしてはどう、対処して良いのか解らないのだ。
聞きたい事は沢山ある。
キョウコが、二人が助けてくれたと言っていた。

今までのアスカの強気は、エヴァのパイロットと言うところにあったのだ。
そして、エヴァに乗れなくなったことは理解している。
しかし、シンジ達はエヴァ無しでNERVに貢献していると言う事だ。

今までは、元チルドレンと言う事で他組織に懐柔されないため、施設の管理と言う仕事を対外的に与えられてNERVに居ると思っていた。
だが、実際に自分のサルベージに多大な貢献をしたと聞いている。
チルドレンと言う肩書きがなくてもこの二人はNERVで必要とされていると感じた。

自分はどうであろうか?
アスカは未だ自分の価値を見出せないで居たのだ。

「あ、あんた達には一応、礼を言っておくわ」
漸く発した言葉は、心とは裏腹に、憮然とした物であった。

「施設の皆も、アスカが帰ってくるのを待ちわびているよ。早く元気な顔を皆に見せてあげて」
シンジはそんなアスカの心の推移など気にせず、話す。

「そんな事より、あんた達一体どうやったの?」
「何を?」

「サ、サルベージよっ!あんた達が手伝ったったって・・・」
「そのまんまだよ、手伝っただけ」

「でも、あたしはあんた達と中で会ったわ」
「・・・私も?」
レイがキョトンと首を傾げる。

そう、アスカが会ったのはこのレイでは無く、シンジの中のレイである。
シンジがコアから直接ダイブした魂は当然一つになっているレイも伴った。
しかし、アスカにそんな事は解らない。

「そ、そうよ!あんた達、二人があたしとママを引っ張って行ったんじゃない!」
「それはアスカの心がそう感じただけじゃないかなぁ?」
シンジにそう言われると、アスカも突っ込む事はできなかった。

キョウコからも現実であって現実でない世界などと不可解な説明をされている。

「あたしがそれを望んだと言うの?」
「僕達の望みを受け入れたと言う事じゃない?」

何時の間に剥いたのであろうか?
その言葉と共に差し出された、皮を剥かれ8等分され、爪楊枝までさされている林檎をアスカは釈然としないまま一つ取り、シャリッと囓った。



巨大なクレーンによって細長い円筒状の赤い物体が運ばれている。
それを見守っているのはナオコ、キョウコ、そしてリツコである。

円筒の曲面に合わせた四角いプレートには文字が刻印されていた。

DUMMY SYSTEM EVANGELION <2015> NAOCHAN AND RITCHAN - 00 SPECIAL THANKS KYOKO

「試作されたダミーシステムです。ただ、人の心、魂のデジタル化はできません。あくまでフェイク、擬似的なものにすぎません。パイロットの思考の真似をする、ただの機械です」
「漸く完成したわね」
リツコの説明にナオコが呟く。

「私はスペシャルサンクスなの?大体ナオちゃんってなによ」
キョウコは若干不満気であった。

「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み起動さえすれば良いわ」
「ちょっと何、無視してるのよ!」
腰に手を当てプンプンのキョウコ。流石アスカの母親である。

「ふふ、さっき入れて貰ったからそれが精一杯だったのよ。そんなに怒らないで」
「そう言う事ならしかたないわね」
意外とあっさりしていた。

「取り敢ず弐号機に積みましょう」
「起動実験は?」

「次ぎの使徒って所ね」
「ぶっつけ本番?」
キョウコがナオコの言葉に笑いながら突っ込む。

会話とは裏腹に3人の顔には自信が溢れていた。



とある喫茶店に、見るからに不機嫌な、真っ赤なジャケットを着た女性が座っていた。
その手はテーブルを人差し指でトントンと叩いている。
組まれた足は、苛々している心情を如実に現わしていた。

カランッと言う音と共に、無精髭によれよれのシャツとジャケットを着込んだ男が入って来た。
その女性は、その男をキッと睨付ける。
ヘラヘラと女性の元へと向かう男性。

店員であるウェイトレスは溜息を一つ吐くと、水とおしぼりを持って、そのテーブルへと向かった。

「いやぁ〜待たせたかな?あっコーヒーを」
「まぁ遅刻はしなかったようね」
頭をボリボリかきながら加持は、相変わらず飄々とし、ウェイトレスに注文した。

ミサトも一応、加持が遅刻しなかったので、怒りを抑えているようだ。

「で?説明してくれるんでしょうねっ!」
「いや、こんな所で話す事じゃないんだが・・・」
ミサトが詰め寄るも、加持は周りを見回しながら意味深に呟く。

加持としては、表では話せない事だからとあやふやに誤魔化して、機嫌を少し取ってから計画に掛かろうと考えていたのだ。

しかし、ミサトの発言は加持を狼狽えさせた。

「ふんっ!どうせ、危ない仕事してトンズラしようとでも考えているんでしょ?私も連れて行きなさいっ!」
「葛城?」

「私ね、NERVで何もしてない事が解ったの。もう私の居場所はあそこには無いわ。NERVにはあの子達がいれば問題ない。私は邪魔をしてただけだったのよ・・・」
「葛城・・・」
ミサトは未だアスカがエヴァに乗れなくなった事は知らなかった。

加持はそんなミサトが煮詰まっている事を知る。

自分の命は、この仕事をこなすと風前の灯火であることは解っている。
やらなければやらないで、指令元から狙われるだろう。

(葛城と二人で逃げるか・・・)
一瞬加持の頭にそんな考えが過ぎった。

知りたい真実は殆どナオコに教えて貰った。
これは、今までの柵で指令された仕事であり、この仕事を終らしたからと言って自分が満足されるわけではない。
寧ろ、命取りとなる可能性しかないのだ。

冬月の拉致。
それがゼーレからの指令であった。
これを遂行するとNERVに席が無くなる。

そして、その後、冬月を救出する。
これはナオコに対する自分のケジメとも言える。
少なくとも拉致したまま放置しておく事は、出来なかった。
これでゼーレからも狙われるだろう。

ならば、今、逃げるだけなら狙ってくるのはゼーレだけである。
加持は悩んだ。

「葛城、俺のこれからの仕事は冬月さんの拉致だ」
「副司令の!」
「しぃ〜っ!」
加持がわざわざ冬月と言っているのにミサトが場所も弁えず副司令と叫んだ。

慌ててミサトの口を押さえる加持。

「わ、悪かったわ。それで、どうするの」
「それでも葛城は着いてくるのか?」

ミサトも悩む。
NERVに居場所が無いと感じては居てもNERVを裏切るのは、また話が違った。



真っ暗な空間に只ひとつ存在するパイプ椅子に冬月が縛り付けられていた。

「お久しぶりです、キール議長、全く手荒な歓迎ですな」
どこへとも無く冬月が呼びかけた次の瞬間、冬月の正面にモノリスが浮かび上がる。

『非礼を詫びる必要はない、君とゆっくり話をする為には当然の処置だ』

「相変わらずですね、私の都合は関係無しですか」

『議題としている問題は急務なんでね、やむなくの処置だ』
『解ってくれたまえ』

次々とモノリスが浮かび上がりそれぞれが自分勝手な言訳を述べる。

「委員会ではなくゼーレのお出ましとは・・・」
冬月も内心、驚いていた。

『我々は新たな神を作るつもりはないのだ』
『御協力願いますよ。冬月先生』

「先生か・・・」
冬月にはその敬称が、昔を思い出す切欠となった。

ユイに出会った頃が冬月の脳裏に蘇る。
学生達に囲まれた京都大学時代の話だ。

冬月が物思いに浸る暇もなくモノリス達は尋問を続けた。

『弐号機の覚醒とSS機関の取り込み』
『何れにしても我々に具象化された神は不要なんだよ』
『神を作ってはいかん』

「弐号機のサルベージにより、最早弐号機を動かす事はダミーシステム以外有り得ません。神になど成り得ませんよ」

『ダミーシステムとは意のままに操れるのかね』

「いえ、オートパイロットの様な物です。与えられた情報により敵を認知し、殲滅に向かう。オペレータの介入が必要なため完全とは言えませんが」

『そこですよ冬月先生』
『我々の知りたいのは正にそこなのだよ』
『ダミーシステムとは、神を操れる物ではないのかね?』

「弐号機を操ると言う意味では、その通りですな。しかし、魂あっての神。弐号機に魂は存在しませんよ」

『ダミーシステムではなく、誰かが乗ればどうなるのかね?』

「それは、11年前と同じく取り込まれるだけでは無いのでしょうか?」

『そして取り込まれた者の近親者は神と成り得るのではないのかね』

「まさか?!」

(ナオコ君はそんなことは考えていない。いや、寧ろそんな事を起こさないためのダミーシステムだ。この老人達はそんな事も解らず妄想に怯えているのか・・・)

『赤木ナオコ博士・・・信用に足る人物かな』



「「「拉致されたって、冬月先生(副司令)が?」」」
その報告を聞き、その場に居た3人が叫声を上げた。

ナオコ、キョウコ、リツコの3人はダミーシステムの完成を祝って司令室で密かにお茶会を開いていたのだ。

報告にやって来た黒服も、その応接セットに存在する多数のケーキに冷や汗を流していた。

「今より2時間前です、西の第八管区を最後に消息を絶っています」
黒服が端的に答える。

「うちの署内じゃない、貴方達、諜報部は何やってたの?」
「身内に内報及び先導した者が居ます、その人物に裏をかかれました」

「諜報2課を煙に巻ける奴・・・まさか!」
「加持リョウジ、この事件の首謀者と目される人物です」

「ミサトは?」
「作戦課長もロストしております」

顔を見合わせるリツコとナオコ。

「リョウちゃんもこの期に及んで何をやってるのかしら・・・」
ナオコはふぅっと溜息を吐く。



「さて、行きますか」
加持は呟くと、その眼の前にある重苦しい扉の暗証番号を押す。

プシュッと言う音と共に扉が開いた。

「君か」
椅子に縛り付けられている冬月が加持を見て呟いた。

「ご無沙汰です。外の見張りには暫く眠ってもらいました」
「この行動は君の命取りになるぞ」

「真実に近づきたいだけです。僕の中のね」
そう言って加持は冬月を連れ出した。


外に止めてある加持の車に乗り込んで冬月は驚愕する事になる。

「葛城君!」
「副司令、救助しに参りました」
しれっと言うミサト。

苦笑する冬月。

二人が乗った事を確認すると、ドアが閉まった事の確認もせず急発進するラウンドクルーザー。

「葛城君、お手柔らかに頼むよ、老体に君の運転は刺激が強すぎる」
「善処致します」
ミサトはそう言った物の冬月はシートに張付けられる事となる。

冬月は、助け出された物のこれで死ぬかも知れないと真剣に思っていた。


「一緒に行かないのかね」
「えぇ後始末がまだ残っていますんで」
NERVゲートに下ろされた冬月に加持は飄々と答えた。

「そうか、気をつけてな」
冬月も追求はしない。

ここで、押し問答をしても仕方ないからだ。

冬月の言葉を待たず加持の車はタイヤを軋ませて発進していった。
ここで、長居をするとNERVの諜報部員が彼らを捕獲しに来るからだろう。

冬月はふぅっと溜息を吐くとNERVゲート内へと入って行った。



薄暗い部屋。
巨大な換気扇がゆっくりと廻っている。

そこに佇む尻尾頭の男。
カツンカツンと誰かが近寄ってくる音がする。

「よっ遅かったじゃないか」
カチャッと言う音が加持の言葉と共に鳴り響いた。

加持に銃口を向けている男の頭に銃口が押しつけられている。

「残念だったわね、彼は殺させないわ」
ミサトの言葉と共に鳴り響く銃声。

男は躊躇なく引き金を引いたのだ。

「加持!」
その光景にミサトは重大な過ちを犯してしまった。

男から銃口を外し、加持の元へと駆寄ってしまったのだ。

バシュッバシュッバシュッ

「か・つ・ら・ぎ・・・」
「か・じ・く・ん・・・」
大量の血が二人の身体の下に流れ出て行く。

「これで・・・良かったのよね・・・」
「あぁ・・・」
ミサトは加持の胸で瞼を閉じた。

加持はミサトの頭を撫で、その手も力尽き床に落ちた。



続きを読む
前を読む
戻る



新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
inserted by FC2 system