第拾六話
それぞれの思惑の中で


「準備は整った」
シンジがポツリと呟く。

シンジの断罪、それは紅い海に溶けてのうのうとしていた人間達に対する物。
自分に全てを押しつけて、自分達だけは溶け合い安息を得ていた人間達に対する物だ。

マナ、ムサシ、ケイタ、マユミは紅い海には溶けていなかった。

魂は肉体が滅んでも暫くは存在する。
肉体の死滅、即ち有機物質の代謝機能の停止と魂の消滅には時間差があるのだ。
そして、NERVで戦闘に巻き込まれて死んだ人間達は、魂が消滅していなかったので紅い海に溶けた。

加持もなんとか紅い海に溶けていた。
しかし、それより遙か前に死んだ人間はそこには溶けていなかったのである。

ヒカリとトウジについては成り行きである。
助けたと言う意識はシンジには無い。

基本的にシンジは自らわざわざ手を下して断罪を行おうとは考えていない。
NERVの人間は放っておいても最後には殺される。
ゼーレの老人達もサードインパクトが起きなければ、その強引な延命措置と無謀な資金繰りのため自滅する事は目に見えている。
自分達の希望が潰える絶望を味わす事がシンジの望み。

問題はゲンドウ、冬月、ユイ、リツコ、ミサトである。

この5人については、死んで楽にさせる事が看過できなかった。

実はユイこそが諸悪の根元なのである。
自らの不老不死、それこそがユイの望みであった。

故にゲンドウもどんなに悪逆非道な事をしてもユイが受け入れてくれると信じているのだ。
ゲンドウは、有る意味不老不死となったユイの元へ行くだけであり、そのために行った事をユイが責める事など考えられなかったのだ。

何故なら、セカンドインパクトを計画したのもユイならば、人類補完計画の骨組みもユイが作った物であるからだ。
例え20億の人間を犠牲にしてもエヴァを完成させる時間を稼ぐ事。
それがユイの計画したアダムの卵への還元。
その結果がセカンドインパクトである。

そして、自らエヴァに取り込まれ不老不死となる事。
それを明るい未来と言ったのだ。
しかし、ユイはエヴァに取り込まれたシンジを追い出した。
ゼルエル戦の時、母性からユイはシンジをエヴァに取り込んだ。
しかし、シンジのあまりの理解のなさに愛想をつかしたのだ。

では、惣流=キョウコ=ツェッペリンは、どうなのか?
彼女は日本に対抗したドイツ支部の被害者である。
表向きのエヴァの情報に踊らされたドイツ支部が、ユイの思惑も知らず、日本より先にエヴァとシンクロの実績を取ろうとした事に巻き込まれたのだ。
にも関わらず、日本でのデータを元に実験したためキョウコも取り込まれる事となった。
しかし、不完全なストッパーによりキョウコは、魂の一部分だけが取り込まれてしまった。
素体の違いとその魂の違いで弐号機は初号機程の性能がでないのだ。

「くっくっく」
シンジは、これからの事に思いを馳せ笑いを漏らす。

そんなシンジに何も言わず抱きついているレイ。
レイの身体には、今付いたのであろう、縄の跡や、鞭の跡がくっきりと浮かび上がっている。
陶磁器の様に白い肌に、それは全く痛々しくその存在を浮かび上がらせていた。

レイは裸でシンジの膝の上に座ってシンジの首に腕を巻き付け抱付いている。
顔はシンジの首に擦りつけていた。
最近のレイのお気に入りの姿勢だ。

シンジは、そんなレイの頭を撫でていた。



芦ノ湖の上空を大型の武装ヘリが通過している。

「第2、第3芦ノ湖か・・・。これ以上増えないことを望むね」
機内から3つの湖を見下ろしながら冬月が呟いた。

向かい側の席でゲンドウが無言のまま腕を組んでいる。

「昨日、キール議長から計画遅延の文句がきたぞ。おれのところに直接。相当、苛ついていたな。終いにはおまえの解任もちらつかせていたぞ」
「・・・アダムは順調だ。使徒も順調に殲滅している。ゼーレの老人は何が不満なんだ」

「肝心の人類補完計画が遅れている」
「・・・すべての計画はリンクしている。問題ない」

「レイもか?」
「・・・問題ない」
ゲンドウは珍しく顔を背けて窓の外に眼をやる。

「まあいい、おまえがレイに拘る気持ちもわかるが目的を忘れるなよ」
「・・・前回の使徒は老人の差し金だ。あれは裏死海文書にない使徒だ」

「第壱拾壱使徒が侵入した事を隠し通したからな、数合わせに仕向けたのだろう」
「・・・老人達は時計を早めようとしているのかもしれん」

「準備が整っていないのにか?!」
「・・・・・」

「ところであの男はどうする?」
「好きにさせておくさ、マルドゥック機関と同じだ」

「もうしばらく役に立ってもらうか」



「16年前ここで何があったんだ」
(すべてはこの京都で始まったはずなんだ)

加持は京都にある廃屋の中で佇んでいた。

ドアノブがゆっくりと回り出す。
加持は壁に身を寄せるとジャケットの内側に手をさし入れた。

内側に開くドアの隙間から明るい陽ざしが差し込んでくる。
誰も入ってこないため加持はドアににじり寄る。
そっとドアの隙間から外の様子を伺う。

薄汚れた裏口の段差に買い物かごを置いた中年の婦人が座っていた。
かっぱえびせんをつまみながら週刊誌をめくる姿は日陰で休んでいるただのおばさんである。

「マルドゥック機関とつながる108の企業のうち、106がダミーだったよ、ここが107個目」
女は日本政府の連絡員であった。

「この会社の登記簿だ」
加持のよく知っている名前が並んでいる。

「なるほどね」
「もう知っていたのか?」

「ああ、マルドゥック機関。エヴァンゲリオン操縦者選出のために設けられた人類補完委員会直属の諮問機関。組織の実体の無いダミーというわけか」
「貴様の仕事はネルフの内偵だ。マルドゥックに顔を出すのはまずいぞ」

連絡員の警告を軽く受け流す加持
「ま、何ごともね。自分の目で確かめないと気が済まないタチだから」

ゲンドウに泳がされている事を良いことに自分では好きに調べているつもりだが、未だ真実とは遠い処を彷徨っている加持だった。



第壱中学校では、放課後の掃除が行われていた。

アスカは廊下でモップ掛けを行っている。

「今度、お尻にモップを刺して、四つん這いで引きずって見たいですわ」
マユミがアスカの耳元でそっと呟く。

カッと顔を真っ赤にするアスカ。

あれ以来、マユミはアスカを常に弄ぶ事をシンジに言い渡されたのだ。
マナ達と一緒に住むのにマナ達はシンジに言われた事をしている。
自分だけ何もしないで、そこに住むのは気が引けるとマユミが言った処、シンジが

「じゃぁ僕の代りにアスカを常に弄んで。ここでも学校でもね」

と言ったのだ。
当然、その場にはアスカも居てその言葉を聞いており、シンジはアスカに確認も取っていた。

既にアスカはマナ達のマンションでは、どのように扱われても受け入れている。
しかし、未だ外では羞恥が先に立つのだ。

「な、なんでお尻なのよ!」
「あら?前の方が良かったですか?」

「そ、そんな事言ってないでしょ!」

「アスカさんは、どうでしょうか?」
「あ、あんたがやれって言うならやるわよ!」
顔を真っ赤にしながら、モップ掛けの手を休めず答えるアスカ。

マユミはアスカに対してだけだが、すっかり強気の態度を手に入れていた。
実は、これはマナの教育だったのだが、この事によりマユミは他の者達にも物怖じせず話せるようになっていった。

周りに誰も居ない事を確認しアスカのスカートの中に手を入れるマユミ。

「ぁっ」
小さく声を上げるも、アスカは抵抗しない。

「濡れていますわ」
「わ、悪かったわね!」

教室の中では、床のバケツで雑巾を絞るレイが居る。
それを見つめるシンジ。

(前はお母さんみたいだと思ったけど、今は身体の線が艶めかしいと思うだけだな・・・)

実際、四つん這いで床を雑巾掛けしている姿は艶めかしい。
制服の裾から見えそうで見えないお尻。
揺れる胸元。

シンジがレイのそんな姿を観賞しているとヒカリの怒声が響いた。

「真面目に掃除しなさぁいっ!!」
「か、堪忍や、堪忍してぇな委員長」
トウジがヒカリに怒られている。

こういう時、トウジはヒカリの事を委員長と呼ぶ。
それが、ヒカリを刺激するとも知らずに。
そして、そんな日はヒカリ達はマナ達のマンションへ行く事になる。
勿論ヒカリの誘導なのだが、トウジも機嫌の悪くなったヒカリを宥める手段はそれしか思いつかないのだった。

マナ達は机を運んで居た。
得てして、この3人は学校の行事については真面目に取り組む。
自分達が望んでも得られなかった学校生活。
それを蔑ろにする事は出来ないのだ。

「今日も来るな」
ケイタがヒカリとトウジの様子を見てそう呟く。

「今日はシンクロテストがあるって言ってた」
「じゃぁ、マユミが暇だな」

「ケイタは嬉しいんでしょ?」
「そ、そんな事は・・・マユミさんもシンジの事が好きみたいだし」

「誰が誰を好きかなんて俺達には関係ない」
「そうよ、好きなのは一人だけなんて事は無いんだから」

マナとムサシは笑っている。

「はぁぁ・・・おまえ達が言うと説得力がありすぎるよ」

マユミは主にアスカの相手をしている。
しかし、アスカがNERVの用で居ない時等はケイタがマユミの相手をしているのだ。

これはマユミが言い出した事である。
良くも悪くもマユミは生真面目なのだ。
何をどのようにされたら、どう感じるのか自分で体感してみたいと言う事だった。

故にアスカが居ない時は、マナ達に色々と教えられていた。
マユミがアスカに行う行為は、少なくとも一度はマユミも経験している事なのだ。



翌日、加持、ミサト、リツコは友達の披露宴へ行き、その夜、加持とミサトは縒りを戻す事となる。
ゲンドウは一人、ユイの墓参りを行っていた。

―IKARI YUI 1977−2004―

墓標に一人佇むゲンドウ。

「・・・ユイ」
その言葉は風に消され、誰も聞く事はなかった。



パチパチパチパチパチ

マナ達のマンションでチェロの演奏を行ったシンジ。

「一応、母さんの命日なんでね」
ニヤリと笑うシンジの顔は、亡き者への追悼と言う感では無かった。

休みの日にシンジ達はよくマナ達のマンションに居る。
最近ではアスカも加わり、総勢9人が集まる事となっていた。

シンジのチェロを聞いて悲し気な表情を浮かべるレイとアスカ。
他の女性陣は感心している。

「シンジって本当、色んな事が出来るよな」
「こんなの大した事じゃないよ」

「いいえ、凄いですわ」
「シンジ様は、凄いんですぅ」

「マナが言うと卑猥に聞こえるのは俺だけか?」

バシッ
ムサシがマナの鉄拳を喰らった。

チェロを片付けたシンジの横にすかさずレイが陣取る。
マナとマユミは油断すると、すぐシンジの隣を占拠するため、レイだけはこの家で気を抜けないのだ。

それは嫉妬ではなく、競争に勝つためである。
実は、そんな遣り取りすらレイは楽しんでいた。

少なくとも、ここに居る時、シンジは穏やかなのだ。
表層上は何時もと変らない。
それはレイだけが感じるシンジの心である。

ヒカリとトウジはベタベタしている。
外では手を繋ぐ事すら恥ずかしがるのだが、この場所でだけはトウジはそれを咎めないのだ。
従って、ここぞとばかりにヒカリはトウジにくっつくのである。

「アスカ?なんか暗くない?」
「ミサトがねぇ・・・加持さんとよりが戻ったからって、他人にまで幸せを押し付けて鬱陶しいのよ」
ヒカリの言葉にアスカは答えた。

「あぁあ、あたしもここに住もうかなぁ」
「エヴァを降りた後なら構わないよ」
シンジが思いがけない発言をする。

「本当!?」
「今はエヴァのパイロットが住むと色々と問題が起こるからね」

「そうよねぇ・・・」
アスカもシンジの言いたい事は理解できた。

今はまだ、同級生の部屋に遊びに行っている程度の認識だが、これで住むとなると色々と調べられる。
シンジの事だから、なんともないのかも知れないが、それでも一般人には鬱陶しいだろう。
しかもマナ達やマユミは調べられると厄介だ。
なにより、ゲンドウ達がなんか仕掛けてこないとも限らない。



数日後、突如、第3新東京市上空に直径60メートルの球体が現れる。

「目標は微速進行中、毎時2.5キロ」

「どうなってるの?富士の電波観測所は!」
「探知していません。直上にいきなり現われました」

「パターンはオレンジ、ATフィールドは反応無し」
「新種の使徒?」

「MAGIは判断を保留しています」

突然空中に現われた物体に対して、ミサトは慌ててエヴァのパイロット3人を呼び出すと、とりあえず出撃させた。

「目標のデータは送った通り、今はそれしか判らないわ。慎重に接近して反応を窺い、可能であれば市街地上空外への誘導を行う。先行する一機を後の二機が援護。よろし?」

『シンジ、どうするの?』
『牽制でもしてみるかな』

その言葉でアスカはシンジが考えている事が解った。

シンジが使徒にパレット・ライフルを撃ち込むと、使徒が消える。

「パターン青!初号機の直下です!」

『碇君!』
レイは叫ぶと零号機を初号機に抱きつかせる。

『綾波?』
『・・・一人で行っては駄目』

「シンジ君!レイ!」
叫ぶばかりで何一つ有効な手段を指示できないミサト。

その間にレイは零号機をホールドし、エントリープラグを半射出させると初号機の肩へと移動した。
シンジもレイの意図を汲み取り初号機のエントリープラグを半射出させレイを招き入れる。

「アンビリカルケーブルで引き上げて!」
呆然としていた本部内で、いち早く我に返ったリツコの言葉に、弐号機がケーブルを巻き上げる。

当然、ケーブルは途中で切れて先は無くなっていた。

「アスカ、戻りなさい。退却よ」

『解ったわよ』

やけにあっさりと命令に従って退却するアスカをリツコは訝しんだ眼で見ていた。



「使徒の本体は、影のように見える地面の黒いシミです」
リツコが分析結果と自分の推測を交えてを説明している。

「では、上空の球体は?」
「あれこそが使徒の影のようなものです」
「どうしてそんな常識では考えられない現象が起こるのですか?」

「まだ仮説の域を出ませんが、地面のシミのように見える直径680メートル、厚さ3ナノメートルの影、その極薄の空間を内向きのATフィールドで支えている。結果として内部はディラックの海と呼ばれる虚数空間が形成されていると思われます」

「それはどういうことなんですか?」
「つまり異次元か別の宇宙かわからないけど、こちらとは別の法則の世界とつながっている可能性が高いわ」

「そんなばかな!」
「どれくらい生きていられるのですか?」

「シンジ君たちがやみくもに動き回らずにエヴァの内部電源を生命維持モードに切り替えていれば24時間、ただしプラグに2人入っているからせいぜい保って16時間でしょうね」



その頃、虚数空間の中ではシンジとレイが抱き合っていた。

「どうしたの?綾波」
「・・・碇君と離れるのは恐いの」
シンジにしがみつくレイ。

「綾波・・・」
そんなレイをシンジも優しく抱締める。

重なる唇。
LCLの中では血の味がした。

「これからちょっとした作業をしようと思っているんだけど手伝ってくれる?」
コクリと頷くレイ。

それがどんな作業であろうとレイには関係ない。
シンジが手伝って欲しいと言った事。
それがレイの全てだ。
シンジが望むなら何でもする。
だからシンジが何をしようとしているかは関係ないのである。

そして、シンジとレイの共同作業によりエントリープラグ内にもう一人の人物が現れた。



「何ですって!?EVAの強制サルベージ!?」
ミサトがリツコと言い合っている。

「992個、現存するすべてのN2爆雷を使徒に投下、タイミングを合わせて残存するEVAのATフィールドで使徒の虚数回路に千分の1秒だけ干渉するわ。その瞬間に爆発を集中させて、使徒をディラックの海ごと破壊します」
「それじゃEVAの機体が!シンジ君とレイはどうなるのよ!?」

「作戦はEVAの回収を最優先とします。たとえボディが大破しても構わないわ。この際、パイロットの生死は問いません」

パチンッ

ミサトの平手が飛んだ。

「碇司令やあなたが、そこまで初号機にこだわる理由は何?EVAって何なの?」
「あなたに渡した資料がすべてよ」

「嘘ね」
「ミサト・・・私を信じて」

その時、オペレータから連絡が入る。

「使徒に変化!!」
「何っ!?何が起こってるの!?」
リツコが叫んだ。

「全てのメーターは振り切られています!」
マヤが叫ぶ。

「まさか、シンジ君が!?」
「そんな馬鹿な!」

使徒の影に亀裂が走り、血のように赤い液体が飛び散った。
空中に浮かぶ球体も震えだし、やがて割れ始める。

ウゥゥウォォォォォォォォー−−−−−−!

「EVA初号機!!」
球体を破って出てきたのは、初号機。
その脇には零号機を抱えている。

「なんてものを・・・なんてものを造ってしまったの、私達は・・・」
リツコの呆然とした呟きが聞こえた。

ウゥゥウォォォォォォォォー−−−−−−!

映像を呆然と見つめるリツコを、後ろからミサトが醒めた目で見ていた。

「エヴァがただの第壱使徒のコピーなんかじゃないことはわかる。でもネルフは使徒を全て倒した後、エヴァをどうするつもりなの?」
ミサトの呟きは誰にも聞こえず消えていった。

「エントリープラグに生命反応が3つあります!」
「「何ですって?!」」
マヤの報告にミサトとリツコが驚愕の声をあげ、司令塔に居る二人も眉を顰めた。

「エントリープラグの映像入ります」
シゲルの報告と共にメインモニターに映るエントリープラグ内。

そこにはシンジとレイ、そしてレイを成長させ髪を茶色にした全裸の女性が映っていた。

「・・・ユ、ユイ」
「まさかユイ君なのか」
ゲンドウと冬月が眼を見開いている中、リツコは歪んだ顔をしていた。

「すぐに救護班を向かわせろ!あの女性を保護するのだ。この事は極秘とする」
ゲンドウから保護などと言う言葉が出てくるとは思わなかった発令所の面々は驚きながらもその指示に従う。



ゲンドウと冬月は、ユイの眠る病室にいた。

リツコは事情を聴取しようとしたが、またしてもシンジ達は使徒戦後の休暇を盾に帰ってしまっており詳しい事は不明だった。

「・・・あの人は勝手に出てきたわ」
レイが一言、そう言ったのみであった。

「今は眠っている状態らしい、命に別状は無いそうだ」
「・・・ユイ」

「碇、これからどうするつもりだ?」
「・・・ユイが目覚めるのを待つしかありません」

「そうだな、しかし、ゼーレが黙っておらんぞ」
「・・・ゼーレも同じでしょう」

「確かにユイ君が戻ったとあらばゼーレも迂闊には動けんな」
「・・・ユイが目覚めるまでゼーレには報告しません」

「しかし、これはレイの力なのか?」
「・・・勝手に出てきたとレイは言っていたそうだ」

「それを信じるのか?」
「・・・今はレイを問いつめる事はできない」

「そうだったな」
「・・・ユイが目覚めれば全て解る」

一人の悪女に溺れた二人の男が、その悪女の寝顔を目の前にし、先が見えなくなった未来に不安を感じていた。
その傍ら、二人の求めて止まなかった一人の女性を目の前にし、喜悦にも浸っていた。

この女性が目覚めた時に、自分に微笑んでくれると信じて。



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新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAX の作品です。
拙著は当該作品を元に作成した代物です。
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