第弐拾参話
最低のシ者


「NERVの国営化かね?」
「はい、襲来する使徒は後2体、その後のNERVの在り方についてですわ」
妙に天井の高い部屋で壮年の男性とナオコが話をしていた。

ここは、第二新東京市にある内閣総理大臣の部屋である。

壮年の男性は現内閣総理大臣であった。

この男にゼーレの息は掛かっていない。
ゼーレは極東の島国の政府など歯牙にも掛けていないからである。
しかし、現日本政府の代表である事に変わりはない。

つまり、最終的にA−801を発令するのは、この男なのだ。

「残りの使徒が後2体と言う根拠は?」

男の発言にナオコは妖しく微笑むと組んでいた足を組み替える。
男の目がその、妖艶な動きを追っていた。

二人は対面になっているソファーに腰掛けて話をしている。
男は、少し前屈みになり、ナオコから渡された資料を見ている。
ナオコは背もたれに凭れた形であった。

「それはNERVが設立され使徒の襲来に備えられ、現在使徒迎撃に従事しており、その殲滅と言う結果を出している事から信用して貰うしか御座いませんわ」
「その根拠が示されないと決断のしようがないな」

一応、男も一国を預かる身である。
一筋縄ではいかない事はナオコにも解っていた。

「現在NERVは国連の下位組織。内閣総理大臣と言えども話せない事もございますのよ」
「むぅ〜っ」
機密保持に対しては、男にもよく解っている。

「ふふふ、使徒の襲来は解っていた。ならばその数も解っていてもおかしくは御座いませんでしょう?」
「確かに、その可能性は無視できんな。しかし、ならば国連から要請が来ない理由はなんだ?」

「人類補完委員会」
ナオコのその言葉に男はビクッとした。

「残りの使徒が後2体であるのに、なぜ量産機を今になって建造するのか?そしてそれは誰の指示であるのか?」
「人類補完委員会が仕切っていると言うのか?」

その言葉を肯定も否定もせずナオコは微笑んでいる。
男のその言葉は日本政府も既に量産機の建造に着手している事を掴んでいる事を肯定したに等しいから。

「NERVは戦自の様な非人道的な組織の下位組織となる訳には参りません」
それは先の少年兵の事を揶揄している事が男には解った。

「まだ時間は有ります。ゆっくりと考えて下さいな」
そう言うとナオコは立ち上がり、一礼すると、その部屋を後にした。


これでいきなりA−801が発令される可能性は極端に減った。
武力行使を行い、無用な損害を出すより、ナオコの申し入れを聞いた方が有益であるからだ。
少なくとも、発令前に打診ぐらいはしてくるだろう。

部屋を出たナオコは、妖艶な笑みを浮かべ歩いて行った。



「何ですって?!」
リツコは司令室で叫び声を上げてしまった。

「ゼーレも焦って来ているって事ね」
「この子は・・・」

「知ってるの?キョウコ」

3人が見ているのはフィフスチルドレンとして選抜されたとゼーレから送られて来た資料。
渚カヲルの物であった。

「いえ、ただ容姿が・・・」
「そうねレイと同じ」

「過去の経歴も抹消済み」
「但し生年月日はセカンドインパクトと同じ」

「舐められたものね」
ふぅっとナオコが煙草を燻らせた。

「でも何故シックススではなくフィフスなのかしら?」
「相田君は死亡、他の子達は確かに存命だけど・・・」

「老人達の考えは本当に解らないわね」



シンジは眉間に皺を寄せていた。
そんなシンジに寄り添う様にしてシンジの見ている物を見たレイも眼を見開いた。

「・・・タブリス」
レイも驚きの声を上げる。

シンジと一つである頃に確かにダミープラントは破壊した。
しかし、その資料にあるのは紛れもない渚カヲルであった。

シンジとレイはナオコ達に呼ばれ司令室に来ていたのだ。
フィフスチルドレンについてナオコ達はシンジの意見を聞きたかったのである。

「やっぱり、彼が前にシンジ君が言っていた第壱拾七使徒?」
「えぇ・・・」
眉間に皺を寄せ、声を発するシンジ。

「フィフスと言う事は弐号機のパイロットですか?」
「えぇ弐号機の予備パイロットと言う事になっているわ。シンクロテストを行わない訳にはいかないわねぇ。困ったわ」

「彼はシンクロできますよ」
「えっ?どうして?」

「アダムより造られし者。魂のない今の弐号機なら同化出来るんですよ」
「アダムより造られし者って・・・」

「綾波がリリスより造られし者であったのと同じです」
「そう・・・そう言う事・・・」
シンジがレイの事を「綾波」と呼ぶ時は僅かに雰囲気が変わる。

そんな時、ナオコはシンジから距離を取るようにしていた。
それは本能の成せる事だろう。



「うわぁ凄いですぅ」
第一発令所でマヤは歓喜の声を上げていた。

MAGIのオーバーホールが終った後、ゼルエルにより破壊され応急処置を施していたメインモニターから各端末や椅子に至るまで全て新品に取り替えられたのだ。

色合いも今までより明るい。
MAGI自体も外観はクリーム色が基調とされ発令所内も暖色が基調とされていた。

マヤは椅子の座り心地を確かめ、かなりご満悦のご様子である。

「第二発令所の椅子は、なんか硬かったからな」
マコトもシゲルと共に、使い勝手の良さについて語っていた。

「でも第二発令所のMAGIはどうするんだ?」
「バックアップだろ?」

「実は、表からはあちらのMAGIが見えて、こちらのMAGIは簡単には見えないんですぅ」
マヤがこっそりと教えた。

「えっ?それってダミーって事?」
「少し違いますが、詳しい事はここでは言えないんですぅ」
マヤは人懐っこい笑顔を二人に向けた。



シンジとレイは、NERVからの帰路を歩いていた。

「フンフンフ・フフフフ・フフフフンフフ〜ンフフ・・・フンフンフ・フフフフ・・・・」
ベートベン第九の鼻歌が聞こえてくる。

薄暗い道で聞こえるそれは結構不気味である。

「歌はいいねぇ、歌は心を潤してくれる。リリンの産み出した文化の極みだよ。そう感じないか、碇シンジ君?」
「何故、僕の名前を?」
シンジはレイを後ろに庇いながらカヲルに問い掛けた。

「君の事を知らない者は居ないよ。失礼だが君は自分の立場をもう少し知った方が良いと思うよ」
「そうかな?君は?」

「僕はカヲル。渚カヲル。君と同じ仕組まれた子供、フィフスチルドレンさ」
「フィフスチルドレン?渚君?」
「カヲルでいいよ、碇君」
「僕もシンジでいいよ。ところでフィフスは相田君だったはずだけど?」

「ふふ、それは君が仕組んだ事だろう?シンジ君」
眼を見開くシンジ。

「君は僕と同じだね、あやなみれい」
「・・・私は私、貴方じゃないわ」

「お互いこの星で生きていくために、この身体に辿り着いたと言う事さ」
「・・・喧嘩を売ってるの?タブリス」

「おやおや、随分とストレートだねぇ。驚愕に値するよ。驚いたってことさ」
「・・・恐怖に値させてあげるわ。恐いってことよ」
無表情に言い放つレイにアルカイックスマイルを浮かべたカヲル。

「降参だよリリス。君に敵うわけがないからねぇ」
諸手を挙げ降参を意思表示するカヲル。

「カヲル君は何を望むの?」

「僕は、またシンジ君に殲滅して貰おうと思ってね。今度は僕の魂は有るべき場所、アダムに帰った時、シンジ君と一つになる。それは僕の望む所だからねぇ」
「・・・それは駄目」

「シンジ君を独占するつもりかい?リリス」
「・・・アダムの魂として覚醒したら私と一つになった時にサードインパクトとなるわ。だから駄目」

「それはシンジ君の意識の問題だよ。シンジ君は既にサードインパクトを起こせるだけの力は持っているからねぇ」
「そんな事よりカヲル君、君も戻ってきたって事なの?」

「どうなんだろうねぇ?でもシンジ君の事は覚えているよ」
「やっぱりそうだったんだ」

「この時期に来たのはカヲル君の意志?」
「老人達の焦りだよ」

久しぶりに笑顔を見せるシンジ。
そんなシンジにレイは少し頬を膨らませた。



翌日、学校では転入生が入ってきた。

「今日も皆さんに転校生を紹介します」
老年の教師に促され入ってくる転校生。

「渚カヲルです」
アルカイックスマイルを浮かべ挨拶をするカヲル。

女子生徒達は溜息を吐いた。

「あぁ早まったわぁ」
「乗り換えればいいのよ」
「漸く私にも春が来たのね」

口々に意味不明な事を呟いている。

「やぁシンジ君、同じクラスになったね」
「カヲル君って15歳じゃなかったっけ?」

「僕は身体が弱くてね。1年留年と言う事になっているんだよ」
「・・・そう、ダブリ(ス)なのね」

「そ、その呼び方は好意に値しないね。嫌いってことさ」
カヲルは冷や汗を流しながらレイに反論した。


昼休み、カヲルは複数の女子生徒に呼び出されていた。

「やぁ待ったかい?それで僕に用ってなんだい?」
「あ、あの私と付合って下さい」

「今、付合ってると思うけどこれとは違うのかい?」
「えと、男と女として付合ってください!」

「それは僕と一つになりたいって事かい?」
「そ、そんな・・・いきなり・・・でもカヲル君が望むなら・・・」
そう言って目を瞑り、顔を上向かせる少女。

「それが君の望みなんだね」
そう言うとカヲルは少女に口付ける。

片手は胸を揉み、背中に回した手はスカートの下に潜らせお尻を揉んでいる。

「ぅっ・・・ぁぁ・・・」
控えめな喘ぎ声を上げる少女。

カヲルの唇は既に首筋を這っている。

「ぅっ・・・ぁあ・・・ぅう・・・」
いつの間にか少女は壁に手をつきお尻を突き出した形でカヲルを受け入れていた。
ブラウスの前はハダケ、ブラジャーも迫り上がり露わになっている乳房をカヲルの手が揉みしだいている。

スカートを捲り上げられ白いパンティは片足の膝の所に絡み付いていた。

「あぁっ!」
一際高い声を上げ少女はその場にへたり込む。

「さて、後二人逢わなければいけないから、またね」
少女は与えられた快感に茫然自失となっていてカヲルの声も聞こえていなかった。

その後、更に二人を毒牙にかけ教室に戻ったカヲル。


「いやぁリリンの女性は一次接触に積極的だねぇ。快楽に値するよ。心地良いってことさ」

カヲルが殲滅されるのは、シンジではなく女子生徒達からかもしれない。



『目標接近、強羅絶対防衛線を通過』
『目標は大涌谷上空にて滞空、定点回転を続けて居ます』

『目標のATフィールドは依然健在』

真新しい発令所では使徒の状況が逐次報告されていた。

「やっぱり新しいモニターは綺麗に映るわね」
「ホロディスプレイもくっきり映ってますね」
リツコとマヤが新品のモニターとディスプレイに感激している。

「状況は?」

「パターン青からオレンジへ周期的に変化しています」
シゲルが端末を慌ただしく操作しながらも報告を行った。

「どういうことかしら?」
「MAGIは第壱拾六使徒を提示しています」
リツコの問い掛けにマヤが答える。

「このデータ量で・・・凄い」
シゲルが新しいMAGIのレスポンスに驚愕している。

「ただあの形が固定形態でないことは確かだわ」
リツコが映像を眺めながら呟いた。


「日向君、どうする?」
「弐号機をダミーシステムで参号機で牽制。ロンギヌス弾で殲滅と言うところでしょうか」
マコトが今ある戦力の全投入を提案する。

試作Rはロンギヌス弾と名付けられたらしい。

「そうねフィフスはまだシンクロテストも行っていないから妥当な所ね。それでお願いするわ」
リツコも賛同する。

「弐号機発進、地上直接迎撃位置へ」

「参号機、発進準備」
「参号機、第七ゲートへ、出撃位置決定次第発進せよ」

『了解ですわ』

この間の戦闘で自信をつけたのかトウジはやる気満々である。
ライフルを構え使徒を伺っている参号機。

「トウジ君、気を付けて!何時攻撃してくるか解らないわ」

『解りました』

その時、使徒が姿を変え、棒状に参号機へと突進して来た。

「トウジ君!応戦してくれ!」
「駄目です。間に合いません」
マコトの言葉にマヤが叫んだ。

「目標、参号機と物理的接触」
「参号機のATフィールドは?」
シゲルの言葉にリツコが確認する。

「展開中、しかし使徒に侵食されています」
マヤが参号機の状況を説明した。

使徒の侵食に伴い、ミミズ腫れの様なものがトウジに広がる。

「危険です、参号機の生体部品が犯されて行きます」
マヤの悲鳴とも言える報告。

「弐号機を下がらせて!参号機のエントリープラグを強制射出!」
リツコが最悪の事態を考え、早々に参号機を捨てる決断を下した。

「目標、更に侵食」
「危険ね、既に5%以上が生体融合されているわ。強制射出急いで!」

「エントリープラグ強制射出します!」

「日向君、ロンギヌス弾を集中砲火!参号機を自爆させて!」
「了解!」

一斉に参号機に向けロケット弾の集中砲火が行われる。

「コアが潰れます、臨界突破!」
マヤの叫びが発令所内に響く。

爆発する参号機。

「目標消失。パターン青消失しました」
シゲルの報告。

「現時刻を以て作戦を終了します。第一種警戒態勢へ移行。エントリープラグの回収急いで!」
リツコの指示が飛んだ。



ナンバリングだけのモノリス達が会議を行っている。

『遂に第壱拾六までの使徒は倒された』
『これでゼーレの死海文書に記述されている使徒は後一つ』

『約束の時は近い、その道のりは長く犠牲も大きかった』

『さよう、エヴァ零号機、初号機の損失、そして今回は参号機の損失』
『零号機と初号機は碇のせいだ。参号機の損失だけでは赤木博士の解任には充分では無いな』
『しかも碇亡き後は、被害も少ない』

『何れにせよ、鈴は放たれている』

『ダミーシステム開発の功労者、今暫く役に立って貰おう』
『さよう、我々人類の未来のために』

『エヴァンゲリオン、既に八体まで用意されつつある』
『残るは後四体か』

『完成を急がせろ、約束の時はその日となる』
キールが締め括った。



シンジとレイは呆気に取られていた。
シェルターに避難したのだが、何故かカヲルもシェルターに避難していたのだ。

「NERVに行かなくて良いのかい?」
「呼ばれてないからねぇ。僕はそれよりシンジ君と居る方が幸せなのさ」
引き攣るシンジ。

「ぁのぉ、カヲル君、話があるんだけど・・・」
「ここじゃ駄目なのかい?」
「えぇ、ちょっと・・・」
「じゃぁちょっと行ってくるよシンジ君」

そう言って、話し掛けて来た少女と消えるカヲル。
シェルターに入ってから既に5人目である。

暫くすると、上気した顔の少女と戻って来てまたシンジの近くに来る。

「カヲル君、今に殲滅されるよ」
「そうなのかい?僕は彼女達の望みを叶えてあげているだけなんだけどねぇ」

「・・・ダブリ(ス)は女の敵になったのね」
「その呼び方は、よしてくれないかい。レイ君」
カヲルを冷や汗を流しながら訴えた。

「・・・じゃぁジゴロ?」
「それは良いねぇ、好意に値するよ」

「・・・やっぱり女の敵」
「あはは・・・」
流石のシンジも冷や汗を流していた。

まさかカヲルがこれ程、女性に手を出すとは思ってもいなかったのだ。

「シンジ君も僕と一つにならないかい?僕にとって男も女も等価値なんだよ」
「そ、それは遠慮させて貰うよ」
流石にそれはごめん被りたいシンジ。

「それは残念だねぇ。僕は受けでも構わないのにねぇ」
「・・・両刀使いだったのね」

「僕は自由を司るタブリスだよ。性についても自由なのさ」
「・・・詭弁ね」

「駄目かい?僕はリリンと触れ合いたいだけなんだけどねぇ」
「・・・ふふふ貴方はまだ本当の快感と言う物を知らないのね」

「君が教えてくれるのかい?」
「・・・嫌」
そう言ってレイはシンジにしがみついた。



「鈴原は?!鈴原は大丈夫なんですか?!」
病院でヒカリがリツコに詰め寄っていた。

非常事態宣言が解除され施設に帰るとリツコから連絡が入ったのだ。

「大丈夫、命に別状はないわ。でも2〜3日は大事を取って入院して貰うわ」
「そうですか・・・」
ホッと胸を撫で下ろすヒカリ。

生体融合のフィードバックでトウジは神経系統に結構ダメージを受けていたのだ。
しかし、エントリープラグの射出が早かったので、使徒との接触はなかったらしい。


「い、委員長?」
「鈴原、気が付いたのね」
ヒカリはリツコの計らいでトウジの病室に入っていた。

ずっとトウジの手を握り締めていたヒカリ。

「わいは・・・?」
「私にはよく解らないけど、使徒に参号機が乗っ取られて自爆で殲滅したってリツコさんが言っていたわ」

「そうか・・・わいの参号機無くなってもうたんやな」
「鈴原」
眼を涙で潤ませるヒカリ。

「なんや委員長も悲しいんか?」
首を横に振るヒカリ。

「鈴原が無事で嬉しいからに決まってるじゃない」
「さよか、心配させたみたいやなぁ・・・すまん」

「うぅん。無事に帰って来てくれた」
そう言ってヒカリはトウジの唇に唇を重ねる。

「はよ、委員長の作った飯、喰いたいわ」
「もぅ鈴原ったら」
顔を真っ赤にするヒカリ。

トウジはヒカリを引き寄せ、濃厚な口付けをする。
ヒカリのTシャツの下から手を入れ乳房を揉むトウジ。

「ぁっ・・・駄目、ここは病院なのよ」
「そやかて我慢できん」

「私に任せて」
そう言ってヒカリはトウジのシーツに潜り込んだ。

「ぅっ・・・い、委員長・・・」
トウジはヒカリのGパンを下げ、パンティの中をまさぐる。

「ぁっ・・・ぁぁ・・・」
「ぅっ・・・」
トウジはヒカリの口の中で果てた。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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